世界に挑戦する12歳を育てる「田中学園立命館慶祥小学校」吉田校長インタビュー

 田中学園立命館慶祥小学校が2022年4月、北海道札幌市内に開校を予定している。開校のきっかけや、同校の特色、求める家庭像等について、初代校長に就任する吉田恒先生に聞いた。

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田中学園立命館慶祥小学校の初代校長に就任する吉田恒先生
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 田中学園立命館慶祥小学校が2022年4月、北海道札幌市内に開校を予定している。開校のきっかけや、同校の特色、求める家庭像等について、初代校長に就任する吉田恒先生に聞いた。

--開校のきっかけを教えてください。

 田中賢介理事長が海外生活を通じて教育の重要性、特に幼児教育と初等教育が重要だと感じながら、北海道や札幌へ貢献したいという想いがありました。さらに、幼児/初等教育に続く、継続的で豊かな学びを実現させるために「一貫教育を実現させたい」と強く思っていました。しかし、その先の中等教育以降を田中理事長一人で設立するのは難しさもありました。そこで、高い次元で建学の精神や教育理念が共感できる「立命館慶祥中学・高等学校」との提携を視野に入れていました。

 田中理事長はパーソナリティを務めているラジオ番組を通じて、立命館慶祥中学校・高等学校の当時の校長・久野信之先生を直撃インタビューしました。久野先生と「この札幌で、これまでにない一貫教育ができたらどれだけ素晴らしいことか」と互いの教育観が共鳴し、2020年9月に学校法人田中学園と学校法人立命館が連携協定を締結しました。

 田中学園立命館慶祥小学校は、立命館慶祥中学校・高等学校の特別提携校となり、我々が育てる児童は、立命館慶祥中学校へ特別推薦という形で、一定の基準を満たせば学内進学が可能です。

--田中学園立命館慶祥小学校の特色を教えてください。

 「世界に挑戦する12歳」を教育理念・目標に掲げています。一番の特長は、体育・音楽・図工・情報等の実技教科を英語で学ぶ「英語イマージョン教育」です。札幌市にはバイリンガル教育やイマージョン教育を取り入れている幼稚園等がありますが、幼少期にそのような英語教育を受けても受け皿となる小学校が多くはありませんでした。本校はそのような児童がさらに英語力を身に付けていける学校です。また、豊かな英語環境・プログラムが展開されますので、英語の経験がなくても一から英語力をしっかりとつけていくことが可能です。一方、高校3年時に大学入学共通テスト等で出題されるような教科は日本語で行います。

 国語教育も田中理事長は重要視していますので、国語プログラムも豊かです。国語教育の中の「アクト&パフォーマンス教育」では、演劇・パブリックスピーキング・プレゼンテーションに取り組み、発信力・表現力をつけるプログラムを展開します。

 また、「教科等横断型授業LINK」も児童の力を大きく引き出します。本校は「本物の体験」を重視しています。日本の教育はいわゆる「教科型・単元型」ですが、日本社会/世界社会が成長社会から成熟社会になり、価値も多様化しています。その中で児童たちが実際の社会の中で学んでいくときに、たとえば「英語」「音楽」という教科別の学びのみでは、未来社会を主体的に切り開いていく力が十分には養われません。

 本校はイマージョン教育を各教科専科教員が教え、担任の先生が集中的に国語、社会、理科、道徳等を教えます。そうすることで、教員ひとりひとりに十分な教材準備の時間も確保され、より質の高い授業の展開につながります。

--小学校設立にあたり、立命館小学校からの先生の異動やカリキュラム等の共通化について教えてください。

 教頭には立命館小学校の前校長・長谷川昭先生を据えます。立命館小学校ですでに実績の高いカリキュラムを中心に参考にしながら、本校はさらにその上を目指します。たとえば、立命館小学校ではプログラミングを学ぶ情報の授業をイマージョンで行っていますが、本校は情報に加え、体育・音楽・図工でも実施していきます。さらに、英語教育・国際教育で先進的な取組みを行う立命館慶祥中学・高等学校の外国語科教員を中心にカリキュラム作りに関わっています。小・中・高のプロフェッショナルが関わるからこそ、豊かでシームレスな一貫教育を展開することができます。

--ICT教育はどのように展開されますか?

 使用する端末については、1・2年生がタブレット、3~6年生がタブレットPCを予定しています。本校では1人1台端末を持ち、質の高いICT教育を展開していきます。立命館小学校は初等教育において唯一のMicrosoft Showcase Schoolに認定されていますが、本校も認定2校目を目指しています。認定校には、年数回の研究発表が課され、教職員のICTスキル向上と何よりも児童の学力伸張につながります。

 本校は、教育において、地域貢献や北海道への教育貢献もしていきたいと考えていますので、本校がICT教育の最先進校として情報発信、研究発信をしていきたいと考えています。また、北海道新聞社協力のもと、情報化社会の中で情報モラル・スキル等を包括的にまとめた「MNI(Masters of News &Information)教育」を実践します。児童はこの教育を通し、情報化社会で正しい情報を入手する力や複数の情報ソースを分析する力、主体的に情報を発信する力を養います。

--どのような学校行事がありますか?

 「スポーツ」「アート」「アカデミック」の3大フェスティバルがあります。特に紹介したいのは、アカデミックフェスティバルです。6年生を中心とした、「学会」のような行事です。6年間で学んだことを後輩児童や保護者、外部の方へさまざまな表現方法でプレゼンテーションします。体育の授業で学んだことを発表する児童もいれば、音楽の授業で学んだことを発表する児童もいて、ひとりひとりがこの学校で身に付けてできるようになったことや学んだことを、学びの集大成として52名の6年生が全校舎・全教室に散らばってプレゼンテーションする1日です。

 また、特徴的な行事として「○○ウィーク」もあります。ジャパン・ウィークでは、日本を知る目的で、4年生は道内、5年生は九州方面、6年生は京都方面へ行くことを計画しています。グローバル・ウィークでは、立命館大学や立命館アジア太平洋大学の国際学生、道内国立大学等に留学中の大学生や大学院生が1週間ほど各クラスに入り、一緒に毎日を過ごします。校内はさまざまな海外のデザインで装飾され、国際色溢れる1週間となる予定です。

--貴校が求める児童像、家庭像について教えてください。

 当然ではありますが、建学の精神である「学ぶを、しあわせに。」を重視しています。「学ぶことが楽しい」「チャレンジしたい」という意欲と好奇心にあふれるお子さんに入学してほしいと思っています。本校の教育理念・目標である「世界に挑戦する12歳」に向けて、児童には「Challenge(挑戦)」「Collaboration(協働)」「Contribution(貢献)」の3つのCを持ってほしいです。

 家庭像については、親子関係を重視しています。保護者が子供と一緒に何かに取り組んだり、休日は一緒に遊んでもらったりして、保護者の目がお子さんにしっかりと向いているというご家庭を求めています。良好な親子関係と本校の教育展開への理解が伺えるような入学試験の準備をしています。

--どうもありがとうございました。

 「私自身も、果敢に挑戦し、失敗しても立ち上がる姿を子どもたちに率先して見せていく」と語る吉田先生からは、数々の挑戦を通じて、学校教育や地域貢献への熱い思いが感じられた。田中学園立命館慶祥小学校の開校が北海道の学校教育に一石を投じ、北海道全体の学校教育がより充実していくことを期待したい。そして、同校で学んだ子供たちが世界に羽ばたき、地球規模の課題に挑戦していく未来の姿が目に浮かぶ。

《工藤めぐみ》

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