【大学受験】大学入学共通テスト「難化した」数学の評価・要望は?

 大学入試センターは2022年6月30日、今年度実施された「令和4年度大学入学共通テスト問題評価・分析委員会報告書」を公表した。2022年の大学入学共通テスト(旧センター試験)は試験直後から「難化」したと数学が話題になった。設問内容や設問量は適正だったのだろうか。

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2022年度大学入学共通テスト試験場のようす
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 大学入試センターは2022年6月30日、今年度実施された「令和4年度大学入学共通テスト問題評価・分析委員会報告書」を公表した。試験直後から難化したと話題だった数学について、関係団体評価では、数I、数IIともに「時間配分の面を十分に考慮されることを要望する」としている。

 大学入試センターでは、「大学入学共通テスト問題評価・分析委員会」を置き、毎年度、大学入学共通テストの試験問題の分析・評価を行っている。6月30日に公表となったのは、「令和4年度大学入学共通テストに係る分析・評価の報告書」。この報告書では、各都道府県教育委員会等から推薦された高等学校教員等からなる外部評価分科会、および関係協力団体からの試験問題の内容・範囲、分量・程度などについての意見・評価、自己評価として問題作成部会の見解を掲載している。

 2022年の大学入学共通テスト(旧センター試験、以下共通テスト)は1月15日、16日に実施。特に、試験直後から「難化」したと話題の数学においては、後日、大学入試センターが発表した平均点が、数学I「21.89」、数学I・数学A「37.96」、数学II「34.41」、数学II・数学B「43.06」(いずれも100点満点)だったことで、設問内容や設問量などが適正だったか否かについて物議を醸す状況となっていた。

 数学の問題について関係団体評価を見てみる。数学については公益社団法人の日本数学教育学会が評価を寄せている。

 これによると、数学I、数学I・数学Aともに「質の高い問題が出題されたものの、多くの受験生にとって時間がたりなかったようである。個々の問題については、思考の過程を振り返って統合的・発展的に考察するなど、数学的な思考力を適正に評価できるよう工夫がみられるが、全体を通した解答時間の合計が課題となっている。今後の試験では時間配分の面を十分に考慮されることを要望する」としている。

 また数学II、数学II・数学Bについてはともに「問題解決に向けて構想・見通しを立てる問題や問題解決過程を振り返る問題といったように、解決過程の一部を経るだけの問題が多いように思われる。今後は、問題解決の過程全体を経る問題となるように、設問の組み立てと流れなどに関してさらに留意して問題の作成に当たられることを期待する。合わせて、思考・表現するための下書き用紙または十分な余白の確保や、人物名に配慮した出題も要望する」としたうえで、「本年度の共通テストでは、上記のように質の高い問題が出題されたものの、多くの受験生にとって時間がたりなかったようである。個々の問題については、思考の過程を振り返って意味を考え、発展的・統合的に考察するなど、数学的な思考力を適正に評価できるよう工夫がみられるが、全体を通した解答時間の合計が課題となっている。今後の試験では時間配分の面を十分に考慮されることを要望する」と続けられている。

 対して「自己評価」では、問題作成部会の見解が記されている。
 
 数学I、数学I・数学Aについては「今年度の本試験は、総じて共通テストが志向する思考力・判断力・表現力等を問う内容であったが、その一方で次の二つの課題も見られた。第一は時間配分である。思考力・判断力・表現力等を問う試験において、今回は、その考えるための時間が受験者にとって十分にはなかったと推察される。1問あたりの配点を高くして問題量を削減することや、知識・技能と思考力・判断力・表現力等をバランスよく問うこと等、共通テストの趣旨が十分に実現される試験となるよう引き続き検討していきたい。第二の課題は計算量の多さである。一定程度の計算は、技能面の評価という点から必要であり、数学の性格上、思考力・判断力・表現力等を問う問題であっても不可欠である。しかし、桁数の多い四則演算の繰り返しは、高校数学の本質的な内容ではなく、さらに現在のテクノロジーの普及を考えればより検討の必要がある。今後も、知識の理解の質を問う問題や思考力・判断力・表現力等を発揮して解く問題に、受験者が十分な時間をかけて取り組むことができるよう検討していきたい」。

 数学II、数学II・数学Bについては、特に数学II・数学Bで「第4問について、『規則の要点を枠囲みするなど、もう少し分かりやすい表記の仕方を工夫していただきたい。』『問題文中の誘導の工夫を継続して行っていただきたい。』という意見をいただいた。そして、『数学II・数学B』の平均点が昨年度より16.87点減少していたことに関わって、問題の提示の仕方を含め、試験時間に照らして各問題に充てられる時間も考慮していただきたいという意見もいただいた。これらの点について重く受けとめ、今後の出題に向けて、引き続き検討していきたい」とした。

 「令和4年度大学入学共通テストに係る分析・評価の報告書」では、各試験についての「高等学校評価」「関係団体評価」「自己評価」を掲載。大学入試センターのWebサイトで見ることができる。

 なお、大学入試センターは「大学入学共通テストの試験結果等を十分に分析、研究するとともに、本報告書に掲載されている意見をはじめ各方面から寄せられた意見を参考にして、より良質な試験問題の作成に取り組んでいく所存であります」とコメントしている。


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《鶴田雅美》

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