小児慢性疲労症候群、低報酬は学習意欲低下を招く…理研などが発表
理化学研究所(理研)や大阪市立大学、熊本大学の共同研究グループは11月15日、不登校の児童・生徒に多くの発症がみられる「小児慢性疲労症候群(CCFS)」は、低い報酬しか獲得できなかった場合におこる脳領域の神経活動が低下していることを明らかにした。
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CCFSは、3か月以上持続する疲労や倦怠感、睡眠・覚醒リズム障害を伴い、不登校の児童・生徒に多くの発症がみられるという。そのため、学習意欲の低下や記憶・集中力の低下が学校生活への適応を妨げている可能性があることから、脳と脳機能の関係解明が課題となっていた。
共同研究グループは、CCFS患者13人と健常児13人を対象に、金銭報酬を伴うカードめくりのゲームを実施し、ゲーム中の脳活動状態を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で測定した。その結果、CCFS患者と健常児どちらも高報酬を得た場合は「線条体(尾状核と被殻)」と呼ばれる脳領域が活性化していることがわかった。一方、低報酬しか得られなかった場合、CCFS患者の被殻の活性度が健常児と比較して低下していることが判明。さらに、疲労症状が強いほど、また学習による報酬感が低いほど、低報酬を獲得した際の被殻の活性度が低いことが明らかになった。
これらのことから、CCFS患者の学習意欲低下は、低報酬知覚時に線条体が活性化しない状態が関係していることがわかった。線条体は、ドーパミン神経が豊富に存在する脳領域。今後の治療法としては、ドーパミン神経系を標的とする投薬の可能性が考えられるという。
共同研究グループは、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター健康病態科学研究チームの渡辺恭良チームリーダー、大阪市立大学大学院医学研究科の水野敬上級研究員、熊本大学大学院生命科学研究部の上土井貴子助教ら。今回の成果はオランダのオンライン科学雑誌「Neuroimage: Clinical」(9月28日付け)に掲載された。
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