人の代わりになるものといえるAIだが、そっくりそのまま人の知能をもつAIは存在しない。現在は、工場で荷物を振り分ける機械や車の自動運転など、ある分野やある作業に特化したAIがつくられている。これらのAIは何度も同じことを繰り返すことで作業を効率化するよう賢くなってきた。人間と同じように、成功と失敗を経験するうちに得た新たな気付きをもとに成長していくものと知ると、子どもたちは納得した表情だった。
今回のイベントでは子どもたちはペアを組み、それぞれにサポーターが1人ついた。用意された学習方法は「そだてる」「おしえる」「たたかう」の3つ。まずは「そだてる」モードを使用する。リバーシに組み込まれたAIを分身させ、そのAI同士を対戦させていく。白と黒の両方をAI自身がプレイすることで、勝つ方法を学ぶ。「おしえる」モードでは人とAIが対戦し、アナログな戦い方を学んでいく。
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最初のトレーニング後、AIがさらに強くなるには学習回数を積み重ねることが必要というヒントを子どもたちに与える。そこで「たたかう」モードを使ってアプリケーション内の敵キャラクターや他のペアが育てたAIと戦う機会を設けた。「このチーム強い!」という声をもとにそのチームとの対戦に挑むなど、もっと強くしようと取り組むようすが見られた。
このように機械学習を行う際、万遍なく知識を与えるためにいろいろな相手と戦ったり、リバーシでプレイする白と黒を切り替えながら戦ったりすることで勝利のパターンを増やすことがポイント。さらに、対戦を重ねるごとに自AIに必要な学習法を見極めて育てると強くなるという。

強化学習を終え、ペアごとに育てたAIによるリバーシ対戦が行われた。4リーグに分かれて総当たり戦を行うと、先ほど「強い!」と言われていたチームが負けるという結果が相次いだ。まさに他チームのAIが学習をして強い相手を攻略したからである。各リーグの1位によるトーナメント戦では、子どもたちが同時間で同等の強さを身に付けさせたため、3戦とも引き分けに終わってしまった。
学習がAIをさらに賢くすることを体験した子どもたちに向けて、「これから先、ますますAIが台頭する時代がやってくる。そのときに備え、正しい知識でAIと付き合っていけるよう、AIやプログラミングを楽しく学び、明るい未来をつくっていってほしい」との言葉でイベントは締めくくられた。
確実に近づくAIとの共生。子どもたちが理解を深めることが何よりの近道であり、より豊かなサービスの誕生、豊かな社会に貢献することだろう。