矢野経済研究所は2024年10月2日、教育産業市場に関する調査結果を発表した。主要15分野における国内の教育産業全体の市場規模は、2023年度は2兆8,331億7,000万円。2024年度は政府の賃上げ促進政策などを背景に、教育への投資回復が一定程度進み2兆8,619億7,000万円と予測。
教育産業市場に関する調査は、学習塾や予備校、通信教育事業者、資格取得学校、語学スクール、幼児教室、体操教室、研修サービス事業者、eラーニング事業者、学習用教材会社、業界団体、管轄省庁などを対象に実施。調査期間は2024年7月~9月。市場規模は事業者売上高ベース。
2023年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、事業者売上高ベースで前年度比0.7%減の2兆8,331億7,000万円となった。2023年度は少子化の進行や物価上昇による家計の教育投資抑制などの影響を受けて、全体市場としては前年度割れとなった。また、コロナ禍を機に急速に需要を高めた通信教育は、その反動もあり前年度に続いて大幅な市場縮小となった。2023年度に前年度の市場規模を上回った分野は、調査対象15分野のうち、「資格・検定試験市場」「語学スクール・教室市場」「幼児体育指導市場」「企業向け研修サービス市場」の4分野にとどまった。
推移を振り返ると、2020年度には新型コロナウイルスの感染拡大による各種教室の休校措置や生徒募集活動の自粛など事業活動の大幅な制限により、市場が縮小した。一方、対面による指導が制限される中、2020年度から2021年度にかけては通信教育やeラーニングが大きく市場を拡大した。また、この期間オンライン授業やデジタル教材との併用など、学習手段の多様化が進んだ。その後、コロナ禍の沈静化にともない通信教育は失速し、eラーニングもBtoB向けのサービスは堅調に推移しているものの、その急速な市場拡大は落ち着きがみられる。
少子化の進行や競合状況の激化などを受けて教育産業は厳しい事業環境となっており、安定した収益の確保や新たな収益源の獲得に向けて、企業買収や外部事業者との業務提携などによる事業領域やターゲット層の拡大を追求している。文部科学省「令和6年度学校基本調査(速報値)によると令和6年度の通信制高校の生徒数は前年度比2万5,144人増の29万118人と大幅に増加しており、それを背景に学研グループや駿台グループ、ベネッセグループなどの大手教育事業者が通信制サポート校を開設する動きがみられる。
2024年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、政府の賃上げ促進政策などを背景に、教育への投資回復が一定程度進むものと考え、前年度比1.0%増の2兆8,619億7,000万円と予測される。分野別にみると、「学習塾・予備校市場」「幼児向け英会話教材市場」「資格取得学校市場」「資格・検定試験市場」「語学スクール・教室市場」「幼児体育指導市場」「企業向け研修サービス市場」「eラーニング市場」の8分野が前年度比プラス成長で推移すると見込まれる。