「挑戦が日常になる」ドルトン東京学園卒業生が語る成長と発見の6年間

 「ドルトンプラン」を実践する日本初の中高一貫校、ドルトン東京学園。2019年の開校から7年が経ち、2期生もそれぞれの進路で新たな一歩を踏み出している。 今回は、2期生の卒業生2名と入試広報室の小林先生に、6年間の学びや経験について話を聞いた。

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「挑戦が日常になる」ドルトン東京学園卒業生が語る成長と発見の6年間
「挑戦が日常になる」ドルトン東京学園卒業生が語る成長と発見の6年間 全 7 枚 拡大写真

 今からおよそ100年前に米国の教育家ヘレン・パーカーストが提唱した“学習者中心”の教育メソッド「ドルトンプラン」。その理念のもと、ひとりひとりの興味や探究心を大切にしながら、自ら未来を切り拓く力を育む教育を実践しているのがドルトン東京学園だ。

 2019年の開校から7年。学校とともに歩んできた2期生は、どのような6年間を過ごし、それぞれの進路へ羽ばたいていったのだろうか。探究活動や留学、「ハウス」と呼ばれる異学年交流などを通じて成長した卒業生2人と入試広報室の小林トーマス周平先生に話を聞いた。

【話を聞いた人】

Y・Hさん:国際基督教大学 教養学部 アーツ・サイエンス学科 1年生

M・Yさん:立教大学 法学部 法学科 1年生

小林トーマス周平先生:ドルトン東京学園中等部・高等部 保育体育科/入試広報室 


彩り豊か」「変わり続ける」ドルトン東京学園

--ドルトン東京学園への入学を志望されたきっかけを教えてください。

Y・Hさん:ドルトンプランを実践する幼稚園「ドルトンスクール」に通っていたこともあり、小学6年生のときに母から「ドルトンの中等部・高等部ができる」と聞いて興味をもちました。それまで中学受験を考えていなかったのですが、体験授業に参加して、開放的な校舎や魅力的な授業に触れ、「この学校に通いたい」と感じました。中でも印象的だったのは数学の体験授業です。算数が苦手だった私にとって、マンダラアートを題材に数学を学ぶ授業がとても新鮮で、数学を初めて「面白い」と感じることができました。

M・Yさん:小学校は制服があり、校則も比較的厳しかったため、中学生になったら自分らしくのびのび過ごせる環境で学びたいと思っていました。そんな中、小学校の先輩がドルトン東京学園の1期生として進学したと聞き、体験授業に参加しました。温かな先生方や、学校全体に流れる自由で前向きな空気に惹かれ、「ここで過ごしたい」と感じました。体育の体験授業も、体を動かしながら主体的に取り組める内容で、とても楽しかったことを覚えています。

左から、立教大学 法学部 法学科 1年生のM・Yさんと、国際基督教大学 教養学部 アーツ・サイエンス学科 1年生のY・Hさん

--6年間過ごしたドルトン東京学園を「〇〇な学校」とひと言で表すと、どのような学校でしたか。

M・Yさん:多彩な経験を通して自分の視野を広げられたドルトンは、私にとって「彩り豊かな学校」でした。ドルトンには個性豊かな生徒が集まり、ひとりひとりが自分らしく過ごせる環境があります。異学年で交流する「ハウス」や、幅広い挑戦の機会を通じて自分の興味や可能性を広げられるのも魅力です。私自身、中3のオーストラリア研修をきっかけに英語が好きになり、高校では3か月間のアメリカ(アリゾナ)留学に挑戦。CAC(City As a Classroom=学校外での体験学習プログラム)では、シリコンバレーと広島を訪れました。さまざまな仕事や生活に触れ、多様な人に出会う中で得た経験は、今でも鮮明に記憶に残っています。

Y・Hさん:常に変わり続けている学校」です。私たちは2期生で、開校間もないコロナ禍で入学し、多くの変化を見ながら学園とともに成長してきました。たとえば、中学のころ「アートフェス」と呼ばれていた行事は、今では「Dalton Fest」へと発展し規模も拡大していますし、「Sports Fest」の競技内容も生徒たちの話し合いによって毎年アップデートされています。日常的な場面でも、環境委員がごみの分別を改善するためにイラスト付きの掲示を作るなど、ドルトンには課題を見つけて自分たちで行動に移す文化が根づいています。先生方もこうした生徒の挑戦を温かく支えてくださるので、生徒も学園も常に進化し続けていると感じます。

--6年間を振り返って、ドルトンならではのユニークな授業や、ご自身の「学びの姿勢」が大きく変わるきっかけになった授業はありますか

Y・Hさん:私は英語の授業を通じて「勉強する」から「楽しむ」マインドに変わりました。特に中学のころは、文法を頭に詰め込むような授業ではなく、英語を使ったゲームや動画制作など、楽しみながら英語に触れる機会が豊富でした。もっと英語に触れたいという意欲が芽生え、中3の終わりから3か月間アイルランド留学にも挑戦しました。英語のクラスはレベル別に3つのコースに分かれていて、私は中1から高2まで中間のクラスにいました。それでも、体感的な楽しさと、自ら飛び込んだ経験の積み重ねがあったからこそ、高3でいちばん上のクラスに上がることができました。

Y・Hさん(国際基督教大学 教養学部 アーツ・サイエンス学科 1年生)

M・Yさん:私は数学の授業が心に残っています。もともと苦手意識があり、公式や解法の暗記にずっと苦戦していました。しかし高2のとき、三平方の定理を使って校舎の高さを実測するグループワークに取り組み、自分の手足を動かすことで初めて解法の意味を実感できました。座学だけでは伸び悩んでいた私にとって、「まず行動して、体感しながら本質を掴む」というドルトンの授業スタイルは、学び方そのものを変える転換点になりました。

学年を超えて共に成長する協働の場「ハウス」

--ドルトンには「ハウス」という学年を超えた縦割り組織があります。行事や日々の活動を通じて、ご自身の成長や「他者との関わり方」に変化をもたらした印象的な体験はありますか。

Y・Hさん:高1から高2にかけて、ハウスリーダーとハウス合宿の実行委員長を務めました。この経験が、大きな成長の機会になったと感じています。大勢で盛り上がるのが苦手な後輩にどう声をかけるか、どうすれば心の距離を縮められるかなど、人との関わり方について多くのことを学びました。一方で、高1のハウス合宿では実行委員長の仕事をひとりで抱え込みすぎて、当日体調を崩すという大きな失敗もしました。その悔しさから「もういちど挑戦したい」と高2で再び立候補。もう1人の委員長と役割を分担し、先生方にも頼りながら、約100人規模の合宿を無事にやり遂げることができました。協働することの大切さと、自分なりのリーダーシップを学んだ経験でした。

M・Yさん:私はハウスの中では「和ませ役」のような立場でした。仕切るのが得意な同級生がいたので、私は後輩たちと友達のように接しながら、フランクに声をかけて安心していられる雰囲気づくりを心がけました。全員が同じタイプの「リーダー」になる必要はなく、自然体で過ごす中で自分なりの役割を見つけ、お互いの個性を認めあえる——そんな心地良さがハウスにはありました。

--お二人のお話から、ハウスでの経験を通じてそれぞれが自分らしい関わり方やリーダー像を見つけていったようすが伝わってきます。この「ハウス」という仕組みは、ドルトンの教育の中でどのような役割を担っているのでしょうか。

小林先生:ドルトンには「自由と協働」という2つの原理があります。ハウスは、そのうちの「協働」を体現する場です。ハウスという名前のとおり「家」をイメージした仕組みで、6つのビッグハウスと4つのスモールハウスからなる縦割りのコミュニティです。社会に出れば、同じ年齢の人とだけ関わることはほとんどありません。だからこそ、年齢の違う相手とも自然に関わり、自分の考えを伝えたり、相手の考えを受け止めたりする経験を通じて、社会性を育んでいきます

小林トーマス周平先生(ドルトン東京学園中等部・高等部 保育体育科/入試広報室)

 特筆すべきは、その高い主体性です。毎日のショートハウス(15分)や週に1度のロングハウス(45分)では、生徒自身がゼロから季節のイベントや親睦を深めるアクティビティなどを企画・運営します。ハウスごとの年間予算の使い道も、生徒たちの話し合いで決定します。 単なるグループ活動ではなく、予算を動かし、合意形成を図りながら「小さな社会」を共につくる。こうした挑戦と失敗の積み重ねが、年齢や立場の異なる人々と協力する力を育て、生徒たちの確かな成長につながっています。

自ら問いを立て、考え抜く「卒業探究」

--ドルトン東京学園の特色のひとつである「卒業探究」とは、どのような取組みですか。

小林先生:卒業探究は、中3で取り組む「修了研究」を土台に、高2の1年間をかけてテーマを深め、1万字以上の論文とポスターにまとめて発表します。ドルトンが大切にしている「自由」を実践する学びであり、生徒ひとりひとりが自ら問いを立て、情報を集め、自分なりの答えを導き出していきます。

--お二人の「卒業探究」についてお聞かせください。

M・Yさん:私はテレビドラマの影響で法医学者という仕事に憧れ、高2の卒業探究では、日本の死因究明制度を調べ、諸外国と比較しました。実際に現役の法医学者である大学教授にインタビューしたことで、書籍やインターネットだけではわからない日本の現状を知ることができ、この卒業探究で学年の優秀賞をいただきました。その後の進路にもつながった、とても大きな経験です。

M・Yさん(立教大学 法学部 法学科 1年生)

Y・Hさん:ハウスリーダーの経験から「リーダーシップ」をテーマに探究しようと考えていたのですが、夏休みに参加したリーダーシップ育成キャンプで転機が訪れました。地方出身の運営代表の方に「高校生で海外留学できるなんて知らなかった」と言われ、自分にとって当たり前のことが地域によってはそうではない現実に衝撃を受け、テーマを「地方と都市の教育格差」に変更しました。

 実情を知るために、山形と島根の公立高校へ自らアポイントを取り、1日体験入学をしました。情報や経済面での厳しい格差を目の当たりにする一方、島根では学校と地域が強く結びつき、協働で課題解決に挑む独自の強みにも触れました。現地に足を運んだことで、「格差」という言葉だけでは捉えきれない、地域ごとの課題と豊かさの両面が見えるようになりました。

教員の役割は「進路指導」ではなく「進路支援」

--卒業探究は現在の進路に結び付きましたか。

Y・Hさん:私は、卒業探究で山形や島根を訪れた経験から、教育格差の問題は教育だけでなく、経済や地域政策、人口動態など複数の分野が絡み合っていると実感しました。ひとつの専門に絞るよりも、まずは幅広い視点から社会の課題を捉える力を身に付けたいと考え、専攻を入学時に決めずに学べるリベラルアーツに魅力を感じて国際基督教大学(ICU)に進学しました。ICUの総合型選抜では、卒業探究で自ら現地に足を運んだ行動力や、一次情報をもとに自分の考えを深めていった探究の過程を評価していただけたと思います。

M・Yさん:私は法医学者になりたいと医学部を志望していましたが、卒業探究を進める中で、法医学が抱える人手不足の背景には「亡くなった人への関心の薄さ」という社会の制度的課題があるという事実に突き当たりました。そこでまずは法律や社会の仕組みを学ぶべきだと考え、立教大学の法学部に進学しました。大学の交換留学制度に応募し、来年から1年間、法医学分野で先進的なイギリスへ留学することが決まっています。ドルトンで始めた探究は今も続いています

--探究活動が出発点となって進路を切り拓いていくのですね。ドルトンにおける進路指導の方針について教えてください。

小林先生:探究テーマが進路に直結する生徒もいれば、異なる分野へ進む生徒もいます。私たちが本当に大切にしているのは、卒業探究テーマと進路の一致ではなく、自分で問いを立て、情報を集め、考え抜いた経験そのものです。だからこそ「進路指導」ではなく「進路支援」という言葉を使っています。卒業するときに、生徒自身が納得して次のステップを選び、進んでいけること。それがドルトンの目指す「進路支援」です。

 そのための仕組みとして、ドルトンでは文系・理系に分けず、高1から単位制を導入しています。早い段階で進路を固定せず、ひとりひとりの興味の変化にあわせて柔軟に授業を選択できる、個別最適化された環境です。特定の担任だけでなく、授業や学校生活で関わる教員全員で生徒の挑戦と選択を支えています。

仲間と議論し合える環境で育んだ、思考力と行動力

--6年間で身に付いたと感じる力、ドルトンでよかったと感じていることを教えてください。

Y・Hさん:いちばん身に付いた力は行動力です。もともと臆病な性格で、「やってみたい」と思っても不安が先に立つタイプでしたが、「まず動いてみる」ということができるようになりました。ネットに頼りすぎず、一次情報を自分で取りに行く大切さも実感しました。また、自分の考えを言葉にして発信できること、その言葉に友人や先輩・後輩、先生方が耳を傾けてくれることが当たり前だと思っていましたが、今振り返るとそれはとても恵まれた環境だったのだと実感しています。

M・Yさん:私は思考力が身に付いたと思います。授業ではディスカッションや対話が多く、死刑制度のような答えのない抽象的なテーマについても、友人と本気で議論する機会が日常的にありました。そうした機会を重ねるうちに、「考えること」そのものが好きになっていきました。卒業してから、議論が当たり前にできる環境や仲間に恵まれていたのだと、あらためて実感しています。刺激を与えてくれる仲間との出会いが私にとってドルトンでのいちばんの財産です。

小林先生:自ら考え、挑戦し、それぞれの道を堂々と切り拓いている二人の姿は、ドルトンでの学びそのものを体現しており、本当に頼もしく、嬉しく思います。本学園のモットーに「恐れずに進め」という言葉があります。安心して挑戦と失敗を繰り返せる環境の中で、生徒ひとりひとりが自分の頭で考え、自らの手で人生を切り拓いていけるよう、これからも共に育んでいきたいと願っています。

--ドルトン東京学園に興味をもっている小学生・保護者にメッセージをお願いします。

M・Yさん:「素敵な仲間とたくさん出会えるよ」と伝えたいです。ひとりひとりが自分らしく過ごせて、お互いの個性を認めあえる学校です!

Y・Hさん:ぜひ体験授業に参加して、ドルトンのこの校風を体感してください。

Y・Hさんのお母様からのメッセージ
 最初の学校説明会で「自分のやりたいことを自由にできる学校」と伺ったとき、やりたいことが明確にあったわけではないわが子に、本当にドルトンが合っているのだろうかと思ったことを覚えています。それが6年間を過ごす中で、少しずつ自分の興味や問いを見つけ、高校2年生の卒業探究では、自ら地方の高校にアポイントを取り、話を聞きに行く姿を見ることができました。自分で考え、やりたいことを見つけたら自ら動いて実現していく力が身に付いたことに、大きな成長を感じています。

M・Yさんのお母様からのメッセージ
 入学当初は、先生の指示ありきではなく、自分から求めていかないと何もできないという「自由」に戸惑いを見せていました。しかし、同級生や上級生、下級生との学内での縦割り活動を通じて「協働」を覚え、「恐れずに進め!」の精神の下、学外での短期留学等を経て、自ら考え行動することを体得していったように思います。遅すぎるのではないかと危惧していた受験勉強も、6年生の夏休み明けから恐ろしい集中力でぐっと伸びました。好きなことを伸ばす力を養い、苦手なこともその手法で補うことができるようになったこと、そのすべてがドルトン生活の賜物だと思っています。私も楽しいドルトン生活でした。

 体験授業での直感を信じて入学した2人。仲間と出会い、失敗を恐れずに挑戦を重ねる中で、自ら未来を切り拓く頼もしい18歳へと成長した。2人の成長過程と、そこに寄り添う先生方の姿勢には、「自由と協働」という理念が体現されている。ぜひドルトンならではの学びの一歩目を、体験授業で感じてみてほしい。

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ドルトン東京学園 イベント情報

《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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