記憶を思い出す脳の仕組みを解明、東大研究グループ
東京大学は4月24日、記憶を正しく思い出すための脳の仕組みを解明したと発表した。サルが記憶を思い出す際、大脳の側頭葉から送られる信号によって、皮質層にまたがる神経回路が活性化されることが明らかになったという。
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研究したのは、同大大学院医学系研究科の宮下保司教授(研究当時)、竹田真己特任講師(研究当時)らのグループ。
これまで、大脳の後方側面に位置する側頭葉に視覚の長期的な記憶にかかわるニューロン群が存在することは知られていたが、どのような原理で活性化されるかは明らかになっていなかった。
研究グループは、「ハンカチ」と「靴下」など、対となる言葉や図形を連想によって記憶し、片方を見た際に対の言葉や図形を思い出す課題(対連合記憶課題)をサルに課し、ニューロン活動を計測・分析。複数の記録チャンネルを持つ電極(多点リニア電極)を用いて、側頭葉のTE野と36野から同時に記録した。
解析の結果、手掛かり図形をヒントにサルが対となる図形を思い出すときには、個々の36野のニューロンはTE野の深層・浅層のいずれかと協調的に活動していることが判明。TE野深層の協調的な活動は、浅層に皮質層間信号を伝播していることも見つけた。
また、A36-TE野深層-TE野浅層の順番で信号が伝わる経路は、サルが正しく思い出したときのみに作動し、思い出しに失敗したときは作動しないこともわかった。これらの結果から、霊長類の側頭葉において記憶の想起をつかさどる領域間、領域内の脳内信号の伝播原理が初めて明らかになったという。
研究グループでは、今回の研究によって、記憶想起にかかわる大脳ネットワークの作動原理の理解が深まったとし、今後は視覚性記憶障害にかかわる神経回路の研究につながることが期待されるとしている。
研究成果は4月24日(日本時間)、米国科学誌「Neuron」のオンライン速報版に公開された。
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