なおインタビューは、2020年度全国高等学校・中学校ゴルフ選手権大会(*)が予定されていたサンヒルズカントリークラブ(栃木県宇都宮市)で行われた。
※同大会はコロナ禍により中止
8歳でゴルフを始め、すぐにプロになると決める
--ゴルフを始めたきっかけを教えてください。
花田さん:ゴルフを始めたのは8歳で、それまではずっと体操をやっていました。小さいころは好奇心が旺盛で、いろいろなことにチャレンジするのが好きで、4歳で体操に出会って8歳まで頑張りましたが、怪我をしてしまいました。そんなとき、同じ小学校のジュニアゴルファーの先輩が学校で表彰されているのを見て、ゴルフに興味をもちました。両親に相談して、最初は近くの練習場のレッスンプロに教えてもらいましたが、始めてすぐにプロになると決めました。
--ゴルフのプロを目指すとすぐに決めたのは何か強く感じるものがあったのでしょうか。
花田さん:ゴルフは努力した分だけ上手くなるという感覚が自分にはありました。また、ゴルフが好きになれたというのもあります。体操は親に勧められて始めましたが、ゴルフは自分で興味をもって、これから続けていく、続けるならば極めたいと思いました。
--体操の経験はゴルフに役立っていますか。
花田さん:柔軟性は体操で養われたと思いますし、体幹がしっかりとしていると言っていただくこともあります。
ゴルフと学業の両立に難しさがあった小中学生時代
--小中学生時代はゴルフの活動が忙しかったと思います。振り返るといかがでしょうか。
花田さん:小学校のころは大会が少ないので、学校を休むことはそこまでありませんでしたが、放課後はゴルフの練習に必ず行っていたので、友達と遊ぶことは数えるほどしかありませんでした。そういう意味では、学校になかなか馴染めないと思ってしまうこともありました。

中学時代はゴルフの試合も増え、特にシーズン中の3月から11月までは試合が多く、クラスに馴染めてないなと感じることもありました。また練習も毎日あって、学校が終わると母が迎えに来て、毎日2~3時間ほど練習をしていました。練習を終えて帰宅したら宿題、といったスケジュールの詰まった毎日でしたが、学校のテストでは良い点を取りたいというプライドみたいなものがあって(笑)、テスト勉強も頑張りました。
ゴルフを一番に考えてルネサンス高校を選ぶ
--高校の志望校選びはいつ頃始めましたか。
花田さん:中学2年生の秋ごろから考え始めました。まずゴルフを中心にできるかどうかで志望校を選びました。その中でゴルフ部のある全日制高校も始めは候補にありましたが、ルネサンス高校ならば、ゴルフも勉強も自分のペースで調整できるので良いと思いました。
--どなたかのご紹介などはありましたか。
花田さん:紹介はありませんでしたが、プロゴルファーの畑岡奈紗さんがルネサンス高校を卒業されていることを知って、こんなに強い人が卒業されている、自分もそこで強くなりたいと思いました。
--ご両親は学校選びにどのように関わっていましたか。
花田さん:基本的には私の意見を尊重してくれるので、私が興味をもったこと、やってみたいことに対しては、いつも肯定的に考えてもらえます。ゴルフや通信制高校に行くことにも賛成してくれました。ただ、普段の生活では、時間の使いかたや基本的な礼儀作法、人間性など、きちんとした人になってほしいと、かなりのアドバイスをもらっています。
個を大切にするルネサンス高校ゴルフ部
--ルネサンス高校のゴルフ部では、どのようなサポートがあるのか教えてください。
高木先生:大きく分けて通信制高校の学習面とゴルフ部の2つのサポートがあります。高校卒業の要件に関わる学習やレポート、スクーリングなどにおけるアドバイス、そこにゴルフ部の試合と合宿があります。合宿は、年に春と秋1回ずつの計2回、それぞれを顧問の私と担当の職員が引率しています。
日本高校ゴルフ連盟の試合に関しては、試合会場の最寄りの駅に集合して、そこからは我々の車で送迎をしたりしてサポートしています。連盟の試合は原則としてすべてエントリーすることになっています。
--花田さんは、普段のゴルフ練習場所をどう確保されていますか。
花田さん:このサンヒルズ カントリークラブのショートコースや、自宅近くの練習場でさせてもらったりしています。あとは関東ゴルフ連盟の強化選手になっていますので、そのおかげで関東ゴルフ連盟に加盟しているゴルフ場で練習させていただくこともあります。
--普段の練習は生徒が自分でスケジュール管理をして、日本高校ゴルフ連盟の試合にはゴルフ部として参加し、高木先生たちがサポートしているわけですね。
高木先生:プロの試合もさまざまですし、各自でターゲットにするものも違いますので、ルネサンス高校のゴルフ部では、すべての生徒を一律に管理することは現実的ではないと考えています。

全日制の学校のゴルフ部では、集団で練習して、ひとりずつチェックして、ここはこうしたほうが良いとしていくスタイルもありますが、そうしたやり方に全員が合うかというと、必ずしもそうではありません。上手くなる子ももちろんいますが、崩れていく子もいます。
クラブやボールひとつとってもひとりひとりのフィーリングは異なりますし、とても繊細なスポーツですので、我々としては個々に合った方法にしています。
--ゴルフ部の合宿とはどのような内容なのでしょうか。
高木先生:試合会場付近に宿泊して、その試合に向けた練習ラウンドをかねて合宿をやっています。練習ラウンドでは男女をまぜるときもありますし、分ける場合もあります。チーム内の交流を図る目的もありますが、試合を想定してラウンドするようになどアドバイスをしています。生徒同士でアドバイスをしている姿を見るととても嬉しいです。
--ルネサンス高校のゴルフ部は、プロゴルファーを目指す生徒ばかりなのでしょうか。
高木先生:ルネサンス高校のゴルフ部は現在16名いますが、最近プロを目指し始めたばかりという生徒もいます。以前は小学校時代からずっとゴルフをやってきましたという生徒が9割以上でしたが、中学校からゴルフを始めた、試合出場経験がないという層も徐々に増えてきていますので、裾野が広がっているという感じはあります。
友だち関係もゴルフも充実の1年
--ルネサンス高校に入学して、1年間どのように過ごしてきましたか。
花田さん:昨年はゴルフのシーズンが通常どおりありましたので、春から半年程度はゴルフに専念して過ごしました。秋から冬にかけては試合も少なくなりますので、学校のレポートなど学業をしっかり進めて、スクーリングにも参加しました。
高木先生:昨年はアメリカにも行ったよね。
花田さん:昨年の7月にアメリカで開催された「IMGA世界ジュニアゴルフ選手権」に出場しました。国内で選抜されて日本代表として中1から高1まで毎年出場してきました。中学3年生のときには2位になったので、昨年はシードをいただいて出場しました。

またプロの試合「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」に、初めて出させていただきました。プロの試合は毎週月曜日にマンデートーナメントといって、シードをもっていない選手たちの選考会がありますが、そこで予選を通過しました。
高木先生:マンデートーナメントにはシードをもっていないプロやアマチュアも参加しますが、その中で予選を通過するのはとても難しいことなんです。
--プロの試合に出場したときに、これまでと気持ちの変化はありましたか。
花田さん:やはりギャラリーがいらっしゃるので、知らない人からカメラで撮られるというのはドキドキしました。初日は思ったより普通にできて、意外と大丈夫でしたが、2日目は、人気のある藤田光里プロとまわらせていただいて、初日よりもギャラリーが多くて驚きました。いろいろな経験ができた濃い1年になりました。
--ルネサンス高校での文化祭やスクーリング、ゴルフ部などで新しいお友達はできましたか。
花田さん:できました! 入学したときは、友だちはできないだろうと思っていましたが、同じゴルフ部に同級生の女子がいて、あまり会う機会はありませんが仲良くなれました。スクーリングでも初めて会った子たちとも仲良くなって、連絡を取り合ったりするようになりました。
--ゴルフ部のお友だちとの話の中心は、やはりゴルフでしょうか。
花田さん:何を話しているのかと言われると難しいですけど、普通に女子高生らしい話をしていると思いますね。今度、どこどこに行きたいねとか(笑)。

--ゴルフと学業の両立についてはいかがでしょうか。
花田さん:中学時代は学校を休むことが多く、自習で補うのに難しさを感じることもありましたが、今は自分のペースで動画を見て、レポートを進められるので、中学のときのように置いていかれる気持ちにはなりません。ゴルフと勉強、どちらもなるべく集中して、時間を効率的に使うことを意識しています。
やはり毎日の時間を自分で決められるので、ルネサンス高校に入って良かったなあと思っています。勉強やゴルフはもちろん、たまには休んだり、遊びに行ったり、自分にあったペースで決められてストレスなく生活できています。
プロゴルファーとして世界へ
--女子ゴルフは黄金世代・プラチナ世代、そして次は花田さんの世代の活躍に大きな期待が寄せられています。今後の目標や将来の夢などを教えてください。
花田さん:もっとも近いところの目標はプロテスト合格ですが、その先は日本のツアーでシードを毎年取って、何勝かできたら米ツアーに挑戦したいです。米ツアーでは飛距離も必要なので、まずは日本で頑張りたいです。
今、教えていただいているのは、男子のツアーで7勝されている今野康晴さんです。最近は飛距離をのばす意味でも、近くのジムで筋力トレーニングをやっています。また体力作りでランニングもやっています。
--目標としている選手はどなたかいらっしゃいますか。
花田さん:プロゴルファーの申ジエさんです。安定して強く、勝負どころにも強い。予選落ちもなかなかしないし、賞金ランクもずっと上位にいらっしゃいます。いつも強くいられることを、とても尊敬していて、そんなプロになりたいと思っています。
三菱電機レディスゴルフトーナメントのときに、練習されているところを間近で見ることができました。自分が練習を終わろうと思っているときに、まだ練習していらっしゃって、実績があって強いのに努力を怠らない。やっぱりそういうところがすごいなって感じました。
「あきらめない」という言葉を大切にしています。私はどちらかというと、粘るのがプレースタイルですので、どんな状況でもあきらめないことを、自分の中で大切にしています。
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試合で状況が悪くなると、どうしても焦ります。冷静にならないと、しっかりとした状況判断ができないので、落ち着いて冷静にやることを意識しています。そして、良いときも悪いときも上を目指して、一打でも良くあがれるように、最後まで自分のゴルフを「あきらめない」でやることを大切にしています。
--集中力を持続するために、どのようなことを考えながらプレーしていますか。
花田さん:打つ前はすごく集中しますが、どちらかというと、それ以外はゴルフと全然違うことを考えていたりします。「レポートをやらなきゃな」とか(笑)。
高木先生:ほんとに(笑)?
花田さん:はははは(笑)試合で5時間もあると、やはり集中は続かないと思うので、自分の中で切り替えている感じです。
--ゴルフ部の顧問としてどのような気持ちで、日々、生徒を支えられているのでしょうか。
高木先生:卒業生の名前は全員覚えています。在校生はもちろん、卒業生の試合結果も気にしています。大学生にも卒業生がいますので、大学のゴルフ部での試合も気にかけています。卒業後に伸びるというのはすごく嬉しいです。
高校の3年間は人生においても重要な時期です。スポーツだけではなく学業の面でも。私の経験では、ゴルフをできる子はレポートもスケジュールを立ててやる。自分がやるべきことの優先度を付けられる子が多いですね。学業に、体力作りに、自分が今何をするべきなのかをしっかりと見極めてほしいと思います。
--受験生の保護者の方々に向けて、メッセージをお願いします。
高木先生:ルネサンスでは、次のステップのための準備期間として有効な3年間を過ごしてほしい。ゴルフ部に入ったからプロゴルファー目指さないとならないかといったら、そんなことはなく、ここで練習した成果は、たとえばゴルフメーカーなどに就職することにも役立つし、大学に進んで就職して会社の人とゴルフをするときにも役立つなど、いろいろあると思うんです。
プロゴルファーになれる確率はとても低くて、絶対になれるから頑張れとは言えません。ただそこに向かうことは精一杯応援したい。プロになれなくてもいくらでも道はあります。それぞれが今、自分がいるステージで頑張ってほしいと願っています。
-- ありがとうございました。
花田さんと高木先生のお話から感じたのは、プロゴルファーになって世界に羽ばたくという信念の強さと、それを支える周囲の温かいサポートの充実。ルネサンス高校ならば、自己実現への後押しだけでなく、友だちと出会い普通の高校生としての生活も楽しめる環境もある。花田さんとルネサンス高校ゴルフ部の将来がますます楽しみになる、そんなインタビューだった。
ルネサンス高等学校
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