東京科学大学(Science Tokyo)は、善き未来をビジョンとして掲げ、その実現を目指す研究体制「ビジョナリーイニシアティブ(VI)」を、2025年4月より全学に導入する。大学院教育についても、これまでの横断型コースを発展させ、2028年度をめどにVIに連動した教育を導入していく。
Science Tokyoは2024年10月に、東京医科歯科大学と東京工業大学が統合して設立された。世界レベルの医歯学と理工学を掛け合わせ、研究力を大幅に高めることを目的とし、ミッション(存在意義)として「科学の進歩と人々の幸せとを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」ことを掲げている。このミッションに向けてScience Tokyoが目指す社会変革の姿を、「善き生活」「善き社会」「善き地球」の3つのビジョンとして定めている。
ビジョナリーイニシアティブ(VI)は現行の医学、歯学、理学、工学、情報学、リベラルアーツなど分野別縦割りの研究体制を、横断型へと大きく変革する仕組み。全学すべての研究者約1,800人(常勤)が順次、いずれかのVIに参加し、大学院教育も連動させる。これにより統合で掲げてきた、医工連携など融合研究を加速。VIを通じて社会の多様な組織とともに、イノベーションを生み出すエコシステムを構築していく。
2025年度から6つのVIを定め、最終的に9つとすることを考えているという。また、2028年度をめどに医歯学・理工学を中心とする研究者全員が1つ、または複数のVIに参加する。各VIにはPD(プログラム・ディレクター:研究統括者)を任命し、発足時にはPDの下に約60人のPI(プリンシパル・インベスティゲーター:主任研究者)を配置し、国内外の研究者も含め、共感するVIへ参画することができる。
VIはビジョン実現に向けた研究とその構想を総合的に推進する。人材、資金、設備施設を全学から集中的に集め、これらリソース(資源)を最適に配分し、研究成果の創出と社会実装に向けた活動の主体となる。
大学院では各分野の高度な専門性だけでなく、VIの推進するビジョン実現のエコシステム(産業界、国内外大学との連携)に連動した新たな教育を行う。大学院生は社会課題解決の意識に基づいてVIの提供する課題解決型プロジェクトに全員が参加。大学院生に対する研究指導も、医歯学、理工学それぞれの研究室を超えて、VIの研究者からなる分野横断型の指導体制を導入。幅広い科学の専門性に基づく課題解決力を生かして、社会的インパクトを共創する力を持つ人材を育成する。
学士課程では基本的に現行の教育を継続する。医歯学の免許取得に向けた教育カリキュラムが国の制度に定められており、理工学では各分野の専門基礎力を身に付けることが必須であるためである。一方で医歯学と理工学の両方を学ぶ相互履修の枠組みを充実させ、Science Tokyoとしての新たな仕組みも整えていく。
国内外の大学や研究機関との連携を強化し、世界中から人材を惹きつける仕組みを整え、世界トップクラスの大学になることを目指す。
伝統的な理工学、医歯学を越えた新産業創出も見据えて、産業界との連携を強化。スタートアップなどの育成も含めて、研究成果の社会実装を加速していくという。