高校では手遅れ?「答えのない問いに挑む姿勢」を身に付けるタイミング

 探求型のオルタナティブ教育を展開するインフィニティ国際学院が、2022年春に初等部・中等部を開学することを発表した。小学校から高校まで一貫した世界的視野での教育を目指す、インフィニティ国際学院の学院長・大谷真樹氏に話を伺った。

教育・受験 小学生
インフィニティ国際学院
インフィニティ国際学院 全 4 枚 拡大写真
 いつでもどこでも学べる時代。2020年のコロナショック以降、オンラインでの学びが加速し、その時代観は名実を伴ってきている。

 2019年に開学したインフィニティ国際学院は「旅をしながら学ぶ」をコンセプトに、国内外での研修を中心に探求型のオルタナティブ教育を展開する先進的な教育機関である。入学の対象は中学校卒業以降の高校生世代。

 そのインフィニティ国際学院が、2022年春に初等部・中等部を開学することを発表した。またそれに向けて、幼児教育を国内外25か所で展開するキンダーキッズと、ICTを活用して在宅学習を支援するクラスジャパン学園との業務提携も発表した。児童から高校生まで一貫した世界的視野での教育を目指す、インフィニティ国際学院の学院長・大谷真樹氏に話を伺った。

自ら学ぶ主体性を土台に羽ばたく子供たち



--「旅をしながら学ぶ」をコンセプトに2019年に開学されたインフィニティ国際学院は、今年の春、初めて卒業生を送り出されましたね。

 はい。2021年3月には、3年前の開学時に高校2年生の年齢で来てくれた子たちが巣立っていきました。昨年はコロナの影響もあり、当初予定していた海外研修を、北海道や八戸などでの国内の実地研修やオンライン研修にするといった変更もありましたが、それぞれ大きな学びの収穫を胸に卒業していきました。

 卒業した生徒たちの進路は、国内や海外の大学、芸能事務所などさまざまです。私たちは特定の進路のための学校というわけではないので、個人がそれぞれ自分のキャリアを3年間で考えて、自分の人生のためにどういうキャリアを選ぶか、その手段としてどこの大学行くのか、あるいは大学自体に行かないのか、自分自身で選ぶ方針です。現在の在校生の中には、卒業後そのまま起業する子も出てきそうです。

--貴校に入学を希望されるのはどのようなご家庭が多いのでしょうか。

 受験されるご家庭には、大きく2つのグループがあります。1つは、保護者に駐在や留学の経験がある、いわゆるグローバル志向の強いご家庭。もう1つは、子供の個性が強いなどの理由で、通っていた学校と折り合いがつかず、旧来の日本型教育に疑問を抱いているご家庭です。

 とはいえ、単にグローバル志向だったり、子供の個性が強いからといって、インフィニティ国際学院の校風にそのままマッチするわけではありません。特徴的な教育を行っているからこそ、学校のことをしっかり説明し、納得していただいたうえで本学を選んでほしいと思っています。そのために受験時には子供と保護者の双方に詳細な面談を行い、価値観のすり合わせを行っています。

インフィニティ国際学院卒業後の進路はさまざま。自分の人生のために主体的にキャリアを選択する

--キンダーキッズとクラスジャパン学園との業務提携により、2022年春の初等・中等部開校を発表されました。この構想に至った経緯を教えてください。

 私が教育業界に足を踏み入れて、10年以上が経ちました。大学の教員経験を経て、子供たちにこれからの社会に必要なスキルを身に付けさせるには「大学の教育改革では間に合わない」と思い立ち、このインフィニティ国際学院という高校を設立しました。一定の成果はあげられていると感じる一方で、新たな課題も見つかりました。

 本学に入学する生徒たちは、中学校卒業までずっと旧来の日本型教育、すなわち「答えを教えてもらう教育」を受けてきたわけなので、いくら受験時に本学の教育方針を説明し、教育観に納得したところで、多かれ少なかれ入学直後はカルチャーショックを受けます。

 本学は「答えを教えない」教育ですから、入学後しばらく「答えは何ですか」「どうして答えを教えてくれないの」と戸惑い、なかなか抜け出せない生徒も多いんです。その状態から生徒自身で答えを導き出す力を取り戻すまでに、少なくとも2、3か月はかかってしまう印象で、その時間がもったいないなと常々感じていました。

 探求型の学ぶ姿勢などの基礎を、高校入学以前からつくることができれば、子供たちはさらに早いスピードで伸びていくのではないかと考えるようになったのが、初等部・中等部構想のきっかけですね。

10年後の日本を変えていくリーダーを育てたい



--なるほど。旧来の教育観に染まる前に、自ら主体的に学ぶ基礎をつくってしまおうと。初等部・中等部開校に際して、キンダーキッズとの業務提携に至った理由は何でしょうか。幼児教育を展開する企業は他にも多数ある中で、キンダーキッズを選ばれた理由とは。

 未就学・就学後問わず、バイリンガル教育を掲げる学校が増えています。その中でも私がキンダーキッズに感銘を受けたのは、代表である中山貴美子さんが、教育の中で日本人としてのアイディンティティを重視されていることです。

 インフィニティ国際学院では、10年後の日本を変えていくリーダーの育成を目指しています。国内外での研修を取り入れ、英語力の習得にも力を入れていますが、日本をないがしろにして海外志向を推し進めているわけではありません。あくまでも「日本人として」世界と同じレベルで戦える人材を育てたいと思っているので、その部分でキンダーキッズと志が一致したのです。

 そもそも中山さんとの繋がりは、私が中山氏の著書『奇跡の英語保育園』(幻冬社)を読み、「こんな保育園があるのか」と感動して大阪まで訪ねたことが始まりです。当時は初等部・中等部をつくる構想はありませんでしたが、中山さんから「『せっかくキンダーキッズでバイリンガル教育を受けるのに、卒業してから旧来型の日本教育を受けさせるのがもったいない、ゼロに戻ってしまう』と話すご家庭が多い。何とかして卒園後の受け皿をつくりたい」という話を聞き、自然と構想に結び付いていきました。お互いが展開する既存の教育の隙間を埋めたいという点で、両社のニーズが合致したんです。

 キンダーキッズは全国約25か所で展開し4,000人の在園生がいます。その中から数十人でもインフィニティ初等部に入学すれば、幼児教育から高校まで、一貫した教育哲学を貫くことができますし、児童生徒にとっても小学校や中学校で都度受験をしなくて良いので、無駄な受験勉強の負担やプレッシャーもなくなります。

インフィニティ国際学院の学院長・大谷真樹氏オンライン取材に応じてくれたインフィニティ国際学院・大谷学長

義務教育と共存した「安心感のある教育」を提供



--もう1社、不登校の子供たちの支援を行うクラスジャパン学園との提携も発表されましたが、その背景を教えてください。

 クラスジャパン学園は、公教育と連携しながら、学校に通えない小・中学生の在宅学習を支援しています。令和元年の文部科学省からの通達に沿って運営されていて、オンライン上で担任と1日3回以上コミュニケーションを取り、在籍校に学習報告書を提出すると出席認定がもらえる仕組みです。

 ICT教育を推進するクラスジャパン学園のシステムを活用させてもらうことで、インフィニティ国際学園自体、1条校と連携しての運営が可能になりました。義務教育と共存した安心感のある教育を提供できる土台ができ、初等部・中等部をスタートさせるちょうど良いタイミングだと考えました。
※学校教育法第1条で定められる教育施設で、学校として認められる

 住民票のある自治体の1条校に籍を置いたうえで、このシステムを活用し、連携することで、実質的な教育は本学で受けることが可能です。出席認定が確保できるという点で、インターナショナルスクール業界としては非常に画期的なことです。今まで一定のリスクを取りながらインターナショナルスクールに通わせてきたご家庭にとって、安心感も提供できると自負しています。

--フットワーク軽く、新たな取り組みを展開されている大谷先生の教育観のルーツは、どこにあるのでしょうか。

 教育における私の理想は、明治維新で活躍した人材を多数輩出した、山口・萩の「松下村塾」にあります。そこから日本や世界に飛び立った門下生たちが、幕末や明治の日本を大きく変えていきました。

 今、日本に足りていないのは、彼らのように気概や主体性を持って動く人材だと考えています。少人数制でいいから、「松下村塾」のような学び舎をつくっていきたいですね。

 インフィニティ国際学院の開校にあたっては、ニュージーランドのThink global schoolや、アメリカのミネルバ大学といったキャンパスを持たない学校の存在はとても参考になりました。とはいえ、私自身は元々ベンチャー企業を経営していたので、特定の教育論や方法論に偏らず、先入観を持たないようにしています。「本質的に何が良いか」ということだけを軸に考えています。

脱・学年制で叶える、天井のない学び



--初等部・中等部の概要や児童生徒募集について教えてください。

 初等部は通学制で、大阪にあるキンダーキッズの天王寺夕陽丘校の校舎を活用します。中等部は奄美大島での全寮制で、廃校をリノベーションして宿舎と教室にします。中学生からの全寮制は、自律やチームワークを学べると期待しています。

 また、初等部・中等部ともに学習指導要領に基づいたオンライン教材を活用します。そうして効率化してできた時間で課外授業や、PBL(問題解決型学習)などのアクティブラーニング、選択制の中国語の授業等に充てる予定です。

 オンライン教材を使った学習は時間を決め、教室で一斉に行います。進度が速い子はどんどん進めば良いし、つまづいた子はその場ですぐに教師がサポートします。同じ内容の授業を、クラス全員で一斉に受ける「学年制」は今の時代に合っていないと思うので、初等部は低学年と高学年の2グループでの運営、中等部は完全無学年制を敷く予定です。フリースクールとインターナショナルスクールの自由度、公教育の安心感、それぞれの「いいとこ取り」をしようと思います。

インフィニティ国際学院中等部が開校する奄美大島(イメージ)インフィニティ国際学院中等部が開校する奄美大島は、2021年5月世界自然遺産への登録が決定した

--盛りだくさんな内容ですね。受験方法はどのようなものを予定していますか。

 大半はキンダーキッズに在園している子供たちが進学することになりそうです。1回目の入学説明会もすぐに満席になり、すでに来年度入学の希望者の問い合わせも多いため、選考方法を慎重に検討しています。もともとキンダーキッズの在園児は英検3級以上の英語力をもっていることもあり、スキルによる線引きというよりは家庭と学校の考え方にミスマッチがないかどうかを確認することが大事だと考えています。

 ただ、もちろん多様性も重視してさまざまな人材を受け入れたいので、人数は絞られてしまいますが、外部からの一般募集も行う予定でいます。また初等部は、近い将来、関東での開校も視野に入れています。

--来年の春の開学が楽しみです。最後に、今後のビジョンについて教えてください。

 私たちが進めているような教育は、日本ではまだまだ少数派でイノベーター的な存在ではありますが、少しずつでも旧来型の考えに風穴を開けて、お子さんのいるご家庭の選択肢を広げていきたいですね。

--期待しています。本日はありがとうございました。

 インフィニティ国際学院では、2021年度9月生を募集している。また、サマースクールの参加者も募集中だ。「旅をしながら学ぶ」教育の一端に触れることのできる機会についての情報、初等部・中等部に関する最新情報は、インフィニティ国際学院のWebサイトにてチェックしてほしい。

インフィニティ国際学院

《土取真以子》

土取真以子

関西在住の編集・ライター。教育、子育て、ライフスタイル、お出かけのジャンルを中心に、インタビュー記事やイベントレポートなどの執筆を手がける。教育への関心が強く、自身の出産後に保育士資格を取得。趣味が旅行とハイキングで、目標は親子で四国お遍路&スペイン巡礼。

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