2018年12月に実施した「イード・アワード2018通信教育 中学生総合の部」で、ベネッセコーポレーションの「進研ゼミ中学講座」が、「受験・進学情報の充実している通信教育」部門賞を受賞した。そこで進研ゼミ高校受験総合情報センター・センター長の浅野剛氏と、中学生事業本部・中学生進路情報室室長の太田誠二郎氏に、サービスのこだわりや思い、今後の展開について聞いた。
全国の中学生・保護者へ積極的に情報を提供
--この度は「イード・アワード2018通信教育 中学生総合の部」での「受験・進学情報の充実している通信教育」部門賞の受賞、おめでとうございます。
太田氏:ありがとうございます。進研ゼミ中学講座では、Webや冊子など、さまざまなメディアを介して情報やサービスを提供していますが、2018年度からはより一層積極的な情報提供に乗り出したことで、その点も評価いただけたのではないかと考えています。2020年度からの教育・入試改革は、各ご家庭にとって「十分な情報が得られているか」というご心配とともに、さまざまな困りごとが生じる要因のひとつだと思います。そんなすべてのご家庭に向けて、幅広く、より深い情報を提供をしていきたいと考えていたタイミングでの受賞ですので、大変うれしく思っています。
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インタビューに応じるベネッセコーポレーション中学生事業本部・中学生進路情報室室長の太田誠二郎氏
--受験・進学情報の内容について、具体的に教えていただけますか。
太田氏:「入試・受験」に関する情報と、「進路・進学」に関する情報との両者の充実を図っており、サービスの軸としては、高校入試情報サイトと公立高校入試説明会、進路個別相談ダイヤルの3つになります。「高校入試情報サイト」は、入試情報をていねいに発信していきたいという考えから、2018年8月にスマホ対応も含めたリニューアルを行いました。受講中の方だけでなく、全国へリアルな情報提供を行い、保護者の方の通勤中やお昼休みなど、スキマ時間にも閲覧してもらえるようになりました。
--どんなページがよく閲覧されていますか。
太田氏:人気が高いのは「先輩体験談」のコーナーです。進研ゼミ中学講座を受講している方は全国にいますので、受験当日の様子や、実際に入学して高校へ通った印象など、先輩の立場でリアルな声を掲載するコーナーを高校別に設けています。受験生は自分のロールモデルとしても想像しやすいようです。入試の基本情報や倍率が出ているWebサイトは多いですが、高校別の先輩のリアルな情報、かつ入試当日のようすなども入手できるのは、私たちのサービスだけだと思います。そこが他社サービスとの大きな違いではないでしょうか。

「高校入試情報サイト」では学校ごとに基本情報のほか先輩の体験談が掲載されている
直接伝えたい情報をイベントの場で発信
--公立高校入試説明会は、どんな内容でしょうか。
浅野氏:オンラインでの情報提供だけではなく、直接お伝えしたい内容は「公立高校入試説明会」という場を設けて情報提供しています。近年の志望動向や倍率などはもちろん、入試制度や内申点の仕組み、また志望校の選択肢を広げるための学校・学科の特色や併願校の情報まで幅広くお伝えしています。
お伝えする内容としては、弊社独自に培ったノウハウで高度な分析を行い、付加価値をつけた進路情報です。各自治体などから出される倍率や得点などのデータももちろん一定の価値はありますが、それを羅列するだけではなく、数字をどう読み取るのかという解釈の方法、さらにいかに個人の受験戦略の構築につなげるかという点がポイントです。憧れの学校を見つけるきっかけも提供します。
--入試情報以外に、どんなお話をされますか。
浅野氏:どんなに勉強が苦手でも、基本的に勉強しなければ志望校に合格できません。なので各教科の勉強法や内申点を上げるポイント、入試得点を上げる対策についてもお伝えしています。
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インタビューに応じるベネッセコーポレーション高校受験総合情報センター・センター長の浅野剛氏
--イベントへは、お子さまだけで来る人が多いのでしょうか。
浅野氏:いいえ、多くの方が親子で来られます。この親子での参加がとても重要だと考えています。受験期は、反抗期など成長過程の難しい時期と重なります。そのため、親子間で肝心なことが話されていないことが多々あります。親子で参加することで、親と子それぞれの知りたい情報が得られ、さらに場を共有することで、同じ情報をキャッチできます。小さなコミュニケーションですが、親子の共通認識が深まるのです。
悩む保護者へ電話でアドバイス
--受講中の方限定の進路個別相談ダイヤルは、どのようなサービスでしょうか。
浅野氏:入試説明会の内容を、さらに一歩深めたものが、2011年度からスタートした電話による「進路個別相談ダイヤル」サービスです。13~20時に電話で相談を受け付ています。
受験生だけでなく、保護者を取り巻く高校受験情報も飽和し、混沌としています。学校のホームページ、次に口コミサイトで情報収集をして、結局何が正しいのかわからなくなってしまうのです。そのような背景から、自分に合う情報を整理したいという個別相談のニーズが上がっていると感じます。
--「通信教育を受講しつつ、あえて電話で相談する」という点に意外性を感じますが、反応はいかがでしょうか。
浅野氏:受験生ひとりひとり、ご家庭それぞれ考え方もちがいますし、勉強の進度や状況、理解度も悩みも違います。さらに、グローバル化や激変する経済状況などの影響で、入試制度や受験そのものが大きく様変わりし、保護者自身の受験体験をノウハウとして活用できない時代になってきています。「子どもにどう伝えれば良いでしょうか」という問い合わせもあり、子どもへの対応や助言方法からして悩んでいる保護者の方も多くいらっしゃいます。なかには、お仕事の会議の合間の15分でお電話くださるお父さまもいるほどです。顔が見えないからこそ、心置きなく相談してくださっているという実感があります。
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13~20時まで専門知識をもったスタッフが相談に応じてくれる「進路個別相談ダイヤル」
--お答えいただける範囲で構いません。たとえば、どんな相談が寄せられますか。
浅野氏:さきほどの親子のコミュニケーションに関する相談のほかにも、具体的な勉強方法のアドバイスも求められます。勉強の優先順位を教えてほしいといった質問です。どのタイミングで何を勉強するのが効率が良いのか、学校の定期テストの3週間前は何を優先すべきか、志望校の過去問対策はいつ、何の勉強をすれば良いのかなどが、その例です。
入試システムが変わっても勉強の本質は変わらない
--2019年度時点の中学1年生が受験する都立高校入試、つまり2022年度入試から、東京都では英語スピーキングテストが導入されることが決定しましたね。
太田氏:2021年度全面実施となる新学習指導要領で英語4技能が重視されることから、高校入試も英語をはじめとして影響が出てきます。その流れを踏まえ、各ご家庭でタイムリーに情報をキャッチしていくことが大切です。
進研ゼミ中学講座では、都立高校入試をはじめとして各都道府県の高校入試の英語4技能化やスピーキングテスト導入検討動向を、ご受講いただいているご家庭にきめ細かく届けるとともに、その対策のための学習サービスを提供していきます。
浅野氏:高校入試は、中学の学習範囲を定める学習指導要領の改訂からも大きく影響を受けます。とはいえ、公立高校入試は各都道府県で数千から数万人の規模でさまざまな生徒が受験するため、思考力・判断力・表現力を問う資料読解や記述の問題が増えたとしても、基本から応用・発展まで幅広い問題で構成されることには変わりないと考えられます。そういう意味では、都立難関校で実施される自校作成問題は、世の中の動きに合わせて変化も早く、記述問題をはじめとして思考力の問い方など、大学入試を意識した出題が増えてきています。
--受験にまつわる動きについて、不安を抱いている保護者の方も多いと思います。アドバイスをお願いします。
太田氏:英語4技能を脅威としている風潮があります。でも、コミュニケーションを中心とした4技能で評価するようになることで、英語を好きになるお子さまも多くいるはずです。惑わされずに、情報を取捨選択し、前向きに活用することが大切です。そのためには、お子さまとコミュニケーションをとりながら、お子さまは何が好きで得意なのか、どんな情報を提供すべきかを知ることが大事だと思います。

迷える受験生保護者へのていねいな情報提供を目指し、受講中の方には「保護者通信」を発行している
浅野氏:これまでも学習指導要領が変わるたびに、いろいろな動きがありました。入試の枠組みは時代と共に変わりますし、むしろ時代に必要なものとして変わるべきかもしれません。受験にまつわる細かい変化はあっても、勉強の本質は変わりません。
求められているのは、変化が激しいこれからの社会で活躍できる力です。自分で考える力を少しずつでもつけて、生きる力を培ってほしいですし、そのきっかけとして進研ゼミ中学講座を活用してほしいと思います。自分で考えるという習慣は、今後ますます必要となります。進研ゼミの教材を活用して自学自習で活用することは、お子さまのアドバンテージになるはずです。
大手塾のような情報量と地元塾のような温かさが強み
--今後の展開については、教えていただけますか。
太田氏:保護者の皆さまの役に立つ情報を、もっと発信したいですね。子どもの受験のために自分ができることをやってあげたい、そのためのアドバイスがほしいという方が増えていますので、保護者体験談など、親子で役立つ情報を強化したいと考えています。
浅野氏:ご受講いただいている方とのコミュニケーションの継続性を、もっと強化したいと考えています。電話相談については、2週間に1度の頻度で相談される方など、定期的・継続的に利用される方も多くいらっしゃいます。地元塾さながらに、近くで支える存在になることで、お客さまにとっての価値も高まるのではないかと思います。何かあったら手助けする「伴走者」としての存在、寄り添う立場でお子さまとともに成長する、継続性のあるサービスにしていきたいと考えています。
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高校受験総合情報センター・センター長の浅野剛氏(左)と中学生事業本部・中学生進路情報室室長の太田誠二郎氏(右)
--寄せられた保護者の方の声から、サービスのヒントも生まれそうですね。
太田氏:はい。まさに、2019年度4月号から、進研ゼミでは小学講座・中学講座・高校講座を受講中のすべての方に、通常の受講費内つまり追加受講費不要で、英語4技能の「12段階習熟度別トレーニング」サービスの提供を開始します。ひとりひとりの「今できるレベル」を診断し、12段階の「ちょうどいい」レベルから学習を開始し、学年の枠を超えて、英語4技能の力を自宅で伸ばしていける新サービスです。英語検定試験対策や入試にも対応していますので、保護者の方々からも大いにご期待をいただいています。
浅野氏:私たちは、情報提供するだけではありませんし、商品を売っているだけでもありません。いろんな情報を適切に選択して正しく理解し、わかりやすく受験生へ提供しながら、受験生ひとりひとりに合ったものお届けしたいと考えています。
--本日はありがとうございました。
「進研ゼミ中学講座」は、大手塾と地元塾それぞれの良さをバランスよく網羅しているという印象を受けた。進路個別相談ダイヤルに対応する担当スタッフは、カスタマーサービスかつ教育サービスの高度な知識が必要とされ、新人の年間研修時間は300時間にものぼるそうだ。それでも「進研ゼミ中学講座を受講しているご家庭のために」と熱意を持ち、誇りを持ちながら、長年のキャリアを積んでいるスタッフが多いと聞く。一方的に教材を提供するだけの通信教育ではないという思いが伝わるエピソードだ。
「通信教育はつい教材を溜めてしまいがち」「継続できるか心配」と、ときにネガティブな意見も聞く。しかし考えてみてほしい。自分のペースで学習ができる、家庭で子どもの学習に寄り添える、さらに最新の受験情報が整理されたWebサービスや、子どもに合った進路のアドバイスを都合の良い時間で受けられる電話サービスまでも揃っている。これ以上何を望むだろう。
蓄積したノウハウと膨大な情報量、そして会員に寄り添う心意気に、従来の通信教育の範疇を超えた、コミュニケーションの双方向性と温かみを感じた取材だった。