埼玉県立高校のいじめ重大事態、県審議会が報告書公表

 埼玉県は平成30年5月14日、平成29年に発生した県立高校のいじめ重大事態に関する調査報告書(公表版)を公開。県いじめ問題調査審議会の調査による背景となった事実、いじめの検証、課題、提言などをまとめている。公表期間は6か月間の予定。

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埼玉県教育委員会「いじめ防止に関すること」
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 埼玉県は平成30年5月14日、平成29年に発生した県立高校のいじめ重大事態に関する調査報告書(公表版)を公開。県いじめ問題調査審議会の調査による背景となった事実、いじめの検証、課題、提言などをまとめている。公表期間は6か月間の予定。

 報告書は、県立高校の2年生女子が平成29年4月に自殺した事案について、遺族からの要望も踏まえ、埼玉県いじめ問題調査審議会が調査した内容を報告したもの。委員会は、平成29年6月23日から平成30年4月11日までの間、遺族や関係教員、関係生徒などから聴き取り、資料などの確認を行い、審議した。

 報告書に記載された遺族の訴え(概要)によると、自殺した女子生徒の交際相手とその妹が、ツイッター上で女子生徒を混乱させるような嘘の書き込みをしたほか、女子生徒のツイッター裏アカウントでの書き込みの内容について、交際相手とその妹がネット上で拡散した。その内容をもとに、ツイッター上で女子生徒に対する誹謗中傷があったという。

 報告書では、背景となる事実、いじめの検証、自殺に至る過程などを、時系列に沿って記載。交際相手とその妹による一連の書き込み行為は、いじめ防止対策推進法の定義に則り、いじめにあたると判断したうえで、生徒のいじめの認識、いじめに対する学校の初期対応、安易なSNSのパスワード交換など、さまざまな観点から分析した課題を記している。

 再発防止に向けた提言の中で、いわゆるネットいじめは、スマートフォンなどのツールを介して容易に行うことができるのみならず、記載・掲載したものが残るため、結果として被害者が負うダメージも通常のいじめによるものとはレベルが異なる場合があると指摘。ネットの特性を生徒がしっかりと理解するような取組みが求められるという。教職員による指導とともに、生徒や生徒会などが主体となっていじめの啓発を行うなど、生徒自身がいじめについて考える機会を設けることが大切だという考えを示した。

 情報モラル教育に関しては、学校における取組みだけでなく、家庭の役割についても言及。保護者が子どもにスマートフォンなどを買い与え、家庭生活の中でインターネットを使わせることは保護者の責任であると記した。保護者は責任を持って、子どもに使用上のマナーやインターネットの危険性を教え、家庭におけるルールを作り、守らせる必要があるとの意見を述べている。また、学校は保護者に対してさまざまな啓発を行い、学校と保護者が一緒になって生徒を指導するという姿勢を示すことが大切だとした。

 県教育委員会には、各学校を指導するとともに、ネット上でのさまざまなトラブル事例について情報提供することを提案。また、自殺予防に関しては、県教育委員会がどのような取組みが有効か、国や他都道府県の対応も参考にしながら検討していくよう求めた。

 報告書は、埼玉県教育委員会Webサイトの「いじめ防止に関すること」にて公開されている。

《黄金崎綾乃》

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