【民間人校長】元新聞記者で最年少校長 北角裕樹氏が体感した学校現場
転職サイトも利用するなど注目を集めた大阪市の民間人校長だが、配属から2か月、校長は何を感じ、職務にどのように向き合っているのだろうか。元新聞記者の民間人校長、北角裕樹氏を追う。
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「いやー大変ですわ」
1か月ぶりにお会いした北角裕樹氏、いや、大阪市立巽(たつみ)中学校の北角校長の第一声である。高校時代にはボート競技で全国優勝、大学時代を中心に中国・韓国および米国に滞在経験があり、商社を経て12年間の日本経済新聞社記者を務めた経験のある彼ですら、校長という仕事は「大変」という言葉が先に出る、そんな世界のようだ。
「5年ほど前に大阪で記者をしていたとき、リクルート出身で杉並区立和田中の元校長の藤原和博さんの授業を取材する機会がありました。よのなか科という、ホームレス問題や、商品の付加価値のつけ方など答えがでない問題について、子どもと大人が一緒になって議論をするような授業でした。それを見て「こんな授業が、自分が中学生のときにあったら」ととてもショックを受けました。
そんな記憶が頭の片隅にあった昨年の夏、大阪市が50人もの校長を募集しているとのニュースを耳にしました。“50人も募集しているのなら、自分にもできるかもしれない”と思って、思い切って応募しました。」
そして公募に合格し、誕生した“民間人校長、北角裕樹”。
37歳(全国最年少)で民間人校長に就任、そんな彼から、学校と民間との違いをいろいろ探ってみた。
確かに「学校の先生は忙しい」「以前とは比べ物にならないくらい仕事がある」「中でも管理職は激務」といった声はよく耳にする。管理職ともなると、土日も地区の行事等で自分の時間がとられることもままあると思われる。「いやー大変ですわ」との第一声から、民間のビジネスマンからすると、“いったいいつ、先生方は休息をとっているのだろう?”と感じてしまうが…。
「いや、僕、(午後)10時過ぎには寝てますよ」
そして起きるのは午前6時頃だそうだ。意外と睡眠時間をとれているようにも思える。
「勤務中はずっと気が張ってて…。自宅に戻ると何もする気が起きないんですよ。すぐ休みたくて。どうしてもやらなければいけない仕事が突発的に発生した場合には、学校に深夜まで残ったり、喫茶店で仕事をしたりしています。」
なるほど、と思った。
「(仕事が)大変」という言葉だけを聞いたとき、ついつい労務時間の長さばかりに意識が向かうが、労務の質や密度も多忙感に影響を与える因子だ(たとえば、針の穴に糸を通す作業を延々と続ける労務を想像すると、口に出てくるのは「大変」という言葉になるわけで)。校長先生を含め、義務教育課程の先生に求められる一番大切なこととして、「生徒の学力を伸ばす授業をすること」「生徒指導を通じ人間的な成長を促すこと」などが素人考えでは思い浮かぶが、優秀な先生は必ずこう言う。
「生徒の安心・安全を守ることが第一」
生身の子どもをずっと預かる、そのプレッシャーは、経験した人間にしかわからないのかもしれない。民間から校長に転身した北角氏の「いやー大変ですわ」というコメントから、学校の先生に対する敬意を強く感じずにはいられない。
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