湯川秀樹から大人気YouTuberまで「人材の宝庫」の京大が今なぜ人気なのか

 京都大学の志願者数は4年連続で増加し、2025年度入試では8,000人を突破。過去10年で最多を記録した。人気は近畿圏にとどまらず、全国的に志願者が増えている。その魅力はどこにあるのか。今年京大に入学した3人に語ってもらった。

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湯川秀樹から大人気YouTuberまで…「人材の宝庫」の京大が今なぜ人気なのか
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 京都大学(以下、京大)の志願者数は4年連続で増加し、2025年度入試では9年ぶりに8,000人を突破。過去10年で最多を記録した。しかもその人気は近畿圏にとどまらず、全国的に志願者が増えている。湯川秀樹をはじめとするノーベル賞受賞者をアジア最多の11人輩出する名門大学だが、最近では実力派の作家や人気YouTuberでも有名だ。

 多くの受験生を惹きつける京大の魅力はどこにあるのか。毎年多数の京大合格者を輩出する駿台予備学校(以下、駿台)に通い、今春見事合格を果たした3人の学生に、京大の魅力や合格のために必要な力について語ってもらった。

<インタビュイー>
岡本 一輝(おかもと いつき)さん:京都大学 経済学部1年生、東大寺学園高等学校出身

小畑 百佳(こばた ももか)さん:京都大学 農学部・資源生物科学科1年生、京都府立洛北高等学校出身

牛島 七菜子(うしじま ななこ)さん:京都大学 農学部・応用生命科学科1年生、京都府立園部高等学校出身

いつから、なぜ京大を目指したのか

--京大を目指し始めたきっかけや時期はいつですか。また、進学先の学部を選んだ理由を教えてください。

小畑さん:私が通っていた京都の公立中高一貫校は京大の近くにあり、京大へ足を運ぶ機会も多い環境でした。同級生にも京大志望の人がたくさんいたので、自然と自分も京大を目指すようになりました。

 農学部を受けようと決めたのは高2の夏です。夏休みの課題で大学と学部を調べることになり、農学部で学ぶ内容に興味をもちました。その後、高2の3学期にオーストラリアでのターム留学を経験したのですが、現地の学校の近くに培養肉の研究で有名な大学があり、「将来はここへ留学して研究したい。そして食品関係の仕事に就きたい」と、農学部へのあこがれがますます大きくなりました。

岡本さん:僕が京大を目指した理由は、高校の同級生の半数以上が京大志望だったことと、社会が好きで「二次試験で社会を活かせる大学」という条件に京大が合っていたからです。

 京大を目指し始めたのは高2の3学期に入ったころです。とはいえ、大学では「これをやりたい」と思えるものが見つからなかったので、文系で受験できる学部の中で将来の選択肢が多いと感じた経済学部を目指すことにしました。

京都大学 経済学部1年生(東大寺学園高等学校出身)の岡本 一輝さん

牛島さん:私が京大を目指し始めたのは小4の時です。当時、大学は東大と京大しかないと思っていて(笑)、自分は京都に住んでいるので「じゃあ京大だな」と。私はお2人のように周囲に京大志望の人が大勢いる環境ではなかったのですが、家族が「あなたならきっと合格できる」と応援してくれたので、最後まで他の大学を考えることはありませんでした。

 私は生物と化学が好きで、最初は薬学部志望でした。でも、共通テストの成績が良くなかったので、出願の時に農学部へ変更しました。

成績低迷からの挑戦も「やると決めたらやる」

--中高時代を振り返って、勉強の取組み方と駿台を選んだ理由を教えてください。

牛島さん:私は公立の中高一貫校に通っていて、中学時代は好きな漢字の勉強以外は特別なことはしていませんでした。高校に入っても2年生まではアイドルの推し活のために週3~4日アルバイトをしていて、塾にも通っていませんでした。勉強に熱心とはとても言えない状況でしたが、定期テスト前だけは集中し、必ず8割以上を取るように意識していました。

 駿台に通い始めたのは高3からです。大手で理系に強いイメージがあったことと、体験授業がとても面白かったことが決め手でした。生物・化学・英語を受講し、予習と復習をしっかりやるように心がけていました。

岡本さん:僕の通っていたのは中高一貫の進学校でしたが、僕自身は中学受験で燃え尽きてしまったせいか、勉強にはまったく身が入らず、定期テストの順位も学年で下から20番くらい。あまりに勉強しないので、中3の時に親から半ば強制的に駿台に入学させられたくらいです。なぜ親が駿台を選んだかというと、すでに姉が通っていて、大手ならではのノウハウがあって安心できると感じていたからだそうです。

 高2までは英語と数学、高3からは世界史と数学を受講しましたが、高2までは駿台に行ってもただ座っているだけ。親から怒られることも多々ありました。

 自分から「やる」と決めないと勉強できないタイプだったので、真剣に向き合い始めたのは京大を目指すと決めた高2の1月からでした。それまで勉強をやっていなかった分やるべき課題が山積で、それをポジティブに捉えれば伸びしろしかなく(苦笑)、集中して取り組むことで一気に成績が伸びました。

小畑さん:私は数学が苦手だったので、数学だけは中1から専門塾に通っていました。駿台に通い始めたのは高2に上がる前の春休みで、友達が通うと聞いて一緒に入学しました。平常授業は高2では物理だけ、高3からは物理と化学を受講しましたが、季節講習はいろいろ取りました。高3の秋に模試で思うような結果が出ず、受験校を変えるべきか悩みましたが、どうしても京大があきらめきれなかったので、とにかくギリギリまで頑張ってみようと勉強を続けました。最終的に共通テストで良い点数が取れたので京大に出願し、直前期の1か月は1日13時間以上勉強しました。

京都大学 農学部・資源生物科学科1年生(京都府立洛北高等学校出身)の小畑 百佳さん

現役京大生から見た、全国的に人気が高まる理由とは

--今、京大の人気が高まってきていますが、その理由は何だと思いますか。また、実際に通ってみて感じる京大の魅力を教えてください。

小畑さん:京大の魅力は、個性的で多様な人が集まっているところだと思います。部活やサークルに打ち込んでいる人もいれば、自分の専門を深く探究している人もいて、それぞれ自分が今やりたいことに情熱を注いでいる仲間に出会える環境です。

 全国から京大を目指す人が増えているようですが、入学してみると私の周りにも首都圏出身の人が多くて驚きました。受験理由を聞くと、「東大にはない京大ならではの面白さがある」「京都という街に惹かれた」「ひとり暮らしがしたかった」と言う人が多いです。

岡本さん:最近は京大生YouTuberがとても有名になって、大学や京都の街の魅力を広く発信してくれていることも人気上昇の一因ではないでしょうか。京大の魅力は、自由な雰囲気があること、そして授業の取り方次第で自分の時間を作りやすいことですね。勉強やサークル、スポーツなど、自分のやりたいことに打ち込めます。僕も今、テニスとバレーボールのサークルを2つ掛けもちしており、これも時間に余裕がある京大だからこそだと思います。

牛島さん:京大は多くのノーベル賞受賞者を輩出していることもあり、特に理系の研究環境が整っているように感じます。研究に打ち込みたいという学生も多い気がしますね。

 京大のいちばんの良さは、面白い人に出会えることです。小畑さんが言ったように、個性的な人も多くて、しかもその個性を誰も否定することなく、尊重する雰囲気があります。そうした校風だからこそ、誰にとっても自分らしくいられる。そこが京大の大きな魅力だと思っています。

入試問題から垣間見える、京大が受験生に求める力

--京大合格のためにもっとも大切な力は何だと思いますか。それはどうやったら身に付けられますか。

小畑さん:私は「自分で粘り強く考える力」がとても大切だと思います。初めて京大の問題を見たのは高3のときで、最初は何から手をつけて良いのかまったく検討もつかない難解な問題ばかりでした。そのときに痛感したのが、京大の問題には、何かしら糸口を見つけて、自力で一歩ずつ解き進めていく粘り強さが求められるということです。

 その力を身に付けるには、普段から問題集などを解く際にもすぐにあきらめず、まずはできる限り自分で考えてみることが大切です。私は、最終的に解答を見ることになっても、「この解法を思い付くにはどんな要素に気付く必要があるのか」を必ず言語化するようにしていました。たとえば数学なら、「この置換を思い付くには数式の対称性に気付く必要がある」といった分析をしていく。そうやってひとつひとつの問題を深く考える習慣が、京大合格に必要な力につながるのではないかと思います。

牛島さん:私は「忍耐力」だと思います。京大の入試に必要な演習量は本当に多く、たくさんの問題を解かなければなりません。また、共通テストが終わってから二次試験までの期間も長く、試験も丸2日間、そして合格発表までも時間が開くので、かなりの長期戦です。気持ちがもたない瞬間がたびたびあり、そういった意味でも忍耐力は欠かせないと感じました。

 忍耐力を身に付けるには、「何が何でも京大に合格するんだ」という思いを強くもつことが大切です。「人に言われたからやる」という姿勢では、途中で挫折してしまうかもしれません。自分で選んだ道だからこそ耐えられるし、頑張れるのだと思います。

 勉強面で言うと、京大の数学には問題文が短いという特徴があります。数学に限らず京大の問題には誘導がないとも言われるのですが、「この条件ならベクトルを使うしかない」とか「座標では解けないな」といった発想に自然と誘導されていることも多いように感じます。情報が少なくても、与えられた情報から適切に判断できる思考力や発想力が求められますね。

京都大学 農学部・応用生命科学科1年生(京都府立園部高等学校出身)の牛島 七菜子さん

岡本さん:2人と似ていますが、「あきらめない力」ですね。京大のような難関大学は、模試でもなかなか良い判定が出ないけれど、それでも目指し続ける姿勢がとても大切だと思います。

 僕自身は学校の成績が長らく低迷していたので、京大を受験すると決めた時には「本気で京大に合格できると思っているのか」と、周囲からは本気にしてもらえませんでした。それでも、「自分は絶対に京大に行く」という根拠のない自信をもち、あきらめずに努力を続けたからこそ、今があるのかなと思います。

「これで落ちても後悔はしないか」を自分に問いかけてから行動する

--今、振り返って、最大の後悔は何ですか。

岡本さん:中3から駿台に4年間も通わせてもらっていたのに、高2の冬まではただ座っているだけで全然勉強していなかったことです。大金を無駄にしてしまい、親に対して本当に申し訳なかったと思っています。

牛島さん:私はずっと「後悔のないように生きよう」と思って過ごしてきました。常に「これで落ちても後悔しないか」と自分に問いかけ、納得してから行動していたので、受験期でも推し活でライブに行ったし、『M-1グランプリ』もどうしても見たかったので我慢せず全部見ました(笑)。

 ただあえてひとつあげるとしたら、薬学部に出願しなかったことです。もし出願していたら合格していたかもしれない。ずっと薬学部に行きたかっただけに、最初は後悔もありました。でも、今は農学部がとても楽しくて、むしろ薬学部に出願しなくてよかったと心から思っているくらいです。結局、後悔するかどうかは自分次第。今がいかに充実しているかで捉え方は変わっていくものだと思います。

小畑さん:私も何かを選ぶときには「後悔しないように」という意識で決めてきたので、特に大きな後悔はありません。

 でも、もし京大が不合格だったら、高2の1月から1学期間オーストラリアへ留学に行ったことは後悔していたかもしれません。ちょうどその時期から、周りが本気で受験勉強を始めるタイミングだということを知らずに行ってしまったので、帰国したらすでに周りが受験モードに切り替わっていて焦りました。とはいえ、オーストラリアでの経験のおかげで英語のリスニングは得意になりましたし、農学部へのモチベーションも高まったので、結果的にはプラスになった部分の方が大きかったと思います。

「頑張った」と胸を張って言えるまでやり抜く

--京大を目指す受験生にエールをお願いします。

牛島さん:今すごく頑張っていても、なかなか結果が出ず、苦しい時期もあると思います。そんなときは、自分が今できていることを認め、褒めてあげてほしいです。ただし、過信はせず、自分の弱みやできていない部分にも目を向けて、改善を続けてほしいとも思います。つらい時期を乗り越えれば、それが成長につながるはずですから、自分を信じることを忘れずに頑張ってください。

岡本さん:受験期は精神的につらいことの方が多いかもしれませんが、最初から「自分には無理だ」とあきらめてしまうのはすごくもったいないと思います。まずは挑戦してみようと決めて、決めたからには後悔のないようにやり切るんだと腹をくくって頑張る。山あり谷ありでも、苦労の先には楽しく充実した大学生活が待っています。

小畑さん:頑張ったからといって全員が合格できるわけではないのが入試の厳しいところですが、「自分がこれだけ頑張ったんだ」と思えることは必ず心の支えになります。だからこそ、不安に押しつぶされそうになっても、絶対に勉強は止めないこと。ひたむきに前だけを向き続け、「頑張った」と胸を張って言えるまでやることが大事だと思います。受験生の皆さんを心から応援しています。

--ありがとうございました。


 今回お話を伺った3人の言葉からは、京大の自由な校風や人を含めた環境の魅力に加え、ひたむきに学ぶ姿勢や挑戦する心の大切さが伝わってきた。受験生の皆さんも、この声をヒントに、自分に合った学び方を見つけ、納得のいく受験生活を送ってほしい。最後まであきらめずに努力し、合格を手にした先には、きっとそれぞれにしか描けない豊かな大学生活が待っているはずだ。

第一志望は、ゆずれない。
駿台式「京大合格」への道

《木村りこ》

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