中学受験を楽しい思い出に…塾の常識を変えた「シグマTECH」とは

 「夕ご飯をお家で食べる中学受験」をキャッチフレーズに掲げる「シグマTECH」の1期生が初めての中学受験を終えた。13人の生徒すべてが、御三家をはじめとした難関校に合格する快挙。代表の伊藤潤氏花まるグループ代表の高濱氏がインタビューをする形で、取材を行った。

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中学受験を楽しい思い出に…塾の常識を変えた「シグマTECH」とは
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 「夕ご飯をお家で食べる中学受験」「週2回の通塾で難関校に合格する」。こんな型破りなキャッチフレーズで2019年に開校したシグマTECH。それは「夕食は塾でお弁当」「帰宅は夜9時、10時が当たり前」の中学受験の常識を変える挑戦でもあった。

 2021年の春、シグマTECHの1期生が初めての中学受験を終えた。結果を見ると、筑波大附属駒場、麻布、武蔵、駒場東邦、海城、早稲田、慶應義塾中等部などのそうそうたる学校名が並ぶ。まさに快挙と言えるだろう。

 シグマTECHは、「勉強の楽しさ」を大切にし、子供の意欲を伸ばす教育で定評のある花まる学習会、「幸せな受験」を目指すスクールFCをはじめとした、高濱正伸氏率いるこうゆう 花まるグループに属する中学受験塾だ。

 今回は、シグマTECH代表の伊藤潤氏に、花まるグループ代表の高濱氏がインタビューをする形で、シグマTECHの誕生秘話や、学びの特徴について伺った。

従来の中学受験塾では実現不可能



高濱氏:伊藤さんは、2021年5月に「オンラインを駆使した中学受験2.0」(エッセンシャル出版社)という本を出版しましたね。「中学受験を魔界にしない!」という挑戦的なサブタイトルもついていますが、この本の中でもシグマTECHが生まれた経緯が書かれています。シグマTECHの企画書を最初に見せてもらったのは、確か2017年でしたね。

伊藤氏:はい、入社4年目のころです。

高濱氏:私はすでに長い間、中学受験塾業界にいたので、「夕ご飯を家で食べられる中学受験」と聞いて、「確かにそれは理想だけど絶対無理。中学受験はそんなに甘くない」と、即座に思いました。ただ、伊藤さんの落ち着いた物腰からは想像できない、熱い情熱がひしひしと伝わってきて、この若者に賭けてみようと心が動かされました。

伊藤氏:その後、毎月企画書を出せと言われましたよね。あれがひとつの通過点だったなと思います。毎月の企画会議で一歩一歩、企画が現実味を帯びていって、最後に「これでいこう」と言っていただき、高濱さんと堅く握手をしたのを覚えています。それが2018年でしたね。

保護者からの不安の声も



伊藤氏:開講前の保護者説明会で、自分としては「すごいものができた」と自信満々でプレゼンをしたのですが、響く人と響かない人がいて。「内容な共感するけど、それで時間は足りるの?」「オンライン学習ってどうするの?」と不安の声もありました。

高濱氏:しかし、今年2月、13人の1期生が卒業したところ、その結果は目を見張るもので、週にわずか2回の通塾でこれは快挙だと思います。伊藤さんはこの世界の開拓者(パイオニア)になりましたね。ここまでやれた、伊藤さんの哲学や想いを聞かせてもらえますか。

伊藤氏:本にも書いたのですが、私自身が5人兄弟に育って、子供時代を振り返ると夕食の時間のことばかり思い出すんです。その都度、家族そろってわいわい言いながらご飯を食べた時間が自分の原点だと感じます。食事は家庭の幸せの核になるものだという想いがあります。

 しかし、ほとんどの中学受験生は、塾でお弁当を食べるか、遅い時間に帰宅して食べるほかないですよね。中学受験の講師をしてその素晴らしさとやりがいを感じていましたが、同時に家族との食事の時間を奪っていることが常に心にひっかかっていました。そういう塾を否定はしませんが、ほかの選択肢もあって良いのではと思ったのが発端です。

花まる学習会代表・高濱正伸氏花まる学習会代表・高濱正伸氏

睡眠時間を確保でき習い事もあきらめない



高濱氏:本の中で、中学受験を選択してもあきらめたくないことを3つ挙げています。1つ目は、夕ご飯を家族で食べること。2つ目が、睡眠時間をしっかりとる生活。最後に、習い事を続けること。どれも従来の中学受験の常識を破るものですよね。

伊藤氏:多くの中学受験塾では、夜の9時、10時まで授業があって、さらに大量の宿題が出るのでどうしても寝るのが遅くなりがちです。でも「成長期の睡眠不足は体の成長にも脳の成長にも良くない」ということは、科学的にも証明されています。宿題は、全員一律に同じものを出すから大量になってしまうんです。生徒ひとりひとりの理解度に合わせて、個別の宿題を出せば無駄を減らせると思いました。

 授業自体も、シグマTECHは1教科40分前後で行います。短い時間でテンポよく、子供を飽きさせない授業を行い、夜7時台には帰宅できるようにしています。

高濱氏:習い事も今までの中学受験だと継続を諦めることが多いですが、伊藤さんはどのように考えていましたか。

伊藤氏:5年生以降になると習い事と受験勉強の両立はかなり難しいです。でも、小学生の習い事、特に好きで続けたものは、その人の世界を大きく広げてくれます。グループの理念でもある魅力的な大人=モテる人を育てることにも繋がります。習い事=好きなことに打ち込んだ経験は財産です。子供たちの未来の可能性を増やすためにも習い事をあきらめさせたくない。週2回の通塾と、オンラインを駆使した家庭学習をベースにすれば、習い事との両立も可能だと考えました。

より効果的な手法を模索



高濱氏:オンライン学習が、コロナ禍で急速に広がったことも追い風になったのではないでしょうか。

伊藤氏:はい。開講前の説明会でも、オンラインの授業は「難しそう」「本当にできるか不安」という声が多く、開講後も最初は、ネットがつながらないなどの問合せが殺到しました。でも、今はコロナ禍で常識になったことで、ほとんど問題ないですね。子供たちも驚くほど速く、通塾とオンラインの授業に慣れました。

 現在、通塾とオンラインを併用したハイブリット型の授業を行っていますが、単にテクノロジーを使えば良いのではなく、常に、オンラインとリアルとどちらが適しているかを考えています。たとえば、1対1の個別指導は、リアルよりも実はオンラインのほうが向いているんです。また、書画カメラを使って、顔の表情と同時に手元のノートも見ながら指導をしているので、理解度を確かめながら授業ができます。そして塾への往復の移動時間が不要です。一方、テストなどのアウトプットはリアルな場のほうが向いています

「夜7時に帰宅」を新常識に



高濱氏:1週間のスケジュールと、通塾がないときの学習はどのように行っていますか。

伊藤氏:たとえば6年生の場合は、火曜(16時50分から19時35分)と土曜(13時30分から19時)が通塾日です。土曜日が長いのは、授業後に2時間の自学指導タイムを設け、家庭学習の仕方を個別に指導しているためです。後期はそこで過去問指導を個別に行います。また塾がない日に週1回1時間のオンラインでの1対1の個別指導があります。

 なお、自宅で宿題がなかなかできないという生徒のために、朝6時30分から7時30分と、夜8時から9時に自学室をオンライン上に開設しています。参加は自由です。画面を通して他の人も勉強している姿が見え、私たちも励ますので、勉強のモチベーションになるようです。また、わからない問題を1つ質問だけして、終わったら退室するという使い方もできます。1つだけ質問するために塾に行く、朝自学室に行くなんてことは、リアルの教室では難しく、オンライン学習の環境があるからこそ可能なことです。

高濱氏:通塾が2日だけだからこそ、通塾以外の日の過ごし方は重要ですね。学習はどのように管理するのでしょうか。

伊藤氏:宿題をサポートできるように、デジタルノートチェックを行っています。これは宿題ノートを写真に撮り、専用のアプリでアップロードしてもらい、先生が細かくチェックしてフィードバックを行う仕組みです。改善点を伝えることはもちろんですが、「ここがよくできているね」と子供の頑張りを認めることを大事にしています。

シグマTECH代表・伊藤潤氏シグマTECH代表・伊藤潤氏

受験勉強を楽しい思い出に



高濱氏:「日曜探究講座」もシグマTECHの特徴ですね。これを導入した理由が、伊藤さんらしいし「花まる」らしいと思っています。

伊藤氏:「勉強って楽しいな!」を伝えることが花まるの理念ですよね。だからこそ、中学受験も楽しく取り組んでもらいたい。日曜探究講座は、その教科を大好きな先生から習うことで、その勉強の楽しさを知る。そして遠足のようにみんなで出かけることで、絆が深まる、仲間で勉強する。そんな体験を受験勉強でもできないかと考えて導入しました。たとえば社会で歴史を学んだあと、探究学習で実際に史跡を見学に行くとか。みんなでお弁当を一緒に食べてわいわい過ごす。こういう時間があると中学受験を楽しい思い出に変えることができるし、仲間と一緒に勉強する土台づくりになります。

 探究活動は、保護者も参加できるという点でも大変好評です。移動中の他愛もない会話を通して、先生と保護者の関係を超えた人間関係ができたと感じた時、シグマTECHを始めてよかったと心から思いました。

高濱氏:まさに奇跡の塾ですね。どんなプロジェクトにもリスクはつきものだけど、途中で壁にぶつかったことはありましたか。

伊藤氏:難関校に合格させるという最後の追い込みの日々は、受験では毎年のことで、もちろん必死でしたが、壁というのは特にないですね。授業が始まってすぐに手応えを感じました。学習のボリュームが足りないのではという不安は、全教科週2回の授業デザインで解消できました。1回目の授業で基本問題を学び、通塾がない間に、宿題でしっかり演習をしてきたうえで、2回目の授業で応用問題に進むというパターンができてきて、この方法のほうが、1回の授業ですべて教えるよりも理解が深まり、定着することがわかりました。

「勉強の楽しさ」を広げたい



高濱氏:今後の展望を教えてください。

伊藤氏:まずは今目の前にいる親子の力になることです。校舎展開はサービスを落とさない形で1歩1歩できたらと考えています。

 また、今後、もし興味をもってくださるのであれば、他の塾にも良い意味でまねしていただきたいと思っています。自分のやり方が絶対だとは思っていませんが、多様な選択肢の1つとして、シグマTECHのやっていることの一部でも共感できるところがあれば、取り入れてほしいです。それで受験生や親が少しでも笑顔で取り組む受験に貢献できたら嬉しいです。

中学受験を魔界にしない! 合格×親子の幸せを叶える! オンラインを駆使した中学受験2.0

3年間、週に2日通塾、夕ご飯をお家でゆっくり食べて最難関校に合格する秘訣。オンライン・テクノロジーを駆使した最先端の中学受験学習法!「合格+親子の幸せ」で、「中学受験」を最高の機会にするための必読書。
発行:エッセンシャル出版社


高濱氏×伊藤氏の対談動画を見る

保護者の声(シグマTECHパンフレットより抜粋)



「子供は長時間塾にいなくても授業に集中して取り組むことができるようになりました。帰宅後は家族で過ごす時間もあり、塾のない日は復習や宿題の時間として使い、子供の気持ちに余裕が生まれてきたように思います。個別指導では、パソコンを通して先生と対面しながらの授業で、自分のわからないことを確認でき、自分のペースで学ぶことで理解が深まります。LINEを使った宿題チェック、学習サポートも整っており、習い事と勉強の両立もできます。経験豊富な先生が、子供の性格に合った指導をされることで、短時間で最大限の学習効果を上げられることが、シグマTECHの利点だと思います」。

「シグマTECHに通わせてよかったと思う理由は3つあります。1つは、家で夕食を食べられることです。家族一緒に暖かいご飯を食べられることは成長期の子供には大切だと思います。2つ目はオンライン授業が充実していること。子供の理解に合わせて教材を選んで授業をしていただいて、息子はまるで部活動のように楽しく授業を受けています。3つ目は、日曜探究講座が魅力的であること。机上の学習だけでなく、実際に体験して学ぶということは受験だけでなく“将来の糧”になると思います」。

高濱正伸氏プロフィール



花まる学習会代表。1959年熊本県生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学に入学。1990年同大学院修士課程修了後、1993年に「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した、小学校低学年向けの学習教室「花まる学習会」を設立。父母向けに行なっている講演会は毎回、キャンセル待ちが出るほどの盛況ぶり。「情熱大陸」(毎日放送/TBS系)、「カンブリア宮殿」(テレビ東京)などドキュメンタリー番組にも出演し、注目を集めている。現在、算数オリンピック委員会の理事も務める。主な著書に、「なぞぺー」シリーズ(草思社)、「小3までに育てたい算数脳」(健康ジャーナル社)、「子供に教えてあげたいノートの取り方」(実務教育出版)、「わが子を『メシが食える大人』に育てる」(廣済堂出版)など。

伊藤潤氏プロフィール



シグマTECH代表。花まるグループ スクールFC 業務支援部副部長。開成中・麻布中などの最難関ゼミの算数を担当。御三家をはじめとする難関校に多数の教え子を輩出。一方で、中学受験を始める段階での差を少しでも少なくするために、花まる学習会の教室長として幼児期の教育現場にも立ち、年中から中3までの指導に関わっている。中学受験への問題意識から「週2回の通塾、夕ご飯をお家で食べて志望校に合格する」をコンセプトとした、新しい中学受験塾、シグマTECHを2019年度に立ち上げ、その代表を務めている。

《石井栄子》

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