神奈川県相模原市に広大で美しいキャンパスが広がる青山学院大学理工学部。社会・産業との接点を増やすとともに、最先端の研究にも力を入れ、卒業生は情報通信業や製造業の大手企業へも多く就職する。大学院への進学者も5割を超え、自身の研究をより深く追究している。
青山学院大学理工学部では、どのような学生が、どんな未来を目指して学んでいるのか。そして大学はそれをどうサポートし、実現しているのか。黄晋二学部長と4人の学生へのインタビューを通して、その魅力と強みを明らかにしていく。
青山学院大学理工学部
・黄晋二教授…理工学部長 電気電子工学科
・尾﨑亮太さん…大学院理工学研究科理工学専攻知能情報コース 修士課程2年(伊藤研究室)
・森川俊太郎さん…理工学部物理科学科 4年(坂本研究室)
・稲葉由夏さん…理工学部機械創造工学科 4年(菅原研究室)
・山上椿さん…理工学部電気電子工学科 4年(横式研究室)
※学年、所属学科、研究室はインタビュー当時の情報である。
これからは専門性の時代…手厚い指導体制で充実の教育環境
--高校生にとって進路の選択肢が多岐にわたる中、理工系分野の魅力はどこにありますか。
黄学部長:大学で学ぶ「数学」「物理」「化学」「機械工学」「電子工学」「情報工学」の教科書は世界中で同じ内容です。高度情報化が急速に進む中、現代社会が直面するさまざまな課題に取り組むには、多様な分野・領域の高度な専門性が必要ですが、理工学部ではグローバルに通用する高度な専門性を身に付け、社会に貢献できる強い力を得ることができます。
--青山学院大学理工学部ならではの強みを教えてください。
黄学部長:青山学院大学理工学部の最大の強みは、高い専門性と手厚い指導体制を兼ね備えていることです。
今、申しあげたとおり、これからは専門性の時代です。青山学院大学では、地球規模の視野をもち、高い専門性を磨いて成果を生み出せる人材の育成を目指しています。このビジョンを実現すべく、理工学部では、ほとんどの研究室に教授もしくは准教授に加え、助教または助手が配置されています。2名の教員が学生ひとりひとりを細やかにサポートする体制は、学生が研究を通して専門性を磨くうえで重要な足場となります。これは他の私立大学の理工学部ではほとんど見かけることのない、非常に手厚い指導体制です。

--大学院進学率も5割を超え、学生がより自らの専門を追究していきたいという姿勢がうかがえますが、支援体制はどのようになっていますか。
黄学部長:大学院への進学は、専門性をさらに高めることにつながります。理工学部で大学院進学率が50%を超えるのは、他の私立大学と比べても、かなり高い水準です。独自に給付型の奨学金を設け、学科の成績上位15%を対象に授業料の全額または半額を免除することで、修士課程へ内部進学を後押ししています。2025年度の内部進学予定者でみると、全額免除が23人、半額免除が52人と、計75人が特別給付奨学金制度のサポートを受けています。
尾﨑さん:私は経済的な理由から大学院への進学ではなく就職を視野に入れていましたが、「理工学研究科特別給付奨学金」の支給対象者となり、大学院へ進むことができました。博士課程への進学についても、授業料が実質無償化となる奨学金や、助手として有給で雇用されるなど支援制度が充実しており、このまま博士課程へ進む予定です。
黄学部長:大学院に進学した場合、高度な専門性を獲得することができ、国内外の学会での発表や論文の執筆などは業績として残ります。さらに博士号は、世界に通じる専門性の証です。理工学部で大学院に進学するメリットは非常に大きく、間違いなくキャリア形成のプラスになります。

青学の理工学部を選んだ理由とは?現役学生が語るそれぞれの視点
--学生の皆さんは、なぜ青山学院大学理工学部への進学を決めたのでしょうか。
森川さん:私は、中学生のころから宇宙に興味があり、宇宙関連の研究ができる大学を探していました。物理科学科には宇宙に関する研究室が3つあり、その中でも高エネルギーの天体現象を調査している今の坂本研究室でダイナミックな宇宙の研究をしたいと思ったからです。
稲葉さん:私は、入退院を繰り返していた祖母がさまざまな医療機器に支えられていたことをきっかけに、機械工学に興味をもちました。青学に決めた理由は、母が卒業生で、「青学なら女性が少ない理工系分野でも活躍の場を広げてくれるのでは」と背中を押してくれたことと、この相模原キャンパスの海外の大学のように壮大で綺麗な環境に憧れたことです。
尾﨑さん:私は森川さんや稲葉さんのように崇高な動機はなく、古文が苦手だったので理系、かつゲーム好きだったので情報系を選んだというのが正直なところです。青学を選んだのも家から近いというのが一番の理由で、指定校推薦で進学を決めました。こんな自分がまさか大学院の博士課程に進学するとは夢にも思わなかったです。
山上さん:私も理由はとてもシンプルで、物理が大好きで大学でも物理をやりたいと思ったからです。青学の理工学部を選んだのは、学科が7つもあって研究分野が幅広く、自分の興味にあった分野を見つけやすいと感じたのが決め手でした。最終的に自分が得意な電気に決めましたが、入学後に転科ができるというのも魅力的でした。

他分野へ視野を広げ、専門性を深く掘り下げる「ブラックホール型」のカリキュラム
--青山学院大学理工学部での4年間の学びについて詳しく教えてください。
黄学部長:今、山上さんが言ったように、青学の理工学部には物理科学、数理サイエンス、化学・生命科学、電気電子工学、機械創造工学、経営システム工学、情報テクノロジーの7つの学科があります。おもに1年では理工学部の全学科が履修する共通の必須科目があり、すべての学生が物理、化学、電気、機械、情報の実験・実習を受講することで揺るぎない基礎力を養います。
また、1、2年の間で英語にも力を入れ、「読む・書く・話す・聞く」の4技能をカバーし、コミュニケーションが楽しくなるような実践力を培います。さらに、他分野への広い視野を身につけるために、全学共通教育システムである「青山スタンダード科目」も履修してもらいます。専攻とは異なる多様な学問に触れることは、専門科目での学びを進める支えにもなります。
これらを土台に、3年からはより専門的な科目を学び、4年になるといよいよ研究室に所属します。研究室の学部生は概ね10名程度で、教員と学生の距離がとても近い環境です。また、もっと早い段階から高度な学習・研究をしたい学生には、最短で2年から参加できる「理工学高度実践プログラム」という制度も設けています。
私はこうした青学理工学部のカリキュラムを「ブラックホール型」と呼んでいますが、4年間を通じて学生たちは、幅広い教養と実践的な英語力を備えた国際性、そして盤石な基礎力に裏付けられた理工学に必要なリテラシーと各分野の専門性を、余すことなく身に付けることができるのです。
--学生の皆さんは、どんな授業やカリキュラムが印象に残っていますか。
森川さん:青学の物理科学科は、21世紀でもっとも注目されている超伝導の分野で世界トップクラスの研究実績を誇ります。そのほかにも宇宙物理や摩擦、原子物理、生物物理、ソフトマター、ナノテクノロジーなど幅広い分野をカバーしていますが、中でも私は量子力学の授業で、目に見えない世界で自分の常識を覆すようなことが起こっていると知り、とても衝撃を受けました。
稲葉さん:機械創造工学科では実体験重視のカリキュラム編成で、体験を重ねながら核心に迫っていくというアプローチです。1年から2年にかけて機械工学の基礎となる四力学の知識を学び、学年があがるに連れて実際にものづくりをしていくので、学習した内容を実際の形にできることにすごくやりがいを感じました。
山上さん:私は、2年から3年にかけての実験の授業は、大変だったけれどやりがいがありました。この相模原キャンパスには最先端の実験設備があり、本格的な実験のレポートをまとめるのは大変でしたが、先生に聞きに行ったり専門書を調べたりといった研究の土台となる学習習慣が自然と身に付きました。
尾﨑さん:私も体験という点で、3年での研究室体験が印象に残っています。4年で研究室に所属するので、その前にいくつか気になる研究室を体験できるのですが、青学では1、2年で理工学の基礎をしっかりと学ぶので、実際にそれを土台にしてものづくりが経験できたのはすごく楽しかったですね。
4年からは研究室へ、世界トップクラスの企業や組織と連携も
--現在はどのような研究に取り組まれているのでしょうか。
山上さん:私の研究室では、極限まで低い消費電力で動作する小さなデバイスの開発に取り組んでいますが、私はその中で、そうしたわずかな電源で動かせるようなCPUを作る研究をしています。研究の核心は「いかに低電力で動かせるか」というところですが、たとえば災害時や宇宙環境など、特殊な環境下でも力を発揮するデバイスが作れたらいいなと思っています。
森川さん:私の研究室では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と連携して、超小型人工衛星の開発に携わっています。私はその中で、宇宙空間における超小型人工衛星向けの制御システムの開発に取り組んでいます。今年度打ちあがるロケットに搭載される予定で、実際に自分の作ったシステムが宇宙に行くのかと思うと、とてもわくわくしています。
稲葉さん:私の所属する菅原研究室も、宇宙ステーションで使うロボットアームの制御システムなど、JAXAと機械制御に関する開発を進めています。私は、ロボットアームを取り付けたドローンの制御方法を研究しており、試作品を作っては実験し、先輩や同期からアドバイスをもらいながら、試行錯誤を繰り返して頑張っています。
尾﨑さん:私は重さを認識するセンサーを用いて、重さと重心の位置で個人を識別するデバイスを研究しています。カメラによる顔認証識別より心理的なハードルが低いので、床に置いておくだけで登録者と未登録者を識別してゲートの開け閉めをしたり、駅などで時間帯ごとにどのような人が利用しているかといったデータを得たりなど、多彩な場面で活用できるのではないかと考えています。この研究は情報テクノロジーの分野にとどまらず、重さに関する専門知識は物理、デバイス作りは機械や電気電子といった具合に、学科を横断していろんな人の力を借りながら進めています。
黄学部長:研究にはいろいろな知識や技術が必要になります。森川さん、稲葉さんのようにJAXAと連携しながら取り組んだり、尾﨑さんのように、学科横断の融合的なプロジェクトも次々と生まれています。外部研究予算の受け入れも年々増額し、CEATEC(シーテック)のような国際展示会や、国際学会への参加も積極的に行なっており、学生が最先端の研究を発表する機会はたくさんあります。

研究のその先は…?学生が目指す未来
--皆さんの高度な研究内容には圧倒されるばかりです。ご自身の成長を振り返ってみて、青山学院大学理工学部の教育に何か秘訣があると思いますか?
森川さん:授業です。高校でも物理を頑張って勉強してきたつもりでしたが、大学では学問としての奥深さと幅広さに気付かされました。特に1、2年で基礎をとことん学んだことで自信も付き、より専門性を高めたいという意欲が湧いたように思います。
稲葉さん:私も1、2年の授業は専門性を高めるうえでとても役立ったと感じています。理工学の基礎に加えて、全学部共通の「青山スタンダード科目」の授業では、学部・学科の枠を超えた交流もでき、ぐっと視野が広がりました。
尾﨑さん:私はこの環境のおかげだと思っています。青学の理工学部は真面目で優秀な学生が多く、周囲の友人や先生からも大いに刺激を受けました。研究室では学会への参加や発表が当たり前だったので、自分もいつの間にか周囲と同じように熱心に研究に取り組むようになっていました。
山上さん:私も周囲の友人が授業中に質問したり、わからないところは先生に聞きに行ったりする姿を見て、自然と積極的になりました。皆、自分の課題や実験に真剣に取り組んでいますし、助教の先生が身近な存在としていつでも相談にのってくれたり、アドバイスをくれたりする環境も成長につながったと思います。
尾﨑さん:さらに、経済的な不安がなく、充実した研究設備のもとで最先端の研究に没頭できるのは本当にありがたいです。大学入学前までは決して志が高いとは言えなかった私が、今このように研究に打ち込み、博士課程にまで進めることになったのは、チャレンジしやすい環境を大学側が用意してくれたおかげです。
--この春から尾﨑さんは博士課程へ、森川さん、稲葉さん、山上さんは修士課程へ進学されます。どんな将来像を描いていますか。
森川さん:現在、人工衛星に関わる研究を進めているので、将来は技術力の高い企業で、人工衛星の開発に貢献できるようなデバイスやシステムを作ってみたいです。
山上さん:研究分野であるCPUの回路設計に携わりたいと思っています。固定概念にとらわれず、常に新しい分野に挑戦しながらキャリアの可能性を探っていきたいです。
尾﨑さん:博士課程を終えたら企業に就職し、研究の成果を社会実装につなげたいと考えていますが、並行して、かつての私のように研究の面白さをまだ知らない子供たちや学生に向けて、その魅力を伝え、可能性を広げるような活動もしていければと思っています。
稲葉さん:これまでのものづくりに加え、大学院の「データサイエンティスト育成プログラム」にも興味があります。柔軟に複数の専門性を掛け合わせながら、独自のキャリアを築いていきたいです。
黄学部長:技術進歩が急速に進む社会において高度な専門性を獲得することは、研究者としてだけでなく、企業などに就職した際も大きな即戦力となります。さらに稲葉さんがあげたプログラムは、今後必須となる情報系の高いリテラシーが身に付きます。青学の理工学部で学ぶことで、日本国内だけでなく世界からも必要とされる希少な人材になれるでしょう。

理工系分野に臆することなく飛び込んでほしい
--最後に進路選択に悩む中高生や保護者の方に向けたメッセージをお願いします。
尾﨑さん:青学の理工学部は東大・京大にも負けていないと胸を張って伝えたいです。研究内容では遜色ないどころか上回っている学生もたくさんいるので、期待と希望をもって入学してきてほしいです。
森川さん:今はまだ将来やりたいことが決まっていなくても、青学の理工学部なら必ず道が開けるはずです。安心してここでの4年間を選んでほしいと思います。
稲葉さん:私もそう思います。青学の理工学部は基礎から幅広く学べるので、じっくりと興味のある研究テーマを見つけられます。
山上さん:女子はまだ少ないですが、心配は一切不要です。勉強するうえで何も不利になるようなことはないですし、将来の夢など特にない状態で入学した私も、自分でも驚くほど学びたいことが増えました。自分の可能性を信じて飛び込んでみてほしいです。
黄学部長:今日学生たちが話してくれたように、手厚いサポートの下、誰もが不安なく基礎からしっかりと学び、そこから着実に専門性を高めていける環境ですので、ぜひ多くの受験生にチャレンジしてもらいたいです。理工学部では2026年度入学者を対象に、総合型選抜「理工系女子特別入学者選抜」を実施します。理工系に進学する女子学生の比率を高めるために、物理科学科、電気電子工学科、機械創造工学科、情報テクノロジー学科でそれぞれ5名の女子を募集予定です。
仮に今、自分に十分な自信がなくても、青学の理工学部で「できること」「やりたいこと」を増やし、将来のキャリアにつなげて、幸せな未来を実現してほしいと願っています。

青山学院大学理工学部の手厚い教育環境。そのリソースを惜しみなく活用し、見事に成長を遂げている学生たちの姿が印象的だった。7月のオープンキャンパスでは、模擬授業や研究室公開なども行われる予定だ。ぜひキャンパスに足を運び、その魅力を感じてみてほしい。
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