モーター技術世界一のニデック創業者が設立 英語で学び世界で活躍できるエンジニアへ…京都先端科学大学を大解剖

 日本電産(現・ニデック)を世界No.1の総合モーターメーカーに育てあげた永守重信氏が理事長を務める京都先端科学大学。その中核となる工学部では、英語力と実践力を兼ね備えた人材の育成を目指し、先進的でユニークな教育を行っている。

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モーター技術世界一のニデック創業者が設立   英語で学び世界で活躍できるエンジニアへ…京都先端科学大学を大解剖
モーター技術世界一のニデック創業者が設立 英語で学び世界で活躍できるエンジニアへ…京都先端科学大学を大解剖 全 8 枚 拡大写真

 日本電産(現・ニデック)を世界No.1の総合モーターメーカーへと導いた永守重信氏が理事長を務める京都先端科学大学(Kyoto University of Advanced Science=KUAS)。その中核をなす工学部は、2020年の開学以来、産業界が求める「即戦力エンジニア」の育成を掲げ、先進的でユニークな教育を行っている。

 工学部創設の陣頭指揮を執った田畑修副学長、同学部の学部長・研究科長を務めるアルベルト・カステッラッズィ教授と現役学生が語る、KUASならではの強みとは…?

京都先端科学大学
田畑 修 副学長 工学部機械電気システム工学科教授 
アルベルト・カステッラッズィ教授 工学部機械電気システム工学科学部長 研究科長 
ウィジェスンデラ・スプニさん 工学研究科博士前期課程1年生
長尾 陸さん 工学部機械電気システム工学科1年生
※学年、所属学科はインタビュー当時の情報

工学部の留学生比率は約7割 講義はすべて英語で

--工学部機械電気システム工学科は、京都先端科学大学(Kyoto University of Advanced Science、以下KUAS)の中核といえる学部学科です。この学部学科の特色について教えてください。

田畑副学長:工学部は、日本電産(現・ニデック)創業者であり本学の理事長でもある永守重信氏から、「実践力と英語力を兼ね備えた、世界を舞台に活躍できるエンジニアを育ててほしい」という使命を託されています。ですから、工学部の授業はすべて英語で行い、日本人の学生と留学生が同じ教室で学びます。また、企業と協業するリアルな体験を重視し、日本人と留学生がチームになって行うグループワークで実践力を養います。2025年度9月には、工学部では約70の国と地域から留学生が集まり、その数は約7割を占めます。ここまで徹底して英語での工学専門教育を行っているのは、日本では本学だけです

工学部創設の陣頭指揮を執った田畑修副学長

--英語で授業を行うことで、日本人学生の英語力も鍛えられますね。

田畑副学長:日本人学生が実践的な英語力を身に付けられるようにカリキュラム設計しており、1年生の春学期には週10コマ必修で「コミュニケーションのための英語」を集中的に鍛えます

 日本人学生は1年次の春から英語でのグループディスカッションを積み重ね、9月からの秋学期では、秋入学の留学生と躊躇なく交流できるように準備させます。最初は英語に苦手意識をもっている学生も、少しくらい文法が違っても通じることがわかってくると、どんどん自信が付いていくようです。

--学生の7割が約70の国・地域からの留学生、3分の1が海外出身の教員というのは極めてグローバルな環境ですが、学生には入学前と比べてどのような変化が見られますか。

カステッラッズィ工学部長:多様な文化の中では、自分の基準だけで相手を判断できませんから、日本人学生も留学生もお互いを理解しようと丁寧に対話し、歩み寄る力を自然と身に付けているように感じます。

 また、世界中どこの大学でも、留学生というのはどうしても同胞同士で固まってしまうケースが少なくないのですが、KUASでは半年も経つと国籍を超えた友人関係が生まれています。これも、1年次からチームを組み、挑戦する機会があるからです。こうした経験を通じて、アジアの学生は西洋の学生から積極性を、西洋の学生はアジアの学生から忍耐強さや謙虚さを学び合うなど、より成熟したコミュニケーション能力が育まれ、真のグローバルエンジニアとして成長していくようすがうかがえます。

工学部機械電気システム工学科:アルベルト・カステッラッズィ教授

幅広く工学基礎を学び、「ストリート・スマート」な人材に

--世界各国からここまで多くの優秀な留学生が集まるのは、講義が英語で行われていること以外に、どんな理由があるとお考えですか。

田畑副学長:高校を卒業した時点では、自分が何に向いているのか、どんな道に進みたいのかがはっきりしていない学生も多くいます。その点、本学の工学部は、機械工学・電気工学・電子工学・情報科学・電気化学とといった工学分野の基礎をすべて学べる分野横断型カリキュラムなので、幅広く学んだうえで自分の興味や適性を見極め、将来の道を選ぶことができるというのが大きな魅力なのだと思います。また3・4年生で、実際に企業が直面している課題に取り組む体験にも、大きなメリットを感じてくれているようです。

分野横断型のカリキュラムだからこそ身に付く「専門性」 京都先端科学大学HPより

--確かに、KUASの工学部は機械電気システム工学科のみで構成されているところがユニークです。あえてこのような分野横断型のカリキュラムを採用された背景についてお聞かせください。

田畑副学長:私は長年、京都大学工学部の教授として機械系の学科に在籍していました。しかし、現代の工学の現場では、電気回路の設計や材料の化学的性質の理解など、自分の専門分野の垣根を越えた課題に直面することは日常茶飯事です。ところが、学生の中には「自分は機械だから電気はわからない」「化学は専門外」と、最初からあきらめてしまう人が少なくありませんでした。彼らは所属学科の枠にとらわれ、「自分は機械系のことしか扱えない」と無意識に思い込んでしまっているのです。

 少し学びを深めれば対応できるようになるにもかかわらず、そうやって自ら成長の可能性を閉ざしてしまうのは非常にもったいないことです。その点、入学時から複数の分野を横断して学んでいれば、こうした分野間の壁を感じにくくなります。こうした問題意識を背景として、KUASの工学部では、入学前に専門を固定せず、技術の基礎を幅広く学べるカリキュラムを構築したのです。

--将来、社会に出て新しい仕事を任されたときにも、「自分の専門外だからわからない」と立ち止まるのではなく、「必要なら、すぐに勉強して取り組めば良い」という柔軟な姿勢をもてること。これは非常に重要ですね。

田畑副学長:まったくそのとおりです。新しい知識に対する抵抗感がなく、どんどん吸収していくこの姿勢こそが、我々が育成を目指す「ストリート・スマート」にほかなりません。「ストリート・スマート」とは、机上の知識(ブック・スマート)に留まらず、実際の現場で課題に向き合いながら必要な知識を自ら身に付け、それを使って解決へ導く「実践力」をもつ人材のことです。

 特に現代は生成AIの時代です。これからの社会で求められるのは、どれだけたくさんの知識を暗記しているかという知識の量ではなく、課題を見つけ、必要な情報を自ら探し出し、それらを活用して解決する力です。そして、課題解決には、相手の意図をくみ取る力、自分の考えを的確に伝え、説得する力も欠かせません。こうした力は、教室内で座学をしているだけでは、なかなか身に付かないものです。

 だからこそ、冒頭でもお話ししたように、KUASの授業では企業と協業し、日本人学生と留学生がチームになってプロジェクトを進めていくリアルな体験を重視しています。その結果、企業からはKUASの学生は『すでにエンジンをかけた状態』で入社してくると高く評価されています。まさにこれこそが、KUASが社会に送り出したい「ストリート・スマート」な人材の姿なのです。

異なる背景をもつ仲間と協働する「キャップストーンプロジェクト」

--分野横断型の教育、日本人学生と留学生がチームになって企業と協業する体験重視のカリキュラムは、1年次から4年次まで、年次ごとにどのように設計されているのでしょうか。

カステッラッズィ工学部長:1・2年次では、数学や物理、情報処理といった基礎知識や基本技能をしっかり学び、エンジニアとしての土台を築きます。同時に、「デザイン基礎」や「デザイン思考」、金属を削ってステッピングモータをゼロから作りあげる「機械製作実習」など、チームでサイエンス的な課題に取り組む体験型の授業も豊富です。

 3年次以降は、電気・電子・機械・通信工学やコンピューターサイエンス、ロボティクスなど、自分の興味や将来のキャリアに合わせて専門分野を選び、より深い学びに進みます。それまで学んだ工学の基礎を使って企業と協業して、企業が現場で直面する課題を解決する「キーストーンプロジェクト」、さらに高度な企業課題に取り組む「キャップストーンプロジェクト」や、大学院進学者向けに指導教員の研究室で最先端の研究テーマに取り組む研究室プロジェクトがあります。

機械電気システム工学科のカリキュラム 京都先端科学大学HPより

--キャップストーンコンソーシアムに加盟している約120社から出される約50個の課題に取り組む「キャップストーンプロジェクト」は、KUASでの工学教育の集大成として位置づけられています。学生はこの取組みを通してどのような力を身に付けられますか。

カステッラッズィ工学部長:今、テクノロジーは急速に進化・融合しており、幅広い分野を横断して学び、習得することが求められています。また、働く環境もグローバル化が進み、異文化コミュニケーション能力もますます重要になってきています。このように、身に付けるべき知識や技能が増えているからこそ、大学でも新しい学び方が必要です。そこで、本学が編み出した新しい学び方が「キャップストーンプロジェクト」です。学生たちは多国籍のチームを組み、企業が実際に直面している課題解決に挑戦します。

 このプロジェクトを通じて、学生たちは異なる背景をもつ仲間と協働することで、国際的な仕事の進め方を学びます。工学の複数分野を横断する専門的な学びと共に、プレゼンテーションのスキルからチームマネジメント、異文化コミュニケーションまで、社会で即戦力となる力を自然と、そして楽しみながら身に付けていくのです。

返済義務のない給付型奨学金も充実

--次は在学生のお2人にお話を伺います。長尾さんは、なぜ京都先端科学大学に入学しようと思ったのでしょうか。

工学部機械電気システム工学科1年生:長尾 陸さん

長尾さん:僕は広島県出身ですが、中学3年生の時、父に連れられてオープンキャンパスを訪れました。父は世界的に有名な企業の創業者が理事長をしていると知って興味をもったようです。実際に来てみると、留学生がとても多く、日本の大学なのに海外に留学しているような環境だと思いました。さらに、ものづくりのデジタル化が体験できる「The Smart Factory @ Kyoto」という最先端のラボがあり、学生が自由につくったり動かしたりできる体制が整っていることや、「キャップストーンプロジェクト」をはじめ、学生のうちから社会課題に取り組めることも大きな魅力でした。

 また、僕自身が進学を決めた時は、まだ自分が何に興味があるのかを見定められていなかったので、分野横断型のカリキュラムや、もし最終的に工学という分野に向いていなかったとしても、KUASなら実践的な英語力が身に付けられる点は安心材料でした。

--長尾さんは、スーパートップスカラシップに選ばれ、給付型奨学金を受けているそうですね。

長尾さん:はい。入学金、各学期の学費全額に加えて、修学支援援助金として学期毎に60万円が給付される制度で、返済義務はありません。入学後も良い成績をキープできれば4年間給付されます。A日程の一般入試(3科目型)・共通テスト利用入試で得点率が85%以上だった人から最大5名が選ばれます。僕はKUASが第1志望で、ぜひこの奨学金を得たいと思い、高得点を目指してしっかりと対策を行いました。

手厚いサポートで優秀な留学生から選ばれる大学へ

--スプニさんには、なぜ日本に留学しようと思ったのか、そしてその中でもKUASを選んだ理由を教えてください。

工学研究科博士前期課程1年生:ウィジェスンデラ・スプニさん

スプニさん:私は医療機器や人工装具といった分野に強い関心があり、痛くない注射針や世界有数の精度を誇る義手や義足の技術など、患者第一で開発を行う日本企業の取組みをYouTubeで見ていたので、日本で学ぶことが憧れでした。ただ、当時は日本語が話せず、その夢を実現するのは難しいだろうと感じていました。そんなときに知ったのがKUASで、英語で機械・電気・情報など工学を横断的に学べるカリキュラムに強く惹かれました。さらに、企業との連携が盛んなこと、そして国際的で文化豊かな京都という街も魅力的で、ここなら将来の夢に近づけると思いました。

--スプニさんはKUASの工学部留学生1期生として入学し、今年の9月からKUASの大学院に進学したとのことですが、大学生活を振り返って、KUASのいちばんの魅力はどこにあると感じますか。

スプニさん:この国際的な環境で、世界中から集まったクラスメイトや先生方からたくさん学べたことです。学んだ知識を社会でどう生かすかを考える機会が多く、特に3年生で取り組んだ「キャップストーンプロジェクト」では、日本企業と一緒にさまざまな課題に挑戦しました。授業は英語ですが、留学生には日本語の授業も充実していて、来日当初は日本語が話せなかった私も、4年目で日本語能力試験N2*に合格することができました。*日本企業で就職の際、応募条件として求められることが多いレベル

企業と一緒に課題解決に挑戦する「キャップストーンプロジェクト」

田畑副学長:他の国で学ぶという選択肢もある中、あえて日本の本学を選んで来てくれたわけですから、留学生にはぜひ日本の社会で活躍してもらいたいと思っています。そのため、日本人学生が英語力を鍛えるのと同じように、留学生にも日本語を集中的に学ぶカリキュラムを用意し、日本での就職につなげています。

KUASは学生ひとりひとりの可能性を最大限に引き出す

--高校生にとっては多様な進路の選択肢がありますが、あえてKUASを選ぶべき理由、強みはどこにあると思いますか。

田畑副学長:これからの日本社会は確実にグローバル化が進みます。そのときに求められるのは、世界共通言語である英語を使って、異なる文化や価値観をもつ人々と協業しながら、新しいものを生み出していく力です。そうした力をもつ人こそが、真に国際的に活躍できる人材だと思います。

 KUASには、その力を育む環境が整っています。今日お話ししてきたように、キャンパスには世界中から学生が集まり、日常的に多様な視点や考え方に触れることができます。先ほど長尾さん、スプニさんも言っていましたが、まるで海外の大学にいるような環境で学びながら、同時に京都という日本の伝統文化が息づく街で暮らせる。こんな場所はほかにありません。

--未来が不確実な時代だからこそ、進路に迷う高校生や悩む保護者の方も多いと思います。そうした皆さんに向けたメッセージをお願いします。

カステッラッズィ工学部長:私がお伝えしたいのは、ぜひ教育の「質」に目を向けていただきたいということです。KUASは新しい大学ですが、教育と研究の水準は極めて高く、世界トップクラスの優れた教授陣がそろっています。卒業生の就職率は100%です。私の研究室の卒業生も、入社直後から海外と関わる重要な仕事を任されるなど、まさに本学が目指す実践力と英語力を兼ね備えた人材で、即戦力として高く評価されています。

 日本で進路を考える高校生や保護者の方には、日本という枠を超えて、「世界の中で自分がどう活躍していくか」を真剣に考え、大学を選んでほしいと願っています。

田畑副学長:私たちの教育プログラムが、日本の工学教育の中でもっとも先進的であることは、自信をもって断言できます。すでに本学の卒業生は企業から高い評価を得ており、これはKUASの教育力が本物であることを証明していると自負しています。大学とは、偏差値の順位で決まるものではありません。4年間かけて、学生ひとりひとりの可能性を最大限に引き出し、成長させる場であるべきです。KUASはその使命をしっかりと果たしており、「自分を思い切り成長させたい」と強く願う人にとって、間違いなく最適な環境です。

 ぜひ本学に来て、日本の未来、そして世界の未来を担う意欲をもち、自らの手で将来を力強く切り拓いていってほしいと思います。

--ありがとうございました。


 学生と教員、双方の言葉から伝わってきたのは、国際的な環境の中で「確かな技術」と「人間力」を育む、KUASが掲げる教育理念そのものだった。ここで重要なのは、英語はあくまでも「手段」であるということ。実践的なプロジェクトを通じて、学生たちは多様な価値観に触れ、互いに刺激し合いながら「ストリート・スマート」な実践力を磨きあげている。

 今後、グローバルな視点と揺るぎない専門力を備えた即戦力エンジニアたちが、この知の都・京都から、世界へと力強く羽ばたいていくことだろう。

京都先端科学大学 工学部特設サイト

《木村りこ》

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