埼玉県「共学化を推進」高校生・保護者は別学校支持が多数

 埼玉県教育委員会は2024年8月22日、「埼玉県立の男女別学校に関するアンケート」結果を公表した。埼玉県立の男女別学校12校の「男女共学化」または「男女別学の維持」などについて、中高生および保護者を対象に7万件以上の回答を集計。高校生および中高生の保護者を中心に「共学化しないほうがよい」との回答が過半数を超えた。

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県立の男女別学校12校のあり方について<中学生:記名あり>
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 埼玉県教育委員会は2024年8月22日、「埼玉県立の男女別学校に関するアンケート」結果を公表した。埼玉県立の男女別学校12校の「男女共学化」または「男女別学の維持」などについて、中高生および保護者を対象に7万件以上の回答を集計。高校生および中高生の保護者を中心に「共学化しないほうがよい」との回答が過半数を超えた。

 埼玉県では、「県立男子高校が性別を理由に女子の入学を拒んでいるのは女子差別撤廃条約に違反している」との申立てを受け、2023年8月30日付で第三者機関の埼玉県男女共同参画苦情処理委員が「埼玉県立高校において、共学化が早期に実現されるべきである」との趣旨を県教育委員会に対し勧告。2024年8月31日までに「是正その他の措置」について報告を求めていた。

 報告内容を検討するにあたり実施した「埼玉県立の男女別学校に関するアンケート」は4月17日~5月17日、県内在住または在学の中学生・高校生とその保護者を対象にインターネットで実施。記名なし8,157件、記名あり6万4,829件の有効回答を集計した。記名ありの内訳は、中学生2万4,343件、高校生7,286件、中学生保護者1万5,790件、高校生保護者1万7,410件。

 県立の男女別学校12校のあり方を問う設問では、記名ありでは、「共学化しないほうがよい」との回答が中学生19.3%、高校生57.2%、中学生保護者43.5%、高校生保護者57.3%という結果に。中学生を除き、男女別学校を支持する意見が最多となった。一方、中学生では「どちらでもよい」が56.2%と過半数を超えた。記名なしでは、中学生61.0%、高校生60.1%、中学生保護者64.4%、高校生保護者68.0%が「共学化しないほうがよい」と回答。さらに別学校を支持する割合が増えている。

 「共学化しないほうがよい」と思う理由の1位は、全対象で「男女共学校・男女別学校の両方を選べるほうがよいから」。ついで「共学化すると、伝統の尊重や校風の維持ができなくなるから」との意見が続き、中学生・高校生では「学校生活を安心して過ごせるような友人ができる、または、居場所があるから」との意見も15%ほどあり、別学校だからこその環境を求める層が一定数いることがわかる。

 一方、「共学化したほうがよい」と思う理由は「性別によって入学できない高校があるのは、公平ではないから」が最多に。ついで、「異性を理解して認め合ったり仲よくできる、または、ジェンダー平等に対する理解が進むから」「性別による固定的な役割分担意識をもちづらいから」と続いた。

 調査時点での中学生の進学意識は、「共学校へ行きたい」が56.3%、「共学校、別学校のどれでもよい」が25.7%。「男子校」志望は3.5%、「女子校」志望は3.4%にとどまった。高校生の在学校は「共学校」69.7%、「女子校」15.2%、「男子校」14.7%となっている。

 こうしたアンケート結果を踏まえ、埼玉県教育委員会は8月22日に埼玉県男女共同参画苦情処理委員宛に措置報告書を提出。県立高校の共学化について「主体的に推進していく」との考えを示し、「男女共同参画社会の中において、高校の3年間を男女が互いに協力して学校生活を送ることには意義がある」とした。

 一方で、アンケートや意見聴取において、男女別学校の「伝統や校風に魅力がある」との意見も多く多様なニーズがみられたことから、男女別学校の共学化にあたっては、アンケートや地域別での意見交換、有識者からの意見聴取などを実施し、県民の意見を丁寧に把握する必要がある、と明記するにとどめた。

《畑山望》

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