大阪【高校受験2025】無償化の影響で私立専願増、出題傾向と対策…開成教育グループ

 高校無償化が段階的に進められる大阪府の高校入試。個別指導学院フリーステップと開成教育セミナーを展開する開成教育グループの入試情報室上席専門研究員 藤山正彦氏とクラス指導部教務課長 照井健司氏に、特に知っておくべき変化や準備、親の心構えなどを聞いた。

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取材に応じてくれた成学社の入試情報室上席専門研究員 藤山正彦氏とクラス指導部教務課長 照井健司氏
取材に応じてくれた成学社の入試情報室上席専門研究員 藤山正彦氏とクラス指導部教務課長 照井健司氏 全 8 枚 拡大写真

 大阪府は高校授業料の完全無償化を2024年度の高校3年生から段階的に適用し、2026年度に全学年で授業料を完全無償化する。個別指導学院フリーステップと開成教育セミナーを展開する開成教育グループの入試情報室上席専門研究員 藤山正彦氏とクラス指導部教務課長 照井健司氏に、知っておくべき変化や準備、親の心構えなどを聞いた。

私立専願志向が強まり、学校改革に拍車

--授業料の完全無償化が始まり、入試に影響はありましたか。

藤山氏:これまで大阪では第1志望は公立が7割を占め、私立は併願で受験するパターンがメインでした。ところが授業料無償化が始まって1年が経ち、制度や適用学年が明らかになってきた中で、私立専願志向が高まりつつあります。

 公立の出願なく私立のみに出願する私立専願が増えている今、それら受験生・受験家庭のニーズを汲み取り、改革することが学生募集の決め手になっています。今まで私立高校の多くは、土曜日や夏休みの補習などの徹底した受験対策を武器にしてきましたが、一転して、公立高校にあわせて土曜日授業をなくす動きや、教養講座などを設けて学びを多様化する動きも増えています。一方で、かつての流れを強化し、大学進学実績をセールスポイントに、補習などの受験対策をさらに整える学校もあり、二極化が進んでいます。

 私立人気に反し、2024年度の公立高校入試では、これまで定員割れになったことのなかった学校が定員割れを起こし、大阪の高校受験界隈を揺るがしました。伝統ある地域の名門校・富田林(とんだばやし)や産近甲龍合格ランキングの上位に入る槻の木が定員割れとなったことは、その最たる例と言えるでしょう。

 こういった定員割れの話をすると「難関の公立高校が入りやすくなったのでは?」と聞かれますが、公立校の中でも偏差値上位の人気校については、校風やブランド力もあり、変わらず高い倍率を維持しています。

高難度のC問題、数学は図形特化

--今一度、大阪の公立高校入試について教えてください。

藤山氏:大阪府の公立一般入試の受験科目は、国語・数学・英語・理科・社会の5科目。そのうち国語・数学・英語は「A:基礎的問題」「B:標準的問題」「C:発展的問題」の3段階に分けられます。当日の試験は1教科90点満点×5教科の450点満点です。

 内申点は、中3の成績を重視するため、中1と中2の9教科学年末の成績を2倍、中3は6倍で計算します。学力検査と調査書の比重は、I型7:3、II型6:4、III型5:5、IV型4:6、V型3:7の5タイプあり、たとえばI型であれば学力検査の成績は1.4倍、調査書の評定は0.6倍をかけるので、5タイプの中ではもっとも学力検査を重視する型になります。

 2025年度入試を実施するのは前年度より2校少ない142校です。このうち、3教科すべてC問題を扱うのは18校で、北野(文理)、茨木(文理)、豊中(文理)、春日丘(普通)、千里(国際文化/総合科学)、池田(普通)、大手前(文理)、四条畷(文理)、天王寺(文理)、高津(文理)、生野(文理)、八尾(普通)、富田林(普通)、三国丘(文理)、岸和田(文理)、泉陽(普通)、和泉(普通)、鳳(普通)となっています。どの学校がどの問題を使うのかは、例年7月ごろに発表されますが、実際のところ大きく変動することはあまりありません。

 また、学力検査の英語では英語資格を活用することもできます。対象はTOEFL iBT、IELTS、実用英語技能検定(英検)で、スコアなどに応じた読み替え率により換算した点数をみなし得点にすることができます。英検であれば2級で80%の72点、準1級と1級で100%の90点満点が保証されます。

--難関校が扱う「C・C・C」の問題について教えてください。

藤山氏:難関校は、一般選抜の国語・数学・英語の学力検査問題3段階のうち、もっとも難易度が高い「C:発展的問題」を3教科すべてで選択しています。英語のC問題は特に「リスニング」の難易度が高い傾向があります。そのため難関校の中でも「C・C・B」と英語だけ「B:標準的問題」を採用する学校もあります。

照井氏:国語のC問題も難度が高く、中学生には馴染みのないような難解な言葉が出てくるので、語彙力と、背景知識のない文章であっても読み解く読解力が必要となってきます。

 数学のC問題は「図形特化」と言っても良いほど図形問題の配点割合が高い構成となっています。特に、空間図形は難易度がかなり高く、使う公式を迅速に検討し、正確に計算するといった複数の高度な力が求められます。

人気校の傾向は?

--公立高校の人気傾向はありますか。

藤山氏:公立高校は倍率を参考にしていただくと良いでしょう。府立いちりつは、2024年度の学校全体の競争倍率が最終0.95ですが、学科別でみると「理数科」の評価が非常に高い学校です。大阪市立から府立へ移管された経緯があり、校舎がきれいで立地が良いことも魅力を後押ししているようです。

--私立高校の人気傾向はいかがですか。

藤山氏:私立高校は、規模が大きな学校のほうが発信力がある分、人気が集まりやすい印象です。また人数規模が大きいということは、その分、部活動の選択肢も増えますので、こういったことも人気に影響すると考えられます。

得点アップに向けた、過去問の活用法

--過去問の入手時期や効果的な使い方を教えてください。

藤山氏:過去問は受験する高校が決まった時点で必ず入手してほしいです。記述系の問題が多いなど、学校ごとに出題傾向が異なるため、過去問でしっかり準備をするということが大切になります。過去問はそこから必ず出題されるというものではありませんが、「最新傾向を知る」「ペース配分を学ぶ」ための重要な教材です。

照井氏:学習指導要領の改訂とコロナ禍での出題範囲の削減を考慮する必要はありますが、直近3年を目安に取り組むと良いでしょう。さらに得点設計まで身体に染み込ませるために、プラス2年分を使って、5年分を利用するのをお勧めしています。時間の空いている土曜日の朝などに、本番さながらに教科順で演習しましょう。

藤山氏:難関校を受験する場合については、時間内に解けない問題を「捨てる問題」として見極める力も必要になってきます。見極めミスをしないために、過去問で間違えた問題は必ず解き直してください。そのうえで、本当に時間内に解ける問題ではないのか、捨てても良い問題なのか、あらためて判断するようにしましょう。

照井氏:「捨てる問題」を判断するにあたっては、得意不得意だけでなく、点数配分も大きな判断材料です。「捨てる問題」を見誤って、大きく失点するといったことがないよう、過去問トレーニングで見極める感覚を身に付けてほしいと思います。

 今の時期、おもに難関校を目指す生徒の中には、中学校の定期テストでは平均89~90点を余裕で取れるのに、いざ公立入試のC問題を解くと半分ぐらいしか解けず、学校での成績とのギャップを目の当たりにして、メンタルのバランスが崩れてしまう子もいます。「自分は向いていない」と早々に諦めてしまうのではなく、合格最低点などもきちんと調べたうえで、しっかり過去問演習に取り組んでほしいと思います。

高校受験の勝者は「朝型」

--この時期、保護者ができるサポートについてがアドバイスをお願いします。

藤山氏:やはり時間管理と栄養管理に尽きます。いちばん良くないのは、生活リズムが乱れて、夜型の生活になってしまうことです。入試は基本午前中に終わりますので、朝に集中できる子のほうが強いのです。今からでも十分間に合いますので、ぜひ生活時間を見直してみてください。

照井氏:受験生には保護者の精神的なサポートが必要です。過去問が解けなかっただけで、ひどく落ち込んでしまう子もいます。落ち込んでいる時間があったら、分析して次につなげてもらいたいというのが率直なところです。保護者の方には、ぜひお子さまに「今までやってきたことをやり切って、本番を迎えれば必ず良い結果が返ってくる」ということをたくさん伝え、気持ちの切り替えの手助けをしてほしいと思います。

選択肢を狭めない、広い視野での学校選びを

--2026年度(全学年完全無償化)以降の受験生と保護者へメッセージをお願いします。

藤山氏:まずは、早めに学校選びのモーションを起こしてほしいですね。受験勉強のエンジンをかけるには「本当に行きたい学校を見つける」ことがもっとも大切です。特に私立高校は校則ひとつとっても大きく異なるので、その学校の特色をよく見て検討してください。また、公立高校についてはお伝えしたとおり、予想もしないような学校で定員割れが起きています。3年連続の定員割れ、かつ改善の見込みがないと判断されると府条例で募集停止となることもありますので、最新の募集状況を参考にしつつ検討しましょう。

 学校選びは、さまざまな学校の情報が掲載されている紙の情報誌を見るところから始めて、合同説明会で気になる学校のパンフレットを手にし、そして次の段階でオープンスクールへ訪問することが大まかな流れです。必ず一度は学校に足を運んで実際の校風を肌で感じてほしいと思います。

照井氏:「受験校は何で選びましたか?」という質問をすると、偏差値で選んだという人が大半、そして通学距離を重視する人が多いのも事実です。でも偏差値・通学距離を条件に選択肢を狭めてしまうと、本当に自分に合う学校を逃してしまう可能性もあります。大学受験も含めた先の進路も踏まえて、各校の特徴をしっかりと調べたうえで検討してほしいと思います。

--ありがとうございました。


変わる大阪府公立入試、最後まで徹底サポート

 2025年度大阪府公立高校入試が年明け2月に実施される。特別入学者選抜の出願期間は2025年2月14日から17日午後2時まで(音楽科は2月4日から5日午後2時まで)。学力検査は2月20日、実技検査は2月21日(音楽科は2月15日・20日)、合格発表は3月3日。一般入学者選抜の出願期間は3月5日~3月7日午後2時、学力検査は3月12日、合格発表は3月21日に行われる。 

 開成教育グループでは、受験生のニーズに応えるさまざまな受験対策講座を用意している。

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 公立中高一貫コース、私立中学受験コース、小学生実力錬成コース、中学生実力錬成コース、難関校突破コース・選抜シリウス、開成ハイスクールなど、小中高生の各学年に応じた最適な指導で全員を目標実現に導くための多彩なコースを展開。受験につながる「図形センス」を鍛えるパズル道場やプログラミング講座も実施している。

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《川端珠紀》

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