【大学受験】プロ208人調査で読み解く、大学選び最新マップ<西日本編>

 学習塾関係者や進路指導のプロ208人への調査をもとに、西日本エリアにおける大学選びの最新傾向を整理する。偏差値や大学名だけでは見えにくい、「実際に選ばれている大学」の判断軸とは何なのかを読み解いていく。

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【大学受験】プロ208人調査で読み解く、大学選び最新マップ<西日本編>
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 京阪神(京都市、大阪市、神戸市)の関西圏に加え、名古屋市、福岡市、広島市などの地域では、「第1志望は国公立で、私立は併願」という出願パターンが非常に多い。その際、旧帝大レベルの併願校として私立大学を探す場合、あるいは有力私立大学を本命にする場合、西日本には首都圏における「早慶上理」(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学)クラスの入試難度の大学群が存在しないため、塾関係者からは、選択肢が限られてしまうといった悩みを多く聞く。

 筆者は2024年から約2年にわたり、西日本102塾(208人)の進路指導担当者に、大学受験における志望校決定の重要キーワードを調査。膨大なデータから見えてきたのは、「偏差値」や「大学ブランド」だけではない、子供の将来を見越した複合的な要因を伴った「新基準」だった。

 本稿では、「選ぶ側」(受験生・保護者)を横軸に、「進路指導を行う側」(塾関係者)を縦軸に、それぞれが重視するキーワードをまとめた最新キーワードマップを独占公開。「難関大学」「上位・中堅大学」「地元小規模大学」の3つに分けて、受験校決定のリアルな基準を分析していく。

記事下のボタンより大きいサイズのキーワードマップを閲覧・ダウンロードできます
  • 今、偏差値を追い越すキーワードは?

  • 保護者の間で大幅に上昇、下降した意外な指標

  • 塾側の進路指導で急伸している項目

  • 10年後の受験界を支配するキーワード群

を予想。変化の激しい時代、偏差値や大学名だけでは見えにくい、「実際に選ばれている大学」の判断軸とは何なのか。わが子にとっての“正解“をどう見つけるべきか。208人のプロの知見が詰まった「志望校選びの新基準」をお届けする。

※調査方法:西日本102塾関係者(208人)へ大学受験で進学決定要素になるキーワードを著者(追手門学院大学客員教授、ルートマップマガジン社 西田浩史)が聞き取り調査(2024年1月~26年1月)した結果を基に作成。

 関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)、南山大学、西南学院大学など、西日本エリアには、有力な私立大学と国公立大学が数多く集まっている。ただ、首都圏における「早慶上理」(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学)クラスの入試難度の大学群が存在しない。

 一方で、東日本に比べ、難関国立大学の数は多い。たとえば、京都大学、大阪大学、名古屋大学、九州大学といった旧七帝大のうち4つと、これに次ぐ旧六医大と呼ばれる京都府立医科大学、岡山大学、熊本大学、新潟大学、長崎大学などを中心に有力国公立大学が多く点在しているのが特徴だ。ただし、少子化や総合型選抜(推薦入試)などの拡大といった複合的な要因によって、「偏差値」や「大学ブランド」といった物差しから状況は変わりつつある。まずは「難関大学」からデータに基づき検証していきたい。

難関大学選び「ブランド力」「偏差値」「就職実績」の重要度は低下中

 下の関関同立、南山大学、西南学院大学など難関大学群のキーワードマップ(※記事の最後の赤いボタンより、大きなサイズのPDFをダウンロードできます)を見てほしい。図の見方は、縦軸は「教える側」(塾関係者)が進路指導で重視するキーワード、横軸は「選ぶ側」(受験生・保護者)が志望校決定時に重視するキーワードを表しており、塾と受験生・保護者は共に、右上に近いものほど重要度が高くなることがわかる。

 これは単なる「人気校ランキング」ではない。塾関係者や受験生とその保護者がどのような視点で具体的に志望校を選んでいるのかを示すものだ。内容を細かく見ていこう。まず注目すべきは、その右上にあるキーワード群である。

 ここは、受験生・保護者が重視し、かつ塾側も進路指導で重視している領域だ。いわば、学校選びにおける重要な価値観(キーワード)が集まっているといえよう。具体的には、「偏差値」「大学のブランド力」「学閥の強さ」「就職実績」「立地の利便性」といったキーワードが並ぶ。

 たとえば、「一般選抜比率の高さ」が短期間で急伸していることは興味深い。これら難関大学を“一般選抜で“チャレンジするのが一般的と考えていることがわかる。要は、一般選抜の受験層がこれら大学のイメージそのものを形成しているといえよう。「立地の利便性」も偏差値並みの位置に急伸している。いわゆる、JRの駅前など便利な場所に新キャンパスを新設しただけで、大学のイメージは上がるということ。これは、東日本以上の伸びである。たとえば、関関同立の一角、立命館大学は人口の多い大阪府の北東部の茨木市に大阪いばらきキャンパスを新設し、本部のある京都市などから一部の学部を移転している。そして、同志社大学も、利便性の高い京都市の中心部にある今出川キャンパスなどで再開発中だ。関西学院大学は、神戸市内の一等地に新キャンパスの設置を予定している。

 南山大学、西南学院大学も高級住宅街に位置している。いずれも場所が良い。旧大阪市立大学と旧大阪府立大学が合併してできた大阪公立大学は、大阪市の一等地、阿倍野に新キャンパスを新設し、関西の国立御三家(京都大学、大阪大学、神戸大学)に迫る人気だ。逆に、キャンパスの立地が悪いと、この先難関大学であっても人気も入試難度(偏差値)も急下降する可能性がある。これは、西日本の塾関係者や受験生が東日本以上に場所にこだわる傾向にあるのがその理由だ。「学閥の強さ」は、塾関係者だけでなく、受験生も重視しているのが興味深い。

 右下の「自宅からの近さ」も伸びている。同じ難関大学を2つ合格した場合、外部の評価より自宅からの距離を優先することも珍しくない。よって、自己評価しにくく、内容や実態がわかりにくいキーワード(「実学的な学び」「有名な教授や研究室の存在」「学校推薦型・総合型選抜の実施」)は、伸び率が高いものの、右上の最重要キーワードになりにくい傾向もあるかもしれないと話す塾関係者もいる。その証拠に東日本に比べ、探究に熱心な高校も少なく、その能力を必要とする、学科試験なしの学校推薦型・総合型選抜の実施もそれほど盛り上がっていない。西日本の塾関係者や受験生は、東日本以上に"実を重視"する傾向が強い。とにかくわかりやすいことを重視するのが西日本の関係者なのである。

 一方で、左下の実態がわかりにくい「留学実績やカリキュラム」「大学院進学率」などが急伸しているのは、一発逆転的に成功すれば、著名・有名企業に就職できる期待感からである。これらキーワードは、10年先は重視されるものになっている可能性が十分に考えられる。

 ちなみに興味深いのは、仮に“偏差値が暴落“したとしてもブランド校であり続ける可能性が高いとみる塾関係者が多いこと。関関同立など大学群はより強固に“固定化されていく“と見ている可能性もある。近年、近畿大学が志願者を伸ばし、偏差値を上げ、一部は関関同立に拮抗する学部・学科まで出てきているものの、塾現場では「関関同立近」とはなっていない。一部では言われてはいるが、メジャーな見立てではない。それだけ関関同立、南山大学、西南学院大学とそれ以外の私立大学の間には大学序列における“高い壁“があるのかもしれない。

上位・中堅大学選びのポイントの変化

 さて、次は、「産近甲龍」(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)、「愛知大学、名城大学、中京大学」、福岡大学の中堅大学群である。これら大学群はひとまず少子化の煽りをもろに受けやすいのは事実だ。前述した関関同立の大規模化、学部・学科の複線化の影響で、ブランド校の影響も、もろに受けやすい。

 これらはブランド(大学群)が固定化されているのは事実だが、関関同立ほどではない。「産近甲龍」ならば、ここに大阪経済大学や大阪工業大学、京都橘大学。「愛知大学、名城大学、中京大学」ならば、ここに愛知工業大学、中部大学、名古屋外国語大学。福岡大学ならば、立命館アジア太平洋大学をひっくるめた大学群にする塾関係者もいる。

 右上を見ると、これら大学は「立地の利便性」で評価が上がってきた。ひとまず志願者を集め、「大学のブランド力」を維持ないし、急伸できている仕組みである。なお、関関同立では一般選抜重視であったが、こちらは、学校推薦型・総合型選抜(年内学力推薦入試も含む)重視。若干ではあるが大学選びも難関大学とは異なっている。

 「自宅からの近さ」「実学的な学び」を重視しているのは、この大学群が、関関同立や国公立大学の完全な滑り止め大学群として東日本の大学以上に機能していること。いわゆるわかりやすい「ハード面」だけで選択されている傾向が強い。であるから「自宅からの近さ」といったキーワードも重視される結果となっている。ある意味露骨だが、シンプルな考え方に基づいて大学を選んでいるといえる。ちなみに、左上の「入試問題など出題傾向のわかりやすさ」は塾関係者は重要視している。

 ソフト面である、右下の「学閥の強さ」「学部学科の充実度」は低め。

 左下の「留学実績やカリキュラム」「大学院進学率」も学費が高く、コスパが悪いという点でそもそもこれを基準に考えたことすらない、と塾関係者から否定的な意見は東日本以上に多かった。なお、「一般選抜比率の高さ」の急伸は、関西圏の中堅大学の一般選抜の改革や制度変更によるものだろう。

「立地」と「通いやすさ」が地元小規模大学選びを左右する

 「産近甲龍」以上に「立地の利便性」を求められるのは、「地元小規模大学」である。ここは本当に大学の選び方が“個別的”で複雑だ。

 まず、この大学群は右上の重視されているキーワード群の「立地の利便性」がすべてといってよい。いかに駅近など便利な場所にキャンパスがあるかが問われる。その点を踏まえ、さまざまな要素が見られるといってよい。「自宅からの近さ」といったキーワードの急伸が示すように、自宅から通えるか、学費負担を抑えられるか、卒業まで無理なく通学できるか。これらは偏差値や大学名以上に、保護者・受験生双方にとって重要な判断材料となっている。

 また、このゾーンでは学校推薦型・総合型選抜といった、いわゆる年内入試が事実上の前提となっているケースが多い。その証拠に、「一般選抜比率の高さ」のキーワードは、左下に位置している。これは、進路を早期に確定させ、家庭として現実的な進学計画を立てる傾向が高いためである。さらに、地元小規模大学においては、大学全体のブランドよりも、学部・学科単位の評価が強く働く。教員養成、看護、医療、保育、栄養、福祉、地域産業系など、地域に明確な需要がある分野をもつ大学が多い。事実、右下に位置する「実学的な学び」の急伸は著しい。一見、大学の中身の評価基準とは関係なさそうな「大学説明会での職員のイメージ」が重視されていたりもする。半面、一般的に大学選びで重視される、「偏差値」「学部学科の充実度」は左下に位置する。

 10年後を見据えると、大学の将来像はすでに現在の選ばれ方の中に表れている。難関大学はブランドと立地で評価を固め、中堅大学はわかりやすさと実学性で生き残り、地元小規模大学は生活圏と役割の明確さによって選別が進む。

 大学選びは、偏差値だけで測る時代から、構造で見る時代へと確実に移行している。そして、大学受験における大学選びは、今や三極化している。このキーワードマップが本当に示しているのは、選び方の“正解”はないということだ。

 塾はもはや、偏差値表を示すだけの存在ではいられない。受験生ひとりひとりの将来像を言語化し、その子にとって意味のある学校を一緒に探す役割が求められている。そして保護者は、学校選びのための情報感度を高め、周囲に惑わされない“自分軸”を受験生と一緒に形成していく必要があるだろう。

 激変する大学受験と大学選び。ぜひこのキーワードマップと、ご家庭で大切にしているキーワードを重ね合わせ、学校選びの参考にしていただきたい。

大きいサイズのキーワードマップ(PDF 1.11 MB)
ダウンロードはこちら ※別ウィンドウが開きます

●著者:西田 浩史(にしだ ひろふみ)

追手門学院大学客員教授/ルートマップマガジン社取締役・編集長

 2016年 ダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』記者(学校・教育産業担当)、学習塾業界誌の私塾界『月刊私塾界』、塾と教育社『月刊塾と教育』記者、追手門学院大学アサーティブ研究センター客員研究員を経て20年から現職。「デイリー新潮」「東洋経済オンライン」「ダイヤモンド・オンライン」「現代ビジネス」『週刊朝日』『サンデー毎日』『週刊エコノミスト』『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』など教育関連記事の寄稿、コメント多数。全国5,000塾、予備校(関係者20,000人)の取材達成(2024年09月現在)。著者に『総合型選抜は何を評価するのか』(かんき出版)、『医学部&医者』『関関同立』『最強の高校』(すべて週刊ダイヤモンド 特集BOOKS ダイヤモンド社)など。

●分析:井上 孟(いのうえ つとむ)

海外大学ジャーナリスト/ルートマップマガジン社代表取締役社長

 2016年 大手通信キャリアにてM&A戦略のコンサルティング、2012年米国 Hult International Business School で経営学修士(MBA)修了。13年から経営コンサルタントとして、英国コンサルティングファームの世界最先端のビッグデータ解析手法を日産自動車などへ提供。22年より現職。現在、Google等のビッグデータを生かしたマーケティング手法の開発を軸に、16年から教育業界のデータ分析を開始。国内外約3,000大学ビッグデータ分析を行う。『ダイヤモンド・オンライン』『週刊ダイヤモンド』『現代ビジネス』『週刊朝日』『塾ジャーナル』『週刊東洋経済臨時増刊』『サンデー毎日』などデータ寄稿や情報提供多数。その他、全国の大学や高校にて経営や広報に関するコンサルティングや講演を行う。

《ルートマップマガジン社 西田浩史/井上孟》

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