【EDIX2016】知識ゼロ、迫るプログラミング教育導入の波…現場の声と注目教材

プログラミング教材を前に、若手の教員と3人でEDIXにやってきた地方公立小学校の女性教頭が語った。2020年から小学校での必修化が検討されている「プログラミング教育」。教育者の数々が注目を寄せているブースを追った。

教育ICT 先生
アーテック 教育現場向けのプログラミング教材「Robotist(ロボティスト)」
アーテック 教育現場向けのプログラミング教材「Robotist(ロボティスト)」 全 12 枚 拡大写真
 「大人には抵抗がある。だからと言って、子どもたちに触れさせる機会を絶ちたくない。」プログラミング教材を前に、若手の教員と3人でEDIXにやってきた地方公立小学校の女性教頭が語った。2020年から小学校での必修化が検討されている「プログラミング教育」。学校関係者や塾講師など、多くの教育者が注目を寄せているブースを追った。

◆次世代の学びが登場「学びNEXT」

 5月18日から東京ビッグサイトで開催されている日本最大の教育分野の専門展「第7回 教育ITソリューションEXPO(EDIX:エディックス)」の目玉ともいえる新設ゾーン「学びNEXT」では、おもに「STEM教育」「プログラミング」「AI、ロボット」といった最先端の学びの数々を展示している。

◆知識ゼロでも指導者に…教育現場には教科書付きの一式セットを

 学校教材や教育玩具の製造・販売を行っているアーテックは、教育現場向けのプログラミング教材「Robotist(ロボティスト)」の展示を行っている。専門的なプログラミング言語を用いなくとも、直感的にプログラミング可能なビジュアルプログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」をベースにしたソフトウェアを利用し、信号機やロボットを組み立て、動かす。組立てに必要なブロックやセンサー、LEDライトは「Robotist」キット内に一式揃っており、セットがあれば誰でも簡単にプログラミングに挑戦できる教材だ。まったくの初心者でも指導できるよう、セットには中学校「技術」の教科書を参考にしたオリジナル教材も含めた。

◆何が違う? どう選ぶ? 異なる販売対象や価格、サポートに注意

 教材を購入する比較検討の際には、初期費用や購入後のサポート内容にも注意したい。電話やメールによるサポートデスクを開設している教材や代理請負講座もあるが、買い切りの教材の場合は、教科書の有無や教科書の内容、カリキュラムのボリュームを事前に確認できるとよいだろう。

 単純にプログラミングを教えるのではなく、プログラミングを通して身近な道具や機械、ロボットの製作と制御の仕組みも学べるよう、学研エデュケーショナルは学習塾やPC教室向けのプログラミング講座を行うキット「もののしくみ研究室」を展示中。「もののしくみ研究室」は、学研エデュケーショナルまたはアーテックとの個別の契約で認可された学習塾やPC教室などが運営できるプログラミング講座。授業は1回90分、月2回の実施が目安。利用には、12か月分の実施教材がまとめられた1箱キット2万円(税別/箱)の購入が必要。月謝は教室運営者が自由に設定できる。

 ブロックはアーテックのプログラミングブロックを用いているが、キットに含まれる教科書に工夫を施した。自動ドア、信号機、踏切などの「ものづくり」メーカーに協力を仰いだテキスト作りにこだわり、ロボットの作り方はもちろん、ものの作られた理由や豆知識を盛り込んだ。「楽しくプログラミングするだけではなく、生活のこんなところを改善するにはこういった機械が必要で、その機械を作るにはどのような機能が必要か、とプログラミングスキルの習得と同時にものづくりの観点も養ってほしい。」(学研エデュケーショナル)

◆一般家庭向け教材も続々登場

 一般家庭向けのプログラミング教材の姿もある。ソニー・グローバルエデュケーションの「KOOV(クーブ)」だ。3月に開発中であることが発表されて以来、大規模な展示会での公開はこれが初めて。透明感が目をひくクリアブロックを用い、動物や楽器、2足歩行ロボットなど、自由に形を作る。作ったロボットを動かすには、キットに含まれる電子基板を用いる。発売時には、スマートフォンやタブレットでもプログラミングできるようなオリジナルアプリのお披露目も見込まれている。ソニー・グローバルエデュケーションは、「KOOVのブロックはさまざま形が取り揃えており、作りたい作品を再現できる自由度が高い分、創造性や探究心、思考力も鍛えられる」としている。

◆教材を購入する費用はどうする?

 レゴエデュケーションは、世界60か国以上で採用されているというプログラミングロボット教材「マインドストーム EV3」を展示している。小学校低学年向けのサイエンス&プログラミング教材「レゴ WeDo2.0」も実演展示する傍ら、5月18日には参加者向けのミニセミナーも開催。実際にレゴのプログラミング教材を利用している導入校の事例を紹介し、誰が、どのように予算を工面し、現場におろし、指導したのかを伝授。子どもたちにプログラミング教材を使わせてあげたいが、最初の一歩を踏み出せない参加者に向け、実例を公開した。各ブースに足を運び、開発者や他の地域の教育者と情報を交換できることも展示会のメリットのひとつであろう。

 昨今では、首都圏を中心に一般企業やNPOがプログラミング教室を開催することも増え、PCやタブレットだけでロボットや機械をプログラミングし、動かしてみた経験をもつ子どもも増えつつある。しかし、教育現場ではどうか。「必要なことはわかるが、一人の親として、教師として、何から始めればよいかわからない。」(都内・小学校教師)。プログラミング教材を扱う企業も増えてきた。予算どりや指導者不在の課題も残るが、子どもたちの未来のためにはまず、自身の目や感触でどういった教材があるか調べることが必要なのかもしれない。

《佐藤亜希》

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