開発したのは、DMM.comの子会社 ベルリング。千葉市で車いす・自転車の開発・製造を行うオーエックスエンジニアリングの国産初ECMOストレッチャーを搭載したエクモカーで、この1台にいろいろ新しい医療設備が詰まっている。
◆出動現場で救急室さながらの救命活動もOK!
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また、出動現場で救急室さながらの救命活動を実施できるように仕立てた点もポイント。患者の搬送に加え、ドクターカーとして出動したときには、開胸や開腹手術ができるよう、ライティングなどにも工夫をこらしている。
車内は、室内照明を多数設置し、どの角度からも均一に照射できる構造とすることで、手術や処置中のストレス解消をめざしているほか、ベッド周囲の動線に配置するシートを、跳ね上げ式にすることで活動性も向上させた。
◆あえてマイクロバスタイプを選択できた理由
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ベルリングは、トラックタイプが主流の高規格救急車トレンドに対し、あえてマイクロバスタイプを選択。
「マイクロバスは、トラックタイプに比べて一般的には車内空間は狭くなるけど、車内レイアウト設計を工夫することで、診療空間を確保することに成功した」という。
◆運転席2名、患者2名、医療者5名の計9名乗車OK
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「救命活動に必要な資機材を積むスペースをどれだけ確保できるか、何名乗車できるかが重要となる」ということで、ECMOストレッチャー・搬送用ストレッチャーを搭載し、最大2名の患者搬送を可能とし、運転席2名、患者2名、医療者5名の計9名乗車できるように仕立てた。
また、「移動も長距離になることを想定し、隊員の負担をなるべく減らすことをめざして、乗り心地も重要」という狙いから、マイクロバスタイプで隊員と患者の負担を軽減。災害地への派遣時にも十分な電源供給が行えるようバッテリーを車両メイン・サブバッテリー・緊急バッテリーと3台搭載した。
さらに、酸素配管系統でボンベ8本(通常車両は2本)装備可能で、万一のリスクを回避。今後のニーズにあわせ、この千葉大病院版エクモカーには情報伝送を可能にする通信設備を導入できるスペースや電源設備が確保されている点も新しい。
◆国産ECMOストレッチャーは海外モデルのコスト半分!
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この国産ECMOストレッチャーは、従来のものに比べて医療機器の配置調整などカスタマイズの自由度が高いのが特長。国内で使用されるECMO機器に対応するスペースを確保しつつ、患者に対して救命処置が可能な高さに調整することで、さまざまな現場で円滑に救命活動を行える設計にした。
従来、国内で導入されているECMOストレッチャーは、コストが高い海外メーカー系が主流で、導入ハードルが高かった。今回の国産ECMOストレッチャーは、オーエックスエンジニアリングの車いす開発技術を活かし、従来の海外モデルと同様の素材で構成し、半分のコストで導入できることをめざして開発されたことも特長のひとつだ。
千葉大病院で動き出す、最新エクモカー「走る救命救急室」。その開発を担ったベルリングは今後、消防車の企画・開発で培った知見を活かし、消防本部だけでなく、こうした最新エクモカー「走る救命救急室」を皮切りに、医療機関まで対象を広げ、現場の課題から逆算したものづくりで、業界の常識を打ち破る商品を生み出していくという。