千代田高等学院には、IB(国際バカロレア)・IQ(文理探究)・GA(グローバル・アスリート)・LA(リベラル・アーツ)・MS(メディカル・サイエンス)と、生徒の志向によって柔軟に個別化された5つのコースが設けられるが、すでに紹介したIB、IQ、GAに続き、今回は女子部のLAコースを取り上げる。
2018年4月から始まる千代田高等学院のLA(リベラル・アーツ)コースは、高い語学力と幅広い教養、大局観と品格を身に付け、国際的な舞台で活躍できる人材の育成を目指す。カリキュラムデザインを担当する永見園子教諭は、LAコースが掲げる国際的に活躍できる人材を育成するための「3本の柱」について語る。
◆国際的に活躍できる人材を育成するための「3本の柱」
「第1の柱は実践力。エッセイやプレゼンテーションなどを通じた表現力、そのための思考力や企画力を身に付けます。第2の柱は語学力。単なる日常会話にとどまらず、ビジネスの世界でも通用するような高度な英語力を身に付けます。第3の柱は日本人としてのアイデンティティ。世界の舞台でも一目置かれる存在であるためには、品格を備えた人材でなければいけません。そのために日本の伝統文化をしっかりと学び、身に付けます。」
第1の柱としてあげられた実践力。これは現在、LAコースの前身となる千代田女学園のグローバルリーダーコースで導入されているカリキュラムを強化、発展させていく予定だ。
「具体的には、『教育と探求社』の協力で、高校1年生の段階で探究学習を導入しています。今年度の前半には、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を開発パートナーに、『株の力』という課題に取り組みました。株式が持つ本質的な力について理解を深め、それを新聞広告で表現するという学習でした。1学期の終わりにはプレゼンテーションがあり、同じ課題に取り組んだ他校と交流する機会もありました。『株』の最前線で働く方々と関わり合いながら、証券市場や証券会社の機能や役割について学び、情報収集・活用力、コミュニケーション力などを養うことができました。後半はテレビ東京とNTTドコモをパートナーに、次の企画を進めているところです。」(永見教諭)
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永見園子教諭
最初は戸惑うことの多い生徒たちからも、意見を出し合いながら立案する段階になると、多様なアイデアが湧いて出るのだと永見教諭は目を細める。
「そういう姿を見ると高いポテンシャルを感じます。質の良い機会からはモチベーションが生まれ、成長につながることを実感しますね。」
第2の柱としてあげられた語学力。英語は高校1年では週に10時間もの授業が行われ、高2にはオンライン英会話も導入される。来春、隣地に開校されるインターナショナルスクールには、50名もの外国人教員が配置される予定だ。千代田高等学院はこのインターナショナルスクールと連携し、こうした類い稀なリソースの共有を図っていくと、荒木校長は意欲的だ。
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荒木貴之校長
また、千代田高等学院ならではの英語として特筆すべきなのが、地球市民という授業だ。
「高校2年生で週2時間、高校3年生で週1時間、外国人の先生に授業に参加してもらい、世界の諸問題について探究しながら、プレゼンテーション力を磨いていきます。」(永見教諭)
さらに英語の実践力を高めるため、高校2年時に、期間は8日から1年まで、場所についても選択が可能な、充実した海外留学プランが用意されている。これは単位として認められる代わりに、留学先では、クラウド上にある教材を使い日本で受ける授業をオンラインで自学自習をする環境が整えられている。さらに、千代田高等学院では学内選抜試験を実施し、基準を超えた生徒には最大100万円給付の留学支援をスタートする。対象は3か月以上1年以内の長期留学をする生徒が対象となる。
また、入学間もない高校1年時にも、来年お台場に新しく完成する東京グローバルゲートウェイという体験型英語学習施設で、英語漬けの合宿を行う予定だ。ここは東京都の高校生なら1日4,800円で利用できる。
「東京都から高校の学費免除を受けられる家庭には、年間の学費が実質無料になるように金額を設定していますが、高2の留学にはどうしても費用が嵩むので、高1ではできるだけ負担が少ない形で機会を作りました。経済的に厳しい家庭にも道を作りたいと思っており、引き続き支援のあり方を模索していきます。」と荒木校長は語る。
第3の柱である日本人としてのアイデンティティ。これには週に1時間、約130年にわたる千代田女学園伝統の「随意科」を必修とする。「随意科」では日本の文化を代表する茶道、華道、香道、琴、着付けを学ぶ。また、浄土真宗の宗門校として週に1時間、仏教を学ぶ機会があるのも、将来日本人として世界に歴史や文化を語るうえで大きな助けになるだろう。
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「随意科」では日本の文化を代表する茶道、華道、香道、琴を学ぶ(写真は香道)
◆机上の勉強だけではなく、多様な経験が大切
LAコースの進学先としては、海外留学の経験を生かした進路を選んで欲しいと荒木校長は言う。海外大進学を考える場合にはIBコースのほうがベターだが、国内大学で英語を活かした進路を考えるなら、LAコースでのびのびと、やりたいことを存分にやりきってほしいと望んでいる。
「国立大学の入試もいずれその3割を推薦入試にすると言われており、大学入試のあり方は大きく変わっていくでしょう。当校では、附属校として武蔵野大学への進学のほか、指定校推薦などほとんどの生徒が大学進学を目指していますが、受験への対応だけでなく、その環境を存分に生かして留学、部活動や生徒会、社会貢献活動など、生徒にはどんどんチャレンジしてほしい。今後は、机上の勉強だけではなく、多様な経験を持つほうが評価される社会になっていくと思います。さまざまな国や人々の価値観が受け入れられる資質、しなやかさを身に付けることがますます問われる時代になると思うのです。」
永見教諭はLAコースを通じて「困難にぶつかったときにそれを打破していけるような強さ。どんな状況でも向上心、夢を持ち続けられる力。」を身に付けてほしいと語る。
◆留学生活と帰国後の成長…留学経験者インタビュー
まさにこの思いを具現化している生徒たちをここで紹介したい。現在、LAコースの前身としてのグローバルリーダーコースに在籍し、7月から9月にかけて約2か月間のニュージーランド留学を終えたばかりの高校2年生の生徒達だ。留学の思い出や成果、そして母校の魅力などについて語ってもらった。
--2か月間の留学生活はどうでしたか?
加藤さん「学校ではバディといって、1人の生徒がお世話係として付いてくれたので、私は基本的にその子と同じ授業に参加しました。最初は英語が通じなくてよくわからなかったけれど、経済の授業のグループワークが日本で触れたことのあるテーマだったので参加しやすく、話しかけてもらえたのがきっかけで友達ができました。また、渡航前に学校のメールアドレスに直接連絡を取り、趣味であるトランペットを1台貸してもらえないか頼んでみたところ、すぐに先生から返信が届き、快く貸してもらえました。そのおかげで、滞在期間中は部活動にも参加でき、ハミルトンで行われたコンクールで演奏する機会にも恵まれました。」
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インタビューに応える加藤さん
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ニュージーランド留学の想い出
高嶋さん「私は最初、言いたいことがうまく伝えられず、特に英語にどう置き換えれば良いかわからない微妙なニュアンスに苦しみました。でもホストファミリーがとても親切で、色々な話題で話しかけてくれたり、私が話す英語の間違いを直してくれることもありました。学校では日本についてのプレゼンをやり、中学生のクラスでも発表させてもらいました。叔母が国際結婚をしているのですが、最近叔父に会って話したら、英語が以前はひどかったけど(笑)格段に上手になったと褒められました。ネイティブスピーカーに褒められたので嬉しかったです。」
小松さん「私は中学3年のときに、この千代田女学園からオーストラリアでの語学研修に10日間参加し、もっと長く留学したいと思ったので、高校に入ったら2か月間の留学があることを楽しみにしていました。前回は旅行気分でしたが、今回は現地の暮らしにどっぷり浸かった感じで…最初の1か月は無我夢中だったのですが、todayをトゥダイと発音するなど英語の訛りに慣れなかったり、コミュニケーションの行き違いもあったりして、1か月経った頃に少しホームシックになりました。でも、歴史の授業で日本のサムライとして織田信長を紹介したり、東日本大震災で起きた津波の惨事や私が住んでいる東京の街について、辞書とボディーランゲージを駆使して発表するうちに、自信が芽生えてきました。ホストファミリーは優しい老夫婦で、週末にはピクニックに連れて行ってくれ、いつも日本のことに関心を寄せてくれました。」
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インタビューに応える小松さん
西澤さん「私のホームスティ先には2人子どもがいましたが、子どもの言葉がとても聞き取りやすくて勉強になりました。2人とも楽器ができたので、私がピアノやギターを担当して3人でセッションをしたり、一緒にサーフィンに出かけたりしました。1か月くらいで耳が英語に慣れて来て、聞き取れるようになりました。日本に帰国後、学校にいる留学生や外国人講師の言葉がよく聞き取れるようになったと思います。この留学体験を通じて、海外の色々な国に興味が湧いてきました。」
--自分はどのように成長できたと思いますか?
加藤さん「リスニングは元々好きではなかったけれど、ニュージーランドに2か月いるうちに相手の話していることが理解できるようになり、普通に会話もできるようになりました。積極性も身に付いたと思います。改めて実感できたのは、私は人と交流するのが好きだなということ。だからもっと英語の勉強をしたいと思うようになりました。」
高嶋さん「ネイティブスピーカーの叔父に褒めてもらえた英語面での成長はもちろんですが、たとえば親戚での集まりで、以前の私はただ一人黙々と食べているタイプだったのに、帰国してからは食事をしながらあっちにもこっちにも話しかけるようになり、変わったねと言われました。東京オリンピックでは海外選手のお手伝いができるようなボランティアを経験してみたいです。」
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インタビューに応える高嶋さん
小松さん「2か月間、現地で暮らしてみて、英語でのコミュニケーションが本当に楽しくなりました。将来は英語を使う仕事に就きたいと思っています。」
西澤さん「皆と同じで、私も2か月間で英語力が身に付いた実感があります。海外のさまざまな場所を訪れたいので、将来はCAになりたいと思います。」
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インタビューに応える西澤さん
--新しく生まれ変わる千代田高等学院LAコースの受験生へ、メッセージをお願いします。
加藤さん&高嶋さん「少人数制で先生との距離がとても近いので、積極的になれます。日本でも英語力を伸ばすことはできると思いますが、長期間の英語漬けにはかなわないので、絶対に留学をお勧めします。」
西澤さん「中学のときは公立だったので、クラスの人数が多くて、やりたい仕事もじゃんけんで負けるとできませんでした。でもこの学校は少人数なので、いろんな仕事ができるチャンスがあって、内申書にもたくさん書けて(笑)行事ごとに色々な仕事に携わることができ、積極的になれます。」
小松さん「私は小学校の頃は内向的な性格でした。でもここは少人数だから生徒会をやったりして、家族にも周囲の人たちにも積極的になったと言われます。この2か月間の留学も、私の性格を大きく変えてくれたと思います。性格を前向きに、活発に変えてくれる場所です。」
永見教諭もLAコースの受験生へ、「ここにはあなたの夢を実現するために、お手伝いできる機会や環境が整っています。やりたいことがある人も、夢をこれから見つけたいと思う人も、お待ちしています!」とエールを送ってくれた。
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インタビューに応えてくれた留学経験者
荒木校長が作る学校は、先生と生徒が共に学び合い、意欲と笑顔が溢れる暖かい空間だ。図書館の隣に新しく整えられたカフェのような場所では、昼休みや放課後になると自由にホワイトボードを引っ張り出し、あれこれと教え合う姿が多く見られた。そして何より印象的だったのは、留学から帰って来たばかりの生徒達の目が、自信が満ち溢れていたことだ。「教育には本物を用意することが大事」と荒木校長が繰り返すとおり、最良の環境が整えば生徒たちはぐんぐん伸びていくことを間近で見せてもらった。パワーアップしたLAコースで、どんな成長が見られるのか。期待は膨らむばかりだ。
<提供:千代田女学園>