【高校受験2020】神奈川公立高校入試は国内最難? 湘ゼミに聞く夏休みに伸びるコツ

 横浜翠嵐高校、湘南高校などの難関校の動向を中心に、2019年度の振返りと2020年度への対策、夏休みに向けたアドバイスを、湘南ゼミナールに聞いた。

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湘南ゼミナールの秋山清輝氏と渡邉豪氏
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 大学入試改革の影響は、全国の高校入試にも及んでいる。そうした中で、神奈川の公立高校入試は、全国に先駆けて変化を受け入れてきたともいえるだろう。横浜翠嵐高校、湘南高校などの難関校の動向を中心に、2019年度の振返りと2020年度への対策、夏休みに向けたアドバイスを、湘南ゼミナールの教務支援部作成グループ理系ユニット長の渡邉豪氏、同部進路情報戦略室長の秋山清輝氏に聞いた。

2019年度公立高校入試は社会と数学を中心に難化



--2019年度の公立高校入試の傾向を教えてください。

渡邉氏:全県の入試結果の平均では、3年前が5科目計で289.9点、今年度(2019年度)は263点と毎年10~15点ほど下がっています。マークシートが導入されて記述が減りましたが、傾向としては難化。特に難しかったのが「社会」と「数学」でした。

 「社会」は、今年度の全県平均が42.5点で全国でもっとも難しいといわれています。他県の過去問を見ても、生徒に役立つと思えるものは、あっても1、2問だけです。マークシートなので選択肢や問題の作り方も練られています。4択も2つの文に関して正しい・両方正しい・片方正しいものから選ぶ形式や、選択肢にさまざまな要素を入れる形式もあるので、総合的な力がないと正解が出せません。なお、今年度は、正答率が10%以下の問題は1問もなく、70%以上の問題は1問だけでした。全問題が一定レベルで難化したといえるでしょう。

 「数学」は、全県平均が50.3点でやはり難化しました。合格者の中で数%の生徒しかできない正答率10%を切る問題は100点満点中で34点分もあります。横浜翠嵐高校や湘南高校ならば、その34点から何点かを拾わないと合格は難しくなるでしょう。逆に70%以上の正答率の問題が50点分近くありましたので、中堅校以下の受験生は難しい問題は気にせず、正答率の高い問題で点数を確保することが大切です。こうした傾向では、志望校のレベルによって勉強の仕方が変わります

秋山氏:「理科」は、これまでが難しすぎたので易化しましたが、私たちはいつ難化してもおかしくないと考えています。「英語」と「国語」は、例年のパターンを少し外してくる出題があり、平均点が下がりました。初見の問題をきちんと読み解く必要があります。

--特色検査(共通問題・共通選択問題)について教えてください。

渡邉氏:特色検査の共通問題化が大きなトピックです。今年度は、横浜翠嵐高校・湘南高校・柏陽高校・厚木高校といった学力向上進学重点校と、エントリー校の一部(希望ヶ丘高校・横須賀高校・平塚江南高校)で実施されました。来年度は、上記以外のエントリー校(川和高校・光陵高校・茅ヶ崎北陵高校・小田原高校・相模原高校・多摩高校・横浜平沼高校・横浜緑ヶ丘高校・鎌倉高校・大和高校)が参画します。

秋山氏:共通問題・共通選択問題は、大問6問が作成され、各高校が大問4つを選択する形が採用されました。厳密には4つのうち、2つを共通問題(すべての学校で出題)とし、残りの2つが共通選択問題(各学校が独自に選ぶ)です。今年度の問題の組み合わせは、横浜翠嵐高校と厚木高校のAタイプ、湘南高校以下多くの学校のBタイプ、ABをバランスよく選んだ柏陽高校という3タイプに集約されました。

 横浜翠嵐高校や湘南高校を受験する生徒たちは、従来の科目横断的な要素が薄れたことで、ある程度、点数が取れる特色検査になり、特色検査の出来次第で合否が分かれる傾向が少し強くなりました。来年度は参加する高校の規模が拡大しますので、おそらく難易度が異なるさまざまな種類の問題が作成されるのではないかと考えています。

秋山清輝氏
秋山清輝氏

横浜翠嵐や湘南など難関校の人気は継続



--2019年度の人気難関校について教えてください。

秋山氏:横浜翠嵐高校や湘南高校をはじめ旧学区トップ校は、おおむね高倍率となりました。湘南の実質倍率も2017年度1.26倍、2018年度1.37倍から2019年度は1.64と戻ってきました。また昨年度は東京学芸大学附属高校が入学手続き日を都立県立の合格発表前に前倒し、合格者の入学を確定させるような仕組みにしたため、合格後の辞退や繰上げ合格が相次いだようです。横浜翠嵐や湘南と東京学芸大附属を並列に並べて比較するような受験がかなり一般的になってきた事象の一つだと思います。

 新設の横浜国際高校の国際バカロレア(IB)コースは、開設初年度の今春はそれほど高倍率にはなりませんでした。(実質倍率1.15倍)受験生にできる対策が、事前に提示された作問例だけだったことや、IB自体の理解が浸透していないことも影響したと思われます。一般の高校の勉強に加えてIBの勉強があり、英語だけでなく理系の要素も入るために、ハードな学校生活になるというイメージも、志望者の絶対数が増えなかった要因だと思います。ただ、そういう状況でも倍率が1.0を超えたのは、高校の先生方の懸命な活動の成果ではないかと思います。

--併願私立高校の動向を教えてください。

秋山氏:志願者増減の要因特定は学校の先生方でも難しいことだと思いますので、断定的なことは言えませんが、桐蔭学園高校は前年度の人気化による揺れ戻しが確実にあったと思います。周辺校にもおそらく影響があり、志願者が増えたものと思います。また、山手学院高校は、国公立大学進学実績の向上が志願者増に影響したと思われます。

 近年は授業料の支援制度も大きい要素です。柏木学園高校は実質的に授業料が一定の枠で無償化され、もともと面倒見が良いために今年度も人気でした。英理女子学院高校(旧・高木学園女子)は、グローバル教育に改革し、トップ校の併願校の位置付けを図りました。初年度のため受験生は様子見もありましたが、概ね期待どおりの実力の受験生が来てくれたようです。中央大学附属横浜高校は定員が増えて入学者も増えました。

 神奈川の受験生にとって都内私立高校も併願の対象ですが、なかでも朋優学院高等学校の進学実績は、入学時よりも学力が高まっている感があり、また学費が比較的安いこともあり、コストパフォーマンスが良い学校として近年人気が高まりました。この10年間であっという間に人気進学校になった学校のひとつです。

渡邉氏:朋優学院は、国公立進学コースや授業料免除、特待生などさまざまな用意があります。神奈川の上位校を狙う生徒も、そうした部分に魅力を感じたのだと思います。

渡邉豪氏
渡邉豪氏

夏休みは前倒し学習のチャンス



--2020年度の公立高校入試に、大きな変化はありますか。

秋山氏: 神奈川は、特色検査や面接などの大きな変化を全国に先駆けてやってきたので、特色検査実施校が増えること以外に来年度は特に大きな変化はありません。その特色検査では科目横断型の特徴が薄れてきています。それが新大学入試制度のような緩やかな科目横断に近づけるためなのか、以前のような作問はコストが高すぎるからなのかは分かりません。ただ、今後、科目横断の要素を拡大・復活させるのか、今のような5科目プラスαの形にしていくのか、それとも両方のパターンを用意するのか、来年度入試の注目点です。

渡邉氏:湘南ゼミナールでは「特色検査突破セミナー」という外部生向けの講座を実施していますが、受講生には早いうちから大学入試改革に触れられる価値もあると伝えています。神奈川は変化が早かったので、生徒にとっては追い風かもしれませんね。

--2020年度の入試に向けて夏休みにおける教科ごとの学習ポイントを教えてください。

渡邉氏:「国語」は、漢字で漢検2級レベルの読みが出題されました。対策は必要です。作文は資料の読み取りがあり、問題の条件に沿って文章を構成できるようにする訓練がやはり必要です。

 「数学」は、前述したとおり、どのレベルを目指すかによって勉強法が変わります。トップ校を目指す場合は、基礎がある前提で、その上に行く準備をする時期です。対策としては桐光学園高校や法政大学第二高校などの難関私学の問題に取り組むことが良いでしょう。

 また、神奈川は平面図形が難しいので、過去問の平面図形に取り組むのも良いと思います。学校では中1で図形的な内容は学びますが、中2では図形の要素はなく、中3の秋以降に相似や三平方を学んで、それを使った難問が入試で出題されます。特色検査突破セミナーでは、自学や通信教材でも良いので、夏はどこかで全単元を一旦終わらせてほしいと言っています。上位校を狙う場合は9月から総合的な対策をしていく必要があるので、前倒しする時間は夏しかありません。中堅校以下を狙う場合は、土台として中学1・2年生の復習をしっかりする時期だと思います。

 「英語」は、長文の単語数が増えたので速読をやる必要があります。資料や表が多い文章で実用的な英語力が問われます。夏は速読とともに語彙を増やすことに取り組んでください。

秋山氏:「社会」は、単純な一問一答的な知識だけでは解けない問題が大半です。たとえば今年度は“楽市・楽座”に関しての資料を読み解いた上での記述問題があり、どのような課題を解決するためにその政策があったのかという本質的な理解が必要でした。県教委の発表資料によるとその問題の神奈川県全受験者の正答率は22.7%でした。湘南ゼミナール生にとっても初見の問題でしたが正答率は60.6%でしたので、これは原理原則を大切にする私たちのQE授業の成果ではないかと分析しています。

 神奈川県入試では教科書の太字の重要語句だけでなく、地の文や資料など広範に出題されます。夏は中学校の既習事項である地理と歴史だけでよいので、知識や原理原則をしっかり抑えた上で、実戦的な演習までできるとよいですね。ただ、それでも入試本番で高得点をとるには、秋以降に相当な質と量の学習が必要になると思います。数学もそうですが、社会も神奈川県入試問題と似た入試過去問はほどんどないので、神奈川県進学模試、全県模試、県模試など神奈川県入試沿った模擬試験はできる限り受けておいた方がよいと思います。

神奈川の公立高校は多様化が進む



--大学入試改革に向けて公立高校での新しい取組みがありましたら教えてください。

秋山氏:大学受験でAO試や推薦入試の枠が拡大してゆくことに繋がりそうな取組みをされているなと感じる学校が増えてきました。たとえば希望ケ丘高校は昨年度SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定校になりました。チームでデータ分析を実践し、研究成果を発表するという取組みですが、マイクロソフトと提携し、WindowsタブレットとMicrosoft 365 for Educationで、チームメンバーが異なる場所で同時作業しながら研究できるのが現代的です。さらに生徒がExcelやPowerPointの自分専用アカウントをもっているので、それを卒業後も継続利用可能にし、たとえば横浜の大学に進学した場合は高校の研究データを引き継ぐことも検討しているとのことです。

 従来からずっと続けている取組みがそのまま活きそうだなと感じる学校もあります。横浜国際高校は、日本のものを外国に販売するビジネスプランを3年間磨き上げます。拝見すると、これは本当に売れるのでは?!と思えるレベルの研究発表を行っていますし、それも一部の生徒だけではなく多くの生徒がやれています。本当にそれを実現したくて海外大学に旅立つ学生もいるそうです。ほかにも光陵高校をはじめ、上位校は同様の研究発表を行っている学校が多くあります。

自己管理と学校選びがポイント



--受験を控える保護者からはどのような相談がありますか。

秋山氏:「部活を引退したのに勉強しないが、どうすればいいですか」というご相談は必ずあります。習慣は簡単には変わりませんので、湘南ゼミナールでは「デイリースケジュール」という1週間のスケジュールを自分で決めるツールを用意しています。

渡邉氏:「学校選びが難しい」というご相談は多いです。まず何を軸に決めるのか、将来何をやりたいのかを話すことが重要ですが、子どもだけで決めると、あとで意見が食い違うご家庭もあります。夏前の全公立展や、秋の学校見学の前に、話をしてほしいと思います。親子でよくコミュニケーションを取ってもらいたいです。

秋山氏:「受かった後はついていけるの?」という心配はあると思います。「ついていけるかどうかを判断するのが入試です」と明確に伝えています。中学校と比べて、高校は入学時の学力はそれほど差がありません。それよりも、その学校に自分が合うかどうか、どんな環境なのかどうかが学力の伸びにとって重要です。大学進学実績も参考材料になるでしょう。

--今後のイベントや講習の予定などを教えてください。

渡邉氏:「特色検査突破セミナー」は、外部生対象の講座です。現在は前期が実施中で夏休み前に終わります。後期は別途募集する予定です。

 特色検査突破セミナーは、進路指導や模試、特色検査対策など盛りだくさん。5科目の質問対応や進路指導面などを行いますので、フルに活用していただきたいと考えています。後期の9月・10月・11月は隔週開催、12月からはほぼ毎週、模試や面接対策などが入る予定です。

秋山氏:「社会」の難化にともなって、中3の夏期講習では「社会」の時間を2倍に増やしました。歴史の総復習をかけていきます。中学校で歴史が終わっていない方にとっては定期試験のための先取り予習と、入試対策のための総復習が1か月でできます。しかも初めての方は教材費のみで1か月丸々無料体験できます。

湘南ゼミナールの秋山清輝氏と渡邉豪氏
湘南ゼミナールの秋山清輝氏と渡邉豪氏

--ありがとうございました。

 神奈川は公立も私立も、ユニークな特色をもつ学校が多く、多様化が進んでいる印象だ。まず自分に合う学校かどうかをしっかりと検討してほしいという湘南ゼミナールの先生方の言葉からは、保護者・生徒ともに多くの示唆が得られるのではないだろうか。

 湘南ゼミナールは、記者の仕事を体験できる共同通信社との特別授業や、電通とのコラボで実現した広告の仕事を体験するワークショップなどのキャリア教育にも取り組んでいる。子どもたちの将来の選択肢を増やそうとする意欲的な活動には今後も注目したい。

2019年夏期講習 難関校受験コース


対象:小学6年生~中学3年生
日程:2019年7月22日(月)~8月24日(土)

神奈川の高校展2019 全公立展(ブース出展)


対象:中学生、その保護者
日時:6月15日(土)10:00~15:30(最終入場)
会場:パシフィコ横浜
※入場無料、入退場自由、事前申込不要

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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