イマドキの体育、どのようなことを学ぶの?
小学1年生は、次の6つの領域を学びます。
(1)体つくり運動(体ほぐしの運動遊び・多様な動きを高める運動遊び)
(2)器械・器具を使っての運動遊び
(3)走・跳の運動遊び
(4)水遊び
(5)ゲーム
(6)表現リズム遊び
(2)器械・器具を使っての運動遊び
(3)走・跳の運動遊び
(4)水遊び
(5)ゲーム
(6)表現リズム遊び
今回は、仲間づくりの一環として、年度初めの授業にも取り入れられることがある「(1)体つくり運動(体ほぐしの運動遊び・多様な動きを高める運動遊び)」の具体例を紹介します。
体つくり運動:体ほぐしの運動遊び
「体つくり運動」では、体をほぐす運動や、多様な動きを取り入れた運動遊びを行います。たとえば、全身を使った「じゃんけん」や、2人1組で風船を落とさないように気をつけながら行う運動などです。
全身を使ったじゃんけんではまず、全身で「グー」「チョキ」「パー」を表し、ポーズでじゃんけんをします。「グー」はしゃがんで丸くなり、「チョキ」はウルトラマンのスペシウム光線のように腕を十字に組みます。「パー」は、体全体で「大」の字を形作ります。
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画像:体ほぐしの運動あそび(1)
その後、じゃんけんの結果にあわせ、(1)負けた人はブリッジをして、勝った人はその下をくぐる、(2)勝った人は負けた人の足を持ち、手押し車で進む、(3)負けた人は腕立て伏せの姿勢になり、勝った人はその下をくぐる、といった運動を行います。
風船を落とさないように2人1組で協力する体つくり運動では、(1)風船を落とさないように2人ではさんで歩く、(2)頭を使って風船を落とさないようにする、(3)友達と手をつないだままフープをAの子からBの子まで運ぶ、といった運動を行います。
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画像:体ほぐしの運動あそび(2)
このような「体ほぐしの運動遊び」は、直接的に運動技能を高めることを目指しているのではなく、運動を行う中で、体を動かす楽しさや心地よさを味わうことができることをねらいとしています。友達と交流することや自分の心と体の変化に気づくことが大切なのです。実際に、授業の始めに、心も体もリラックスさせる意味合いで行うことが多いです。
体つくり運動:多様な動きをつくる運動遊び
この学習では、指導者が意図して、子どもが体の基本的な動きを身に付けることをねらいとしています。子どもたちにとっては、夢中になって運動することを楽しむうちに、基本的な動きを身に付けることができるという授業になることを目指しています。場や設定、教材教具を工夫して、子どもが楽しみながら、これまで経験していない動きをどんどん挑戦しようとする姿を期待して授業を構成しています。
下の表の運動は、ボールをキャッチする運動の一例です。
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画像:ボールをキャッチする運動の一例
今回は「(1)体つくり運動(体ほぐしの運動遊び・多様な動きを高める運動遊び)」のみを紹介しましたが、1年生の体育ではどの領域であっても運動をとおして「きまりを守り、友達と一緒に仲良く運動することを学ぶ」「体を動かすことが楽しい、もっと体を動かしたいと感じる心を育む」「これまであまり経験のなかった動きを経験する」ということをねらいとしています。
体育が苦手な子どもへの配慮
体育が苦手な子どもに対して、私たち指導者が配慮しないといけないことは、「子どもが運動すること自体を嫌いにさせない」ということです。このことは、運動が得意な子に対しても同じことが言えます。
先生は、常に学習中に子どもの動きに変化や成長が見られたら「褒めて・認めて・励ます」ことを意識しなくてはなりません。そのためには、いきなり難しい運動に挑戦させるのではなく、やさしい運動から段階的にスモールステップで運動に取り組ませることが大切です。
1、まずは励ます
たとえば、跳び箱運動の時間になかなかうまく跳ぶことができない子どもがいたとします。先生は、たとえ失敗しても頑張って続けて練習している姿を認めて、励ます指導を心がけるようにします。具体的な言葉の例は次のとおりです。
「さっきよりも手を付く位置が前になってきて、よくなってきたね」
「助走の後の踏切りの音が前より大きくなってきたね」
「跳んでいるときの目線を前にするということを意識しているのがよくわかるよ」
「何回失敗しても挑戦する〇〇さんの頑張りが、クラスのみんなによい影響を与えているね」
「助走の後の踏切りの音が前より大きくなってきたね」
「跳んでいるときの目線を前にするということを意識しているのがよくわかるよ」
「何回失敗しても挑戦する〇〇さんの頑張りが、クラスのみんなによい影響を与えているね」
運動のできる・できないには個人差があるので、どうしてもすぐにできるようにはならないときもありますが、「できない自分を、少しでもできるように努力する」「できないことができるようになったら、嬉しい」という気持ちを育むことが大切です。根本的に子どもが運動をすること自体を嫌いになってしまったら「挑戦してみよう、やってみよう」という姿勢は生まれません。子どものやる気を伸ばして、家に帰っても運動してみようとする態度を養うことがもっとも重要です。
2、励ましだけは不十分、先生の出番
もうひとつ、体育が苦手な子どもへの配慮としては、先生が「運動の特性を知っている」「運動ができるようになるコツを知っている」ことが重要です。
いくら練習しても跳び箱を跳ぶことができない子どもに、先生が励ましの声や少しの伸びを認めたり、褒めたりする声をかけたとしても、できるようになるコツを子どもがわかり、練習した結果、技ができるようならならないと、体を動かすことが楽しいと感じるはずがありません。
先生は、運動の特性を理解して、跳び箱はどのようにすれば跳ぶことができるようになるのかを具体的にアドバイスできないといけません。
算数の問題では、先生はどのようにしたらできるようになるのかについて、計算のしくみを考えたり、解くためのコツを考えたりして子どもに伝えますが、体育の場合はただ子どもに運動をやらせているだけということも往々にしてあります。算数の計算も、体育の跳び箱も「子どもができないことをできるようにする」ということが私たち教師の使命ということを忘れてはいけません。
授業で注意すること…体育の先生へアドバイス
安全や授業の進め方、運動が苦手な児童や女子児童への配慮など、先生が体育の授業で注意することは以下の3つです。
(1)子どもが安心して授業に臨むことができること、安全・安心面が保証されていること
(2)1時間の学習・運動量が十分に確保されていること
(3)友達と仲がよくなる交流のある授業、子どもが夢中になって取り組む楽しい授業にすること
(2)1時間の学習・運動量が十分に確保されていること
(3)友達と仲がよくなる交流のある授業、子どもが夢中になって取り組む楽しい授業にすること
この3つの観点が、バランスよく1時間の授業の中に成立していなくてはなりません。いくら子どもが夢中になる楽しい体育の授業をしていても、子どもがけがをしてしまっては元も子もありません。いくら運動量が十分にある授業をしていても、技能の向上や気づきが見られない授業ではいけません。いくら子どもが夢中になる楽しい授業をしていても、体育としての学びがなければ学習とは言えません。
家庭でもできる、保護者へのアドバイス
体育が苦手な児童に対する先生の配慮と同様に、保護者が注意することといえば、子どもに「運動すること自体を嫌いにさせない」ということです。運動がうまくできないときに、子どもを叱ったりしてはいけません。
たとえば、
「今日の体育の授業でも、何回やっても逆上がりができないねん」
「ぼくは運動苦手だから、2重跳びできひんわ」
と子どもが言ってきたとします。そのとき、保護者の方は子どもに何と声をかけるでしょうか。
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画像:どのように子どもを励ましていますか
「練習しないからできないんやで」
「最初からあかんわって言ってたら、いつまでたってもできひんで」
―このように言うと、子どもはますます運動に苦手意識を持つようになります。そして、運動すること自体が嫌いになってしまいます。
大切なことは、子どもの気持ちに共感し、励ますことです。そして、時間がゆるすようであれば、「今から一緒に外に行って練習しようか」と声をかけてあげてください。保護者が一緒に練習に付き合ってくれることほど、嬉しいものはありません。そして、いつか成功したその瞬間を一緒に迎えて喜びを共感してほしいと思います。
著者による記事
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平成15年 大阪教育大学卒業。大阪市学校教育研究会体育部体つくり運動領域部所属、全国小学校体育研究 連盟 事務局次長。大阪市内の2学校での教諭経験を経たのち、平成20年4月1日に大阪市堀江小学校へ着任。平成28年度からは、同小学校にて主幹教諭にあたる「首席」を務めている。小学館「三教育技術」や明治図書「楽しい体育の授業」での執筆経験を持つ。平成30年度からは一年間、小学館「三教育技術」学級経営のコーナーの監修・執筆を務める。