【中学受験2021】入試多様化や高校募集停止の影響に注視…首都圏模試センター

 コロナ禍により例年とは異なる状況下での中学入試を控えている。志願傾向をはじめ、注目すべき学校やコース、模試の活用方法について、首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成氏に詳しく聞いた。

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 中学受験生が受ける大規模模試において、受験者数も多く幅広い層の実力を測ることができるのが首都圏模試センター主催の「合判模試」だ。コロナ禍により例年とは異なる状況下での中学入試を控えた今、志願傾向をはじめ、注目すべき学校やコース、模試の活用方法について、首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成氏に詳しく聞いた。

入試タイプの多様化進む



--近年の中学入試全般における傾向を教えてください。

 2020年度(2021年度入学者向け入試)は大学入試改革の実施初年度ですが、大学入学共通テストの記述問題や英語民間資格の導入が先送りになるなど、結果的には大きな変更はありません。ただ、今の6年生が大学受験をするのは2026年度。2024年度から第2期として新課程に基づいた試験が本格的に導入されるといわれているので、学校、保護者ともにその先を見据えた学校選びをしていると思われます。加えて、私立大学の定員数削減による大学附属校人気は引き続き顕著な傾向です。

 中学入試の方式は、年々非常に多様化しています。従来の国算社理の4科目が主流ではありますが、公立中高一貫校での出題形式に似た適性検査型や教科横断型、プレゼンテーション入試や英語入試などを含めると、首都圏にある中高一貫校約300校のうち、180校以上もの学校が新しいタイプの入試を取り入れています。

 「適性検査型」というのは、知識そのものではなく与えられた情報をもとに、その場で考えて自分なりの答えを出すような問題です。2年前、文部科学省が示した大学入学共通テストのサンプル問題が、公立中高一貫校の適性検査と酷似していると話題になりましたが、大学入試改革で求められる「知識よりも思考力や表現力」という評価軸が、中学入試においても重視されるようになっている流れがあります。

 さらに、2021年にはお茶の水女子大学附属中が現行の4科目から思考力、判断力重視の総合型への変更を発表したほか、東京大学教育学部附属中等教育学校、東京学芸大学附属国際中等教育学校(※)、千葉大学教育学部附属など、国立大学の附属校が全面的に適性検査型の入試に移行しています。国の教育機関である国立大学附属中学校が、思考力・表現力を問う入試にシフトしていることに大きな意味があると思います。

※初出時、学校名に誤りがありました。正しくは「小金井中学校」ではなく「国際中等教育学校」です。訂正し、お詫びいたします。

--私立にも適性検査型の入試が広まりつつあるとのことですが、公立中高一貫校と私立の併願者も増えているのでしょうか。

 概算ですが、公立中高一貫校と私立の併願は年々増えていて、今春入試でも受検者1万8,000人のうち、6,000人が私立を併願したと推定しています。当初は志望先を公立中高一貫校に絞っていた受験生や保護者も、似た問題形式の私立が増えていることを聞き、説明会などで私立の良さを知ったうえで併願するケースも多いですね。

首都圏模試センター 取締役・教育研究所長の北一成氏
首都圏模試センター 取締役・教育研究所長の北一成氏

公立私立とも中高一貫化に注目



 首都圏では公立の中高一貫校が次々と誕生しています。茨城県では、2022年までに公立中高一貫校が10校新設されると発表がありましたが、2019年にすでに5校が開校しており、2020年には土浦第一、水戸第一といった、東京でいうところの日比谷高校のようなトップ校が中高一貫校に。同年には勝田も中学募集を始めます。2022年には水海道第一、下妻第一が中学を開設予定です。すでに茨城では中学受験ブームが起きています

 千葉県でも、千葉県立稲毛中学校・高等学校が2022年から高校募集を段階的に減らして、やがては中等教育学校へ改変。東京では、これまで高校募集をしていた都立の併設型中高一貫校5校が来年・再来年ですべて高校募集を停止し、中等教育学校に変わります。2021年は都立富士、都立武蔵が高校募集を停止、2022年以降は都立両国、大泉の高校募集停止。白鴎はどちらかの年度と公表されています。

 私学においても、すでに募集を停止した本郷や、人気校の豊島岡女子学園でも来年度から募集の停止を行うなど、高校の募集停止が続いています。やはり高校から入ってきた子よりも、中学から入ってきた子を時間をかけて育てたいという考えの表れと考えられます。

--公立中高一貫校や人気の高い私立中高一貫校の高校募集の停止が続くということは、中学受験人口も増加していくのでしょうか。

 コロナ禍による経済的な打撃がどの程度、今後に影響するのかという見方もありますが、公立中学よりも6年間を通した成長が望める中高一貫校を選ぶ保護者が増えているのは確かです。

 たとえば英語教育をみても、公立中は週あたりの授業数は多くても4時間なのに対して私立中の平均は7時間。私立では中学3年での準2級の取得率は7割を超え、6年間きちんと勉強していれば、高校卒業までには英検2級レベルの英語は身に付けられるカリキュラムが組まれています。

 大学入試やこれからの社会で必要な言語能力の習得といった面でも、中高一貫校が選ばれているというのはありますね。STEAM教育といった理数教育も私立が先を行っている印象があります。

休校期間のオンライン対応の公私間格差も



--ICT活用においても、コロナ禍による休校期間中オンラインでの学校活動を早急に再開した私立と、遅れをとった公立の差を感じた保護者も多いと思います。

 文科省も公立校でのICT導入を急ピッチで進めようとしていますが、すぐに実用化できないというのが現状です。保護者のみなさんもリモートワークが浸透する中で、これからの教育にはネットワークの活用やオンライン化が必須であるということを痛感しているのではないでしょうか。

 近ごろの子どもは動画で学んだり情報を得たりするのは当たり前。わからないところをネットで調べるなど、使い方は大人よりも進んでいます。教室ではあまり発言をしない生徒が、チャットで自分の考えを発表したり。今後は、そういったオンラインのメリットと学校に集まってみんなで行うことの良さ、その両方の価値を工夫してハイブリッドに展開する方向へ踏み出す私学も多いと思います。

 さらにICT活用が進めば、同じ進度で一斉に進む授業よりも、個別最適化してその子に合った進度と内容が学べる教育がより進んでいくでしょう。皮肉ではありますが、コロナ禍が日本の教育や大学入試改革を加速させたといえるかもしれません。

--3月以降、学校説明会や見学会、相談会といった行事が軒並み中止になりましたが、どのような影響が出ているのでしょう。

 聖光学院のように、来年(2021年)3月までは説明会などはすべてオンライン実施という学校もあります。大勢を一度に集められない状況のなかで、説明会の日程を増やしたり、人数を限定して毎日学校見学ができるようにしたりといった工夫をどの私立中もしています。

 各学校、3月からオンライン授業やホームルームなどを試行錯誤しながらやってきて、徐々にICT活用のクオリティが上がり、情報発信が盛んになってきた感もあります。保護者からは、対面よりもオンラインでの進学相談のほうが、先生との距離が近くじっくり相談できるという声も挙がっているそうです。

オンライン入試は今後の課題



--「withコロナ」のなかで行われる今年の中学入試ですが、オンライン入試の導入や、グループワークの自粛など、試験内容への影響はありますか。

 かえつ有明、湘南白百合、山脇学園、聖徳学園、文化学園大学杉並、目白研心など、帰国生入試についてはオンライン入試を実施予定です。一般入試のオンライン実施に関しては、東京私立中学高等学校協会が、公平性の面などからオンライン入試の実施自粛申し合わせを公表したことによって、実施予定を公表していた都内の私立中では、来年度は見合わせになりました。

 ただし東京以外の学校の、千葉の昭和学院や神奈川の北鎌倉女子学園では一部オンラインでの入試を実施します。

 個人的な意見ですが、東大の大学院の試験や慶應大のAO入試(総合型入試)がオンラインで行われることが公表されたり、就職活動でもオンライン面接などが取り入れられる今、中学受験においてもオンライン入試の可能性を探る必要はおおいにあると考えています。

 休校による学習の遅れへの対応としては、日本大学第二、立教女学院、東京学芸大学附属小金井などで出題範囲の縮小が発表されています。また、神奈川県立中高一貫校のようにグループワークの中止などを発表した学校もあります。開成、麻布、桜陰では合格発表がWeb化になりました。今年度に関しては、試験当日の塾の激励も慎重にならざるを得ないでしょう。

--注目されている新設校や改革校があればお聞かせください。

 保護者からの質問が一番多いのが、広尾学園の姉妹校となる広尾学園小石川です。現在の村田女子高校が共学化して中学募集を再開する形で誕生しますが、「1~5組が広尾、6~9組が小石川にある」ような、広尾学園と同等・同質の教育を行うと明言するほど、広尾学園と同じスタイル・同じ方針であると公表しています。6月中旬に行われたオンライン説明会では1,600名近くが参加するという人気ぶりで、予想以上に難しくなる可能性があるとみています。

 大学のある豊洲の一等地に移転し、高大連携の理系教育に力を注ぎ、4年前に高校を共学化したことに続いて、来年から中学も共学化する芝浦工業大学附属も注目です。女性の研究者を育てたいという理念のもと、中学でも女子募集を開始します。共学化すると男子の定員が減るので必然的に入試のレベルも上がることが予想されます。また、入試スタイルも刷新され、国、算において問題を聞いて解くリスニング形式の「聴解問題」を採用。試験科目に論理的な言葉の使い方を重視する「言語技術」を選択で加えたことも話題を集めています。

 愛知県の海陽中等教育学校でも「人の話を聞いて理解し、自分の考えを表せるコミュニケーションを計る入試」として、国社理の内容を含む動画を用いた視聴型の入試が導入されます。

 こういった先鋭的なスタイルの入試は、一般的な塾のカリキュラムでは対策しづらいため敬遠されがちな傾向があります。それでも実施に踏み切ったのは、この先の大学入試や教育の変化に対応していきたいという学校からのメッセージと捉えられるでしょう。

 公立一貫校での注目校は、来年4月に中学を開校する埼玉の川口市立高等学校附属中学校です。川口総合高等学校・川口高等学校・県陽高等学校の3校を統合した高校のため、一般的な高校3校分の予算が投じられている学校です。校舎はなんと総工費200億円ともいわれています。恵まれた校舎はもちろん、海外の刑事ドラマに出てくるような近未来的なモニターが設置されるなど、教育環境的にも人気が出るのは間違いないでしょう。

--注目のコースはありますか。

 世田谷学園が「本科」と「理数」の2コース制になります。入試日、回数は変えず各回の定員を割り振り「理数」コース受験者は理科と算数の配点を高める形を予定しています。

 昭和女子大昭和では、従来中学3年からだったスーパーサイエンスコースの1年次からの募集がスタート。聖学院では2020年より完全中高一貫体制から高校募集を開始したのに続き、2021年より高校に「Global Innovation Class」を新設。英語だけではない、理数分野での先鋭的な学びを提供します。埼玉の開智中高一貫部では、「先端IT」「先端MD」「先端GB」「先端FD」の4コース編成の導入が決まっています。

 この先も続々と新設コースなど発表することが予想されます。従来、中学受験で人気のコースといえば特進コースや東大選抜クラスといった、進学先を意識したコース選択が主でしたが、近年は学び方自体に特色をもつコースが人気なのが大きな流れです。

模試で入試問題との相性を知る



--模試の活用法について教えてください。

 首都圏模試センターの実施する「合判模試」では、今年は10月まで自宅受験か塾内受験の形となり、私立中会場での受験ができませんでした。大勢のなかで緊張感をもってテストを受ける経験や、机に向って集中する機会が減ってしまったという不安はあると思いますが、10月・11月・12月の模試では1万人規模の模試も私立中会場で行われているので、ぜひ活用してほしいところです。

 模試の問題はすべて共通ですが、実際に受ける学校によって入試も評価軸も違います。さまざまなタイプの入試・評価軸に対応できるように、首都模試の成績表には「思考コード」という評価軸が示されています。知識を問われる問題、記述式で自分の考えを問われる問題など、自分はどれが得意でどれが苦手か模試を振り返って把握したうえで、強みを伸ばしていってほしいですね。

 偏差値や合格可能性は有効な指標ではありますが、入試問題と向き合ったときに力が発揮できればいいのです。本来、模試というのは本番の入試に生かすことが目的で行うものです。偏差値が上がったり下がったりすることで一喜一憂したり、志望校を変えたりするのは本末転倒です。

 たとえば記述問題が多い学校では、記述の少ない模試の結果はあまり参考になりませんよね。思考コードを参考にして、志望校の入試問題と自分の学力特性のマッチングを意識することで、偏差値は乗り越えることができるはずです。

コロナ禍を乗り越え強くなってほしい



--これから受験日までラストスパートをかける小学6年生、保護者へのアドバイスを頂きたく思います。

 今年は、受験生も保護者も受験準備をするどころではなかった期間がありました。学校や塾が再開してからも、神経を尖らせることや気を遣うことも多かったはずです。保護者の方は、ストレスを溜め過ぎないように、これからの3か月間はちょっと楽観的になって、受験勉強の遅れを心配するよりもむしろ健康面と気持ちの面をサポートしてあげてほしいと思います。

 学校や塾の休校、夏期講習の日程が短かったりと例年よりも演習量が足りないと心配される方もいます。でも10月頃の時期には過去問を解いても3割~半分しかできないのは当たり前なのです。12月から入試の直前までに合格点が取れればいいと思って焦らないでください。子どもは入試が近づけば近づくほど、入試期間に入ってからも伸びていきます。我が子が本番まで伸び続けることを信じて見守ってほしいと思います。

 そして、仮にこの先コロナの状況が悪化して第2波、3波がきたとしても落ち着くこと。学校側も、自分のところを選んで願書を出してくれた受験生が、受験できるような措置を必ずとってくれるはずです。

 よくお話させていただくのですが、1995年の阪神淡路大震災のときも兵庫県の入試が1か月延期になりました。試験前日まで校舎が自衛隊の駐屯地として使われていたり、避難所からリヤカーで試験会場にやってきた受験生とご家族もいました。学校も受験生も大変な思いをしながらも入試は行われました。来年2021年入試の中学受験生も、コロナ禍中の入試という経験や困難を乗り越え、精神的に強くなってほしいと願っています。

--ありがとうございました。

 長きに渡り中学受験の変遷を見てきた北氏曰く、“私立中の受験生数が増えた要因には、3つの山がある”という。1つめは、大学進学における中高一貫教育の優位性。2つめはゆとり教育が危惧された時代の私立中高一貫校の学習量と授業時間数の優位性。そして3つめの山を迎えた現在は、“学び方の多様性をめざす”学校が増え、そこに期待する保護者が増えているという。「入試内容は、どんな子に来てほしいかという学校からのメッセージ」、その言葉を心に据えて、自分が選んだ志望校に向かっていってほしい。

《吉野清美》

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