「待ったなし」のプログラミング教育、WDLCが新提案…MakeCode×micro:bit

 Windows Digital Lifestyle Consortium(ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム、WDLC)は2018年6月13日、「MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」始動を発表。テストケースでの効果や、今後のねらいを聞いた。

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「MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」発表会 登壇者
「MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」発表会 登壇者 全 5 枚 拡大写真
 2020年度の小学校プログラミング教育必修化まで残り2年をきっているいま、教育現場での対応準備が急がれている。

 「どのような授業を行えばよいのだろう」―。これが多くの教育者の本音ではないだろうか。そして、保護者は、「どのような能力を身に付けさせておけば、わが子は遅れをとらないのだろうか」という点が気になるところだろう。

 こうした状況のなか、Windows Digital Lifestyle Consortium(ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム、WDLC)は2018年6月13日、プログラミング教育にいち早く取り組む100校に「micro:bit」を寄贈するプロジェクトが発表された。「MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」である。

MakeCode×micro:bit 100プロジェクト、6/20受付開始



 今回のプロジェクトを開始したWDLCは、情報機器や情報サービスなど業界を超えた連携によって、新たなデジタルライフスタイルの提案を目指す業界団体。2007年11月に設立された。2018年3月1日現在、日本マイクロソフト、NECパーソナルコンピュータ、東芝クライアントソリューション、富士通など114社もの会員を有している。

 MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」とは、プログラミング教育をいち早く取り入れたい小学校100校を対象に、イギリスのBBCが教育用に開発したマイコンボード「micro:bit(マイクロビット)」を各校20個、無償で提供するプロジェクトである。同時に、プログラミング授業案やサンプルプログラムも提供される。授業案には、マイクロソフトが提供するブロック型プログラミング環境「MakeCode」でプログラミングして、「micro:bit」を動作させるという、実践的な内容がまとめられている。指導案に従えば、プログラミング経験のない教師でもすぐにmicro:bitを活用したプログラミング授業を試すことができるという。

「MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」の仕組み
画像:プロジェクトのしくみ

 配布された学校の授業レポートやサンプルコードはWDLCが事例としてまとめ、ほかの学校へのケーススタディや授業キットとして活用する。プロジェクトへの申込みは、2018年6月20日から公式サイトで受付を開始する予定。締切は7月6日。対象校には、7月20日に納品する予定だ。夏休みを利用して、教師が動作テストなどができるスケジュールである。

児童から歓声、千葉大学教育学部附属小の例



 プロジェクト実施に先駆け、千葉大学教育学部附属小学校では6月1日、小学4年生「理科」の授業において、「MakeCode」と「micro:bit」によるプログラミング授業を行った。6月13日の発表会では、その際のテスト授業のようすが紹介された。「まわりが暗くなったら、micro:bitのLEDライトがおばけの形に点灯する」という、“おばけライト”を作成する授業だ。

 授業風景動画に映る子どもたちは、パソコン画面を見つめて必死にプログラミングをしていた。最後におばけが点灯したときには、児童から歓声があがった。「MakeCode」で試行錯誤をしながら作ったプログラムで、思い通りに「micro:bit」が動作する―。児童らは、ゲーム感覚で楽しみながらプログラミングを学んでいた。


動画:YouTube【WDLC Presents】プログラミング教育授業案@千葉大学教育学部附属小学校


 授業映像視聴のあと、WDLC事務局員の春日井良隆(かすがい よしたか)氏が同じプログラムを作ってみせてくれた。

 学習環境にあたる「MakeCode」の特徴は、画面上のブロックをドラッグすることでプログラミングできる、ビジュアルプログラミング機能にある。ブロックは、直感的に何ができるかがわかりやすいものが並んでいる。

 春日井氏は当日、「もし自分が小学4年生だったら」という想定でプログラミングをスタート。用意されている「入力」「LED」などから、おばけライトを実現できそうなブロックを探して試行錯誤を繰り返す。LEDを点灯させるなら「LED」を使うのだろう、もし暗くなったら、という条件があるから「論理」かな…というように、想像力を駆使しながら作業を進めていく。実現する方法は複数あり、これが正解というのはない。

 千葉大学教育学部附属小学校でのテスト授業後、子どもたちからは「自発的で新しい発想が生まれた」「どんな理屈で考えればよいのか、論理的な思考が育まれた」などのフィードバックがあったとのこと。「北を向いたら光るライトを作りたい」「暗くなったら音が出るライトを作りたい」など、オリジナルの計画を考える生徒もいたという。

 なお、同校児童が「電気の働き」についてについて学ぶときは、モーターを用いている。たとえば、乾電池でモーターを回してみて、その応用として乾電池で走る車を作る授業だ。今回のテスト授業では、走る車を作ったあとで、電気をコントロールして「おばけライト」を作る授業を行った。従来の教材だけでなく、micro:bitを用いたプログラミング授業を行うことで、現代の生活に欠かせない「電気」のほとんどは、コンピュータで制御されている、という点を体験できるのだ。

そもそも「MakeCode」「micro:bit」とは?



 「micro:bit」は頭脳ともいえるCPUをもち、光センサー、温度センサー、加速度センサーといった各種センサー、25個のLEDライト、2つのボタンなどを備えている。Bluetoothの送受信無線アンテナがあるので、「micro:bit」どうしでの通信も可能。そのほか、外部接続用コネクタも用意されており、スピーカーをつけて音を出したり、湿度センサーを追加したりといった拡張にも対応できる。

 この「micro:bit」でプログラミングをする学習環境が、マイクロソフトが提供しているMakeCodeである。「micro:bit」とPCをmicroUSBケーブルで接続すれば、「MakeCode」で作成したプログラムを「micro:bit」にインプット(ダウンロード)をして動作させることが可能だ。

 「MakeCode」の利用は無料。「micro:bit」Webサイト内からアクセスできるほか、マイクロソフトWebサイト内「教育(教育機関向けのMicrosoft製品、学生向けOffice)」から「MakeCode」のページで移動できる(編集部注:遷移先は英語だが、サービス内では日本語で表示される)。

 春日井氏は、指導者には「基本」「入力」「音楽」などのボタンをクリックして、どのようなブロックが用意されているかを最初に確認し、何ができるのかを試してみてほしいと語る。そして次に、「ボタンAが押されたら、アイコンをハートマークに表示」といった簡単なプログラミングを作成して、教える側も実際にプログラミングを体験してほしいと述べている。

 なお、「MakeCode」はオープンソースなので、パッケージを追加すれば、ほかの利用者が作ったプログラミングも利用できる。また、今回は「MakeCode」はブロックを用いたビジュアルプログラミング機能を中心に説明したが、JavaScriptによるテキストコーディングも行える点を明記しておきたい。小学生はもちろん、中高生や大学生、社会人の利用にも適した環境だ。

未来の学びコンソーシアムと連携



 「MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」で重要なのは、学校と学校、指導者と指導者といったつながり。WDLCは教育現場とのつながりを強化するため文部科学省、総務省、経済産業省を中心としたICT教育推進機構の「未来の学びコンソーシアム」と連携していくとしている。

 発表会の最後には、文部科学省大臣官房審議官の白間竜一郎 (しらま りゅういちろう)氏が登壇。同氏は、2018年3月30日に公開した「プログラミング教育の手引き」を作成、配布した意図について述べた。

 次に、総務省情報流通行政局 情報流通振興課情報活用支援室長の田村卓也氏が登壇。総務省では、子どもから高齢者までが楽しく学べる「地域ICTクラブ」を整備することで、新たな地域コミュニティを創造していきたいと語った。

 経済産業省経済産業政策局参事官の伊藤禎則(編集部注:「禎」のしめすへんは「示」)氏からは、第4次産業革命における「AI」と「人間」の構図について話があった。同氏は、現在は「AI対人間」という構図で語られがちだが、今後は「AIを利用して付加価値をあげることができる人間」と、「残念ながらそれ(AIを利用して付加価値を向上する)が難しい人間」という、「人間対人間」の構図になると説明。前者のような人間になるためには、教育が重要だと説いた。

 春日井氏、そして三省の話から、まさにプログラミング教育は「待ったなしの状況」になっていると実感した。一方で、先生にとっても生徒にとっても、想像力を発揮できる授業を生み出すチャンスだともいえるだろう。

《渡邊淳子》

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