【ICTでつながる学び】すべては夢を叶えるために…自ら未来を切り拓く東京立正高等学校

 各地で人気を集める私立校における先進的なICT教育の取組みを紹介する本企画。今回は東京立正高等学校を取材し、自分の未来を自ら切り拓く力を育む学びとICTの役割について、学校長の梅沢辰也先生をはじめ、先生方と生徒の皆さんに話を聞いた。

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ClassPad.netのきめ細やかな機能が、学校の教育目標と合致し、手厚い教育が展開されている
ClassPad.netのきめ細やかな機能が、学校の教育目標と合致し、手厚い教育が展開されている 全 10 枚 拡大写真

 東京都杉並区の都心に広々とした敷地を構え、緑豊かなキャンパスを展開する東京立正中学校・高等学校。昭和元年に設立され、今年で96年と長い歴史をもつ同校は、約1万8,000平方メートルもの敷地面積を誇り、杉並区保護樹木のヒマラヤスギをシンボルツリーとする緑あふれる美しい学校だ。

 日蓮宗の堀之内妙法寺を母体とし、岡田日帰上人により設立された同校は、建学の精神である「生命の尊重・慈悲・平和」を今も教育理念として掲げ心を育てる教育を行っている。自分の未来を自分の手で切り拓く力や自己肯定感にあふれながら探究する姿勢、めまぐるしく変化する世界の課題に挑んでいく力を養う教育が特徴だ。

 本シリーズ企画では、各地で人気を集める私立校における先進的なICT教育の取組みを紹介する。今回は東京立正高等学校を取材し、自分の未来を自ら切り拓く力を育む学びと、そこで活用されるICTの役割について、学校長である梅沢辰也先生をはじめ、先生方と生徒の皆さんに話を聞いた。

「生命の尊重・慈悲・平和」を教育理念に掲げる

 杉並区堀之内にある日蓮宗派の寺院、堀之内妙法寺を母体とする東京立正中学校・高等学校(以下、東京立正)。都心にもかかわらず広大で、自然豊かな敷地には、中学高校合わせて約550名の生徒が通う。1クラス30~35名のクラス編成で、中学校は1コース、高校は目的に沿った3コースに分かれて学んでいる。「東京立正は自然が多いので、のびのびと生活できる」と生徒にも好評だ。

 当時、堀之内妙法寺の住職であった岡田日帰上人は、「五重塔を建てるよりも、学校をつくって人間の塔を建てよう」という決意から、五重塔建立を取り止め、昭和元年に同校を設立。「生命の尊重・慈悲・平和」を教育理念として、心を育む教育を展開している。そうした日蓮宗の教えを汲み、毎週月曜には全校生徒が講堂に集まり、瞑想を行う等、自分を見つめ、心の安定を図る情操教育を実施。ノーチャイムで生徒自らが時間を意識して自主的に生活しているのも特徴だ。

 また、教育理念のもと示されている「生徒を幸せにする5つの目標」が校風を醸成する大きな要素となっている。その目標は、(1)「文部両道の極み」を希求し、授業が面白くて部活動が楽しい学校、(2)「全員レギュラー」補欠は一人もいない学校、(3)「挑戦と失敗」を応援する学校、(4)「なぜ」を追求する学校、(5)「教室から世界を変える」と挑戦する学校の5つ。

 これらが反映された東京立正の校風によって、部活と勉強のどちらにも全力で取り組める環境が整えられており、実際に文武両道に励む生徒が増えているそうだ。自分を信じ、自信を持ち、仲間との違いを知り、尊重しあうことを通して自己肯定感を高めつつ他者をも理解し、主体的な学びを進めている生徒達。

 そして学校は、挑戦には失敗がつきものだとして、生徒が積極的な行動を起こし、失敗してもそこから学び、次の挑戦をしていく取り組みを支援。生徒ひとりひとりが、常識の前で立ち止まって「なぜ?」と思考し、自ら判断する人間となることを目指し指導をしているという。教室を世界の縮小ととらえ、東京立正の教室から、世界を少しでも良い方向に変える一歩を踏み出そうと促しているのである。

取材に応じてくれた東京立正中学校・高等学校校長の梅沢辰也先生

 学校長である梅沢辰也先生は「この5つの目標を通して、同校の教育目的である、自立した一市民として、世の中で、それぞれの立場で活躍ができるような人物を育み、世に輩出する取組みを進めている」と話す。また「今までの日常がこれから続くかどうかもわからない。目の前にあることに対して『なぜ?』と問いを立て、その問いに答えられるよう学びを深めてほしい。皆が言っているからではなく、自己責任で決定できる力を養うことが必要」と同校での教育意義を語ってくれた。

 この教育意義を実現するために実施しているのが、国内外の学校と交流する教育プログラムだ。梅沢校長によれば「今までは、カンボジア、オーストラリアをはじめとする海外の学校との国際教育プログラムを整えてきたが、2023年度以降は、北海道、沖縄を中心とする国内の学校との連携も強めていく」という。「世界の縮小」として、教室内での学びの充実を図る一方で、世界各国、国内の複数の地域をフィールドに、現地の学生たちと交流しながら課題解決型の学びを展開する運びだ。

 そして自己決定できる自立した人間を育む際の大きな支え、そして場所や時間に縛られない軽やかな学びを支えているのが、同校の新しいICT教育である。

ICT学習のステージアップで教育の質を高める

 同校のICT教育は早くから進められ、生徒への1人1台端末の配備に至っては10年以上前からスタートした。現在は中学・高校とも全生徒が端末を利用しており、各教室には電子黒板を設置。校内LANを整備して、パソコンやタブレット端末、電子黒板を有効に活用した学習を行っている。また、自立学習応援プログラム用アプリ「すらら」や、生徒支援システム「Classi」を導入して、自宅学習や生活管理等に役立てている他、新しい取組みとして導入され、授業で使われ始めたのがカシオ計算機のオールインワンICT学習アプリ「ClassPad.net」だ。

 ClassPad.netは、授業に必要な機能がすべて入ったICT学習アプリ。その内容は、カシオの電子辞書「EX-word」をベースにした豊富な辞書機能、ふせんや画像、リンク等のコンテンツが貼り付けられるデジタルノート機能、課題の送受信や生徒の回答一覧表示といったオンライン・双方向授業に役立つ授業支援機能、カシオの関数電卓のノウハウを詰め込んだ高度な数学ツール等、多岐に渡る。

カシオの電子辞書「EX-word」をベースにした豊富な辞書機能は、ClassPad.netの最大の魅力

 梅沢校長は同校のICT教育について「コロナ禍、やらざるを得ない状況に追い込まれて、全教職員で推進したことにより、かねてから着手していた本校のICT教育が一層加速した。その後、コロナ禍が落ち着き、ほぼ通常の状態になってきたとき、『コロナ禍だから』ということではなく、教育の質を高めていくことにICT利用の目的が変わってきている」と評した。ClassPad.netについては、「ICT教育を次のステージに進める際に何を導入するか検討していた。ClassPad.netは辞書機能があるのが非常に有効であり、さらにノートとして使える機能もある。利用用途が幅広いので、まさに私たちが求めているものであると可能性を感じた」とコメント。実際、ClassPad.netが同校の授業や学びに新しい変化をもたらし始めているようだ。

置いてけぼりの生徒を作らず、フォローできる体制

 今回は実際にICTを用いた授業を見学させていただいた。二ツ森将眞先生による高校1年生の数学Iでは、平方完成、一次不等式、連立一次不等式の演習を学ぶ授業が行われた。「学年末試験まであと3日間ということで、 1年間の計算分野の復習をピックアップした」と二ツ森先生。ClassPad.netを用いて先生から生徒に課題が配付され、課題を解き終わった生徒は答え合わせをしたうえで、自身の解答の画面を写真におさめ、そのスクリーンショット画像を先生に提出する流れだ。また、授業の終わりにはふせん機能を使って授業の振り返りを行い、生徒が感想等を提出する時間も設けられていた。

教師の端末で生徒の学習進捗が確認できるため、リアルタイムでフォローできる

 「ClassPad.netを活用するようになってから、わからなくなっている生徒を置いていかないようにできるようになった」と語る二ツ森先生。「教師として『置いてけぼりを作らない』という目標をもっていたものの、導入前はわからない子が埋もれてしまい、誰が置いてけぼりになっているのかも分からず、そのまま放置してしまうときもあった。でも現在はClasspad.netを見ると課題の提出状況がリアルタイムでわかり、どの生徒が出していないかをすぐに把握してサポートできる」と語る。このようにICTの力によって、二ツ森先生自身が目指していた「誰も置いていかない」という理想の授業を作る筋道が構築されつつある。さらに、今後は「Classpad.netに入っているグラフツールの機能をもっと生かしたい。たとえば高校2年生の3次関数で曲線グラフを描くときにツールを使って表示し、『考えさせる授業』をやってみたい」と今後の期待を語ってくれた。

リアルタイムで意見を共有し、多様な視点を取り入れる

 一方、原子桂輔先生が担当した高校1年生の現代国語の授業では、時間と自由をテーマにことわざを辞書で調べ、Classpad.netのふせんにまとめて発表、共有する授業。原子先生は「その場でいろいろな意見を共有できるのが非常に便利」だと絶賛する。「今回の授業では、自分自身の意見を発表するという経験と同時に、さまざまな視点で『時間』という言葉(概念)を捉えてほしかったので、提出したものがリアルタイムで反映され、他の生徒のふせんも確認できる仕組みが非常に便利だった。他の生徒がまとめた視点も共有することによって、お互いの視野が広がった」と振り返った。こうしたICT活用による即時性や利便性の提供により、徐々に生徒の積極性も引き出され、生徒の勉強へのスタンスも前向きになっているようだ。

 原子先生は「以前は国語のノートに『自分の考えをまとめてみよう』という課題でも、(きれいにまとめたいがために)どうしても答えを待ってしまって、こちらが答えを教えてからやっと書き始める生徒が多かったが、Classpad.netを取り入れてから、自分でとりあえず書いてみようという生徒が増えた。さらに、紙のノートでまとめるとなると単語や箇条書き等短文で終わる生徒が多かったが、今では長い文章で自分の考えをまとめられるようになってきたと感じる」と評価した。

ふせん機能を活用することで、積極的に自分の意見を表現する生徒が増えた

 また、自分の考えを共有する際に名前を隠したいと思っている生徒もいる中で、教員の画面で匿名で表示することができるのも良い機能と語る。「名前を隠して発表することによって、生徒自身も気を遣わずに自分自身の考えが書け、教員もピックアップする際に、変に意識しなくて済む」と述べた。Classpad.netのきめ細かな機能によって、生徒も先生ものびのびと自由に意見を述べ合い、共有できる空間が醸成されているようだ。

自ら調べて、好きなときに学ぶ

 実際に授業を受けている生徒からも、「辞書等を持ち運ぼうとすると、とても重くなってしまう。タブレット1台で済ませられるのが楽」、「たくさんの教科の用語集が入っているので、パソコン1台あるだけで好きなときにすぐに勉強ができる」、「辞典の種類が豊富。自宅学習をする際に持ってない英語辞典等を利用することができるので、よりたくさんのことを知ることができる」、「英文問題を解くときに知らない単語があってもそのままにしていたが、すぐにパソコンで調べられるので、わからないままで終わらせることがなくなった」、「現代国語でよく使う。いろいろな単語を調べるのにとても活用しやすい。特に単語の意味のマーカーが引けるところが気に入っていて、全部に引くのではなくて、一部だけ引きたいところに引けるのが良い」等の声が寄せられた。ICT教育の評判は上々のようだ。

 さらに、ClassPad.netのみならず「パソコンを使った英会話等をやっている。音声や動画を使った新しい学びができるので、とても魅力を感じる」、「今まで紙で行ってきた復習テストや授業等を(端末によって)ゲーム感覚で受けることができ、今までの授業よりも楽しく行えるのがとても良い」との声もあり、端末を最大限活用しながら学びを深めている生徒のようすが伺えた。

 同校のICT教育は、保護者からも高い評価を得ている。「電子黒板を活用したり、タブレットを使った課題は子供も操作が慣れていて取り組みやすい。データを保存できるので、家に帰ってから自分がまとめたものをもう一度確認できるのはとても便利だと思う」、「コロナやインフルエンザ等で長期欠席した子供のフォローをオンラインで行ってもらえるのはとても助かっている」等の声が学校に寄せられているという。

 1人1台端末およびClasspad.net等のアプリの活用によって、より手軽に、より気軽に、より簡単に学ぶことができるようになった。いつでもどこでも好きなときに勉強ができ、わからないところを調べられることで、自主的に学ぶ姿勢の礎が作られている。これは、同校が掲げる教育目的である「自立した一市民として、世の中で、それぞれの立場で活躍ができるような人物」に近づく確実な一歩だといえるだろう。

夢に向かって邁進する生徒を支える学校

 最後に、生徒たちに東京立正で学んだことを生かして将来どんなことをしたいか聞いた。「体育教師になりたいと考えているので、保健体育の授業等でICTをうまく活用して生徒に保健体育の授業を教えていきたい」、「スポーツを見たり、アスリートを応援したりが大好きなので、ひとりひとりのアスリートの毎日の体調や運動量を記録して、その記録からアスリートをしっかり支えられる食事が作れる管理栄養士になりたい」、「将来は建築士になりたい。パソコン等を使って立体的に建物を考えたり、パワーポイントを使って発表プレゼン等したり、皆が笑顔で利用しているところを見たり、自分で利用してみて改善していくのが楽しそう」、「夢は2つあって、1つはエンジニアで、もう1つはカウンセラーになりたいと思っている」と実にさまざまな夢を語ってくれた。

 生徒たちがのびのびと自由に夢を描き、それに向けて日々邁進しているのも、挑戦と失敗を応援する先生方や環境があってこそ。そしてその教育と実践を支えているのがICT技術だ。未来を自分の手で切り拓く力を育む同校の豊かな教育と、ICT技術の掛け合わせにより、夢をかなえる道を歩む生徒たち。東京立正の生徒たちが世の中に出て、それぞれの立場で活躍する未来が楽しみでならない。

コロナ以前から教育のICT化に取り組む東京立正中学校・高等学校
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《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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