こども未来戦略方針案…3兆円半ば予算で少子化対策を推進

 岸田文雄総理は2023年6月1日、千葉県松戸市の先進的な子育て支援施設を訪問。施設の視察やこども政策についての対話を行った。その後、総理大臣官邸で第5回こども未来戦略会議を開催。次元の異なる少子化対策の実現に向けた「こども未来戦略方針」案を示した。

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総理の一日:こども未来戦略会議
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 岸田文雄総理は2023年6月1日、千葉県松戸市の先進的な子育て支援施設を訪問。施設の視察やこども政策についての対話を行った。その後、総理大臣官邸で第5回こども未来戦略会議を開催。次元の異なる少子化対策の実現に向けた「こども未来戦略方針」案を示した。

 訪問先の「ほっとるーむ八柱」は、子供を預けながら仕事ができるコワーキングスペースなどを設置している先進的な子育て支援施設。総理は松戸市の子育て政策の説明を聞き、施設を視察。実際の利用者などを交え、こども政策について対話した。

 その後行われたこども未来戦略会議では、若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが少子化トレンドを反転することができるラストチャンスとし、「若い世代の所得を増やす」「社会全体の構造・意識を変える」「すべてのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する」の3つを基本理念とした次元の異なる少子化対策「こども未来戦略方針」の素案を明示。スピード感を重視し、具体的な政策について2024年度からの3年間に集中して取り組む「加速化プラン」をたて、できる限り前倒しで取り組むとした。

 加速化プランでは、児童手当の拡充として、所得制限撤廃、支給期間を高校卒業まで延長。0歳から3歳未満を一律1万5,000円、3歳から高校生まで一律1万円、第3子以降は一律3万円の給付とし、2024年度中の実現を目指す。「出産・子育て応援交付金」10万円の制度化検討や、2026年度をめどに出産費用(正常分娩)の保険適用の導入も検討する。

 幼児教育・保育の質の向上では、75年ぶりの配置基準改善と保育士らのさらなる処遇改善に着手。保護者の就労要件を問わず、時間単位で柔軟に保育施設を利用できる新たな通園制度「こども誰でも通園制度(仮称)」を創設し、2023年度中にモデル事業を展開、2024年度からは制度の本格実施を見据えた形でモデル事業を進める。

 男性の育児休業取得率の目標は現行から大幅に引き上げ、2025年に公務員85%、民間50%を目指すほか、育児休業の給付金も増額。夫婦ともに一定期間内に育児休業を取得する場合は、給付率を現行の手取りで8割相当から手取りで10割相当まで引き上げる対応について、2025年度からの実施を目指す。

 さらに、高等教育費のさらなる支援拡充策、今後こども大綱の中で具体化する貧困、虐待防止、障害児・医療的ケア児に関する支援策についても前倒しして実行することとし、全体として3兆円台半ばの予算規模で少子化対策の充実を図る。岸田総理は、こども・子育て関係予算規模について、「子供1人あたりの家族関係支出で見て、経済協力開発機構(OECD)トップ水準のスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進する」とした。

 また、少子化対策の財源については、2028年度までに徹底した歳出改革などによって確保することを原則とし、2030年の節目に遅れることがないよう、「加速化プラン」の大宗を2026年度までの3年間で実施。「加速化プラン」の実施が完了する2028年度までに安定財源の確保を目指す。一方、その間に財源不足が生じないよう、必要に応じて「こども特例公債(こども金庫が発行する特会債)」を発行するとした。国民に実質的な追加負担を求めることなく、少子化対策を進めていく方針を示している。

《畑山望》

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