【ICTでつながる学び】新しい場所で新たに学ぶ「遊学」の精神を育む…遊学館高等学校

 1904年に石川県金沢市で創設された金城遊学館をルーツとし、今年120周年を迎える遊学館高等学校。同校が掲げている遊学の精神と、それを実現するべく活用されているICTの役割について、嶋田司校長をはじめとする先生方、生徒の皆さんに話を聞いた。

教育ICT 高校生
PR
ClassPad.netを活用して関数という抽象的な概念を、自らの体験をもって楽しみながら学んでいく。
ClassPad.netを活用して関数という抽象的な概念を、自らの体験をもって楽しみながら学んでいく。 全 10 枚 拡大写真

 1904年に石川県金沢市で創設された金城遊学館をルーツとし、今年120周年を迎える遊学館高等学校。建学の精神に「遊学の精神の涵養」と「良妻賢母の育成」を掲げ、生徒ひとりひとりの可能性を引き出すとともに個性を伸ばす教育を展開し、次の時代を切り拓く生徒の育成に努めている歴史ある高校だ。野球部やサッカー部、卓球部、バトントワリング部など全国大会出場および上位入賞常連の強豪部活も多く、文武両道に励む生徒が多く活躍している。

 本企画では、各地で人気を集める私立校における先進的なICT教育の取組みを紹介している。今回は遊学館高等学校が掲げている遊学の精神と、それを実現するべく活用されているICTの役割について、嶋田司校長をはじめとする先生方、生徒の皆さんに話を聞いた。

遊学の精神をもって未来を切り拓く人間を育成

 嶋田校長は同校の建学の精神について、「遊学とは異国の地で学ぶという意味がある。『遊学の精神の涵養』とは何ものにもとらわれず、自由に広く世の中を見聞し、人格を高め磨いていくことを意味している」と説く。また、良妻賢母の育成については、「周りの人々がよりよく幸せに生きるための支えとなる人材を育成すること」を意味しており、「文武に励み、自らの品格を高めるとともに、他者を尊重し、遊学の精神をもって未来を切り拓く人間を育成すること」を教育目標として、生徒ひとりひとりの可能性を引き出し、個性を磨く教育を推進しているという。

 そのような教育の一端を担うのが、生徒それぞれの進路希望に合わせた選択制の3つのコースだ。同校では進路希望によって、国公立大学や難関私立大学への現役合格を目指す「特別進学コース」、文武両道に重点を置き、部活などに力を注ぎつつ個性を生かした多様な進路に対応する「一般進学コース」、併設校の金城大学もしくは金城短期大学部への進学を目指して専門分野に分かれ、大学の体験授業なども受講できる「金城大学コース」に分かれており、それぞれの進路実現に向けて教職員がきめ細かくサポートしている。さらに、独自プログラムの「遊学講座」では、同校教員のみならず、校外から一流の先生を迎えて指導にあたり、受験対策や資格取得をはじめ、日頃の授業では学べない語学や教養、実習、芸術、スポーツなど幅広い分野の講座を自由に選ぶことができる。

個性を生かし効率的な学びを支えるICTツール

 そのような生徒の個性を生かした個別最適かつ効率的な学びを実現しているのが、同校の新しいICT教育である。嶋田校長は「昨年度(2023年度)の1年生から学校貸与の形でChromebookを配備し、1人1台端末の導入に踏み切った」と語る。今年度(2024年度)の新1年生からはBYOD方式で1人1台のiPadを使っており、調べ学習などで活用されている。

取材に応じてくれた遊学館高等学校・校長の嶋田司先生 提供:カシオ計算機

 端末を活用した授業については、Wi-Fi環境が不安定なことや、教員自身がまだ不慣れな点があることから、「調べもの学習以外の活用拡大についてはまだまだ研究が必要」だとしながらも、「プロジェクターを設置したときはすべての先生が使うことはないだろうと思っていたが、現在はほとんどの先生が黒板よりもプロジェクターをより使用している。これはかなりのスピードで進んだので、今後は若い先生を中心にタブレット端末の活用も広がっていくのではないか」と、期待を寄せている。

 もう1つ、同校のICT教育で欠かせない柱となっているのがカシオ計算機のオールインワンICT学習アプリ「ClassPad.net」だ。ClassPad.netは、授業に必要な機能がすべて入ったICT学習アプリ。その内容は、カシオの電子辞書「EX-word」をベースにした豊富な辞書機能、ふせんや画像、リンクなどのコンテンツが貼り付けられるデジタルノート機能、課題の送受信や生徒の回答一覧表示といったオンライン・双方向授業に役立つ授業支援機能、カシオの関数電卓のノウハウを詰め込んだ高度な数学ツールなど、多岐にわたる。

 同校がClassPad.netを導入したきっかけは、もともとカシオの電子辞書を学校全体で導入していたことにある。「1人1台端末を配備するにあたり、カシオの辞書機能が入っているので、そのまま継続してClassPad.netを活用。同アプリにはデジタルノートなどの機能もあり、課題提出もオンラインでできるので、そうしたやり取りを見込んで導入した」と嶋田校長は話す。その期待どおり、同校ではさまざまな授業で課題のやり取りなどでClassPad.netを使うようになり、効率化が進んでいる。

数学のグラフを見える化して理解を深める

 今回は実際にICTを用いた授業を見学させていただいた。磯部早紀先生による高校2年生・金城大学コースの数学IIの授業では、関数について学習。関数の定義を説明したうえで、変数の値が変わることでどのようにグラフの外形が変わっていくかについて、ClassPad.netアプリを用いて説明した。

 ClassPad.netでは実際のグラフの変化を視覚的に確認できることから、まずは先生がClassPad.netの画面をプロジェクターに投影し、変数の値を変えることでグラフが動くことを実演。その後、生徒もそれぞれ自分の端末にて値を変えていくことで、変化するグラフの形を視覚的に捉え、新たなグラフを作成してオンラインで提出する。関数という抽象的な概念を、自らの体験をもって楽しみながら学んでいた。直線、放物線、円などさまざまな形のグラフをなす面白い関数についてのプリントも配布され、入力した関数の概形を記入する課題を出して授業は終了した。

 磯部先生は、ClassPad.netについて「数学を視覚的に捉えられるのが非常に良い」と高く評価する。「プリントとClassPad.netを併用しているが、ClassPad.netは特に『見せる』ときに活用している。たとえば『この図形のここの交点を求めている』というのが視覚的に把握できるなど、図形やグラフの学習については非常に相性が良い。生徒からの反応も良く、わかりやすかったとの声があがっている」と語っている。

図形やグラフを実際の目の前の画面で視覚的に捉えられるのでわかりやすい。 提供:カシオ計算機

 図形やグラフを描くことが苦手な生徒にとって、実際の目の前の画面で視覚的に捉えられるのが非常にわかりやすい。磯部先生は、「グラフを視覚的に捉えられるのに加え、たとえばsin、cos、tanについても、『三角比である、比である』ということを視覚的に対比して理解することができる。そうした見える化が数学のルールとしての一番のメリット」だという。加えて、「課題の提出もオンラインですぐにできて非常に便利で使いやすい」と教えてくれた。

 今後やってみたい活用法については、「生徒が普段慣れ親しんでいる動画を使って、いろいろな解き方のYouTubeリンクを張り付けて示すことで、生徒が自分の好きな解法を選ぶことができる。1人の先生から1つの解法を聞くだけだとそれだけしかないように思えてしまうが、いろいろな解法を見せてあげることができるのは大きなメリット。選択肢を広げてあげたいと思う」と磯部先生は展望を述べた。

ClassPad.netが授業のプラットフォームに

 続いて、小坂英洋先生が受け持つ高校1年生・特別進学コースの情報科の授業も見学させていただいた。小坂先生はClassPad.netについて「生徒のためではなく教員のためにもある」との考えから、ClassPad.netを授業のプラットフォーム、ポータルサイトとして活用。「授業の教材から生徒が記入するノート、プリントまですべてClassPad.netに集約することで画一的に授業が進められる」とメリットを感じている。

 今回の授業においても、事前に教材PDFをClassPad.netを通じて生徒に配布し、それをもとに授業が進められた。「メディアの発明と歴史」「ユビキタス社会」などのキーワードについて、資料をプロジェクターに投影しながら説明。授業展開が早くてノートが取れなかった生徒も、事前に配布された資料をタブレットで見て記述することができるので安心だ。また、調べてほしい個所にはマークを付け、ミニレポートを出題。「ネットで調べれば何でも出てくるが、嘘も多い。確固たる知識、大事なことは辞書にあると思っているので、生徒にはClassPad.netを使って辞書検索をさせて、知識の定着を図っている」と小坂先生。途中でコミュニケーションの歴史についてYouTube動画を見せながら説明し、「ユビキタス社会」について辞書で調べてまとめる宿題を出していた。「ClassPad.netに授業教材すべてを集約し、生徒にもそこから配信しているので、授業ツールの1つになっている」という。

 授業を終えた小坂先生にClassPad.netの導入でどんな変化があったか聞いてみると、「ClassPad.netに出会ってから、黒板に板書する授業はほとんどなくなった。資料を投影することで見やすくなったことや、事前に生徒に資料を配信することで、生徒が予習をしてから授業を受けられるということが理由にあげられる。やはり板書を書き写しながらだと授業の話が耳に入りづらい。ClassPad.netを使い始めてから生徒が資料を事前に確認してから授業を受けるようになり、ほとんどの生徒が顔を上げて話を聞いてくれるようになった。知識を深めているのが見て取れるようになり、生徒からも『わかりやすい』『非常に楽しい』との声が出ている」と語ってくれた。保護者からも「タブレット導入によって勉強がしやすくなった」と評判は上々。さらにノート提出についても、ClassPad.netのオンライン提出に切り替えてから、ほぼ100%の提出率になったという。

ClassPad.netを使い始めてから、ほとんどの生徒が顔を上げて話を聞いてくれるようになった。 提供:カシオ計算機

 小坂先生自身も、タブレットとClassPad.netの導入により授業のスタイルが広がったと感じているそうだ。その理由として、「タブレットの中でClassPad.netを起点に、Webを開いたり、資料を見せたり、さまざまなことが1つのアプリでできるというのが非常に大きい。ノート機能では、あらかじめ用意していたPDFを閲覧したり、リンク先に飛んで教材を見せるなどできるので、ClassPad.netを起点に授業のスタイルが広がった。生徒たちもそうしたやり方に慣れてくれていて、教材をきちんと見てくれている。本当に使いやすいアプリだと思う」(小坂先生)。今後については、生徒の情報活用能力をもっと高めていくのが課題だと語ってくれた。

授業前も後もICTでいつでも学べる、補習できる

 生徒たちも、1人1台端末とClassPad.netを使うようになり、利便性を大いに感じているようだ。高校1年・特別進学コースのショルカルさんは、「ClassPad.netで先生が事前に資料を共有してくれるので、予習をしてから授業が受けられる。情報科の授業はわかりにくい単語もあるが、辞書を使ってすぐに調べている。わからない単語をClassPad.netの辞書で調べると、その単語を単語帳に入れる機能があり、わからなかったところを見返せるので使いやすい」と活用方法を語ってくれた。

 また、高校2年・金城大学コースの北野さんは、「以前よりもわからないところをすぐに調べることができるようになったので、勉強がはかどるし、家庭学習もやりやすくなった。調べたらすぐに出てくるので、紙の辞書を引くより早く、さらに複数種類の辞書が出てくるところも気に入っている。テスト前の勉強では細かいところまですぐに調べられて、わかりやすく解説してくれるので、テストの点数が上がった」とのことだ。

 最後に、将来の夢について聞くと、ショルカルさんは「将来の夢は医療関係。医療関係でICTも活用して働きたい」と、北野さんは「ICT学習を使って子供の遊びをよりよく促せるような保育士になりたい」とそれぞれ語ってくれた。

不確実な時代だからこそ新しい場所で自ら学ぶ「遊学」を

 現代は不確実性が高く将来の予測が困難な「VUCA」時代。与えられたことを効率よくこなすだけではもはや通用せず、今後そうした業務は人間よりもはるかに効率的なAIにとって代わられていくことが予想される。これからの人間はまさに、新しい場所で新しいことを学ぶ「遊学」の精神で、どんな環境でも自ら考え、次の時代を切り拓いていく能力が求められるだろう。そうしたときこそ、遊学館高等学校が掲げる「文武に励み、自らの品格を高めるとともに、他者を尊重し、遊学の精神をもって未来を切り拓く人間」が重要性を増してくる。こうした次世代人材を育む同校の教育にあたり、ClassPad.netをはじめとしたICTツールが大きな力となり、効率よく楽しく学ぶための大きな支えとなっていることがうかがえた。

今年120周年を迎える遊学館高等学校。文武両道に励む生徒が多く活躍している。 提供:カシオ計算機
遊学館高等学校についてはこちら

《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

+ 続きを読む

【注目の記事】

この記事の写真

/

特集