【大学受験2023】狭き門の医学部受験、突破の鍵は「初志貫徹」と直前期の演習時間確保…駿台

 景気の後退から実学志向が高まっている中、医学部への人気が再燃している。2022年度を振り返りながら、最新の模試のデータをもとに、今年度の医学部入試の新情報や志願者の動きについて、駿台予備学校・進学情報事業部統括の湧井宣行氏に話を聞いた。

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駿台予備学校 進学情報事業部統括の湧井宣行氏
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 景気の後退から実学志向が高まっている中、医学部への人気が再燃している。2023年度の医学部入試の動向はいかに。

 2022年度を振り返りながら、最新の模試のデータをもとに、今年度の医学部入試の新情報や志願者の動きについて、駿台予備学校 進学情報事業部統括の湧井宣行氏に話を聞いた。

共テ難化により「国公立一次は8割以上」の鉄則崩れる

--2022年度の医学部入試、まずは国公立大学の結果から総括していただけますか。

 メディアを大きく賑わせた通り、2022年度は大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の平均点が、理系5教科7科目で-59点(推定)と大幅に下がりました。この影響により、多くの大学で医学部医学科の合格者平均得点率が80%を割り込みました

各大学合格者の大学入学共通テスト平均得点率の推移

 表にあるように、2021年度はどの大学でも80%を超えているのですが、2022年度は多くの大学が70%台。それまで国公立医学部の受験では「一次(共通テスト)は80%以上を死守」というのが鉄則だったので、その80%を割り込むというのは衝撃的でした。

 一方で、医学部医学科の志願者数は前年に比べてわずかながら増加しています。平均志願倍率は前期が4.2倍、後期が20.0倍と、依然として医学部は人気が高く、さらに最新の模試のデータからは、学力上位層が再び医学部志向になってきていることがわかります。理系では情報系の人気も高いのですが、医学部人気の再燃は、景気の後退によって実学志向が戻ってきた影響と言えるでしょう。

--私立大学の医学部入試の動向はいかがでしたか。

 共通テスト利用方式については、前年に比べて大きな変化はありませんでした。一方、一般方式では志願者数が前年度の93%程度に減少しましたが、受験率が上がり、実質倍率はほぼ前年度並みとなりました。2021年度はコロナ感染を懸念して、出願していても入試当日は受験しない選択をするケースも見受けられましたが、2022年度はコロナ禍が比較的落ち着いたこと、共通テストの難化の影響もあり、出願した大学は敬遠せずに受けに行った受験生が多かったのだと思います。

 志願倍率は共通テスト利用方式も一般方式も30倍以上、実質倍率12倍前後と、私立大学の医学部は相変わらずの狭き門となっています。

インタビューに応じてくれた駿台予備学校 進学情報事業部統括の湧井宣行氏

出願動向における“隔年現象”とは

--医学部の入試問題について、出題傾向に変化は見られましたか。

 医学部独自の問題では、思考力を問う問題が増えてはいるものの、全体として大きな変化はありません。合否を分けるのは、難易度の高い問題が解けるかどうかではなく、標準的な問題演習で点をしっかりと積み重ね、取りこぼしをしないこと。これまで通り全範囲まんべんなく、穴のない学習を着実に続けるべきです。

 共通テスト自体は今回で3回目になりますが、特に英語と数学についてはまだ傾向が読みづらい状況です。ただし2年分の結果を見る限り、センター試験に比べて、国公立大学の二次(個別)試験に強いタイプの受験生が高得点を取りやすい傾向にあります。易しい問題を繰り返すだけでは高得点は狙いにくいと言えるかもしれません。

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--2022年度、人気があった大学はどこですか。また、人気の理由は何だったのでしょうか。

 概して、前年に志願者が少なかったところは翌年増える傾向があります。この“隔年現象”により、山形大や群馬大、福井大等で志願者が増えました。

 岡山大も志願者を増やしましたが、入試の総合点に占める共通テストの比率を下げたため、共通テストで思うようにいかなかった受験者が2次試験での挽回を狙って出願したことも一因のようです。

 また、弘前大は第1段階選抜予告倍率が8倍と高く、こちらも共通テストで振るわず、第1段階選抜を避けたい受験生が集まりました。弘前大以外にも、第1段階選抜予告倍率が高い岐阜大、広島大、島根大も志願者数が増加しました。

 このように、国公立大学の医学部入試では、1年おきに人気の大学が入れ替わる“隔年現象”が起きたり、一次試験がうまくいかなかった場合に二次試験の配点比率が高いところを狙ったり、確実に二次試験に進めるように第1段階選抜予告倍率が高いところに出願したりする傾向が毎年顕著に見られます。

 私立大学では、金沢医科大が前年比1,436人増と、大きく志願者を増やしました。これは試験日が1日増えた影響です。初年度納付金を下げた東京医科大も志願者が増えました。また、医学部を志向する学力上位層が増えたことで、上位校の慶應義塾大、東京慈恵会医科大の人気が上昇しました。

 中堅の獨協医科大、杏林大、北里大の一般方式においても志願者が増えましたが、一方で、獨協医科大、杏林大に関しては共通テスト利用方式の志願者を減らしました。私立大学専願層の共通テスト離れと、国公立大学併願組の出願数の減少が影響として挙げられるでしょう。

昨年に引き続き、理系上位層の医学部志向目立つ

--2023年入試の全体観を教えてください。

 共通テスト3年目、コロナ禍の影響も薄れ、学習指導要領の改訂から新課程に対応した入試に変わるまであと2年あるということで、全体的には昨年と比較しても「無風」の様相で落ち着いた入試になると思います。

 その中でも医学部医学科は、今年も堅調な人気が続いていますね。入学定員は2023年度もほぼ前年並みと見込まれていますが、関東・関西の都市部を中心に医学部志望者の数が増えており、理系上位層の医学部志向が目立ちます。

--最新の駿台模試をベースにしたデータから見ると、2023年度入試で医学部受験生に人気のある大学はどのあたりでしょうか。

 例年、国公立大学に関しては共通テストの結果次第というところもあり、まだ様子見の状態です。模試のデータで見る限り個別の大学の動向では目立った動きはありませんが、強いて言うなら、岐阜大が後期日程を廃止する影響で、後期日程を実施する近隣大学への志望者がやや増加傾向にあるというくらいでしょう。

「現時点の偏差値と合格ラインとの差分を『努力目標』と捉えて」(湧井氏)

 私立大学では、東海大が数学の範囲から数IIIを除外した影響からか、模試の動向を見ても志願者が増えそうです。東邦大は、これまでの1月下旬から2月上旬に試験日を大きく後倒しにしたことで、志願者数は増えるのではないかと予想しています。

 また、関西医科大は、2023年度以降入学する学生に対し、6年間の学費を2,770万円から2,100万円に減額すると発表しました。この学費は、全国の私立大学医学部の中で3本の指に入る安さです。これにより、関西地区の国公立大学志望者を中心に志望する受験生が増えており、模試の動向も好調です。今後、関西医科大を受ける学力上位層が増えることは間違いなく、難易度も上がるのではないかと思います。

 一方で、東京女子医科大は昨年度の学費1,200万円値上げ等も影響し、3年連続で志願者を大きく減らしました。しかし今回の入試では、日程変更により、日本大とはバッティングするものの、前年まで同日程だった日本医科大、東海大とのバッティングが解消され、さらにここ3年の志願者減少の反動も見込まれ、志願者が増える可能性があります。

 その他、北里大が東京都内にも試験会場を追加で設けることになったり、順天堂大が共通テスト利用枠と地域枠の入学検定料を6万円から4万円に値下げしたりといった動きもありますが、これらは志願者増につながるとしても限定的ではないかと思います。

 1点だけ気を付けたいのは、私立大学の中には、共通テストの結果によって出願者が直前に急増する大学があるという点です。とりわけ2022年度入試では、出願の締切りを共通テスト後に設定していた大学が志願者数を伸ばしています。今回も、共通テストで思うような結果が得られず、国公立大学への合格可能性が厳しいと判断した受験生がこうした大学に流れてくる可能性がありますので、注意が必要です。

受験校決定、併願スケジュール…直前期の対策も「駿台」がサポート

併願スケジュール…国公立大学は“省エネ”、私立大学は全出願

--私立大学医学部入試は、日程が複雑で併願の組み方が難しく、体力的にもきついように感じます。出願に関してのアドバイスをお願いできますか。

 国公立大学との併願者は、私立大学の共通テスト利用方式での定員枠をうまく使い、国公立大学の二次試験の勉強に時間が回せるよう、“省エネ”するのがコツではないかと思います。

 私立大学専願の受験生は、本人が行きたい大学であれば連続日程でもすべて出願しておくべきです。「連続日程はうまくいかない」と言う人もいますが、我々がこれまでのデータを見る限り、3日連続受けて3日目の合格率がいちばん悪いということはありません。むしろ、受けていくうちに試験慣れする人もいますし、最初は緊張と不安で眠れなかったけれど、さすがに3日くらい経つと良い意味で疲れが溜まってきて逆に熟睡でき、翌日からは体調万全で気分良く受けられたという人もいます。

 私立大学の医学部の受験機会は多くても前期と後期の2回で、何度も受験のチャンスがあるわけではありません。この限られたチャンスを逃すのは非常にもったいない。連続日程に耐えうる気力と体力があるのなら、なるべくチャレンジするほうが良いと思います。

--受験する大学を選ぶにあたり、模試の偏差値はどの程度参考にすべきですか。

 特に現役生は、秋の模試から本番に向けてぐんと伸びます。したがって、今の偏差値に気持ちを引っ張られないようにしてください。仮に判定が悪くても志望校を下げる必要はありません。合格ラインと現状との差分を「努力目標」と捉えて、ここから頑張ってほしいですね。

 反対に、今は判定が良い人も、これから周りが追い上げてくる時期なので、決して油断しないことが大切です。

--では、どのタイミングで、どのような指標で最終的な受験校を決めるべきでしょうか。

 先ほど申し上げた通り、国公立大学に関しては共通テストの結果次第ではありますが、ポイントは「二次力」です。どの大学の二次試験であれば自分自身が対応できるのか、自分の「二次力」に合致するところを受験すること。これが合格へのカギです。

 だいたいの人はこの時期であれば各々第一志望の大学を決め、そこに向けた二次試験対策をやっていくことになると思います。ただ、そうやって努力しても、その前段階の共通テストで失敗してしまうことはよくあります。そこで心が折れてしまう受験生も多いですが、我々がこれまで見てきた限り、第1段階選抜さえ突破できれば、自己採点がE判定でもあきらめる必要はありません。これまでその大学を目指して勉強してきたことは大きなアドバンテージになりますし、実際に第一志望を貫いた結果、毎年のように二次試験での逆転合格が起きているのです。

 逆に「なるべく人気がないところを受けて合格の可能性を上げたい」というのが渦中の当事者の心理だと思いますが、実はこれにはあまり意味がありません。“隔年現象”で倍率を追ったり、一次で失敗したからといって二次の比率が高い大学で逆転を狙ったりしても「二次力」がなければ玉砕するだけです。

 下記の岡山大の表を見ていただくと一目瞭然なのですが、合格者と不合格者の駿台全国模試での成績を比較すると、これだけの差があるというのが実態です。

2022年度岡山大<前期>合格・不合格者の成績比較

--今までやってきた努力を無駄にしないためにも、あえて「強気」でいることが大事だと。第1段階選抜で引っかからない限り、もともと自分が行きたいと思っていた第一志望校を受験した方が良いということですね。

 はい。これまで医学部に合格した生徒を大勢見てきて、毎年強く感じるところです。

 確かに、共通テストの結果次第では安全志向に傾く気持ちもよくわかりますが、むやみに安全志向に流れてしまうと、同じ心理状態で動く受験生がそこに集まり、逆にレベルがひとつ下の大学の方が難化する現象も毎年のように起きています。むしろ、そのまま強気で初志貫徹した方が良い結果に結びつくケースは少なくありません。ですから、よほどのことがない限り第一志望は変えない方が良いと思います。

直前期の学習「演習」の時間を最大限確保して

--入試直前期、学習はどのように進めていったら良いでしょうか。

 最優先は、不安が残るところの基本事項を確認することです。ただ、苦手分野ばかりやっていると不安が膨らむ一方なので、モチベーション向上のためにも得意科目に充てる時間を確保すると良いでしょう。私立大学の専願者は大学ごとの特徴をつかむために、早めに過去問題に着手し、しっかり取り組みましょう。

 入試直前期は、とにかく「演習」が大切です。実践的な演習を通じて、分野ごとの完成度を確認し、足りなければ補い、また演習するというルーティンを回していくことで、この時期は学力がぐんと伸びます。毎年起きる逆転合格は、この時期をどう過ごすかにかかっていると言っても良いほどです。

 駿台の冬期・直前講習では、一流の講師陣が研究を尽くして作成した最新の予想問題で演習ができ、効率的に勉強を進めることができます。入試本番では大勢の人に囲まれ、マスクをして問題に取り組むことになるので、緊張感のある環境でよりリアリティをもって勉強できる講習の利用がお勧めです。

 医学部入試は定員が少ないところに多くの受験者が殺到するため、たった1つのミスが合否を分けます。そこで悔しい思いをしないよう、冬期・直前講習をうまく使って弱点を補強し、小さな穴まで防ぐとともに、得意科目の安定感を高めて得点力にも磨きをかけたいところです。今年の冬も、学校別対策講座を含めて多様なラインアップを用意していますので、自分のニーズに合ったものを選び、時間を無駄なく効果的に使ってもらえればと思います。

--たくさんの具体的なアドバイスをいただきました。本日はありがとうございました。

 医学部入試は今年も引き続き「狭き門」の予想だ。しかし湧井氏のアドバイスにあったように、E判定でも、今と合格ラインとの差分を「努力目標」ととらえる。この前向きなマインドセットさえあれば、まだ伸びしろは無限。第一志望への道はここから。冬期講習を活用して時間を効率的に使い、悔いのないラストスパートを走り抜けてほしい。

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《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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