中学受験生にとって「天王山」と言われる夏が終わり、塾に通っている方は「過去問」という言葉を耳にし始める季節だ。夏休み明けからの過去問対策に備え、手元に入試問題を取り寄せているご家庭も多いだろう。
過去問の多くは、数年分がまとめられたものが出版社から発行されているほか、学校から取り寄せることができる場合もある。一方で、それらを用いていかに対策していくかは、家庭では判断しかねるところだろう。むやみに過去問演習を繰り返すだけでなく、出題傾向や学校側の出題意図・方針を理解してから取り組むことで、より一層効果的な学びにつながるのは言うまでもない。
そこで本記事では、中学受験専門塾ジーニアスの協力により、今注目の私立中学校の入試問題を解説しながら、その出題意図や近年の傾向について分析する。
今回は、豊島岡女子学園中学校の2023年度の入試問題をピックアップ。多くの難関私立中志望者を合格に導いてきたジーニアスの算数担当の教誓健司氏、国語担当の松本亘正氏が解説する。
入試問題を通して伝わる、豊島岡女子中の教育方針
2022年5月に創立130周年を迎えた、豊島岡女子学園中学校（以下、豊島岡女子中）。女子裁縫専門学校、そして東京家政女学校を前身とする豊島岡女子学園は、建学の精神を引き継ぎながらも、現在は「志力を持って未来を創る女性」の育成をスクールミッションに掲げ、科学的思考で課題解決できる力、挑戦する力、世界で活躍できる力をグラデュエーション・ポリシーに据え、教育活動を展開している。
2018年度から文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール（SSH）指定校として成果をあげていることや、大学の合格実績などからも理数系に強いイメージのある豊島岡女子中だが、文系科目においても論理的に考える力、思考力を養う授業が行われている。そしてその方針は、入試問題にも垣間見られる。本記事では、豊島岡女子中の2023年度入試の問題を取り上げ、出題意図や構成について分析する。
途中式不要＝部分点なし…受験生の実力をダイレクトに試す問題
まず解説するのは、第2回の算数、最後の立体図形の問題だ。豊島岡女子中では例年難度の高い立体図形の問題が出題される。今回の問題は、立体図形の切断がテーマで、小問3つの構成。小問1は比較的解答にたどり着きやすいが、小問2と3は難しく、大問全体の流れを理解してステップを踏むことが重要となる。
豊島岡女子中の算数の問題は、解答用紙に答えのみを記入する、言い換えれば、途中式を記入しない出題形式が特徴だ。「部分点」という救済策がないだけに、受験生にとっては難しく思われがちだが、ジーニアス教誓氏は「（豊島岡女子中の場合）流れや難度、数字の調整がうまく、理解度や考える深さ、実力が点数に反映されやすい良問」と評価する。
知識がすべてではない、論理的に解く力の大切さ
もう1つ、本動画で解説するのは第1回の国語、大問2・問2。暦による季節区分を示す「二十四節気」に関する問題だ。春分、夏至、秋分を含む二十四節気の各名称が並ぶ表のうち、複数の空欄があり、「処暑」の時期として適当なものを選ぶというもの。ジーニアス松本氏は「単なる知識問題ではなく、文章からヒントを得て、論理的な思考の過程を経ることで正答につながる問題」だと分析する。二十四節気に関する知識がなくても、丁寧に考えを重ねることで答えを導くことができる手順を、本動画では解説している。
本動画のほか、豊島岡女子中の公式Webサイトでも、各教科の先生方による詳細な入試問題報告動画が掲載されている。該当する試験回の受験者数や平均点・最高点・合格者最低点、正答率分析について、作問を担当する先生が直接解説する貴重な動画だ。
とりわけ正答率分析をもとにした「合否を決める問題」の詳細な解説は、受験生にとって非常に参考になるものだろう。豊島岡女子中では、各入試問題について、受験者の点数をもとに上位・中位・下位の3層に分け、それぞれの層における正答率を比較している。いずれの層でも正答率が似通っている問題は「差がつかない問題」、一方上位と下位の正答率に開きが生じている問題は「取りこぼせない問題」、開きが大きいほど「合否を決める問題」と言える。この指標は、過去問演習における重点の置き方にもつながる重要な情報だ。多くの私立校の入試問題をみているジーニアスによる第三者視点の解説とあわせて、過去問演習に活用してほしい。
豊島岡女子学園中学校
所在地：東京都豊島区東池袋1-25-22
2024年度入試日程：
第1回入試 2024年2月2日（金）
第2回入試 2024年2月3日（土）
第3回入試 2024年2月4日（日）
入学者募集要項：こちらのページにて公開中
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入試問題解説動画：こちらのページで視聴可能
