日本の国際バカロレア教育を先導…立命館宇治高等学校IBコースで育む「学び続ける力」

 文部科学省がグローバル人材育成の観点から普及・拡大を推進してきた国際バカロレア(IB)。世界遺産の平等院をはじめ、古の歴史と文化が根付く京都府宇治市で、日本のIB教育を先導してきた立命館宇治高等学校の教育の特徴について話を聞いた。

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立命館宇治高等学校 IBコースのマシュー・トーマス先生(右)と中学校IPコースのマイケル・ガーニック先生(左)
立命館宇治高等学校 IBコースのマシュー・トーマス先生(右)と中学校IPコースのマイケル・ガーニック先生(左) 全 14 枚 拡大写真

 文部科学省がグローバル人材育成の観点から普及・拡大を推進してきた国際バカロレア(以下、IB)。世界遺産の平等院をはじめ、古の歴史と文化が根付く京都府宇治市に、日本のIB教育を先導してきた学校がある。IBのディプロマ・プログラム*(以下、IBDP)に基づき、国語以外の全教科を英語で学ぶ「立命館宇治高等学校IBコース」だ。

 立命館大学、立命館アジア太平洋大学(APU)や他の国内大学への進学も可能だが、IBDPは世界中の大学への出願入学資格を得られるため、2022年のIBコース卒業生21人のうち14人は、カリフォルニア工科大学(THE世界大学ランキング第2位)、インペリアル・カレッジ・ロンドン(第12位)、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(第18位)、トロント大(第18位)、[※東京大学は第35位]といった世界トップクラスを含めた海外の大学へ進学している。

 季節の移ろいを感じられる広大なキャンパスには、昨年、おもにIBコースで使用する新棟が完成し、将来IBコースに進学することを目指す中学生を対象に「立命館宇治中学校IPコース」がスタート。さらに、IBコースは来年4月、現在の1クラスから2クラスへも視野に入れている。

 立命館宇治が目指すIB教育とはどういったものなのか。高校IBコースのマシュー・トーマス先生と、中学校IPコース責任者マイケル・ガーニック先生に話を聞いた。

*ディプロマ・プログラム(DP)とは?: 所定のカリキュラムを履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格「IB資格」が取得可能なプログラムのこと。16歳から19歳までを対象

知識偏重型の日本の従来型教育ではないIB教育

--高校IBコースのトーマス先生、中学IPコースの責任者であるガーニック先生、立命館宇治での現職に至るまでのそれぞれご経歴をお聞かせください。

トーマス先生:私はアメリカ・カリフォルニア州の出身です。アメリカの大学で英文学を専攻し、卒業後は日本の熊本県で英会話を教えていました。その後アメリカに戻りましたが、大学院では歴史を専攻したこともあって、アジアの歴史や文化への興味から再び来日。まもなく立命館宇治に教員として採用され、IBコースを新設するための準備を任されることになりました。

立命館宇治高等学校 IBコース トーマス先生

ガーニック先生:私はカナダ出身で、大学では教育学と数学を専攻しました。5年間、アルバータ州のカルガリーというところで公立高校の教員をしていたのですが、カルガリーと姉妹都市の岐阜県垂井町との間で教員の交換事業があり、私が垂井町で1年間英語を教えることになったんです。そこで今の妻と出会い、結婚して日本に住むことになりました。当初は幼稚園で英語を教えていたのですが、やはり自分は数学の教員として働きたいと思い始めた矢先にこちらで数学教員の募集があって採用されました。

立命館宇治中学校 IPコース責任者 ガーニック先生

--トーマス先生に伺います。立命館宇治のIBコース設立の背景について教えてください。

トーマス先生:1994年に誕生した立命館宇治高校は大学附属校である強みを生かし、発足当初から受験勉強とは一線を画した教育を目指し、国際化に力を入れてきました。2002年と2005年には二期にわたり文部科学省によるスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールに、2014年にはスーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)に指定され、さらに2009年には国際バカロレア機構(IBO)により関西で初めてIBDP校として認定されました。

 現在、立命館宇治高校は3つのコースに分かれており、もっともクラスの数が多いIGコースでは立命館大学のさまざまな学部と連携し、文系理系の枠を超えて多様な科目選択が可能です。IMコースは1年間、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの海外留学をカリキュラムに組み込み、帰国後は英語力をさらに高めるために国語等いくつかの授業を除いて、英語で授業を行うイマージョン授業を履修できます。

 そして私たちがいるIBコースは、世界共通のIB独自の教育プログラムに合わせて、1年生から国語以外の授業をすべて英語で行っています。現在は1クラスですが、2023年からは2クラスに増やすことも視野に入れています。

--IBは最近日本でも注目が高まってきていますが、なぜだと思われますか。

トーマス先生:日本の少子高齢化など将来への不安感もあり、グローバル教育への関心が高まってきているからではないでしょうか。IBDPは、世界共通の最終試験で所定の成績を収めることで国際的に認められる大学入学資格です。世界では多くの大学がIB資格を高く評価し、これを取得した生徒を「批判的思考力をもつ自立した学習者」であるとみなしています。

「世界では多くの大学がIB資格を取得した生徒を『批判的思考力をもつ自立した学習者』であるとみなし高く評価する」(トーマス先生)

 海外の大学の場合、IB資格や最終試験のスコアを入学の条件にしている大学もあり、最近では日本でも国立私立を問わず、IB入試は広がってきています。知識偏重型の日本の従来型教育ではないという点、そして多様な進路が選べるという点で、IBはとても魅力的なのだと思います。

立命館宇治だから3年間で実現可能…IB資格と高校卒業資格をW取得

--立命館宇治のIBコースの特徴はどういったところにあるのでしょうか。

トーマス先生:IBDP自体は2年間で履修するものですが、立命館宇治のIBコースは4つのタームに分け、IB資格とともに日本の高校卒業の資格も両方取得できるように設計しています。まず、高校1年生の4月から12月までの「プレIB」と呼ばれる期間では、日本の高校卒業に必要な科目を履修するとともに、IBDPに向けての準備にも充てます。そして、高校1年生の1月から高校3年生の11月まではIBDPに基づいた授業を展開し、高校3年生の11月にIB資格を得るための最終試験を受けます。その後、12月から2月までの「ポストIB」と呼ばれる期間で日本の高校卒業に必要な残りの必履修科目を終えるという流れになっています。

 こうした変則的な履修が可能なのは、立命館宇治が大規模校だからできることです。

立命館宇治のIBコースは4つのタームに分け、IB資格とともに日本の高校卒業の資格も両方取得できるように設計されている

--IBDPのカリキュラムはどういった内容ですか。

トーマス先生:IBDPは世界160か国5500校以上で実施されている教育プログラムです。IBが生徒たちに身に付けさせたい力として掲げるのは、「学び続ける力」。そのために私たちはさまざまな学習活動を通じて、次の5つのスキルを習得させることを意識しています。

5つのスキル

1.コミュニケーション力
2.社会性(社会的・文化的な違いの尊重、共通の目標に向かう協働力)
3.リサーチ力
4.思考力
5.自己管理能力

 この5つのスキルを習得するために、IBDPではTOK(Theory of Knowledge=知の理論)、 CAS(Creativity, Activity, Service=創造・活動・奉仕)、EE(Extended Essay=課題論文)という「3つのコア」(別表)の履修が義務付けられ、これらが「6つの教科学習」で構成されています。生徒は6つの教科学習の中から必要な科目を1つずつ選びます。

3つのコア

3つのコア

目的

身に付く力

TOK(Theory of Knowledge)

具体的な知識を学ぶ代わりに、知るプロセスを探究する

自分の考えが他者とどう違うかを自覚できるようになる

CAS(Creativity, Activity, Service=創造・活動・奉仕)

教科以外に創造的な活動、健康的なライフスタイルの実現のための活動、所属するコミュニティへの奉仕・貢献活動を通じて、健全な価値観を育む

勉強だけではなく、創造的で健康的なバランスの取れた生活を送れるようになる

EE(Extended Essay=課題論文)

生徒それぞれが履修しているDP科目から1科目を選び、関心のあるトピックの個人研究に取り組み、研究成果を4000語の論文にまとめる

大学で必要なリサーチ力や記述力を鍛えられる

6つの教科学習

1.言語と文学
2.第二言語の習得
3.個人と社会
4.科学
5.数学
6.芸術(もしくは選択科目)

 日本で実施されているIBDPの中には、この6つの教科学習やCASの活動の選択肢が少ないという課題を抱える学校もありますが、立命館宇治では、教員の数、質ともに充実しており、生徒たちには十分な選択肢を用意し、ひとりひとりの探究心や学習意欲に応じた学びを実現しています。

立命館宇治高等学校IBコースの生徒が選択している科目と人数をまとめた資料。表内の「SL」はスタンダードレベル(Standard Level)、「HL」はハイヤーレベル(Higher Level)の略。「IB2」「IB3」は高校2年生、3年生を示す

--IB資格を得るための最終試験の成績は、大学入学の際にとても重要だと聞きますが、立命館宇治の卒業生はどのくらいのレベルなのでしょうか。

トーマス先生:2017年から2021年度にかけての5年間のIB資格の取得状況を見ると、全科目取得率、合格率、平均点全て世界平均を上回っています。中でも45点満点で40点以上取得した割合が、世界平均の11%に対して立命館宇治では20%と約2倍となり、私たちの教育の成果として大変うれしく思います。過去、私が教えてきた中には満点を取った生徒もおり、これは世界で見ても1%未満となっています。

立命館宇治高等学校IBDP取得状況(2017~2021年)

--IBコースに向いているのはどういったタイプの生徒でしょうか。IBコースで学ぶ生徒たちの特徴を教えてください。

トーマス先生:IBDPは数学、言語、科学など6科目を幅広く、そして深く学ぶ必要があるため、一般的には学ぶことに対する意欲を持ち合わせている子が向いていると言われています。

 もちろん、それはとても重要な資質ではありますが、私が実際に教えていてIBDPが優れているなと感じるのは、生徒ひとりひとりの興味や関心に合わせた学びを自由に設計し、深めていけるところです。したがって、IBDPは、さまざまな生徒に向いているのです。

 立命館宇治のIBコースの生徒は、勉強が好きな子だけではなく、アートに力を入れて頑張りたい子、課外活動に熱心に取り組んでいる子などさまざまですが、我々はそれぞれに合ったサポートをしています。

--IBコースに入学するにはどの程度の英語力が必要ですか。また、入学後に英語力不足で苦労することはありませんか。

トーマス先生:入試は小論文、数学、面接と過去の成績で、試験と面接は全て英語で行われます。その際には英検準1級レベル、TOEFL iBTであれば80点程度の英語力が必要です。

 入学当初から高い英語力が求められるので、最初は苦労する生徒もいますが、英語の授業はハイレベル(英語運用能力の高い生徒)とスタンダードレベルに分かれていますし、英語以外を母国語とする人たちも時間とともに克服していきます。

 それに、最初は英語が弱くても、日本の小中学校では理系科目の授業のレベルが高いこともあり、数学や科学で非常に優れた成果を出す生徒も多くいます。中にはその実力を生かし、英語力も3年間で向上させ、海外のトップレベルの大学に進学するケースも決して珍しくありません。

中学校IPコースもスタート、IBが重視する力を早期から伸ばす

--昨年4月からスタートした、将来IBコースに進学することを目指す中学生を対象にした「立命館宇治中学校IPコース」について、その特徴を教えてください。

ガーニック先生:昨年スタートしたIPコースでは、高校のIBコースで教える教員が、日本の教育課程とIBの教育課程につながる科目(英語、数学、理科、社会)を英語で教えます。また、文科省の中学校学習指導要領に従い、家庭科、音楽、芸術、体育、国語を日本語で学びます。

「中学校IPコースでは、早くからIBコースの学びに触れることで、批判的思考力、コミュニケーション力や自己管理能力を早い段階から伸ばしていく」(ガーニック先生)

 IPコース生は、早くからIBコースの学びに触れることにより、批判的思考力、コミュニケーション力や自己管理能力など、IBが重視する力を早い段階から伸ばし、積極的に学習を進められるようになります。一期生は24名で、日本人教員とIB教員(外国籍教員)の2人の担任教員が付いています。教員の目が行き届きやすい環境で、さまざまな体験や対話を通じ、高い学力と資質をもつバイリンガル人材が育っていくことを目指しています。

中学校IPコースの生徒もIBコースの新棟すべての施設が利用できる

--IPコースにはどのような生徒が向いていますか。入学に必要とされる英語力はどのくらいですか。

ガーニック先生:IPコースも学ぶことに対して意欲的な子、自分から進んで取り組める子に向いていると思います。入学時に必要な英語力については、英検2級(または同等のもの)以上のスコアを持っている必要があります。

 IPコースは英語「を」学ぶのではなく、英語「で」学ぶコースのため、第一期生の多くはすでに英検準1級相当の英語力を有しています。

--中学校IPコースからスムーズに高校IBコースに進めるのは心強いですね。IBコースの2022年度の海外大学合格実績、国内大学進学実績の結果はいかがでしたか。

トーマス先生:IBコースの第1期生がディプロマを取得してからちょうど10年ですが、昨年度の卒業生はこれまでで最高の素晴らしい成果を残してくれたと思います。

 たった1クラスから、カリフォルニア工科大学(世界第2位)、インペリアル・カレッジ・ロンドン(第12位)、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(第18位)、トロント大(第18位)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、同サンディエゴ校、ブラウン大、デューク大、ノースウェスタン大といったアメリカのトップクラスの大学、アジアでトップクラスのシンガポール国立大のほか、オランダ、オーストラリアの名門大学にも合格しています。日本国内の大学では、慶應大学、早稲田大学、ICU、上智大学等へ進学しています。

--IBコースは2クラスに増やすことも検討されているので、今後の実績には期待が膨らみますね。立命館大学の附属校ということで、海外大学や国内の他大学へ出願する際に併願も可能なのでしょうか。

トーマス先生:IBコース生の進学先は海外大学だけでなく、もちろん、立命館大学にも進学します。立命館大学は古くから教育の国際化に力を入れており、オーストラリア国立大学と連携したグローバル教養学部や、アメリカの首都ワシントンD.C.にあるアメリカン大学とのジョイントディグリープログラムなども展開しています。これらのプログラムは、これまでにない新しい国際連携プログラムです。また、大分にある立命館アジア太平洋大学(APU)も留学生が多いことでも有名です。

生徒ひとりひとりの力を伸ばす幸福な環境

--生徒さんたちは目を見張る成長を遂げていらっしゃいますが、おふたりは教育者としてどんなことを大切にされていますか。

トーマス先生:一番大切にしていることは、生徒たちひとりひとりのことをよく観察し、把握することです。帰国生を含め、非常に多様なバックグラウンドをもつ生徒が集まっているのは、冒頭に述べたIBが目指す5つのスキルを習得する上でも大きな強みです。その強みを最大限に生かしきれるよう、生徒がどんなバックグラウンドでも、どんなレベルでも、ひとりひとりに見合ったサポートをすることが私たちの重要な役割だと思っています。

ガーニック先生:生徒たちにとって学校が安全で、安心できる場所であること。そして生徒たちが精神的にも身体的にも幸福であることです。そのためには私自身が率先して、万全に授業の準備をする、十分な睡眠をとる、健康のために運動をするといった日々の行動を通じ、生徒たちのロールモデルでありたいと思っています。

立命館宇治高等学校 IBコースの職員室前の広々としたスペース。生徒たちが先生に気軽に相談しているようすがうかがえる

--今、IB教育に関心をもっている保護者・生徒にメッセージをお願いします。

トーマス先生:IBDPが目指す、生徒ひとりひとりに「学び続ける力」を身に付けてもらうこと。それは、国内でも海外でも、将来生きていくためにとても重要な力です。立命館宇治のIBコースは受験勉強に煩わされることなく、高校生活を通じて自身の興味関心に沿った深い学びに没頭できます。また、京都と奈良にも近く、日本の文化を身近に体験しながら、学校では国際性豊かな環境で、高いレベルの英語力を養うこともできます。ぜひ、立命館宇治のIBコースの一員になってほしいです。

教員同士がとても親しく、その関係性の良さがコースの雰囲気をオープンでフレンドリーなものにしている

ガーニック先生:立命館宇治は教員同士がとても親しく、その関係性の良さがコースの雰囲気をオープンでフレンドリーなものにしています。そしてそれは、生徒にとって学校が安心できる安全な場所であることにつながっていると思います。

 新棟が完成し、授業はもちろん、CASプログラムを通じた多様な体験、他の2コースの生徒たちとの体育祭、学園祭や部活動を通じた交流等もあり、ひとりひとりが自分らしさを発揮できる素晴らしい環境です。全国レベルで活躍している部活も多く、強豪のアメリカンフットボール部では今、IBコースの生徒が副主将を務めています。また、高校生を対象とした寮も備えていますので、関西以外の方も本校で学ぶことができます。是非一度キャンパスに遊びに来てください。

--本日はありがとうございました。


 アメリカの大学ではIBDPを修了した生徒に単位を与えるなど、その教育プログラムのレベルの高さは世界の大学で広く認知されている。

 立命館宇治高等学校は3つのコースがあり、この国際的にも評価の高いIB教育が享受できるだけではなく、さまざまな行事や部活動などを通じて日本の高校生としての醍醐味も味わうことができるのが最大の魅力だ。自然豊かな広大なキャンパス、最先端の校舎、そして国際色あふれる教員・生徒たちのようすを体感しに、京都・奈良への旅の途中にでも一度足を運んでみてはいかがだろうか。

中学入学でも、高校入学でもIB資格取得を目指せる
立命館宇治中学校・高等学校

《加藤紀子》

加藤紀子

加藤紀子

1973年京都市出まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。一男一女の母。

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