教育格差を解消する「スタディクーポン」貧困家庭の中3支援…第1弾は渋谷区

 「チャンス・フォー・チルドレン」は10月12日、渋谷区と協働して、来年4月から渋谷区内の貧困世帯の高校受験生が学習塾などで利用できる「スタディクーポン」の提供を行うことを発表。教育格差をなくすための取組みで、クラウドファンディングを行っている。

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チャンス・フォー・チルドレン(CFC)
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 「チャンス・フォー・チルドレン」は10月12日、渋谷区と協働して、2018年4月から渋谷区内の貧困世帯の高校受験生が学習塾などで利用できる「スタディクーポン」の提供を行うことを発表。教育格差をなくすための取組みで、クラウドファンディングを行っている。

 「チャンス・フォー・チルドレン(CFC)」では、2009年から関西、東北や熊本などで子どもたちの「教育格差」を解消するための取組みを行ってきた。親の所得格差が子どもの塾代にかけられる費用の格差に直結してしまい、子どもたちの将来にも影響を与えてしまう「不平等の連鎖」。特に高校受験を控えた中学3年生という時期は、塾代格差問題を解消するうえで見逃すことができないタイミングだという。

 CFCはその問題を解決するため、企業・NPO・行政とコンソーシアムを形成し、「スタディクーポン・イニシアティブ」を発足。その第1弾プロジェクトを渋谷区と連携して実施する。クラウドファンディングで集まった寄付金をもとに、低所得世帯の子どもたちに「スタディクーポン」を届け、子どもたちはクーポンを使って、自身が選択した学習塾に通うことができるというシステムだ。利用期間は2018年4月1日からの1年間。クーポンは特定の個人にひも付けて交付され、違う子どもに渡る、換金されるといったリスクもないという。

 なお、寄付された金額は、事業運営にかかる最低限の費用を除いた分がそのままスタディクーポンとなり、寄付から半年後に子どもたちの手元に届く。5,000円の寄付で1週間分、2万5,000円の寄付で1か月分、30万円の寄付で1年分のクーポン(1人分)に相当。1,000万円を目標に、11月30日まで寄付を受け付けている。

 また、今回のプロジェクトの成果をもとに、2019年度以降に渋谷区の教育政策として本格導入するかどうかの検討も行われる予定。

渋谷区で実施される第1弾プロジェクトの仕組み
渋谷区で実施される第1弾プロジェクトの仕組み

 CFCは多くの低所得世帯の中学3年生に「スタディクーポン」を届けるため、広く寄付を募るとともに、「スタディクーポン・イニシアティブ」の取組みをシェアしてほしいと呼びかけている。プロジェクト内容や寄付の詳細については、「チャンス・フォー・チルドレン」のWebサイトに掲載。CFCでは「クーポン」を用いた教育支援の仕組みを、今後政策として全国に広げていく考え。

 なお、このような支援をすでに導入している自治体もある。たとえば、大阪市では「塾代助成事業」として、市内在住中学生の約5割を対象に学習塾や家庭教師、文化・スポーツ教室などの学校外教育にかかる費用を支援。月額1万円を上限として、1円単位で利用することができる。

 大阪市が行った平成28年3月の調査(有効回答数651人)では、平成27年度に助成を受けて利用した生徒と保護者の6割以上が、成績の変化について「良くなった」と回答している。また、利用後の学習意欲の変化を尋ねると、「前向きになった」が60.9%を占めた。

《黄金崎綾乃》

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