関西学院大学理学部の松浦研究室が参画する超小型衛星「VERTECS(ヴァーテックス)」が「H3」ロケット6号機へ搭載され、2026年6月12日、種子島宇宙センターから無事に打ち上げられた。衛星は所定の軌道に投入された後、運用地上局との通信にも成功。宇宙の起源に迫る壮大なミッションがいよいよ幕を開けた。
この「Visible Extragalactic background RadiaTion Exploration by CubeSat(VERTECS:ヴァーテックス)」は、JAXA・大学・企業の三者による開発チーム*が総勢80名を超える研究者・学生とともに開発してきたものである。本プロジェクトは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)新事業促進部が実施する「産学官による輸送・超小型衛星ミッション拡充プログラム(JAXA-SMASH)」の衛星開発フェーズとして採択され、2022年度から産学官が密接に協働して進めてきた。
*開発チーム:【代表機関】 九州工業大学/【JAXA-SMASH参加機関】 JAXA宇宙科学研究所(ISAS)、関西学院大学、東京都市大学、金沢大学、東京科学大学、福井大学、株式会社コシナ、セーレン株式会社、株式会社イメージテック/【国際共同研究機関】 國立精華大学(台湾)、國立中興大学(台湾)
VERTECSの科学的ミッションは、「宇宙可視光背景放射」を精密に観測し、天体形成史の謎に挑むことにある。宇宙可視光背景放射とは、宇宙初期から現在までに放射されたあらゆる光の総計であり、そのスペクトル形状を詳細に分析することで、「未知の天体の起源」を解き明かすことが期待されている。
このミッションの「目」とも言える核心部、望遠鏡および検出器パートの開発を主導したのが関西学院大学理学部の松浦研究室だ。装置は、宇宙可視光背景放射の観測に特化した広視野光学系と、極めて微弱な光を捉える低暗電流の検出器で構成されている。
また、打ち上げ後の衛星運用においても、関西学院大学チームは関係機関の中で最大規模のメンバーを擁している。学生たちはJAXA宇宙科学研究所での本格的な運用訓練を積み重ねてきた。今後は、衛星への指令送信やデータ受信を行う「運用当番」の主力として、最先端の現場で実務の中心的な役割を果たすことになる。
本衛星は、わずか6Uサイズ(100mm×226mm×340mm)という超小型の筐体に、高度な可視光観測用望遠鏡を凝縮して搭載している。 この小さな衛星が、宇宙初期から現在までの光の総量を観測することで、私たちの住む宇宙の成り立ちという壮大な歴史を紐解いていく。
宇宙研究の最前線に立つ関西学院大学理学部からのコメント
理学部 物理・宇宙学科 松浦周二 教授
本学では科学ミッションを達成するための観測装置の開発を主導しました。今後は初期運用を経て、観測装置の試験へと続きます。学生たちと心を込めて仕上げた装置が続々と観測画像を送り出し、これまでにない広さで4色の天空地図を描くことを想像すると、心が躍ります。
安田渉夏さん(4年生)
打ち上げが成功し、無事に運用が始まったことに非常に感激しています。宇宙科学の研究現場ならではの緊張感やチーム連携の重要性を訓練で実感してきましたが、これからの本番運用にも全力で取り組みたいと思います。
齋藤 優那 さん(4年生)
無事に通信に成功したと聞き、操作ひとつひとつに大きな責任が伴うことを改めて身の引き締まる思いで受け止めています。学部生の段階からこのような貴重な経験ができる環境に感謝し、運用を通じてさらに学びを深めていきたいです。
今後は初期運用(クリティカルフェーズ)を通じて衛星の各機能を順次確認し、本格的な観測ミッションへと移行する予定である。
関西学院大学理学部の起源は、1961年の学部開設にまで遡る。以来、伝統と実績を誇る「化学科」、多様性と学際性が特徴の「数理科学科」、そして国内でも稀有な宇宙物理学の主要3分野(電波、赤外線、X線天文学)を揃える「物理・宇宙学科」の3学科を設置。各学科が最先端の教育・研究を展開し、未来の科学界を担う有為な人材を現場へと送り出している。
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