英語だけでアメリカのトップ大学へ! UCLAへの最短ルート攻略法

 海外進学を支援するU-LABO代表の小泉涼輔氏に協力いただき、自身の出身でもあるカリフォルニア大学を例に、海外大学進学の魅力、入試制度、その1つとしての「コミュニティ・カレッジからの編入学」という方法について解説する。NHK教育番組「ニュー試」とあわせてご覧いただきたい。

教育・受験 高校生

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由緒あるUCLAの校舎
由緒あるUCLAの校舎 全 8 枚 拡大写真

 高校卒業後の進学先として海外大学が注目されている。とは言え、海外大学進学はまだメジャーではなく、相談先や情報収集に悩む受験生も多いのではないだろうか。

 本記事では、海外進学を支援するU-LABO代表の小泉涼輔氏に、自身の出身でもあるカリフォルニア大学(UC)を例に、海外大学進学の魅力、入試制度、その1つとしての「コミュニティ・カレッジ(コミカレ)からの編入学」という方法について解説していただく。

 なお、小泉氏は2024年8月24日・31日夜9時半からのNHKの新感覚教育エンターテイメント番組「ニュー試」に出演予定。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)出身である小泉代表が、UCLAを中心に、カリフォルニア大学(UC)システムの成り立ちや編入学のプロセス、留学の成功事例などを紹介する。

進路をじっくり吟味できる国 アメリカ

--まず海外大学進学の魅力について、アメリカを例に教えてください。

 まず1つに、アメリカの大学では3年次まで自分の専攻を決める必要がないということです。

 日本の高校生が国内の大学に進学するとき、まず自分の専攻(学部)を決めて受験しなければいけません。親や学校の先生といった限られた少数の大人からしかアドバイスを得られない状況で、受験勉強を始める高校2・3年生の段階で学部選択を強いられるのは、やや酷だと思います。

 一方アメリカは、入学時は専攻を決めず、さらに1、2年次のうちもリベラルアーツ(一般教養)で、幅広い教養を身に付けることになります。そのうえで3年次以降、興味をもったことを深めていく教育体系になっています(日本でも東京大学は、3年次に進級する際、1・2年次の教養学部における成績をもとに進級先の専門学部を決める「進学選択」がありますが、それでも出願時には文科一類・文科二類・文科三類・理科一類・理科二類・理科三類のいずれかの類を選択し、それに向けた試験勉強をする必要があります)

 近年、日本においても、かつての1つの分野における専門性を高めていくという教育だけでなく、いろいろな能力を駆使しながら興味関心を追求していくという、新たな学びへと、人々の思考がシフトしてきています。今までなら習得に何年もかかった技術も、AIを活用することで短時間で実現できる現代では、知識や技術の習得のための教育よりも、「自分が本当にやりたいこと」すなわち学んだ後の行動や学び自体の原動力になるものを探すことこそが大切になります。

 アメリカの受験は、まさにこれをとことん見つめていくスタイルだと感じます。自分のやりたいことを軸に、それを実現できる学校を選びます。大学選び以前から、自らの興味関心に向き合い、「自分が本当にやりたいこと」をしっかり考える場面が多いです。

--小泉さんは「コミュニティ・カレッジ(コミカレ)からの4年制大学への3年次編入」という方法でUCLAに進学されましたね。この編入学とは、どのような制度なのでしょうか。

 コミカレとはアメリカにおける2年制の短期大学のことです。コミカレでの2年間の成績などが優れていれば、4年制の総合大学へ3年生として編入することが可能です。この点は日本における編入制度と同じですね。

海外大学進学における「日本人留学生とっての最善策」とは

--U-LABOで「コミカレからの総合大学編入」を勧めるのは、どのような理由からですか。

 アメリカには大規模な4年制の総合大学と、リベラルアーツカレッジやコミカレのような小規模大学があります。

 総合大学はアイビーリーグの8大学をはじめ、ボストン大学やニューヨーク大学など、レベルも高い大規模校です。世界大学ランキング上位の大学が多いものの、その分入学時に高スコアが求められたり、入学後の授業も300人規模だったりと、英語力でもハンデのある日本人留学生は良い成績を取りにくいでしょう。

大きな講義室で行われる総合大学の授業のようす。300人ほどの学生への一斉教授型の授業。

 リベラルアーツカレッジは、アメリカ全土に600校ほどあり、学生数も500~3,000人ほどの小規模な4年制大学です。授業も少人数なので学びやすいですが、学費が高めなのが難点です。リベラルアーツカレッジは、学費の高さから奨学金をもらって通うことが多いですが、そのためにはそれなりの英語力・学力が条件になります。

 コミュニティ・カレッジ(コミカレ)は公立の2年制大学で、アメリカ国内に1,100校ほどあります。英語のスコアさえクリアできれば入学できることが多く、入学後も1クラス15名程度の少人数制授業で、教授との距離が近いのも魅力です。

コミカレでの授業のようす。少人数だが、さまざまな境遇の生徒が集まり、教授との距離も近い。

 こういった特徴を踏まえると、「コミカレから総合大学への編入」というのは、日本人留学生にとって1つの戦略になりうることがお分かりいただけると思います。まず学習環境の良い小規模大学で学び、自信を付けながら成績を上げ、その実績をもってより高評価の総合大学に編入すれば、双方の「いいとこどり」をすることができるのです。アメリカではどこの大学に合格したかより、どこを卒業したかが重要視されます。留学生の皆さんには、入学する大学よりも卒業する大学に照準を合わせて頑張ってほしいですね。

--さまざまな大学がある中で、UCLAをはじめとするカリフォルニア大学(UC)への編入のメリットはどういった点ですか。

 世界トップ大学を目指しているのなら、「ここだ!」と考えています。その理由は大きく2つ。

 まず、UCLAのほかバークレー校など世界大学ランキング上位のほかのキャンパス(9つのキャンパスのうち6つのキャンパスが世界大学ランキング100位以内)にも1つの願書で複数出願できること。

 もう1つは、編入試験合格率の高さです。たとえばハーバード大学の編入試験合格率は、わずか数%程度。一方、UCLA編入の合格率は25%近くにのぼります(2022年度合格者データに基づく調査)。

 これほど編入合格率が高いのは、カリフォルニア州ならではの事情があります。カリフォルニア州は、歴史的な背景もあってメキシコや中国からの移民が多く、現在も州人口の約27%が国外からの移民で、移民比率は全50州の中で最大と言われています。そのため、州として移民たちにレベルの高いスキルを身に付けてもらい、地域を成長させてほしい。移民がどれだけ高度な教育を受けられるのかが州の成長にとって、非常に大切なことなのです。

移民の割合が高い地域が西海岸(とりわけカリフォルニア州)に多い(世界銀行「世界開発報告書2023」より)

 とは言え、経済的・家庭的な問題から直接UCに入れる移民は少ないので、まずはコミカレで大学教育の基礎を身に付けてもらい、その中でも優秀な学生層を4年制のUCへ引き上げていく。UCにおいて「3年次編入」の枠を広く設けているのは、そうした州の狙いがあります。

 さらにUCには「州内編入」という優遇措置があります。カリフォルニア州内の学生であれば、編入試験の際、優先的に審査してもらえるというものです。つまり、日本の高校3年生が「州外正規受験」するよりも、カリフォルニア州のコミカレに2年間通ったのちに「州内編入受験」する方が合格に近いのです。

--「州内編入」をするために、日本の学生はどのようなステップを踏めば良いでしょうか。

 最初のステップとしては、一定の英語力を得ることです。具体的には、TOEFLで60点程度、英検で2級上位、もしくは準1級合格の力が必要です。コミカレは現地民であれば誰でもウエルカムの学校なので、留学生でも英語力さえあれば入学することができます。日本国内の大学受験でするような試験勉強は不要です。

 次に、コミカレ入学後、一般教養科目、必須科目で良いスコアを修めることです。必須科目というのは、たとえば編入後にビジネス専攻を希望するなら、コミカレで経済学初級や統計学を修めておく必要があります。履修しなければいけない科目については、あらかじめUCで決められています。編入を歓迎していることもあり、UCは他の総合大学と比べて、カリフォルニア州のコミカレとしっかりと提携しています。

由緒あるUCLAの校舎

 最後に、コミカレの成績とともに重要な願書やエッセーの作成に取り組みます。願書では、今までに行ってきたボランティアやインターンシップなどの課外活動も記入する必要があり、1つの審査ポイントになっています。

「国内外大学の併願」もアリ

--やはり既存の日本国内の大学受験とは大きく異なりますね。一方、日本でも「総合型選抜」を採用する大学が増えています。「国内外の大学の併願」ということもありえるのでしょうか。

 おっしゃる通り、最近日本の大学入試において増えている「総合型選抜」は、高校時代の成績をおもに見る書類選考、小論文、それに加えて課外活動が合否判定の基準になります。この選抜方法はアメリカの大学入試に似ています。

 まず高校時代の成績が良い人は、アメリカの4年制大学への受験に挑戦するというのも選択肢の1つになると思います。実際、日本の4年制大学に総合型選抜で出願すると同時にアメリカのリベラルアーツカレッジを併願し、結果的にアメリカの大学へ進学したというケースもありました。

 一方、高校時代の成績は振るわなくても海外大学進学に関心があるという人には、先述の理由から、ずばりコミカレからの編入をお勧めします。

--編入後、UCLAでの学びはどのような印象でしたか。小泉さんご自身の経験から教えていただけたらと思います。

 UCLAには世界中から優秀な学生が集まっています。高校やコミカレの成績が上位5%というハイレベルの人ばかり。高校では惨憺たる成績だった自分も、一念発起して入ったコミカレでは高成績を修めることができ、自信をもって入学したのですが、いざUCLAの授業を受けると自分の未熟さに気付かされました。「世界には優秀な人がたくさんいて、自分のちっぽけな価値観に意味はない。広い視野で見るべきだ」と身をもって知ったのです。

 最初は授業についていけずに辛い思いをしました。C未満の成績を取ってしまうと落第なので「勉強しなければいけない」と焦燥感に駆られ、シャワーする時間さえ惜しんで勉強しました。努力して、努力して、努力して…ギリギリ「Cマイナス」。手を抜いていたら進級できなかったと思います。

 アメリカの大学は、入学がゴールではありません。日々の勉強を頑張り続けないと大学に残れない。プライドとプレッシャーの中で戦い、他の学生たちに食らいついて、無事に卒業できたときは、他では味わえない達成感を味わうことができました。

▼小泉さんご自身の編入ストーリーは下記の記事で紹介しています


--U-LABOでサポートした学生たちも続々とコミカレ入学、そしてUCへ進学しているそうですね。学生たちのようすはどうですか。

 日本であまり勉強が得意でなかった学生も、ぐんぐん伸びているという印象です。受験のためにやる勉強ではなく、刺激的な日々の中でいろんな人と交わりながら集中して取り組めているようです。

 アメリカでは自分の興味関心があることをとことんやるよう、皆応援してくれます。その後押しもあって、さらにアカデミックな好奇心が喚起されるのです。コミカレの小さなコミュニティでそういった安心感を得たうえで、総合大学のUCへとステップアップすることで、自分の興味関心に集中しながら学びを継続できるのだと思います。アメリカの国風ですね。

--本記事をきっかけに「海外大学への編入」という手段を知った方も多いのではないでしょうか。海外大学進学を視野に入れ始めた学生にひとことお願いします。

 UC編入の魅力の1つが「下剋上できる」ということ。私自身も偏差値28の高校から這い上がり、コミカレを経て、UCを卒業することができました。日本における教育は「1本道」で、なかなか挽回することが難しい。アメリカは、今やりたいことが見つかっていない人も許容し、それを探すサポートをしてくれる国です。

 日本だけではなく、世界に視野を広げることは大切です。海外、特にアメリカは多様なたくさんの人がいるので、チャレンジの場として最適だと思います。やる気が湧かず、くすぶったりしている人。高校時代の自分の殻を破って「下克上」したい人。大学受験を目の前に控えつつ、やりたいことが見つからずに悩んでいる人。そんな自分を変えたいのであれば、ぜひ一歩踏み出して挑戦してほしいです。

小泉涼輔氏出演のテレビ番組について

NHK:新感覚教育エンターテイメント番組「ニュー試」
ハーバードやケンブリッジ、MITなど世界の有名大学のユニークな入試問題を取り上げ、「論理的思考力」や「対話力」、「分析力」などの現代に必要なスキルを楽しく学べる。小泉氏出演回は、8月24日(土)21時30分~(前編)と8月31日(土)21時30分~(後編)に放送予定。経験談を交えながら、UCLAを中心としたUCの詳細や編入制度について解説する。



小泉涼輔(こいずみりょうすけ)
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)卒業。世界4大会計事務所の1つであるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)入社後、国際税務業務に従事。日本の多国籍企業へのコンサルティング経験を通じて、将来のグローバル人材育成の重要性を痛感し、U-LABOとして世界トップ大学への進学・留学サポートを開始。日本で最もカリフォルニア大学編入に精通した専門家の1人として、これまでに多くの学生を合格に導いており、2022年にはUCLAが選ぶグローバルに影響を与える事業100(「UCLA Bruin Business 100」)に選出されている。公式Webサイト



《小泉涼輔》

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