子育ての進化、双子のチンパンジーを母親以外が世話…京大研究グループ
京都大学霊長類研究所らの研究グループは9月12日、高知県立のいち動物園で2歳になった二卵性双生児のチンパンジーに対して、母親以外のおとなによる世話行動が観察されたと発表した。子育ての進化を考える上でも重要な知見であるという。
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
ヒトにもっとも近縁の種であるチンパンジーは双子を出産しても、多くの場合、双子の一方または両方がおとなになるまでに死亡する。これは、母親以外のおとなのチンパンジーが、双子の子育てに参加しないために母親の育児負担が軽減されず、母親が双子を育てきれないからであると考えられている。
高知県立のいち動物公園では、2009年4月に35歳のサンゴが性別の異なる二卵性の双生児(男の子:ダイヤ、女の子:サクラ)を出産し、サンゴによる自然哺育が継続している。双子が自然哺育によって育つ例は稀で、日本では初めての事例だという。
同研究グループは、のいち動物公園のチンパンジー集団を2011年4月~2012年3月の1年間観察し、2歳になった二卵性双生児のチンパンジーに対して、双子の母親や、母親以外のおとなたちがどのように関わるのかを調査した。その結果、双子それぞれに対して、母親以外のおとなによる世話行動が観察された。特に女の子のサクラに対しては、双子たちとは血縁関係のないおとなの女性が「背中に乗せて移動する」といった世話を行っていたという。
これらの調査結果から、チンパンジーの子育ては母親または血縁個体が行うという常識を覆し、母親以外のおとなによる双子への世話行動が、双子の母親の育児負担を軽減し、双子の自然哺育の成功につながった可能性を示している。この研究成果は、9月10日(日本時間)付けにて英国科学誌「Scientific Reports」誌に掲載された。
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