「子どもたちは大人の発想を超えていく」プログラミング教育が今、必要な理由とは?…久木田寛直氏インタビュー

 2020年、小学校でのプログラミング必修化に向けてSTEM教育が注目だ。そもそもプログラミングがなぜ必修なのか。期待できる学習効果とは。グローバル社会を担う子どもたちの学びの未来予想図は?プログラミング教育を牽引する久木田寛直氏に話を聞いた。

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知育ドローン「Airblock」の魅力を語るアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏
知育ドローン「Airblock」の魅力を語るアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏 全 8 枚 拡大写真
 2020年、小学校でのプログラミング必修化に向けてSTEM(※)教育が注目されている。各地でプログラミング教室が開校し、新しい教材も次々と増える中で、そもそもプログラミングがなぜ必修となったのか期待できる学習効果とはどのようなことか。子どもたちのプログラミング教育の今を2回に渡って紹介する。

 第1回は、グローバル社会を担う子どもたちの「学びの未来予想図」について、ロボットを使った小学生へのプログラミング教育を牽引するアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏に話を聞いた。
※STEM教育・STEAM教育=Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の教育

プログラミングは論理的な言葉



--なぜ今、子どもたちにプログラミングの必修化が必要だと思いますか。

久木田:僕は元々プログラマーではなく、美大で油絵を専攻していました。僕が美大を受験する際、デッサンの技法を学ぶために、ベティ・エドワーズという人が書いた「脳の右側で描け」という世界17か国以上で翻訳されている必読本がありました。その中で彼女はデッサンのコツとして、対象物ではなくその周囲を見ろと言うのです。通常意識する部分ではなく、無意識の方を見るようにしなさいと。あるいは音楽でも“ゴーストノート”という言葉があるくらい、聞こえないほどの小さな音に意識を向けることが重要と言われます。訴えたいところだけではなく、デザインなら余白、マーケティングなら関連するものなど、無意識の部分を意識する方が実はうまくいくのです。

 僕はプログラミングもまさに同じだと思っています。自分が意識しているところだけを書いていると、思い通りに動かない。たとえば「止める」という動作をちゃんと書いておかないとロボットは止まらないわけです。小学生に無意識を意識しろなんて言うのは難しいのですが、僕はそうしたことをプログラミングを通じて体験的に学んでおくことはすごく大切だと思います。

子どもたちの「学びの未来予想図」を語るアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏
子どもたちの「学びの未来予想図」を語るアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏

--2020年の新学習指導要領では英語とプログラミングが必修化されますが、英語は親にもイメージが湧きやすい一方で、プログラミングとなるとまったく想像がつかず、不安を覚える人が多いようです。

久木田:これまでプログラミングの世界にいる人々とのコミュニケーションの問題は大きかったと思いますね。僕も最初、専門用語が多すぎてプログラマーの先生が何を言っているのかさっぱりわかりませんでしたから。日本人も活躍するアメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボのように、科学者と芸術家の協調を実現するような環境があればいいのですが、今の日本ではまだ分断されている場合が多いと思います。才能ある天才プログラマーたちが、嘘をつかないからという理由でコンピューターとしか話をせず、「壁」を作ってしまうケースは少なくありません。そんな分断された雰囲気が、保護者の方にもモヤモヤした不安を与えているのではないでしょうか。

 小学校からプログラミングを学ぶにおいて僕が重きを置いているのは、意外に思われるかもしれませんが国語的な要素です。プログラミングは論理的な言葉です。つまり「自分が考えていることを論理立てて相手にちゃんと伝えられるようになろう」ということです。

 それは決して新しく先端的なことではなく、サッカーでも料理でも実は同じなんですね。プログラミング的思考などと難しく言われますが、たとえばサッカーで「広がれ」と指示されるだけではどう広がっていいか選手たちには的確に伝わらない。料理で「材料を切れ」と言われてもどんな形状にすればいいのかわからないといったようなことと同じで、「的確に指示を出すにはしっかりと細かく定義をしなければならない」という基本的なことなのです。

 日本語は良くも悪くも曖昧ですが、グローバル化の時代にはこうした論理的なコミュニケーション能力を身につけ、多様な人々と協働していかなければなりません

「学ぶことの楽しさの土台」を作る



--プログラミングは無意識を意識化し、細かく噛み砕いていく作業だということですね。これまでの日本の教育のように、できるだけ素早く正解にたどり着けるよう導くやり方とは違う印象です。

久木田:本来子どもは「あれ?」「なんで?」と立ち止まるものです。立ち止まることがほかの子よりも多くて、これまでの「正解への近道を教える」というやり方では適応し切れない子どもが大勢いたと思います。僕もそういうタイプの子どもで、「公式を覚えればいい」と言われてもまったく頭に入ってきませんでした。でもプログラミングは、そうした子どもたちに「学ぶことの楽しさの土台」を作ってあげられると思うのです。ステップを増やして噛み砕いていけば理解できるわけで、一旦理解できれば従来型の処理能力を問われるような学習もできるようになるはずです。

 一方で、これまで要領よく近道を歩んできた処理能力の高い子にとっても、もう少し論理的に深く考える力を伸ばすことに繋がります。どちらのタイプの子どもにも、プログラミングは大きな効果があると思います。

--新学習指導要領の中には、プログラミング教育の開始時期は明記されておらず、学校に一任されています。久木田先生は小学生への指導経験から何歳くらいから始めるのがよいと思いますか。

久木田:1年生はまだ集中力がなく、みんなで一緒に落ち着いて作業するというのは難しい年齢です。2年生になると多少落ち着いてくるものの「遊ぶ」という感覚が先行するので、論理的に考えるとなると未熟です。3年生はまだ個人差がありますが、4年生になればその論理力がついてくるので、論理的にプログラミングの考え方を教えるというのは4年生以降かなと思います。

--では低学年のうちはどのようなことをすればいいのでしょうか。

久木田先生:運動したり虫を捕ったり、体の感覚を養うことや、数字に興味を持つということは大事かなと思います。低学年の子どもたちには、数字がどう成り立っていて、どういう使われ方をしているのか?に興味を持ってもらえるように遊ばせています。たとえばロボットにある超音波センサーが「20cmのところにある障害物を避ける」というプログラムに取り組む際、20cmってどのくらいの距離なのか、さらには等号、不等号の概念などを、経験を通じて学べます。ロボットを使うとリアルな数字として子どもたちの中に自然と入ってくるので、より興味を持って学んでいけるのではないでしょうか。

プログラミング教育の魅力をを語るアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏
プログラミング教育の魅力をを語るアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏

正解のない時代「ルールだから覚えなさい」ではなく自分の考えを探求する



--プログラミングを通じた「体験」の重要さですね。では、子どもたちがプログラミング体験を通じて得られるおもしろさは、どのようなところにあるのでしょうか。

久木田先生:自分たちがルールを決めていける、ということに一番のおもしろさがあると思います。

 僕は小学校の先生向けにもプログラミングを教える機会があるのですが、多くの先生から「ロボットを使って距離と速さと時間の関係を教えたい」と言われます。でも僕はそれは逆だと思うのです。先人が作った既存のルールを覚えるのではなく、子どもたち自らがその関係を作っていけることが大事なんじゃないかと。

 僕はそうした先生たちに対して「円はなぜ360度と言えるのか」などと意地悪な質問をぶつけます。実は円を360度としたのは、約5,000年前、メソポタミアのバビロニア人の天文学者が、地球が1日に太陽の周りを回転する角度を1度とし、地球が太陽の周りを1周する1年は360日と定義したからだそうです。でも1年って365日だから本当に360度でいいのか。今の教育現場では、そういうことに疑問を持たせず、鵜呑みにさせてしまうことが多いのではないでしょうか。

 正解のない時代を生きるうえで、「ルールだから覚えなさい」ではなく、こうしたデジタルな素材を使って既存の知識を検証したり、自分の考えを探求するという学び方を子どものころからやっておくというのはいいんじゃないかと思います。

 子どもたちを見ていると、プログラミングを通じて「あーそっかぁ!」っていう声をよく聞くんです。ほんとその言葉、聞いていてとても気持ちがいいんですよ!

 自分で経験して自分で気づくというところがおもしろさだし、すごく重要な部分だと思います。

--イノベーションがなかなか日本で生まれてこないのも、大人が求めている答えを子どもに期待するという姿勢が足かせになっているのかもしれませんね。

久木田:僕は学生や子どもたちに対して自分が先生であるという意識はほとんどありません。これまでの経験から言えるのは、生徒たちは僕を超えていくということ。僕ができることは話を聞いてあげることくらいです。先生も保護者も、プログラムのコーディングができる必要はないのです。でも話を聞いて、AがダメならBはどう?という話を返してあげればいい。それはコーディングできない大人にもできることなのです。子どもたちはそんな対話を通じて、あぁそうかと、いつの間にか自分で解決していきます。

 子どもたちに聞かれて「わからない」と言ってはいけないという脅迫概念は時代遅れです。子どもたちは最終的には自分で調べ、考えて作っていけるという時代なのです。

--文科省が唱える「IT技術を駆使して生きていける人材」とは、どのような人材のことを指すと思いますか。

久木田:グラフィックデザイナーの原研哉さんの本に書かれているのですが、粘土の中に釘を混ぜてこねたら手を怪我してしまうように、異質な素材は一緒に混ぜられない、と。同様に、今後の世界はアナログとデジタルをごちゃ混ぜにするのではなく、それぞれの使いやすさをちゃんと理解したうえで、ものづくりや表現をしていけることが大事なのではないでしょうか。

 デジタルが当たり前な世界だからこそ、たとえば手に取って触って見られる新しい素材という観点で「紙」を捉えたほうが、これからの「紙」の可能性が見えてくるような気がします。IT技術を駆使できる人材とは、パソコンをカタカタやりながら、何事にも闇雲にIT技術を取り入れる人材ではなく、アナログ、デジタルの良し悪しがわかったうえでそういう発想ができる人材のことを指すと僕は思っています。

子どもたちを決まった枠にはめない「Makeblock」



--久木田先生はロボットを使ったプログラミングの授業をされていますが、どのようなところが子どもたちにとってよいと思いますか。

久木田:僕が使っているMakeblock社のmBotは、子どもでも簡単にプログラミングを学んで動かせるロボットです。mBotは光センサー、赤外線、超音波などを搭載し、センサーの入力やロボットの動作など、さまざまな要素がブロックになっています。そのブロックを組み合わせていくだけで、コードを書かなくてもロボットの動きを自由にプログラムすることができるというものです。

「mBot」を使って小学生にロボットプログラミングを教えているアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏、その学習効果について語る
「mBot」を使って小学生にロボットプログラミングを教えているアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏、その学習効果について語る

 ロボティックスというのはレゴみたいでわかりやすく、作りながら遊ぶ感覚に近いと思うんです。Makeblock社のCEOを務めるJasen Wang氏が「一からロボットを作ろうとすると、はんだごてなんかを使った電子工作的な作業が必要なので、面倒くさくて嫌になってしまう子どもが多い。だがMakeblockシリーズのロボットプログラミング教材のように、ある程度できあがっているものを組み合わせていくやり方だと、自分がやりたいところにフォーカスできる分、子どもたちにとってロボット作りのハードルがぐっと下がるのだ」と話していました。

 mBotを子どもたちと作っていて気づくのは、学びのスイッチは子どもによってさまざまだということです。先日も5年生の女の子が「先生のプログラムの話はすごくよくわかった。でも私は、このロボットがなんで私たちが書いたプログラムがわかるのかが知りたい」と言ってきた時、あ、この子の視点は先を行ったなと思いましたね。

 そうやってプログラミングに興味を持つ子もいれば、ロボティクスのエンジニアリングに興味を持つ子、デザインに興味を持つ子、このロボットを使ってゲームを考案したい子など、ロボットひとつでいろんな考え方が持てるというところが、子どもたちを決まった枠にはめないという意味でとても良いと思います。

 今は運動会でもそうですけど、子どもたちって大人が決めたルールの中でやっているだけで、自分でルールが決められる世界というのはほとんどないと言ってもいい。プログラミングは自分でルールが決められるというところが大きな魅力だし、それはデジタルの恩恵だと思います。

 また、国語、算数、理科、社会という区分そのものがもう古いのかもしれません。STEMは教科を飛び越えて、このロボットひとつで光の三原色や可視光線、音、数字、プログラミング言語という意味では論理も学べる。教科横断的に自分で課題を解決するという学び、さらにその課題を視点が違う子ども同士で協働するという学びにも繋がっていくと思います。

Makeblockシリーズの知育ドローン「Airblock」は、飛ばすことも、水上を走らせることもできる(左:ドローン型/右:ホバークラフト型)
Makeblockシリーズの知育ドローン「Airblock」は、飛ばすことも、水上を走らせることもできる(左:ドローン型/右:ホバークラフト型)

--Airblockは飛んだり、水上を走ったりと画期的な教材ですが、魅力はどこにありますか。

久木田:基本的にはドローンの形で使うということで、一番の魅力は「飛ばす」という要素ですね。子どもたちにとって飛ばすというのは壮大なモチベーションで、飛ばないと泣いてしまう子どもがいるくらいですから

 離着陸、旋回、宙返りなどのプログラムはすでに用意されていて、ブロックをドラッグ&ドロップするなどビジュアルでわかりやすく、専門知識がなくても簡単に動かすことができます。なぜそのような動きができるのかを細かく観ていく興味が持てるといいですね。さらに簡単に分解、組み立てができるので、いろいろな形態に組み替えできておもしろい。地上を走るロボットにはあまり影響がなかった「風」という要素もAirblockには重要になってくるので、想像力を掻き立てられます

 子どもたちに「君たちこれで何をする?」と言ってポンと渡すだけで、大人の発想を超えていろいろなアイデアが湧き出てくる気がしています。

Makeblockシリーズの知育ドローン「Airblock」は、簡単にパーツを取り外して変形も可能
Makeblockシリーズの知育ドローン「Airblock」は、簡単にパーツを取り外して変形も可能

--小学校からプログラミングを学んだ子どもたちが築く未来とは、どのようなものでしょうか。

久木田:これからの社会は、膨大なビッグデータを人間の能力を超えた人工知能(AI)が解析し、その結果がロボットなどを通じて人間にフィードバックされることで、これまでにはなかった新しい価値や産業が生まれてくるでしょう。今の子どもたちが大人になり、衣食住全てロボットが面倒を見てくれて、人間が何もしなくてもいいような世界になった時、そこに安住するのではなく、自分たちの可能性を広げる創造力が出てくるといいなと思います。

 そのためには、そうした最先端の技術がどうやって、何のために作られたのかをプログラミングを通じて理解できていれば、技術に人間が支配されるのではなく、自分にとって大切なものは何か、優先順位が見極められるようになると思います。

知育ドローン「Airblock」とアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏
知育ドローン「Airblock」とアザイ・コミュニケーションズ代表取締役 久木田寛直氏

 冒頭の話の繰り返しになりますが、プログラミングを学ぶことで無意識の部分に意識が向けられるようになっていれば、自然とそうした能力や感覚が身に付き、AIではなく人間が主体となって希望を持ち、ひとりひとりが快適に活躍できる社会になるでしょう。

知育ドローンAirblock(エアブロック)の詳しい情報はこちらから。



<提供:ソフトバンク コマース&サービス株式会社>

《加藤紀子》

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