【EDIX2016】つくば市長 市原健一氏基調講演…ICT教育40年の歩みと効果

 「第7回 教育ITソリューションEXPO」の初日である5月18日、茨城県のつくば市長の市原健一氏による基調講演「ICT活用による『学校間協働学習』が学力向上に直結!」が行われた。

教育ICT 先生
茨城県つくば市長の市原健一氏
茨城県つくば市長の市原健一氏 全 5 枚 拡大写真
 5月18日から20日まで、東京ビッグサイト・東京ファッションタウンビルの2会場で、「第7回 教育ITソリューションEXPO(EDIX:エディックス)」が開催されている。初日の18日には、茨城県のつくば市長である市原健一氏による基調講演「ICT活用による『学校間協働学習』が学力向上に直結!」が行われた。

◆「教育日本一」を目指すつくば市のICT活用

 基調講演では、2004年から3期にわたってつくば市長を務めている市原氏が、「教育日本一」を目指すつくば市におけるさまざまな教育の取組みを紹介した。

 つくば市は1977年に日本で初めて小学校にコンピュータを導入し、以来約40年にわたってICTを積極的に教育の中に取り入れている。たとえば、電子黒板については、全国に先駆けて市内の小中学校に導入。そのきっかけは、つくば市のモデル校に設置されていた電子黒板を市原氏が目にしたことからだ。氏は、「一部のモデル校だけに、国から借りた電子黒板を一時的に設置していても意味がない」と思い至り、全国すべての学校に電子黒板を導入することを決意したという。その際も「機器を整備しただけで、学力が上がったり、プレゼンテーション能力が飛躍的に向上したりするわけではない」とし、電子黒板というツールをいかに授業に効果的に使うかということに重点を置いた。

◆独自の“つくばスタイル”と9年制教育

 つくば市では、市内のすべての小中学校において小中一貫教育を実施している。小学校と中学校を数校グループ化してひとつの“学園”とし、現在15の学園が存在する。こうした施設分離型の学園では、離れた場所にある学校どうしの連携を補うのにICTは最適のツールといえる。「テレビとネットを使った電子会議や電子掲示板などを活用することで離れた学校どうしで連携を行い、時間的距離感を埋めている」と、市原氏は話す。

 また、全学園で小・中を合わせた9年間でのカリキュラムを行っている。9年を前期(1~4年)、中期(5~7年)、後期(8~9年)と3つの段階にわけ、それぞれの学年で、4つのCを軸にした新教科「つくばスタイル科」を実践しているという。

 4Cとは、「Community」(協働力)、「Communication」(言語力)、「Cognition」(思考・判断力)、「Comprehension」(知識・理解力)の4つの力を指す。「いずれも21世紀型/次世代型スキルとして、これからの時代に必要とされる力を養う」ものだと市原氏は話す。

 これらのスキルを身につけるために活用しているのも、電子黒板やタブレット、学習支援ツール「スタディノート」などを使ったICT教育だ。

 たとえば言語力を鍛えるためには、日ごろから電子黒板を使ってプレゼンテーションを行うほか、市内全校を対象にした「プレゼンテーションコンテスト」を開催。福祉や環境、防災といったさまざまな課題を生徒自らが決め、取材や資料整理を行ってタブレットで「スタディノート」を作成し、プレゼンテーションを披露している。講演で紹介された実際のコンテストの動画では、電子黒板を操り、英語でプレゼンテーションを行う小学生の発表なども紹介された。

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《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

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