渋谷から未来へ…伊藤塾に聞く、アフタースクール「みらい基地」が目指すもの

 法律資格・公務員試験の受験指導校「伊藤塾」が小学生を対象とした学童施設「みらい基地」をプレオープン。伊藤塾塾長の伊藤真氏と同塾スクール部部長で「みらい基地」立ち上げのプロジェクトリーダー深澤佳克氏に「みらい基地」が目指すものなどを聞いた。

教育・受験 小学生
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法学館館長・伊藤塾塾長の伊藤真氏
法学館館長・伊藤塾塾長の伊藤真氏 全 10 枚 拡大写真
 法律資格・公務員試験の受験指導校「伊藤塾」は2021年秋、東京都渋谷区桜丘に小学生を対象とした学童施設「みらい基地」をプレオープンする。法学館館長であり伊藤塾塾長の伊藤真氏と、同塾スクール部部長で「みらい基地」立ち上げのプロジェクトリーダーである深澤佳克氏に「みらい基地」が目指すものやカリキュラム、保護者へのメッセージを聞いた。

ひとりひとりを尊重し
将来のビジョンを家庭とともに考える



 伊藤氏は、東大文科I類に入学後、在学中に司法試験に合格し弁護士に。1981年から司法試験の受験指導を開始し、1995年には「伊藤塾」を立ち上げた(開塾当初は「伊藤真の司法試験塾」)。現在、伊藤塾は司法試験をはじめとした各種法律資格の受験指導で圧倒的な合格実績をあげている。「ひとりひとりを個として尊重していく。人は皆違って当たり前で、人と違うことは素晴らしいという考えが日本の憲法の根本の価値です」と伊藤氏が話すように、憲法の理念がこれまでの教育の軸になってきたという。

法学館館長・伊藤塾塾長の伊藤真氏

--「伊藤塾」が新しいアフタースクールを開く理由、特にこの渋谷に開くことについて教えてください。

伊藤氏:伊藤塾では東大や慶應、早稲田をはじめとした多くの大学生や、すでに活躍されている社会人の方が学んでいます。毎日、そうした塾生と接する中で、有名大学に合格するだけでなく、合格後や社会に出たあとにどのように道を切り拓いていくかがより重要だと強く感じるようになりました。そのために大切なのは、子供時代をどう過ごし、いかに多様な体験を積み重ねるか。塾生たちから得た知見をもとに今回、このアフタースクールを開設したいと考えたのです。

 伊藤塾は2004年からインターネット授業を始めていますが、昨今のコロナ禍でそれが一気に加速し、塾生はこの渋谷の「伊藤塾」ビルに通うことなく、司法試験に関してオンライン学習を進めています。そのため従来の教室を、子供たちが走り回れる、ゆったりとしたスペースに仕立て、利便性の良いアフタースクールとして有効活用しようと考えました。

 そして、何より共働き家庭における学童期の子育ての負担を軽減したいという思いがあります。伊藤塾では社会人で成功されている方も、次の資格取得を目指して学んでいます。その中で、学童期の対応に悩み、相談をしたいという共働き家庭の保護者も増えています。そこで私たちが40年間にわたって取り組んできた教育の理念やノウハウを保護者の皆さんにもお伝えし、一緒に子育てを楽しみながら、ご自身も学んでいける場を提供したいと考えているのです。

--具体的にはどのようなお悩みが寄せられているのでしょうか。

伊藤氏:共働きのご家庭では、お子さまをどこに預けたら良いのかという悩みがあるようです。すでにさまざまな特長を掲げている学童が存在していますが、そこでの生活や学びがお子さまの将来にどう生きるのか、あるいは大学進学やその先の就職を考えたときに、どういう力を今からつけたら良いのかと悩んでおられるようです。また、ネットのさまざまな情報に振り回されて、子供のころから複数の習い事を掛け持ちしているが、本来やるべき子育ての本質を見誤っているのではないか、これで本当に大丈夫なのかという不安をもっておられる方も多いように感じます。

 情報化社会の中での子育ては、たとえば「知り合いがこういう習い事をやっているからうちも通わせよう」という風に、どうしても他のご家庭やSNSなどで得た情報に流されがちです。ですので我々のみらい基地では、保護者の方々に「自分の子には堂々と生きていける力を身に付けられれば良い」と焦らずに思っていただけるよう、そしてここで過ごした時間によって幸せな人生を迎えられるという安心感をもっていただきたいと考えています。

 私たちは、受験で成功したといわれる学生たちを毎日、見ています。その中でも、うまくいっている人と、いっていない人がいます。これからの時代、本当に志望校の合格や有名企業への就職を実現することだけで良いのかは疑問です。みらい基地が、お子さまの将来のビジョンを一緒に学べる場になれば良いと思います。

「お子さまの将来のビジョンを一緒に学べる場になれば良い」と伊藤氏

「みらい基地」は未来を目指すベース



--「みらい基地」という名称に込めた思いを教えてください。

伊藤氏:子供たちは未来の担い手です。これから生きていく未来を自分自身で作っていってもらいたい。託したいという思いがあります。一言で言えば「未来を創る人」。「みらい」を常に目指すということです。

 また、私も子供のころ、秘密基地遊びが好きで仲間と集まってワイワイと楽しんでいました。「基地」には、ここを起点として発進する場という意味や、たまり場的な意味合いもあります。いろいろな学校や年齢、異なるルーツをもつ多様な仲間が集まり学ぶ。基地遊びのワクワク感を大事にしながら、ここから巣立ち、場合によっては戻ってくることができる場でありたい。子供たちが、学校や家庭で何か言えないことがあってもここでなら相談できると感じてくれるような「ベース」としたいですね。

--「みらい基地」だからこそできることとは、どのようなものとお考えですか。

伊藤氏:1つはお子さんを個人として尊重することが重要だと考えています。

 人は皆、違う。違うからこそ素晴らしいという理念を大切にしたい。多様性、ダイバーシティという言葉が認知されるようになって久しいですが、日本の憲法は70年以上前からそれが根本の価値だとしています。また「子供の権利条約」で謳われているように、子供を単なる保護の客体として見るのではなく、大人と対等な主体として接する。たとえば、自分の名前をどう呼んでほしいかを自分で決める。自分で物事を決める機会を少しでも多くして、主体的に生きることをいろいろな場面で柱にしていきます。

「憲法の理念」の徹底を重視しているという

 2つ目はクルーと呼ばれる「みらい基地」のスタッフです。東大や慶應、早稲田などに合格し、司法試験や公務員試験などを目指して頑張っている学生たちが中心となって子供たちと接します。そうした大学生の姿は子供たちにとって、大学合格後も自分の意思で学び続けることが大切だというロールモデルといえます。クルーたちは、自分たちの幼少期にこうすれば良かった、あれは良かったというものをもっています。それぞれの体験を含めて良いものを出してくれるでしょう。

 また、すでに公務員試験や司法試験に合格した大学生もクルーとして参加します。公務員試験に合格し、すでにキャリア官僚に内定しているメンバーもいます。そうした、日本の中枢で将来、活躍が期待される大学生たちが、子供たちのためのプログラムを作り、直接子供たちに接します。大学の先を見据えて自己研鑽している人たちの姿を直接ロールモデルとして見ることができるのは「みらい基地」ならではの価値のひとつだと思います。

 3つ目は多様性と国際性です。法学館/伊藤塾では、青森の六戸町(ろくのへまち)にある「農学館」で、ヒバの森の保全や無農薬によるトマトやニンニク、米などの農産物を生産しています。そこで子供たちの農業体験や自然体験などのプログラムも検討しています。また、食育プログラムも構想中です。伊藤塾ではベトナム料理店も経営しています。きっかけは、ハノイ法科大学での講演で出会った学生との会話でした。「アルバイト先で苦労するという話を聞き、日本に留学したくても怖くて行けない」と話す学生に対し、安全で安心なアルバイト先を提供したいと考え、このお店をはじめたのです。子供たちへの食育の機会提供だけでなく、忙しい保護者の方が夕飯の準備をしなくても済むよう、お弁当販売なども考えています。

 なお、私たちのグループの日本語学校では、中国や台湾、ベトナムなどからの外国人留学生を受け入れています。法律を学んでいる学生もいます。社員にもいろいろな国籍の方がいます。このような多様な文化や言語に触れることができるのも特徴といえるでしょう。

安全安心で美味しい農作物を届けたい。農学館のこだわりトマト

大人の想像を超えた「未来」を創る人に



--「みらい基地」に来るお子さんたちには、どんな力をつけてもらいたいですか。

伊藤氏:外部環境の変化に振り回されずに、自分の力で生き抜く力を身に付けてもらいたいですね。これからの世の中はどのような変化が起きていくのか、誰もわかりません。だからこそ、変化に振り回されずに自分の力で生き抜く力を身に付けてほしい。そのための自己資源を子供のころに蓄えてほしいと思います。

知的好奇心を糧に。書棚には本が詰まっていた

 重要なのは大人になっても学び続けることです。受験勉強で終わりではなく、一歩先を考えて学び続ける力を身に付けてほしい。自分で学び続けるには、ワクワク感や知的好奇心がそれを支えます。学ぶことは楽しいことだと伝えたいのです。

 それらの力を形作るのは「知性、感性、自己管理能力」であると思っています。知性がこれからの世を生き抜くうえで必要であるのはもちろんのこと、感性はいろいろなことを感じとる力であり、将来活躍するためにも重要です。絵画の鑑賞に行ったり、ここで生演奏をやったりしても良い。エジソンは100年前に蓄音機を発明し、世界で初めて音を再生することに成功しましたが、ここにはそれと同型の蓄音機が置いてあります。そうした「本物」に触れることで、気付いたり、感じたり、驚いたりといった経験もできるでしょう。そして、自己管理能力は自分で目標を持って努力し、うまくいってもいかなくても振り返りをして次に生かしていく力です。時間管理や、気持ちの上がり下がりやモチベーション維持などの「自己管理」も少しずつ身に付けてほしいですね。

室内にはエジソンの「蓄音機」。子供のうちから本物に触れる経験を大事に

 これらの力を身に付けることで未来を創り出す人材となり、日本の社会のみならず世界で貢献してほしい。周りの人と比べてではなく、自分で自分の幸せな人生は何かを決められる生き方をしてほしいですね。常に一歩先を見据え、社会の多くの人たちの幸せのために自分は何ができるのかを考えることは大切です。そして、何かに貢献できたと実感できたときには、自分自身の幸せを感じながら、社会全体の幸せの総量が増えるような生き方ができる人になってもらえたら嬉しいです。

 おそらくお子さまの行動や選択は、保護者の皆さんの思い通りにはならないでしょう。でも、それで良いと思うのです。もっと言えば、子供たちは親の想像を超えたところで活躍できるはず。こんな大学に行って、こんな仕事に就いてほしいと願う気持ちは親の想像しうる限界の世界の話でしかありません。子供には無限の力があります。「みらい基地」をベースに、大きく羽ばたいていってほしいと考えています。

子育てを楽しく豊かなものに



--保護者の方々に向けてメッセージをお願いします。

伊藤氏:大切なお子さまを私たちがお預かりするほんの数時間であっても安全でなければいけないし、気持ちのうえで安心感をもっていただくことは何よりも大切です。「みらい基地」には経験豊かな看護師が社員として常駐します。またビルの立地も地盤が強く、震災にも強い設計ですし、災害対策や毛布や食事などの備蓄もしています。お子さまがここにいるなら大丈夫だと安心感をもっていただけるよう、最大限の備えをしています。

 保護者の皆さんには、子供たちの学習成果をフィードバックします。その日頑張ったことや達成できたことなど、客観的なエビデンスとともにフィードバックしたいと考えています。そして少しでも子育てが楽になってほしい。特に初めてのお子さんの育児は、相当なプレッシャーだろうと思います。保護者の皆さんも職場でさまざまなストレスを抱え、プレッシャーの中で頑張っていらっしゃる。だからこそ、子育てのストレスから少しでも楽になるようなヒントを見つけてほしい。これから相談会なども開催予定ですので、お気軽にご相談いただければと考えています。

好奇心を刺激する仕掛けを考え続ける



 続いて、法学館/伊藤塾のスクール部全体の責任者であり、「みらい基地」立ち上げのプロジェクトリーダーである深澤佳克氏に、カリキュラムやクルーの概要について聞いた。

伊藤塾スクール部部長の深澤佳克氏

--いよいよプレオープンですね。

深澤氏:そうですね。この秋のプレオープンから来年(2022年)4月1日のグランドオープンに向けて、オリジナル教材の開発を進めています。「みらい基地」は個別指導を中心に1日20名を予定しており、公立学童設置基準のおよそ4倍以上のスペースを確保した余裕をもった運営です。ただ、コロナの感染防止対策として、年度内はさらに10名に絞ります。

--カリキュラムの概要を詳しく教えてください。

深澤氏:3つの大きな柱があります。「基礎能力育成の時間」では、まず自分でその日1日の目標を決めて取り組みます。学校の宿題を心配される保護者の方が多いので、少人数制による個別指導で対応します。また他塾に通われている方の疑問にも対応します。

 「プロジェクトの時間」は毎月1つのテーマを探究的に学ぶ時間です。私たちは書籍をベースに、じっくり読み込む「スローリーディング」を行い、課題を抽出し、教科を越えた学びに取り組みます。小学1年生から3年生までの社員の子供たちを集めて試したところ、学校ではなかなか恥ずかしくて手をあげられない子が、何度も手をあげられたケースもありました。5名ほどの少人数のゼミ形式で目が行き届く環境を提供します。

 「振り返りの時間」では、必ず1日を振り返って何ができたのか、課題として何が残ったのかを明確にします。その後1週間単位で振り返り、翌週に備えます。個別指導の要素を入れて、ひとりひとりの話を聞きながら評価につなげます。この評価も順位や偏差値をつけるものではなく、ひとりひとりの到達度を客観的に複数名のクルーの意見を取りまとめて保護者にお渡しする形を考えています。

 これらの3つを、月曜日から火曜日を前半、木曜日から金曜日を後半として1週間に2コマとして進め、水曜日は完全に空けます。この水曜日は、振り返りを中心にやるとか、個別指導の基礎能力育成を深める、またはアクティビティの時間としても取っておきたいのです。最近の小学生は学校や習い事などでとても忙しいので、ずっと本を読みたい、ちょっと動き回ってみたいなどのお子さんの要望に柔軟に対応したいと思います。

 また、保護者から要望も受け付け、それに合った時間を設けたいと考えています。特に冬休みや夏休み、春休みといった長期休暇で1日お預かりする時期には、英語の他に音楽、図工などにも目を向け、本物に触れる機会を増やしたいと思います。

室内の風景

--クルーはどういった観点から採用しているのでしょうか。

深澤氏:学歴ではなく、笑顔でコミュニケーションできることを重視しています。東大レベルの学生でも面接で残念ながら採用に至らないケースはあります。お子さんや保護者と向き合い、同じ方向を向いて一緒に考えられるかどうかが重要で、子供たちにとってのロールモデルになれるよう目標をもって努力している方を採用しています。クルーは今、教材やプログラムの開発にも携わってもらっていて、10名以上います。

--保護者に向けてメッセージをお願いします。

深澤氏:「みらい基地」では楽しく学んでもらい、私たちもそこからの学びを得たいと考えています。少人数で目が行き届く環境には自信がありますので、その中で好奇心を刺激するさまざまな仕掛けを考えたいですね。エジソンの蓄音機のような実物に心置きなく触ってもらい、興味があれば化石なども手に取り図鑑と見比べてもらうなど、いろいろなものに触れて好奇心をとにかく刺激する。そのための仕掛けや「ワクワク感」を常に考え続けるのが私たちの役割です。

書棚の裏にはリラックススペースも

--ありがとうございました。

 「みらい基地」は、子供たちひとりひとりの可能性を温かく見守りながら、多忙な保護者に寄り添った新たなアフタースクールになることだろう。この秋のプレオープンを皮切りに、10月以降、内覧できる個別相談会も随時受け付けている。一度、現地に足を運んでみてはいかがだろうか。

「みらい基地」の詳細はこちら

《佐久間武》

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