東京大学の総長選考・監察会議は2026年10月30日、次期総長予定者に藤垣裕子教授を選出した経緯を公表した。委員による無記名投票の過程や結果、詳しい選考理由などをあらためて明らかにしている。
総長選考では、9月に学内で意向投票を実施。上位候補者3人に対する第2回意向投票では、染谷隆夫氏(執行役・副学長、工学系研究科教授)が1,107票を獲得して1位、藤垣裕子氏(大学院総合文化研究科教授)は553票で2位。意向投票の結果と選出結果が異なったことから、学内外から選考経緯について説明を求める声があがっていた。
公表された資料によると、9月28日に開かれた総長予定者決定に関する会議では、第2次候補者5人を対象に委員16人が無記名投票を実施。過半数を獲得した候補者はおらず、藤垣氏が最多の7票、染谷氏と山本隆司氏(理事・副学長)がそれぞれ4票を獲得した。
協議では、3人の候補者を中心に総長予定者とすることの積極的な理由と懸念事項をあらためて整理。上位3人を対象に2回目の無記名投票を行った結果、藤垣氏が過半数に達する12票を獲得した。
委員からは、意向投票と異なる結果の総長予定者を初めて選出することの重みもあり、あらためて委員間で確認したい旨の発言があり、直ちに表決には移らず議論を継続。過半数を得た事実だけで決定するのではなく、候補者の優位性や、懸念がないかを確認し、文理双方に立脚した学術の専門性、学術の社会への価値提供、今後の大学のあり方へのビジョンなど、あらためて藤垣氏に対する優位性について意見が出されたという。
最終的には、議長を除く委員15人による無記名投票により表決を行い、14人の承認をもって次期総長予定者に藤垣氏を決定。本人に連絡し承諾を得て、正式決定に至った。
藤垣氏を選出した理由については、「大学とは何か、学術はいかにあるべきかという本質的な問いを基礎として、中長期的かつ幅広い視野から本学の将来像を捉えている」「『学術への信頼』および『多様な知』を重視する姿勢や、学内外の多様な主体との対話を通じて大学を運営していく力」「理事等として大学運営に携わり、入試をはじめとする難しい課題に対応してきた経験に加え、多様な構成員とのコミュニケーションに関する知見と経験」などを評価。候補者が女性であることを選考理由とする議論は行われていないとあらためて説明し、「性別が判断要素とはなっていない」と強調した。
総長選考をめぐっては、教職員有志が次期総長決定の経緯説明を求める要望書を総長選考・監察会議に提出。文部科学省も総長選考の経緯を検証するよう要請していた。

