ドラキッズのプログラミング授業の狙いや、教材として導入された「ソビーゴ こどもブロック・プログラミング」について、ドラキッズを運営する小学館集英社プロダクション キッズ教育事業部の藤澤裕佳さん、およびソビーゴの開発・販売を手掛けるワイズインテグレーション 取締役の宮澤豪臣さん、三池奈奈さんに聞いた。
◆幼児教室にプログラミングを取り入れる理由
--ドラキッズのカリキュラムにプログラミングを取り入れたのはなぜでしょうか。
藤澤さん:これからの時代は、論理的に考える力がますます求められてきます。物事を順序立て、ひとつひとつ積み上げて考える力が身に付けられるプログラミングを、通常の学びの中に取り入れていくことが大事だと考えました。ドラキッズでは、幼児期の子どもたちがチャレンジできる教材の1つとしてプログラミングを捉えています。
◆遊び心で未来をつくる
--さまざまなプログラミング教材がある中で、ドラキッズがソビーゴを選んだ理由を教えてください。
藤澤さん:遊びの中から学ぶというドラキッズの考え方に、ソビーゴはとてもマッチしています。幼児期の子どもたちが楽しく、そして自然に考えるきっかけを得られる教材を探していた中で、ソビーゴは見た目にもカラフルでかわいく、またプログラミング言語や使い方を覚えなくてもプログラミングできます。思考力を身に付けることに特化できる教材である点も、大きな魅力でした。
宮澤さん:ソビーゴは、音楽の授業で最初に渡されるリコーダーと似ています。リコーダーを通じて、子どもたちは音階があること、指の押さえ方によって違う音が出ることなど、音楽の基本的な概念を学んだあと、管楽器や弦楽器へと分かれていく。コンピューターの基本の「き」が学べるソビーゴと、最初に概念的な考え方を学ぶためのものという点で、ドラキッズの考え方と共通しています。
ソビーゴのスローガンは「遊び心で未来をつくる」です。遊び場にいる子どもたちは、「あんなことしたいね」「これからこんなことしてみよう!」と言いますよね。そういう気持ちでプログラミングを体験し学んでいくことが、親の世代も子どもの世代もプログラミングを学んでいない日本においては、すごく重要なことだと思っています。
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ソビーゴのプログラミング教材
--ソビーゴで子どもたちはどのように学びますか。
三池さん:コンピューターのプログラムは通常、英数字で書かれたプログラミング言語を使って、動作の指示(命令文)を1行ずつ記述していきますから、読み書きができ、コマンドの意味を知っていないと記述できません。一方ソビーゴは、キャラクターを動かすための1つひとつのお願い(コマンド)をデザインされたブロックに見立てています。
たとえば、シートの左下にいるキャラクター(ソビーゴくん)が、右上にいるお姉さんに会いに行く場合、まず右に1つ動き、さらに右へ1つ動き、次に上へ1つ動き、といった一連のお願いが必要です。それを右矢印や上矢印の絵が描かれたブロックを順番につなげることで表現します。
実際にブロックをつなげたら、今度はアプリ上でそれを再現します。指を使って画面のブロックをつなげると、そのお願いのとおりキャラクターが動きます。実際にキャラクターの動きで確認することで、コンピューターには1つずつ順番に指示しないといけないことを学びます。
◆自らの動きでお願い(コマンド)を体験
--年齢ごとにどのようなプログラミング授業を行っていますか。
藤澤さん:ドラキッズには満1歳児から小学3年生までのクラスがあり、プログラミングを取り入れているのは年少・年中・年長のクラスです。子どもたちは年4回、1回60分のカリキュラムの中でプログラミングにチャレンジします。
年少のクラスでは、教室内にフラフープを並べてソビーゴの課題と同じ環境を作り、その上を子どもたちが実際に動いてみる授業からスタートします。これは、自分がコンピューターにお願いしたことがどういうことかを自ら体験するためのものです。
そして年長になると、たとえば「上に1つ動く、上に1つ動く、上に1つ動く」とするのではなく「上に1つ動くのを3回繰り返す」と表現して、お願いを簡単にする「繰り返し」や、まとまった動きを必要なときに呼び出す「関数」なども使いながら、自分で考えた動きを表現することにチャレンジします。
◆子どもたちの自主性を刺激
--授業内容はどのように作成したのでしょうか。
藤澤さん:ワイズインテグレーションさんに作っていただいたカリキュラムをべースに、子どもたちにどう声掛けすればいいか、現場の講師も交えながら検討を重ねました。プログラミング授業は、他の授業とはスタイルが異なります。「言葉や数、形を教える」といった従来の「先生と生徒」の関係ではなく、講師は子どもたちに気付きを与え、解決方法を引き出す存在になる必要があります。
子どもたちが物事を論理的に組み立てられるようになるには、そして子どもたちの自主性を刺激するには、といったことを講師ひとりひとりが考えながら授業しています。ドラキッズの教室は北海道から九州まで約200教室あり、2名担任制のため講師数は非常に多いのですが、プログラミングカリキュラムの導入にあたっては、全員に研修を受けてもらいました。コンピューターに不慣れな講師も楽しみながら熱心に取り組んでいましたし、その体験を子どもたちに伝えてもらえればと思います。
◆保護者に学習ポイントを説明する振り返りシート
--子どもや保護者の反応はどうですか。
藤澤さん:子どもたちは間違いなく楽しんでおり、授業を切り上げるのがかわいそうなくらいです。授業が終わると「次のプログラミングの授業はいつ?」と聞いてきます。保護者は、プログラミング教育が小学校で必修化されること自体を知らない方が多くて最初は驚かれましたが、子どもが夢中になっているようすを見て、とても評判がよいです。
三池さん:授業が終わったあとの講師と保護者のミニミーティングでご活用いただけるように、「振り返りシート」を提供しています。授業の狙いとともに「身に付く力」として、たとえば計画を立てる力や、物事をやり抜く力など、実生活の中で子どもたちのどういった力につながるかを説明しています。
藤澤さん:「振り返りシート」で学習のポイントをしっかりご説明した上で、講師が自分の言葉でひとりひとりの子どもの反応をお伝えすることで、保護者の皆様にもプログラミングを身近に感じていただければと思っています。講師も子育て経験のあるママが多いので、わかりやすい表現を心掛けていますし、保護者の方々は興味深く聞いてくださっている印象があります。
◆小学校で始まるプログラミング教育
--2020年から小学校で始まるプログラミング教育はどのようなものでしょうか。
宮澤さん:平成29年3月に公示した新学習指導要領では、総合的な学習の時間のほか、教科に結び付けてプログラミング的思考を身に付ける旨が盛り込まれています。いずれにせよ教科科目ではないのでプログラミングのテストがあるわけではないことになりますが、どのように基準を作り、評価するかが難しいポイントです。
プログラミングは、自分でこうしたいと決め、それに向かって試行錯誤することで身に付いていきます。そのため小学校の先生方は、評価の観点、および子どもに何を身に付けさせるかの2点について、現在検討や研究に取り組んでいるところです。
ソビーゴは産学連携プロジェクト「プログラミング教育開発研究会」を発足し、先生方による学習指導案の開発や、指導学年・教科の適正考察、評価の観点や評価基準などの策定に取り組んでいます。その取組みの中で私がすごくいいなと思ったのは、たとえば小学校低学年の国語では、相手に伝える力を身に付ける授業を行いますが、伝える言葉の主語や述語や目的語がバラバラになると相手に伝わりにくい。順序立てて相手に伝えることが必要なプログラミングを国語の授業に挟み込むことで、国語の学びと融合できるようになります。
こうしたことが他の教科でもできれば、先生方もかえってこれまでより教えやすくなるかもしれませんし、従来の評価と結び付けられる点でも教科の中でプログラミングを学ぶことのメリットがあると感じています。
◆プログラミング体験のためのサマーレッスン開催
--ドラキッズで小学生向けにプログラミングカリキュラムを導入する予定はありますか。
藤澤さん:小1~小3を対象にソビーゴを使った全3回のサマーレッスンを開催する予定です。その反響を見て、秋にはプログラミングに特化した授業も別枠でスタートさせられればと考えています。
幼児向けも、すでに実施した第1回と第2回の授業の内容をふまえ、まだプログラミング体験をしたことのない子ども向けのサマーレッスンを予定しています。
--ありがとうございました。
ドラキッズのプログラミング授業は、一人で全部考えるのではなく、自分が考えたことをクラスの友達に伝えるコミュニケーションや、どう指示すればいいかわからなくなってしまった友達に「こうしたらいいんだよ」と教えてあげるといった学び合いの場にもなっているといい、既存カリキュラムとの融合にも取り組んでいるという。