セーブ・ザ・チルドレンは2025年3月、子供を含む市民が国際協力に対してどのような意識をもっているかを明らかにするため、「国際協力に関する意識調査」を実施した。子供の約7割が国際協力を進めるべきだと回答した。
「国際協力に関する意識調査」は2023年1月に実施した調査の継続調査で、市民の意識がどのように変化しているかを把握することを目的としている。調査はインターネットリサーチ「Quick」を用いて行われ、47都道府県在住の15歳~17歳の子供2,061人と18歳以上の大人1万8,545人、計2万606人から有効回答を得た。
「日本はこれからの国際協力についてどのようにしたらよいと思いますか」という質問に対し、「積極的に進めるべきだ」(16.7%)と「ある程度進めるべきだ」(33.1%)をあわせると49.8%となり、進めるべきだと回答した人は全体の約半数に上った。一方、「減らすべきだ」(9.1%)、「やめるべきだ」(2.3%)と回答した人はあわせて11.4%で、約1割にとどまった。同質問に対する子供の回答では、「積極的に進めるべきだ」(29.7%)、「ある程度進めるべきだ」(38.4%)と回答した子供は68.1%となり、約7割が国際協力を進めるべきと考えていることが明らかになった。
日本政府および政府機関が公的な資金を使って実施する国際協力活動は、おもにODA(Official Development Assistance、政府開発援助)と呼ばれる。ODAの額は、国民総所得(GNI)の0.7%とすることが国際目標として設定されているが、2023年時点で日本が拠出した金額はGNI比で0.44%となっている。
「日本はODAの拠出金額を国民総所得(GNI)の0.7%にするという国際目標を達成すべきだと思いますか」という質問では、「とてもそう思う」(10.1%)、「ややそう思う」(27.5%)をあわせると約37.6%となり、約4割の人が0.7%目標達成を支持していることがわかった。同質問の回答を子供と大人別にみると、「とてもそう思う」(8.8%)、「ややそう思う」(26.4%)と回答した大人の割合は約3.5割にとどまった一方、「とてもそう思う」(21.7%)、「ややそう思う」(37.4%)と回答した子供の割合は約6割となり、大人を上回る結果となった。
国際協力に対する意識として、目的(なぜ必要か)、原則(守らなければいけないこと)、重点国(どのような国を対象にすべきか)についても尋ねた。目的については、「国際社会の平和と安定のため」が52.5%となり、半数を超えた(複数回答)。原則については、「基本的人権や民主主義に負の影響を与えないこと」が48.8%で約半数となった(複数回答)。
原則についての単一選択では、「武器供与など軍事的な支援を行わないこと」が1位となった。また、重点とすべき国は1位から3位を選んでもらったところ、「経済的に貧しい国、貧困・格差が深刻な国」が1位から3位の合計ではあげた人がもっとも多かった一方で、1位にあげる人がもっとも多かったのは「日本の安全保障を確保するうえで重要な友好国」という結果になった。
「日本が国際協力を行うときに、どの分野に重点をおくべきだと思いますか(複数回答)」という質問では、55.6%の人が、「教育(学校や教員等)、保健医療(制度や人材育成等)などの社会サービス分野の支援活動」と回答した。次に「紛争や災害などの緊急時に行う人道支援活動」が44.5%と続いた。社会サービス分野で特に重点とすべき項目については水・衛生(32.6%)が約3割とトップ、保健・栄養(23.8%)、教育(15.5%)が続いた。
今回新たな設問として、「日本にいる自分たちの課題でもある」と感じる世界的な課題について(最大3つまで)聞いたところ、全体の約6割が「気候変動・地球温暖化」、約半数が「食料危機」を自分たちの課題としてとらえていることがわかった。子供の回答をみると、全体と同様、約6割が「気候変動・地球温暖化」をあげ、約半数が「環境破壊・生物多様性の減少」をあげた。
2023年の調査と比較すると、国際協力を進めるべきだという大人の割合、子供の割合、またODA0.7%目標達成を支持する大人の割合、子供の割合はそれぞれわずかに減少したが、子供は引き続き約7割が国際協力を支持し、約6割がODAの国際目標達成を支持していることが明らかとなった。また、目的、原則、対象国、そして重点を置くべき分野についても、大きな変化はみられなかった。