誤って届いた合格通知、不合格を覆す力はあるか?

 合格、不合格の通知をめぐるトラブルや事件を受け、入学することはできないのか、また、合格通知を受け取ったことにより不利益があった場合何かしらの請求ができるのかを、自身も一児の母である島田さくら弁護士に聞いた。

教育・受験 保護者
島田さくら弁護士(東京弁護士会所属)
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◆法律の世界に「ゼロを超えた得」はない…慰謝料は請求できるか?

 これまで述べたように、合格通知が送られてきただけで入学するというのは難しいでしょう。ただ、合格通知が届いたことで、すでに入学金を払っていたほかの学校の入学を辞退して入学金分を損してしまったなど、損害が生じたとか、精神的な被害を被ったという場合には、学校のミスによって損害が発生しているので、不法行為として賠償金や慰謝料を請求することができそうです。学校を設置しているのが、国や地方公共団体の場合には、国家賠償請求という形になります。

 「学校がミスをしたのだから入学を認めてほしい!」という気持ちもあるかもしれません。しかし、法律の世界では基本的に、相手のミスのせいで生じたマイナスをゼロにすることはできても、相手のミスのせいで片方がゼロを超えて得をするようにはなっていません。なので、相手のミスで損害を被ったら、その分補填してもらえますが、相手にミスがあっても不合格で本来入学できなかった人を入学させるということにはなりにくいのです。

 いずれにしろ、入りたかった学校から一度は合格通知をもらって、それをやっぱり不合格だと言われてしまうのは受検者にとって本当に辛いことです。間違いのないよう徹底してもらいたいものです。
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◆島田さくら弁護士
 大阪大学大学院高等司法研究科卒業。東京弁護士会所属。未婚で出産をしたシングルマザーで、現在は息子と2人暮らし。仕事と子育ての両立にまだまだ慣れない部分も多いが、自らがつらく苦しい体験をしたからこそ、同じような悩みを持つ人たちの心に寄り添える「身近な弁護士」になれるよう、日々勉強に励んでいる。著書「愛とお金と人生の法律相談」がプレジデント社より全国の書店やコンビニで発売中。

協力:アディーレ法律事務所
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《編集部》

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