中学生の運動部とスポーツクラブ、年間費用に約10万円の差

 笹川スポーツ財団は2025年、中学生の子供をもつ保護者を対象に「中学生のスポーツ活動と保護者の関与に関する調査」を実施し、結果を公表した。調査から、中学生のスポーツ機会は世帯年収により格差があること、また保護者の関与には地域差があることなどが明らかになった。

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部活動の加入状況(世帯年収別)
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 笹川スポーツ財団は2025年、中学生の子供をもつ保護者を対象に「中学生のスポーツ活動と保護者の関与に関する調査」を実施し、結果を公表した。調査から、中学生のスポーツ機会は世帯年収により格差があること、また保護者の関与には地域差があることなどが明らかになった。

 調査結果によると、部活動やスポーツクラブへの加入状況は、世帯年収によって差がみられた。運動部の加入率は、世帯年収「400万円未満」の層では42.3%であったのに対し、ほかの年収層ではいずれも5割を超えていた。文化部の加入率と世帯年収との間に明確な関連はみられなかったが、部活動に加入していない割合は「400万円未満」で28.7%ともっとも高かった。

 スポーツクラブの加入率も世帯年収による差が顕著で、「400万円未満」では9.0%ともっとも低く、年収が上がるにつれて高くなる傾向がみられた。「1,000万円以上」の層では21%が加入しており、高年収層ほど運動部やスポーツクラブへの加入率が高いことがうかがえる。

 こうしたスポーツ機会の格差は、中学校入学前から生じていることもわかった。中学校入学前に組織的なスポーツ活動を経験していた割合は、全体では小学校入学前に45.9%、小学生のころに55.4%だった。これを世帯年収別にみると、「400万円未満」では小学校入学前が31.6%、小学生のころが41.6%であるのに対し、「1,000万円以上」ではそれぞれ58.6%、66.7%となり、いずれも3割弱の差がみられた。

 子供の部活動やスポーツクラブについて、1年間で家庭から支払う費用は、運動部が平均5万857円、スポーツクラブが平均15万5,799円となり、スポーツクラブの費用は運動部の約3倍にのぼることが明らかになった。

 運動部やスポーツクラブに加入していない子供の保護者の意識を尋ねたところ、世帯年収による違いがみられた。「費用の負担が大きく、運動やスポーツをさせることが難しい」と回答した割合は、「400万円未満」で52.1%だったのに対し、「1,000万円以上」では18.1%だった。同様に、「送迎や保護者の係の負担が大きく、運動やスポーツをさせることが難しい」も、「400万円未満」が59.5%、「1,000万円以上」が29.8%と大きな差があった。また、「小学生までにもっと運動やスポーツに親しむ機会を与えたかった」という後悔の念を示す回答も、「400万円未満」が61.3%と、ほかの層を15ポイントほど上回った。

 居住地の人口規模別に加入状況をみると、運動部・スポーツクラブともに加入率に明確な差はみられなかった。中学生のスポーツ活動の実施状況は、地域規模にかかわらずおおむね同程度といえる。

 一方、保護者の関与には地域差がみられた。公立中学校の運動部において、「子供の送迎をする」と回答した割合は、人口「3万人未満」の自治体で85.3%だったのに対し、「50万人以上」では51.7%だった。ほかにも「子供以外の部員の送迎をする」「教員や指導者との連絡や情報共有を行う」などの項目で、人口規模が小さい自治体ほど保護者の関与の割合が高い傾向が示された。

 同調査を担当した笹川スポーツ財団のシニア政策ディレクター、宮本幸子氏は次のようにコメントしている。

 「本調査は、保護者の目線から中学生のスポーツ機会や活動の実態を明らかにし、家庭環境や地域による違いを把握する目的で行われました。運動部活動は費用負担が比較的少なく、加入率は調査対象者全体で5割にのぼり、世帯年収400万円未満の群でも42.3%となりました。一方で、この数値はその他の年収群に比べて約10ポイント低く、統計的にも有意な差がみられます。スポーツクラブの加入率は年収が上がるにつれて段階的に高まり、400万円未満では9%、1,000万円以上では21%となりました。

 部活動の地域展開においては、スポーツクラブへの活動の移行や受益者負担の増加が議論されますが、その際には常に、低所得層の子どもへの影響を考慮する必要があります。『地域展開』はあくまで子どもたちにより良い環境を整備するための手段であり、既存の部活動の長所と課題を冷静に評価しながら、どのような仕組みを構築していくか検討することが求められます」とのことだった。

◆中学生のスポーツ活動と保護者の関与に関する調査
調査時期:2025年1月
調査方法:登録モニターを対象としたインターネット調査
調査対象:中学1~3年生の第1子をもつ保護者(母親1,586人、父親1,550人)
有効回答数:3,136人

《風巻塔子》

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