【共通テスト2024】英語はセンター試験回帰の傾向「書ける」生徒が高得点に…河合塾マナビス 森千紘先生

 4回目となった共通テストを振り返り、2024年度の英語の出題傾向や注目問題について、河合塾・河合塾マナビスの英語講師 森千紘先生に話を聞いた。人気講師が説く、近年の受験生の課題、偏差値を大きく上げる効果的な勉強への取り組み方、自信の付け方、保護者の関わり方とは。

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【共通テスト2024】英語はセンター試験回帰の傾向「書ける」生徒が高得点に…河合塾マナビス 森千紘先生
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 「時間が足りなかった」。2024年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の終了後、「英語」のリーディング問題に苦戦を強いられた受験生から、SNSにさまざまな感想が寄せられた。

 4回目となった共通テストを振り返り、2024年度の英語の出題傾向や注目問題について、河合塾・河合塾マナビスの英語講師 森千紘先生に話を聞いた。人気講師が説く、近年の受験生の課題、偏差値を大きく上げる効果的な勉強への取り組み方、自信の付け方、保護者の関わり方とは。

答えの探し読みはNG、全文を読み把握する力が必要

--2024年度共通テストの「英語」について、率直なご感想をいただけますか。

 まず、直感的な印象としては、読解文が長くなり、量が多いのは明らかでした。以前から一貫してお話していますが、徐々にセンター試験のような問題が増えていると感じました。共通テストに変わった最初の年のような、グラフや図をいくつも見直して解くというものではなく、読んで内容を理解した上で解く、文章全体を理解しないと解けないという出題形式でした。

 河合塾では、高3生・高卒生対象の「全統記述模試」を行っていますが、その記述模試の偏差値が高い受験生は、共通テストでも基本的には点数も安定しており、偏差値が高い傾向にあります。

「記述模試の偏差値が高い受験生は、共通テストでも得点が高い傾向」河合塾・河合塾マナビスの英語講師 森千紘先生

 ただ、共通テストの課題として感じているのが、その後の国公立大学2次試験(個別試験)や私立大学入試に対応した学習に切り替えるのに、センター試験の時以上の時間がかかり、受験生への負担が大きいという点です。以前は、センター試験対策が国公立2次や私大入試にも適用しやすかったのですが、共通テストに変わってからは共通テストのための対策が必要で、その後の切り替えがうまくいかないケースが見られます。実際に、今年も共通テスト後に受験生からの相談が相次ぎ、たとえば「急に一橋大学の英語の問題ができなくなった」といった声もありました。

--今年の英語については、難化したという意見もSNSで見られましたが、いかがでしたか。

 英語が難化したと言われているのは、リーディングの分量と、大問5の小説の問題からだと思います。実際に私も解いてみましたが、「全部の英文を読んで、メモを取りながら内容を記憶して、一気に消去法でどんどん解いていく」というスタイルで解けば、実はそんなに難しくなかったと感じています。

 逆に、全体を読まずに、説問だけ読んで欲しい情報を探すといった解き方をした受験生にとっては難化したと言えます。これは、「文章全体を読んで意図を汲める学生になってほしい」という出題側のメッセージで、今まで受験勉強をしっかりとやってきたかが問われている気がします。

「文章全体を読んで意図を汲める学生になってほしい」という出題側のメッセージ

 リーディングの平均点が下がった一方で、リスニングは上がりました。リスニングは、社会的テーマや一般常識で解ける内容で、解きやすかったと思います。対策としてオーバーラッピング(問題文を読みながら、流れる音声と同時に発声を行う)して完コピしたり、音声を聞かなくても解ける問題を探ったりという方法を生徒に伝えてきたのですが、練習すれば報われるテストだったと思います。

--今年のトレンド、これまでの共通テストとの違いはありますか。

 トレンドとしては、リーディングで例年出題されている「オピニオン・ファクト」の問題が、年々わかりやすくなっているということです。以前は、少し無理矢理感があり、解きづらさがあったのですが、今年は大分シンプルになっていたので、今後はもっと対策しやすくなっていきそうです。

 印象的だったのが、大問3の問2の問題です。「どういうコメントをするべきか」を選ぶものですが、こういった問題は、文章の一部分だけを読んだだけでは抽出できない。文脈全体を読んで把握しなければいけないですね。

--今年も「ズバリ!的中・同傾向問題」を発表されていましたね。

 2024年は同傾向問題、2023年の追試の英語では、ズバリ!的中問題がありました。

 模試やテキストの問題作成にあたっては、大学の先生方が今どのような研究をなされているかといった情報も分析するほか、大学の編入試験などを参考にする場合もあります。たとえば東大、京大、早慶などはそうした研究の成果もあり、2次試験の的中問題もあります。共通テストでの的中はなかなか難しいですが、4年分の出題から練習問題は充実していますし、同傾向問題、的中問題は今後もしっかり作成していけると思います。

 2025年度の共通テスト対策としては、4月の最終週から5月の初旬にかけて、河合塾の「全統共通テスト模試」が始まり、高校1・2年生向けには、11月に「共通テストトライアル」も実施します。信頼いただけるクオリティの問題を出していきますので、安心して受験いただけると思っております。

コロナ禍を経て記述力が弱い生徒が増加傾向

--長年にわたって、全国の生徒さんたちを見ていらして、近年の大学受験にのぞむ生徒さんたちには、どんな特徴がありますか。

 沢山ありますが、学力的なところでいうと、記述力が弱いところが特徴的です。これは、この3年間、一貫してお伝えしていることですが、学力以外のところに要因があります。

 勉強が苦手、これから勉強を頑張ろうとしている、勉強しているけれど点数が伸びない。そんな生徒たちに共通しているのは、「鉛筆を持たない」こと。ノートを書かない。メモをしない。黒板を写さない、あるいは写せないんですね。

 一方で、伸びていく生徒は、ずっと鉛筆を持っている。できない子は、すぐに鉛筆を置いてしまう。ノートを取らない生徒が増えたのは、コロナ禍でオンライン授業や動画視聴が増えたことも大きいです。コンテンツを消費することが、授業を受けることだと思っている生徒が、近年とても多くなりました。

--受け身になってしまったと。

 受け身も受け身。勉強時間が長くても見ているだけなので、成績は上がりません。オンライン授業中の姿勢も、完全にフリースタイルで、スマホをいじったり動画を見たりしている生徒もいるでしょう。見ているだけだから書かないし、先生から注意もされません。中には板書を「PDFで送ってください」なんていう生徒もいました(笑)。

 勉強しているときの仕草を人に見られることへの意識が希薄なため、コロナ禍以前より、だらしなくなっているし、自分がそうなっていることにすら気付いていないんですね。

「コンテンツを消費することが、授業を受けることだと思っている生徒が多い」と語る森先生

--書く習慣がないから、結果的に記述も苦手になるということですね。

 はい。これは昔からですが、「わかったことを、全部文字で言語化する」「書き出す」ということを面倒くさがる生徒は多いです。これを乗り越えると、急激に成績が上がります

 印象深かったある生徒は、偏差値60ほどだったのですが、高校3年生で初めて受けた「全統記述模試」では偏差値40台まで下がってしまったんです。泣きながら、「先生、英語できなくなった」と相談に来たので、答案を見たら、字も表現も高校生とは思えない稚拙なものだったんです。

 そこで、「英語の勉強をしなくて良いので、長文の日本語の模範解答をノートに写してきて」と話し、毎週ノートをチェックしました。「綺麗に書く必要はないから、丁寧に」と伝え、何度もやり直したところ、次の模試では偏差値60台まで戻りました。

 書くことをしない生徒は、どういう日本語を書けば良いのかわからない。表現のストックがないんです。日本語を書くという作業をしていないのに、頭の中でできているから良いと思っている生徒は昔からいましたが、コロナ禍でより増えたという印象です。

 私の担当している国公立クラスの生徒でも、軒並み合格したのは、和訳を書いて、定期的にノートを見せに来る生徒たちでした。

--自信がないと、なかなかノートを見せに行きにくい子もいそうですね。

 でも、そこを乗り越えてくる子もいます。私たち講師が心がけていることは、授業の姿勢は誰でも直せるものであるということです。そして、学力はそこから伸ばしていくものですから、字が汚いからといって、「お前はダメだ」なんて絶対に言いません。「字が汚くて読みづらいから、丁寧に書きなさい。そうすると、君は伸びる」と伝えます。

ノートは弱点を潰す、効率の良い成長のツール

--2025年度の共通テストは新学習指導要領対応の最初の年になります。高校1・2年生は、今からどんな勉強をしたら良いでしょうか。

 繰り返しになりますが、「書く」ことです。それも、ノートに書く。裏紙に書くという勉強法もありますが、練習で単語を書き殴る程度なら良いでしょう。しかし、裏紙に書いて捨ててしまう生徒は、成績が伸びない傾向にあります。また、字が小さくて薄い生徒は、自信がないのだと思います。私自身、子供のころに経験があるのですが、大きく濃く書いて間違えていたら恥ずかしいと思ってしまうんですね。

「書くことに対しての抵抗をなくし、書いて間違えることは当然であると思う。そこから、自信は生まれていきます」と語る森先生。ご自身も小学生時代は自信がなく、小さい字を書いていたと笑って話してくれた

 書くことに対しての抵抗をなくし、書いて間違えることは当然であると思う。そこから、自信は生まれていきます。ですので、勉強の仕方がイマイチわからない、頑張っている割には点数が伸びない生徒は、まずノートに書く。過去の自分を振り返られるようにする。それから、解答が間違っていても、消して書き直さない。

 ノートに残った自分の字と向き合うのが苦手という生徒もいますが、私たちは、「あ、その解答いいね。字がきれいだね」と、生徒の考えを肯定することから入ります。書いた内容が残っていることによって、大人としては、その子の成長も測れる。ノートは、本人にとっては振り返りの材料であり、できない自分と向き合う、弱点を潰す効率の良い成長のツールになります。

 それから、もうひとつ。頭を使って意識をして覚えて、吐き出すということは、一定の訓練を積まないとできません。ゲームのように、無意識に身体を通して習得して上手くなっていくものとは異なります。

 高校生の多くは暗記するということはどういうことなのかをわかっていません。実際の授業でも、1回復習したら「できた」と思ってしまう。だからこそ、早くから復習や、覚えることの意味を試行錯誤してほしいですね。それが、結局共通テストで高得点を取ることにつながっていくと思います。自分でできないならば、学習塾や予備校を活用していただくのもひとつの方法かと思います。河合塾マナビスでは受講した内容について、記憶の定着をより高めるための学習アプリも導入しています。

--保護者としては、どのようにサポートすれば良いでしょうか。アドバイスをお願いします。

 授業動画を見ることが当たり前になった現在、身近にいるご家族でも、お子さんの勉強への姿勢、授業態度に気付いていないことは多いですね。また、口を出すと、子供が勉強しなくなるかもしれない…と思って言えないと、子供の態度はどんどんガラパゴス化していきます。喧嘩になっても良いから、保護者の皆様も勇気を出して「これってどうなの?」と問題意識をもってお子さんに接していただきたいですね。難しいかもしれませんが、腹を割って、家族で情報を共有することもひとつの方法です。

 ただ、中学生以降ですと、なかなか素直に親御さんの意見を聞けないケースも多いです。その場合は、第三者の意見、それも信頼する講師などの大人が話すことで改善しやすいのではと思います。

--河合塾マナビスでは、まさに映像授業での学び方が大きなポイントとなりますが、どのような工夫をされているのでしょうか。

 私は河合塾で対面の授業も行っていますが、いちばん後ろの席の生徒でも、鉛筆を離すと注意しますし、寝ている子は起こしにいきます(笑)。ほかの人気のある講師陣も、生徒に「怖い」と言われながらも「先生の言う通りにしたら、成績が上がった」と、結果的に生徒から支持されています。

 河合塾マナビスの映像授業では、講師は私を含め、全員が対面授業をもっているので、映像授業を制作している時も、対面の生徒をイメージしています。自分の授業でここが退屈なポイントだということを理解しているので、「このあたりで集中力が切れるな」というタイミングに、話題を変えたり声のトーンを工夫したりします。

質の高い河合塾講師の映像授業×受験生ひとりひとりに伴走するアドバイザーのコラボレーションが、河合塾マナビスの強み

 私の場合は、「はい、今絶対寝ていたでしょ!」「ここでスクワット100回!」など、生徒たちの集中力が途切れぬよう、声かけしながら手練手管で授業を進めています(笑)。そして河合塾マナビスの講師はみんなその手のプロです。また、河合塾マナビスの校舎ではアドバイザーが巡回し、学習計画や受験戦略、毎回の授業後の理解度の確認まで生徒ひとりひとりに寄り添っています。そうした現場と映像授業のコラボレーションで進められるのが、河合塾マナビスの強みなのです。

--ありがとうございました。


 森先生は、全国の河合塾マナビスの校舎を訪問した際には、必ず生徒に声をかけて意見を聞き、授業に生かしているという。インタビューでも、人を引き込むお話の中に、生徒ひとりひとりを思いやる気持ちが込められていて、多くの生徒や保護者に信頼され慕われていることが感じられた。河合塾マナビスでは、森先生をはじめとした経験豊富な講師陣による、1,000以上の映像授業が用意されている。日本全国にある340校舎(2023年12月現在)では、伴走してくれるアドバイザーが親身に相談・指導を行ってくれる点も心強い。

 新高校1・2・3年生、中高一貫校の新中学3年生対象の「春期特別無料講習」は、2024年2月26日までに申し込むと最大4講座まで無料。また、2024年2月26日までは「学習相談キャンペーン」も実施しており、特典として森先生を含む英数国のトップ講師による「新課程共通テストに向けた学習法」動画を用意している。ぜひこの機会に、映像授業を体験しながら「書く」習慣を始めてみてはいかがだろうか。

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《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

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