教育費未納で208人除籍など…高校生の奨学給付金、保護者流用か

 奨学給付金を保護者に支給したにもかかわらず、学校徴収教育費の未納を理由に、除籍処分や出席停止など学業上の不利益が生じている高校生が4年間で208人にのぼることが、会計検査院が2018年10月22日に発表した調査結果より明らかになった。

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未納を理由とする生徒への学業上の不利益の状況
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 教科書費など授業料以外の教育費に充てる「奨学給付金」を保護者に支給したにもかかわらず、学校徴収教育費の未納を理由に、除籍処分や出席停止など学業上の不利益が生じている高校生が4年間で208人にのぼることが、会計検査院が2018年10月22日に発表した調査結果より明らかになった。

 文部科学省は、教育の機会均等を目的に、高校生の保護者が授業料以外の教育費に充てる「高校生等奨学給付金制度」を実施している。奨学給付金は世帯区分等ごとに定められた給付額を給付することとされている。たとえば、2017年度は非課税世帯(第1子)に対して、私立では8万4,000円、国公立では7万5,800円を給付した。

 奨学給付金の支給は、保護者に対し行うこととなっているが、保護者から奨学給付金の受給を高校に委任する旨の委任状の提出があった場合には、高校が保護者に代わり奨学給付金を受領する「代理受領」して、教科書費や教材費などの授業料以外の教育費と相殺する「代理受領による充当」を行うことができる。

 会計検査院によると、高校生等奨学給付金制度により都道府県に交付される補助金の額は、2014年度の制度開始以降、給付額が毎年度増額されるなど多額にのぼっているという。

 会計検査院は、教育費に必要な経費に確実に活用されているかに着眼し、文部科学省と19府県において制度を開始した2014年度から2017年度までに、19府県の54万4,524人に対して、奨学給付金を支給するために交付された補助金相当額計142億4,019万余円を対象に調査を実施した。

 高校生等奨学給付金制度が開始された2014年度以降、奨学給付金を支給したのに授業料以外の教育費が未納となっている保護者は、代理受領による充当制度未実施府県全体(12府県)で2017年度受給者8万6,094人中959人(未納者発生率1.11%)だった。

 授業料以外の学校徴収教育費の未納を理由に、未納額が支払われるまでの間、出席停止や仮進級となっていたり、卒業証書の授与を保留されたり、高校から除籍処分を受けたりなどして、学業上の不利益が生じている生徒は、2014年度から2017年度までの4年間で208人にのぼる。このうち、代理受領による充当制度化未実施府県において、2014年度に5県11校31人、2015年度に5県12校43人、2016年度に6県14校50人、2017年度に8府県23校69人の計193人だった。一方、制度化実施府県においては、2014年度に2県2校3人、2015年度に4県5校6人、2016年度に1県2校4人、2017年度に2県2校2人の計15人で、制度化未実施府県と比べて少なかった。

 会計検査院は、「高校生等奨学給付金制度の実施に当たり、奨学給付金が授業料以外の教育費に確実に活用されるために必要な仕組みとなっていない事態は適切ではなく、改善の要がある」と指摘。代理受領による充当を制度化するなど、補助金が授業料以外の教育費に確実に活用されるために必要な仕組みとなるための措置を講ずるよう、文部科学省に要求した。

《工藤めぐみ》

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