アクティブラーニング視点からの学習空間、NIERが報告書公表

 国立教育政策研究所は2019年4月9日、「アクティブ・ラーニングの視点に立った学習空間に関する調査研究」報告書を発表。授業改善に積極的に取り組む学校では、電子黒板やタブレットの保有台数が増えると、使用頻度も増えることなどを明らかにした。

教育ICT 先生
「アクティブ・ラーニングの視点に立った学習空間に 関する調査研究」報告書(概要)
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 国立教育政策研究所は2019年4月9日、「アクティブ・ラーニングの視点に立った学習空間に関する調査研究」報告書を発表。授業改善に積極的に取り組む学校では、電子黒板やタブレットの保有台数が増えると、使用頻度も増えることなどを明らかにした。

 新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業改善を進めることが求められている。国立教育政策研究所文教施設研究センターは、これを踏まえた各学校におけるよりよい授業実践に資するため、調査研究を実施。学校において学習空間(施設・学校用家具・施設など)がどのように活用され、どのような課題が生じているかを調査した。報告書は、質問紙調査の報告、学校訪問調査の報告、学習環境の現状や課題などに関しての報告で構成されている。

 質問紙調査は、優れた授業実践の取組みが行われている公立の小学校と中学校それぞれ68校が対象。そのうち、小学校56校、中学校58校から回答を得た。

 概要によると、学習空間の利用状況については、各教科で授業改善への取組みが進められている状況がうかがえたという。各学校で多様な学習形態の授業が行われているが、各学校の学級規模(1クラスあたりの人数)の違いや教室の広さ、普通教室型式の違いの影響は受けずに一定だった。教科による違いでは、国語は図書室・コンピューター室を、社会はコンピューター室を、生活は多目的室を使用するケースが多い。

 ICT機器の使用では、電子黒板やタブレットは、保有台数が増えると使用頻度が増える傾向が強くみられた。持ち物が収納棚に収まっている学校は、小学校24.4%、中学校44.2%と半数以下という結果だった。

 教員による学習空間の評価では、3つの指標のうち「教えやすさ」は「部屋の広さ」「聞きやすさ」よりも評価が低かった。評価に影響を与える小中学校共通の要因として、学級規模が大きかったり、グループ学習を実施したり、持ち物を収納できなかったりすると評価は低下する。間仕切壁や扉で閉じられていないオープンな部屋は、一定の広さを超えると評価が低下する傾向にある。一方、閉じられたものはそのような傾向がないため、オープンな空間の場合は特に聞きやすさ・音への配慮が必要であることを示唆しているという。

 また、学習空間の特徴や違いと評価の関係性などに関する仮説の検証を実施したところ、6つの仮説を支持する分析結果を得られたと報告している。あわせて、今後の施設計画などで留意すべき点の考察も実施された。

 たとえば、「より面積が大きい学校では、より多様な教育方法・教育形態が実践され、評価も高い」という分析結果から、今後の施設計画では「面積規模により使用する教室の多様さに違いが生じる可能性があることや、教室間の移動のしやすさを考慮した平面計画が有効」。「学習空間の活用や教員の評価で教科による違いがある」ことから、「教科により使用する教室の種類が異なることや、普通教室の『部屋の広さ』が課題となりやすい教科もあることを考慮して計画することが重要」と提言している。

 報告書の全文および概要は、国立教育政策研究所Webサイトにて公開。なお、今回行われた調査に関して、授業改善に積極的に取り組んでいる学校(多くは研究指定校)を調査対象としていること、中学校については教科教室型の運営を行っている学校の占める割合が調査対象の29%と全国的な割合(1%未満程度)とは大きく異なっていることから、調査の結果は全国の小中学校についての一般的な状況や全国平均を説明するものとはならないと記している。

《黄金崎綾乃》

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