オンラインゲームにまつわる親子の意見対立、乗り越える突破口は?

 リセマムとジェイコム少額短期保険は2022年1月7日、小・中学生親子や学校関係者を対象としたオンラインセミナー「小・中学生のネットトラブル事件簿~現場は学校?SNS?オンラインゲーム?~」を開催した。

デジタル生活 小学生
PR
子供の3大ネットトラブルは「コミュニケーション、依存、お金」
子供の3大ネットトラブルは「コミュニケーション、依存、お金」 全 5 枚 拡大写真

 リセマムとジェイコム少額短期保険は2022年1月7日、小・中学生親子や学校関係者を対象としたオンラインセミナー「小・中学生のネットトラブル事件簿~現場は学校?SNS?オンラインゲーム?~」を開催した。

 ケーブルテレビや高速インターネット接続、モバイル、少額短期保険などをグループとして提供しているJ:COMでは、CSR活動の一環として、子供たちのネットリテラシー向上を図るため、西日本を中心に小・中学校を対象とした特別出張授業「ZAQあんしんネット教室 by J:COM」を展開している。

 今回は、同教室でネットリテラシーやモラルの大切さについて教えているJ:COMの粟津千草先生にお越しいただき、リセマム読者の親子を対象とした特別オンライン講座を実施。オンラインゲーム(通称ネトゲ)を切り口に、子供をネットトラブルから守るためにどんなことが必要か、また、万一ネットトラブルに遭ってしまったときにどうすれば良いかなどを分かりやすく教えてもらった。

3大ネットトラブル「コミュニケーション、依存、お金」

--小・中学生が遭いやすいネットトラブルには、どのような特徴がありますか。

 大きく3つあります。まず1つ目が「コミュニケーション」。小・中学生はちょうどGIGAスクール構想とも相まって、ネットでのコミュニケーションを練習している真っ最中です。多感な時期だからこそ、スマホでやり取りをする中で誤解が生じたり、喧嘩になったりということが起きやすいという点でも注意が必要です。2つ目が「依存」です。つい長時間利用してしまって日常生活に支障が出る、宿題をする前にやってしまって宿題を忘れる、寝る前にやり始めてしまって明け方になってしまうといった声も多く聞かれます。そして3つ目が「お金」です。最近では課金制のゲームもありますので、いつの間にか子供が課金していた等のトラブルもよく聞きます。これらの3大ネットトラブルは大人にも共通するところですね。

特別講座に登壇いただいたJ:COMの粟津千草先生

事前に情報を確認…安全に活用する力を伸ばす

--1人1台の端末を使った新しい学びGIGAスクール時代の今、子供たちが身に付けるべき「ネットリテラシー」について教えてください。

 そもそも「リテラシー」とは何か、という定義ですが、私は「活用する力」だと思っています。スマホやタブレット、パソコンに振り回されるのではなく自分自身が意思を持って使いこなす力のことだと理解すると良いのではないでしょうか。今やインターネットと切り離された生活はあり得ないため、今後さらに求められる力になってくると思います。

 そのためにも活用する前の段階で、安全に使うための情報を確かめておく必要があります。たとえば、この「A・B・C・D・Z」というアルファベット。何を意味するかわかりますか?

 これは「CEROレーティングマーク」で使用されているアルファベットです。Aは全年齢、Bは12歳以上対象というように、ゲーム内容によって推奨される対象年齢を表しています。なぜ使う「前」に知ることが大事かというと、インターネットの世界は情報拡散力が非常に高く、やってしまってからでは取り返しがつかないことが多いからです。ネットに関わるものを使うときには、他のものを使うときよりもさらに気を付けて、対象年齢や利用規約を確認したり、安全に使うための設定を調べたり等、安全に使うための情報を事前に親子で一緒に確認していくことが大切です。

--最近ではいじめの現場がリアルの場からSNSへ、そしてさらにオンラインゲームに移行しているそうですが、子供が専用デバイスを持つことで、親に見えないネット上でのやり取りがさらに増えているのではないでしょうか。トラブルになった時はどう対応すれば良いでしょうか。

 子供がトラブルになったときに大人が解決しようとすると、だいたい失敗します。大人はつい「こうしなさい」と口を出したくなってしまいますが、そうすると子供が自分の力でトラブルを乗り越えて、友達と仲直りをする機会を奪ってしまいかねない。「何かあれば親が解決してくれる」と思ってしまうと、また同じトラブルが起こりやすくなるうえに、問題解決力も育ちません。大人はまず落ち着いて、自分が解決しようとしないこと。忍耐が必要になります。

 ぐっと堪えたうえで、大人に求められているのはファシリテーションスキルです。トラブルが起きた際に指示するのではなく、子供や相手がどうしたいのかお互いの意見を聞く場をもって、意見の交通整理をしたり、うまくまとめたりするスキルが求められています。それにはまず子供に寄り添って、どうしたいのか、どうなったら良いと思うのかを素直に伝えられる、コミュニケーションの素地や関係性を作っておくことが重要です。普段子供と話す中でも意識しておくと良いと思います。親は自分がゲームをしたことがなくても、子供が楽しそうにやっているなら「このゲームはきっと楽しいものなんだ」ということを一旦受け止めてあげると、親子で話しやすくなると思います。

 また、お子さん自身も、何か困ったことがあったらまずは保護者の方に話してみてほしいですね。何かあったとき、親は話してほしい、頼ってほしいと思っていることをぜひ知っておいてほしいと思います。

ゲームが子供のコミュニケーションの主流に

--保護者で「オンラインゲーム」に詳しい方はまだ少数かもしれません。「オンラインゲーム」の楽しさと怖さについて教えてください。

 オンラインゲームの楽しさは、家にいながら友達同士で一緒に遊べて、おしゃべりもできる。コロナ禍で直接会いづらくても、ネットを通じて人とつながっていることが実感できる。今の子供たちにとって、ゲームはコミュニケーションの場としての市民権を得つつあるようです。子育て世代の大人からは良く思われていないと感じるのか、隠れてオンラインゲームをやっている子供もいます。保護者は「危険だからダメ」と頭ごなしに禁止せずに、「こういう危険もあるよ、気を付けながらやろうね」と話し合いをしてから始めると良いと思います。子供も「こんなゲームをやっていて、こういうところが楽しいよ」とぜひ親に伝えてみてほしいです。

 ただ、ゲームは楽しい一方で、夢中になり過ぎてしまうリスクもあります。昨今はバトルで勝敗をつけたり、競争心を煽ったりするようなゲームも多いので、成果を追求しすぎてのめりこんだり、人に勝ちたい意識が強くなったりと、トラブルにつながりやすいことも覚えておいてください。

ゲームとリアルの世界をうまく切り分けて楽しもう

 また、オンラインゲームに関連したトラブルには、「あの子は下手だから」とゲーム上で仲間外れにするだけでなく、学校でもその関係を引きずっていじめに発展するケースや、熱中するあまりゲーム中のチャットやコミュニケーションでつい乱暴な発言をしてしまい、言った本人はケロッと忘れていても、言われた子は深く傷ついて学校に行けなくなるケースもあります。ゲームは楽しいものですが、夢中になりすぎると周囲が見えなくなって喧嘩のもとになったり、いじめや無視になったりすることもあるので、やはりバランスが大事。適度な距離感が大事ですね。

 また、依存症のリスクもあります。依存症は病気と同じで、自分自身でこれ以上やってはだめだとわかっていても自分ではどうしようもなくなってしまう状態です。ゲーム機がそばにないと落ち着かない、気付くとアプリを開いてしまう等、何か少しでもおかしいと思い始めた段階で、早めに専門外来やかかりつけ医に相談すると良いでしょう。

ネット上の相手を傷つける言葉は犯罪になりうる

 さらにオンラインゲームには、ゲームを通して直接会ったことのない人とつながることができるという特徴があります。ゲームでいろいろな人とつながるのは楽しいことですが、怖い人とつながってしまって悩んだり、自分の言動が相手の怒りに触れてトラブルになったり、事件になる恐れがあります。

 知っておいてほしいのは、相手を深く傷つける言葉は犯罪になる可能性があるということ。それはゲーム中のやり取りだけでなく、SNSのメッセージや、コメント欄等、いかなる場面にも当てはまります。ネットで相手を傷つけたことにより、名誉棄損罪や侮辱罪、傷害罪等に問われることもあります。

オンラインゲーム中のふとした発言がトラブルに!?
もしもに備える「ネットあんしん保険」

 「ネットでは匿名を使うから、誰が言ったか、誰が書いたかなんてわからない」と安易に考える人もいるかもしれません。でもそれは大間違い。誰が発言したのか、きちんとした手順を踏んで調べれば分かる仕組みがあります。

 たとえば誰かにひどい悪口を書かれた場合、まずSNSなどのサービスを運営する会社に発信者情報開示請求を書類で送ります。サービス運営会社が内容を審査したうえで情報開示が妥当だと判断すれば、相手の「IPアドレス」(ネット上の住所にあたるもの)を教えてくれます。次にプロバイダに相手のIPアドレスを伝え、発信者情報開示請求をします。プロバイダで審査を行い、悪口を書いたと思われる利用者(契約者)に連絡がいき、その人が特定できる仕組みになっています。必ずしも相手の情報を教えてもらえるわけではないですが、この仕組みで調べて相手が特定できた場合、弁護士を入れての裁判になる可能性もあるのは知っておいた方が良いです。

 ネットでのコミュニケーションでお勧めしたいのは、言葉遣いに気を付けながら、相手が嬉しい言葉をたくさん贈ることです。「ありがとう」「助かった」「一緒にプレイできて楽しかった」と言われたら、自分も嬉しいですよね。ゲーム中もやはり普段使っている言葉が如実にあらわれるので、家庭でも日常の言葉遣いを気にしてみると良いと思います。

セミナー中、チャット欄には参加者からのコメントや質問がたくさん寄せられた

ネットで知り合った相手を安易に信用しない

--ネットで知り合った人と対面で会うことについてはいかがでしょう。「親は反対しているのでネッ友と内緒で交流している」という声もあります。

 ゲーム上では、まず「このゲームが好き」という共通の話題があるところからコミュニケーションが始まるので、どうしても相手に対して親近感をもちやすく、気を許しがちです。自分と同じゲームが好きだからという理由を抜きにしても、相手を信用できるかどうかを見極める必要があります。

 子供がネット上で知り合った人に会いに行き、誘拐される事件も発生しています。ゲーム中、相手がサポートしてくれたり、優しい言葉や声で話しかけたりしてくれても、本当に自分の印象通りの人物かどうかは分かりません。友達のアカウント名であったとしても「なりすまし」の可能性も否定できません。お子さまにはゲームをやっても良いけど、それをきっかけに安易に会いに行かない、家から出ないことをしっかり伝えてほしいと思います。

匿名で顔が見えないネットの世界、相手を信用しすぎないことも時には必要

 お子さま自身も、ネット上の相手が本物なのかをまず疑い、信用しすぎない姿勢が必要です。冷静になって「本当にそうなんだろうか」と少し疑ってみたり、違う角度からみてみようという意識をもったりしていると、「何かおかしいぞ、これ以上はだめだ」というセンサーが働いて、身を守る判断ができるようになります。それを意識していくとともに、保護者の方にも態度で示していくと良いと思います。隠れてコソコソやるのではなく、楽しいと思える点を話したり、危険な目にあっていないという実績をみせると安心するはずです。子供から大人への地道なPR活動も大切ですよ。

持たせる前に大人自身の使い方を振り返る

--子供に専用のデバイスを持たせる前に、保護者が気を付けたいことや家族で話し合うべきことについてはいかがでしょう。

 「初めてのスマホを持たせる際に」ということですが、実は子供にデバイスを出会わせる時点で考え始めるのではもう遅いんです。なぜなら、子供は大人の真似をするからです。大人がスマホを持っている時点で、子供は大人の使い方を見て「スマホはああやって使うものなんだ」と学んでいきます。子供に持たせる前に、まずは大人が自分自身の使い方を振り返ってみましょう。

 スマホの使い方チェックのポイントを紹介します。

スマホの使い方チェック:5つのポイント
1)メッセージの内容(否定的・肯定的、普段の言葉遣い)
2)利用時間(ダラダラ・メリハリ)
3)スマホを見ながら返事(する・しない)
4)安全に使うための設定の確認(していない・している)
5)パスワード・セキュリティ面の管理(していない・している)


 こうした項目について、大人がどう使っているかを子供は感じ取っています。このチェック項目は親子で使えるので、ぜひお互いの使い方をチェックしてみてくださいね。

 あとは、スマホを使う前に、次の3つのことを家族で聞き、話し合っておくと良いでしょう。

スマホを使う前の家族コミュニケーション
1)どんな使い方をしたい?
2)トラブルに遭わないためにどうする?
3)家族みんなでどんなことに気を付ければいい?(友達をトラブルに巻き込まないためにどんなことに気を付ける?)


 子供に聞くのももちろんですが、保護者の方も「自分はどう考えるか」を伝え、家族皆で確認してみると良いと思います。

--「小学生でスマホは早い?」という質問が来ています。

 私の個人的な意見になりますが、スマホを持つのは早ければ早い方が良いと思います。思春期や反抗期になって、話し合いが難しくなってからでは、親が一方的に管理することになりかねず、そうなると反発しか生まれません。「ペアレンタルコントロール」の機能も、あくまでも「親子で話し合った結果」を守るために手助けしてくれるツールなので、一方的な押し付けはネットリテラシーの育成をかえって阻害してしまうことにもなりかねません。

 話し合いがしやすい小学生のうちから、親子で話し合って、ペアレンタルコントロール等の機能に助けてもらいながら使っていくのがお勧めです。ネットがない社会はもはや考えられない世の中になっています。早いうちからきちんと話し合い、子供自身が活用する力を身に付けるのを、大人がサポートすることが大切です。

孤独がトラブルを呼ぶ、自己肯定感を高めよう

 私は2011年からネット講座の講師として学校に赴き、子供の使い方を見ていますが、ネットトラブルは孤独や寂しさ、虚しさが大きくなると遭いやすいと感じています。子供を狙う危険人物は、そうした心の隙や寂しさに付け込んで優しい言葉をかける等して、巧妙に取り入ってきます。ネットを発端とした犯罪はほとんどそこから始まっているのです。

 孤独感や虚しさを払拭し、そういった「隙」をなくすためにも、子供の自己肯定感を高めてあげることが大切です。自己肯定感を高めるために、もっとも有効なのは家族間のコミュニケーション。特に辛いことがあった日には、自己肯定感を高めるためにも、寝る前に「今日も1日ありがとう。また明日」と家族で伝え合ってみてください。

 もし家族に伝えるのは恥ずかしいという場合は、自分で自分自身に声をかけても効果があります。継続すると次第に自己肯定感が醸成されるので、ぜひ試してみてください。自分自身も周囲も尊重しあったうえで、楽しくネットを使ってもらいたいと思っています。

--ありがとうございました。

幸せになれるネットの使い方を家族で話し合おう

 大人が抱く「ネットやオンラインゲームは危険」という古い価値観を軽く乗り越え、GIGAスクール時代の現実的なネットの活用法を伝えてくれた今回の特別講座。スマホ未所有の子供でさえ、すでに大人のスマホの使い方を見て学んでいるという粟津先生からの指摘にドキリとした読者も多いのではないだろうか。そうした中で、今大人に必要なのは子供をネットから遠ざけることではなく、ネットのリスクと安全な使い方を子供とともに考え、学び、みんなが幸せになれる使い方を一緒に話し合うことなのだろう。「今回の話をぜひ家族で共有して対話を続けていってほしい」と粟津先生。家族でネットに関する対話を続けていくことこそが、トラブル回避や対応につながるのかもしれない。

万一の備えとしての「ネットあんしん保険」

もしものトラブルに備える「J:COMネットあんしん保険」

 日常生活に切っては切れない存在となったインターネット。デジタルネイティブの子供たちに、インターネットのメリット・デメリットを伝えると同時に、ジェイコム少額短期保険では「ネットあんしん保険」を提供している。ネットトラブルはいつ誰が遭遇してもおかしくない今、もしものときに備えるために、弁護士相談や損害賠償、法律相談等を補償の対象としている。月額保険料750円で家族全員に補償が付くのも魅力。こうしたサービスを取り入れながら、幸せになれるネットの使い方を家族で模索していってほしい。

《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

+ 続きを読む

【注目の記事】

この記事の写真

/

特集