【NEE2013】1人1台のダブレットを活用した公開授業…筑波大附属小

 6月6日から東京で開催されたNew Education Expo 2013の最終日である8日にICTを活用した筑波大学附属小学校の国語・算数の公開授業が実施された。

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デジタル教科書に線を引く児童 国語
デジタル教科書に線を引く児童 国語 全 13 枚 拡大写真
◆本当に数えきれる?通過する乗り物を数えることで「表」に表すメリットを学習…盛山隆雄教諭 算数

 盛山教諭の授業は、乗り物が通過するアニメーションを電子黒板で見せ、どの乗り物が何台通ったかを数えることで表やグラフのメリットを学習するという内容。メモと共同作業の必要性を児童が察し、どの乗り物が何台通ったかをより効果的に表すにはどうすればよいかを学ぶ授業だった。

 授業は、児童に乗り物が通過する2つのアニメーションを見せ、それぞれのアニメーションが地図上のどの道路の様子を表しているかを当てるというゲーム的設定から始まる。一度アニメーションを見ただけで、「救急車が多く走っていたから病院の近く」または「トラックが多く走っていたので工事現場の近く」などといった声もあり、授業は盛り上がる。

 授業の早い段階で、救急車・トラック・タクシーなどといった通過する乗り物を種類別に数える必要性があることに児童は気付き、どのように数えたらよいかを模索する。乗り物の種類をタブレット上にリストアップし、正の字を書いたり、○を書いたり、児童によってはタブレットのスタンプ機能を活用して通過する乗り物を種類別に数えるが、電子黒板に表示されるアニメーションを見ながら数えるのは難しいことに気付く。タブレットに記録している間に次の乗り物が通過し、見逃してしまうのだ。

 そこで、2~3人1組になって共同作業を児童は始める。あるグループは、乗り物の種類別に数える担当を決め、またあるグループは通った乗り物を読み上げる担当と、それをタブレットに記録する担当に分かれて作業を行っていた。何度かアニメーションを見て乗り物の種類別台数を記録していく過程の中で、児童は「○で記録すると表に収まりきらない」といった発見や、「正の字を使うと5台分が○1ひとつのスペースに収まる」などといった発見を共有するようになる。

 盛山教諭は、児童が数えた車の種類別台数をホワイトボードの表に書き出し、グループによって台数が異なった箇所は再度アニメーションを見て数え直すという作業を続け、表を完成させた。アニメーションは2種類用意されており、2つの異なった道路を通過した乗り物の種類別台数を2次元表に表すことで道路の特徴を比較することが容易になることを学ぶ。

 道路の場所を当てるというゲーム的な要素と、互いのタブレット端末を使ってコミュニケーションをとりながら台数を数えるといった共同作業が児童の意欲を引き出していた。授業中には、地図上に書き込みがしたいという児童がいたり、スタンプ機能を使って車の台数を数える児童がいたりと、盛山教諭が想定していなかったタブレット機能の使い方を児童が行っていたところも多かった。盛山教諭は、事前に用意した授業展開に無理に当てはめることをせず、児童の意見を取り入れながら進めたことが印象的だった。

◆進化するICT環境とアナログの併用

 筑波大附属小の公開授業は、New Education Expoで毎年実施されており、毎年300人以上が見学に訪れるという。2011年は、電子黒板とデジタル教科書を活用した授業が行われ、2012年は3人に1人のタブレット端末、2013年は1人1台のタブレット端末と年々進化している。だが、アナログの部分が消えたわけではない。

 国語の授業の音読の時間では、教科書を使って音読する児童もタブレット上のデジタル教科書を音読児童もおり、自分に適した媒体を利用していた。また、国語・算数ともに、授業の最終的なまとめ作業はホワイトボードにて行われていた。

 画面に書き込んだり、消したりといった操作をしながら考えをまとめることを可能にする電子黒板やタブレット端末は思考力の育成場面を作りやすいという。また、同じ画面を見ながら操作したり、意見を共有することで考えを整理しやすくなるのも1人1台のタブレット環境があってこその学びだ。ただ、電子黒板やタブレット端末はあくまでも思考を促し、サポートするためのツールとして活用されており、ホワイトボードへの板書によって児童が最終的に理解すべき内容がクリアにされていた。

 先生と児童がICT機器を不自由なく使いこなすスキルは必須だが、公開授業においてそれらが授業の妨げとなったことはなかった。ただ、基本的な学習態度が身に付いていないと、思考と共有の時間を楽しむあまり最終的な授業のまとめに辿り着かないことも多いだろう。児童の集中力と、授業の流れを効果的且つ自然に授業目的に落とし込んでいく先生のスキルが印象的な公開授業だった。
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《湯浅大資》

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